53 / 76
VSバハムート
1
しおりを挟む
バハムートは、ミオ討伐に向けてさらなる動きを見せる。
真っ赤な体は炎に包まれ、地面を熱し、草を燃やしていく。
最悪なことに、すぐ近くは森だった。
草から伝わった小さな火は、木に燃え移り、大きくなっていく。
「まずいぞ。あの方向には町がある!」
幸いにも町は森は真反対にあるが、火を消すことが出来なければ、被害が出るのは時間の問題だ。
アルマは走る速度を上げると、火の進行方向に回り込む。
「スラッシュ!」
剣を振って消化を試みる。
小さな炎だったらそれで良かったのかもしれない。
だが、規模が大きすぎた。
威力が足りず、火は弱まらない。
それどころか、右の、左の、上の、アルマを取り囲む木に燃え広がり、炎が襲ってくる。
「くそっ」
アルマは地面を蹴ると、その場から離脱した。
さっきまでいた場所は、次の瞬間には炎の中だ。
炎はさらに歩みを速め、既に森の3分の1ほどを巻き込んでいる。
最早、小規模な鎮火など意味をなさない。
一気に消しさるか、全体を石のように固めるしかない。
この場でそれが出来るのは二人だ。
ゼンかミナト。
ゼンが斧を振るえば、突風が吹き荒れ、炎を地面から薙ぎ払う。
ミナトは氷魔法が得意だ。
どんなものも凍られることができる。
例えそれが、高温の炎だとしても。
問題なのは、二人の動きが読めないことだ。
普通の冒険者なら、炎をどうにかしようと躍起になる。
だがこいつらがただバハムートを倒そうとするならば、森やその先にある町なんて関係ない。
「来たれ氷よ…」
ミナトは詠唱を始める。
その向く先はバハムート、ではない。
「強化っ」
万が一可能性があるとすれば、一度負けていることに対するアテツケだ。
バハムートの行動のすべてを邪魔したい。
徹底的に痛めつけたい。
そう思っていてくれることだ。
「来たれ、氷よ…」
ミナトは詠唱を開始する。
その目の向く先はバハムート、ではない。
「強化っ」
俺の手から放たれた光は、ミナトを包み込み、
魔力アップ、氷魔法アップ、攻撃範囲アップ。
3つのバフを同時に付与した。
詠唱中の強化は、魔法の発動を阻害してしまうこともある。
だが、ミナトは曲がりなりにも勇者パーティの一員だ。
その程度では揺らがない。
「熱きものを鎮めよ、フリーズ!」
蒼い光が杖から放たれ、一気に空気中に広がり、雲のように空を覆い尽くしていく。
降り注がれるのは雪のような小さな光。
炎に触れると静かに消え、また次の光が触れていく。
光が消えるたびに、炎の揺らぎは小さくなり、森の半分以上を包んでいた炎は輝きを失っていく。
出来上がったのは、森全体を覆うような、炎の形を呈した巨大な氷の像だ。
「おらおらー次は俺の番だぜ」
ゼンは頭上で斧をぶん回す。
それだけで風は吹き荒れ、氷の一部を破壊する。
だが、全てに届くには至らない。
「強化っ」
付与したのは筋力アップ、武器強化、攻撃アップだ。
強化が終わると同時に、斧の回転速度は上がり、さらなる強風が吹き荒れる。
「おらーーーー、ぶっとべーーーー」
ゼンが一歩近づくたびに、氷は端から吹き飛んでいく。
それでは満足することはなく、斧自体が氷に叩きつけられた。
バキバキバキと音がしてヒビが入り、ヒビは全体に広がっていく。
「どうだ、てめえの炎なんぞ俺達が本気を出せば大したことはねえんだ!」
ゼンは斧を、ミナトは杖をバハムートに向けた。
赤の勇者のパーティにとって、この行動に意味はない。
あるとすれば、前回敗北したことによるアテツケだ。
バハムートのとった行動のすべてを否定し、完全勝利を目指している。
「次はてめえが腹の中に入る番だ」
剣を向けたのは、ベニロスだった。
真っ赤な体は炎に包まれ、地面を熱し、草を燃やしていく。
最悪なことに、すぐ近くは森だった。
草から伝わった小さな火は、木に燃え移り、大きくなっていく。
「まずいぞ。あの方向には町がある!」
幸いにも町は森は真反対にあるが、火を消すことが出来なければ、被害が出るのは時間の問題だ。
アルマは走る速度を上げると、火の進行方向に回り込む。
「スラッシュ!」
剣を振って消化を試みる。
小さな炎だったらそれで良かったのかもしれない。
だが、規模が大きすぎた。
威力が足りず、火は弱まらない。
それどころか、右の、左の、上の、アルマを取り囲む木に燃え広がり、炎が襲ってくる。
「くそっ」
アルマは地面を蹴ると、その場から離脱した。
さっきまでいた場所は、次の瞬間には炎の中だ。
炎はさらに歩みを速め、既に森の3分の1ほどを巻き込んでいる。
最早、小規模な鎮火など意味をなさない。
一気に消しさるか、全体を石のように固めるしかない。
この場でそれが出来るのは二人だ。
ゼンかミナト。
ゼンが斧を振るえば、突風が吹き荒れ、炎を地面から薙ぎ払う。
ミナトは氷魔法が得意だ。
どんなものも凍られることができる。
例えそれが、高温の炎だとしても。
問題なのは、二人の動きが読めないことだ。
普通の冒険者なら、炎をどうにかしようと躍起になる。
だがこいつらがただバハムートを倒そうとするならば、森やその先にある町なんて関係ない。
