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VSバハムート

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 バハムートは、ミオ討伐に向けてさらなる動きを見せる。

 真っ赤な体は炎に包まれ、地面を熱し、草を燃やしていく。

 最悪なことに、すぐ近くは森だった。
 草から伝わった小さな火は、木に燃え移り、大きくなっていく。

「まずいぞ。あの方向には町がある!」

 幸いにも町は森は真反対にあるが、火を消すことが出来なければ、被害が出るのは時間の問題だ。

 アルマは走る速度を上げると、火の進行方向に回り込む。

「スラッシュ!」

 剣を振って消化を試みる。
 小さな炎だったらそれで良かったのかもしれない。

 だが、規模が大きすぎた。
 威力が足りず、火は弱まらない。
 それどころか、右の、左の、上の、アルマを取り囲む木に燃え広がり、炎が襲ってくる。

「くそっ」

 アルマは地面を蹴ると、その場から離脱した。
 さっきまでいた場所は、次の瞬間には炎の中だ。

 炎はさらに歩みを速め、既に森の3分の1ほどを巻き込んでいる。
 最早、小規模な鎮火など意味をなさない。
 一気に消しさるか、全体を石のように固めるしかない。

 この場でそれが出来るのは二人だ。

 ゼンかミナト。

 ゼンが斧を振るえば、突風が吹き荒れ、炎を地面から薙ぎ払う。

 ミナトは氷魔法が得意だ。
 どんなものも凍られることができる。
 例えそれが、高温の炎だとしても。

 問題なのは、二人の動きが読めないことだ。

 普通の冒険者なら、炎をどうにかしようと躍起になる。
 だがこいつらがただバハムートを倒そうとするならば、森やその先にある町なんて関係ない。

「来たれ氷よ…」

 ミナトは詠唱を始める。

 その向く先はバハムート、ではない。

「強化っ」

 

 万が一可能性があるとすれば、一度負けていることに対するアテツケだ。
 バハムートの行動のすべてを邪魔したい。
 徹底的に痛めつけたい。
 そう思っていてくれることだ。

「来たれ、氷よ…」

 ミナトは詠唱を開始する。
 その目の向く先はバハムート、ではない。

「強化っ」

 俺の手から放たれた光は、ミナトを包み込み、
 魔力アップ、氷魔法アップ、攻撃範囲アップ。
 3つのバフを同時に付与した。

 詠唱中の強化は、魔法の発動を阻害してしまうこともある。
 だが、ミナトは曲がりなりにも勇者パーティの一員だ。
 その程度では揺らがない。

「熱きものを鎮めよ、フリーズ!」

 蒼い光が杖から放たれ、一気に空気中に広がり、雲のように空を覆い尽くしていく。
 降り注がれるのは雪のような小さな光。
 炎に触れると静かに消え、また次の光が触れていく。

 光が消えるたびに、炎の揺らぎは小さくなり、森の半分以上を包んでいた炎は輝きを失っていく。
 出来上がったのは、森全体を覆うような、炎の形を呈した巨大な氷の像だ。


「おらおらー次は俺の番だぜ」

 ゼンは頭上で斧をぶん回す。
 それだけで風は吹き荒れ、氷の一部を破壊する。
 だが、全てに届くには至らない。


「強化っ」

 付与したのは筋力アップ、武器強化、攻撃アップだ。
 強化が終わると同時に、斧の回転速度は上がり、さらなる強風が吹き荒れる。

「おらーーーー、ぶっとべーーーー」

 ゼンが一歩近づくたびに、氷は端から吹き飛んでいく。
 それでは満足することはなく、斧自体が氷に叩きつけられた。

 バキバキバキと音がしてヒビが入り、ヒビは全体に広がっていく。

「どうだ、てめえの炎なんぞ俺達が本気を出せば大したことはねえんだ!」

 ゼンは斧を、ミナトは杖をバハムートに向けた。

 赤の勇者のパーティにとって、この行動に意味はない。

 あるとすれば、前回敗北したことによるアテツケだ。
 バハムートのとった行動のすべてを否定し、完全勝利を目指している。

「次はてめえが腹の中に入る番だ」

 剣を向けたのは、ベニロスだった。

 
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