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白の勇者のクエスト

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 戦闘において、俺が出来ることはバフをかけることだ。
 戦況を見て、必要と思しきところを強化していく。

「強化っ」

 対象はボーラだ。
 ダメージ軽減のために身体能力と、回復補助のために自然治癒力をアップさせる。

 タイミングよくとでも言うべきだろうか。
 バフをかけ終わったタイミングで触手はサクマに向き、ボーラはすかさず動いた。

「させるかっ、ってうおおおおおおおおおおおお、なんじゃこりゃああああああああああああ」

 盾は重量があり、動きはどうしても遅くなる。
 だが今のボーラは違う。
 筋力がアップしたことで、盾の重さを木の枝ぐらいにしか感じていないはずだ。

 いつもとは違う感覚に、ボーラは戸惑いながらも、サクマを守った。

「いつの間にそんなに速く動けるようになったんだ?」

 サクマが聞くと、ボーラは声を上げた。

「俺が聞きてえよ。ま、考えるまでもないがな」

 ボーラがちらっと俺を見た。
 その目は、次はどうすればいい?と聞いているように思えた。

「ああ、セシルの動きも速くなっている。三年前の俺と変わらないぐらいかな」

 俺の魔法を褒めているのか、自分の能力を自慢しているのかわからない表現をサクマはした。

「さあ、作戦指示を!」

 セシルの言葉に、ボーラが、サクマが頷いた。
 リリアだけは、ほっとしたように息を吐くと、楽しそうに笑った。

「ふたつ目のやつはセシルとサクマで応戦。邪魔な触手は全部ボーラが受け止めてくれ!」

「「了解!!」」
 セシルとサクマが同時に答える。
 ただひとり、ボーラだけは戸惑った。

「全部受け止めるって、いくら身軽になったからって無理だぞそんなの」
「心配ない。その場で盾を構えてくれるだけでいい。強化っ強化っ強化っ」
「は?意味がわからな…っておい、嘘だろ…」

 ローガを守るように動き、セシルの動きを邪魔するように立ちはだかり、サクマに攻撃をしかけていた無数の触手。
 それらが一斉に、ボーラの持っている盾に襲いかかった。

 カンカンカンカン。一秒に数十回、金属音が響き渡る。
 その衝撃は、重量機が全力で突っ込んでくるほどの重さだ。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

 ボーラは襲いくる攻撃に大声をあげた。
 でかいのは声だけじゃない。実力も相応だ。

 ボーラを強化したのは一度だけ。その後に使ったのは盾に対してだ。
 ボーラには追加の強化も考えていたが、彼のポテンシャルが俺の想像を越えていた。

 真正面から攻撃を受けても、一歩も動かない。

「さて、巨漢のボーラが触手と戯れている間に、僕たちはどうしようか」

 触手の攻撃がボーラだけに向けられたことで、セシルの言葉に余裕が戻った。
 だが決して油断しているわけではない。

「サクマ、あのふたつ目はルーアと言って、もうひとつ別の目があるらしい」
「じゃあそいつを探せばいいのか?」
「どうだろうね」

 セシルが指示を仰いできたので、俺は頷いた。

「もし見つける前に、目の前のやつを倒したらどうなるんだ?」
「さあね、それは聞いてこなかったな」

 俺も黒猫に聞いていない。
 試しに目をやると、すやすやと眠っていて、答えてくれそうにない。

「倒してしまっても構わないかい?」

 しばらく考えた後に、俺は答えた。

「いいんじゃないか?」

 セシルとサクマは目をあわせると、にやっと笑った。
 
 どうやら、最後の目を探すつもりはないようだ。
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