「来たれ氷よ…」
ミナトは詠唱を始める。
その向く先はバハムート、ではない。
「強化っ」
万が一可能性があるとすれば、一度負けていることに対するアテツケだ。
バハムートの行動のすべてを邪魔したい。
徹底的に痛めつけたい。
そう思っていてくれることだ。
「来たれ、氷よ…」
ミナトは詠唱を開始する。
その目の向く先はバハムート、ではない。
「強化っ」
俺の手から放たれた光は、ミナトを包み込み、
魔力アップ、氷魔法アップ、攻撃範囲アップ。
3つのバフを同時に付与した。
詠唱中の強化は、魔法の発動を阻害してしまうこともある。
だが、ミナトは曲がりなりにも勇者パーティの一員だ。
その程度では揺らがない。
「熱きものを鎮めよ、フリーズ!」
蒼い光が杖から放たれ、一気に空気中に広がり、雲のように空を覆い尽くしていく。
降り注がれるのは雪のような小さな光。
炎に触れると静かに消え、また次の光が触れていく。
光が消えるたびに、炎の揺らぎは小さくなり、森の半分以上を包んでいた炎は輝きを失っていく。
出来上がったのは、森全体を覆うような、炎の形を呈した巨大な氷の像だ。
「おらおらー次は俺の番だぜ」
ゼンは頭上で斧をぶん回す。
それだけで風は吹き荒れ、氷の一部を破壊する。
だが、全てに届くには至らない。
「強化っ」
付与したのは筋力アップ、武器強化、攻撃アップだ。
強化が終わると同時に、斧の回転速度は上がり、さらなる強風が吹き荒れる。
「おらーーーー、ぶっとべーーーー」
ゼンが一歩近づくたびに、氷は端から吹き飛んでいく。
それでは満足することはなく、斧自体が氷に叩きつけられた。
バキバキバキと音がしてヒビが入り、ヒビは全体に広がっていく。
「どうだ、てめえの炎なんぞ俺達が本気を出せば大したことはねえんだ!」
ゼンは斧を、ミナトは杖をバハムートに向けた。
赤の勇者のパーティにとって、この行動に意味はない。
あるとすれば、前回敗北したことによるアテツケだ。
バハムートのとった行動のすべてを否定し、完全勝利を目指している。
「次はてめえが腹の中に入る番だ」
剣を向けたのは、ベニロスだった。
0
お気に入りに追加
81
あなたにおすすめの小説
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
大好きな母と縁を切りました。
むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。
領地争いで父が戦死。
それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。
けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。
毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。
けれどこの婚約はとても酷いものだった。
そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。
そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
一度目は勇者、二度目は魔王だった俺の、三度目の異世界転生
染井トリノ
ファンタジー
この度、アルファポリス様から書籍化されることになりました。
それに伴ってタイトルが変更になります。
旧題:一度目は勇者、二度目は魔王だった俺は、三度目の人生をどう生きればいいですか?
勇者として異世界を救った青年は、二度目の転生で魔王となって討伐された。そして三度目の転生。普通の村人レイブとして新たな生を受けた彼は、悩みながらものんびり生きることを志す。三度目の転生から十五年後。才能がありすぎるのを理由に村から出ていくことを勧められたレイブは、この際、世界を見て回ろうと決意する。そして、王都の魔法学園に入学したり、幻獣に乗ったり、果ては、謎の皇女に頼られたり!? 一度目・二度目の人生では経験できなかった、ほのぼのしつつも楽しい異世界ライフを満喫していくのだった。
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
【完結】後妻に入ったら、夫のむすめが……でした
仲村 嘉高
恋愛
「むすめの世話をして欲しい」
夫からの求婚の言葉は、愛の言葉では無かったけれど、幼い娘を大切にする誠実な人だと思い、受け入れる事にした。
結婚前の顔合わせを「疲れて出かけたくないと言われた」や「今日はベッドから起きられないようだ」と、何度も反故にされた。
それでも、本当に申し訳なさそうに謝るので、「体が弱いならしょうがないわよ」と許してしまった。
結婚式は、お互いの親戚のみ。
なぜならお互い再婚だから。
そして、結婚式が終わり、新居へ……?
一緒に馬車に乗ったその方は誰ですか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる