32 / 76
白の勇者のクエスト
9
しおりを挟む
戦闘において、俺が出来ることはバフをかけることだ。
戦況を見て、必要と思しきところを強化していく。
「強化っ」
対象はボーラだ。
ダメージ軽減のために身体能力と、回復補助のために自然治癒力をアップさせる。
タイミングよくとでも言うべきだろうか。
バフをかけ終わったタイミングで触手はサクマに向き、ボーラはすかさず動いた。
「させるかっ、ってうおおおおおおおおおおおお、なんじゃこりゃああああああああああああ」
盾は重量があり、動きはどうしても遅くなる。
だが今のボーラは違う。
筋力がアップしたことで、盾の重さを木の枝ぐらいにしか感じていないはずだ。
いつもとは違う感覚に、ボーラは戸惑いながらも、サクマを守った。
「いつの間にそんなに速く動けるようになったんだ?」
サクマが聞くと、ボーラは声を上げた。
「俺が聞きてえよ。ま、考えるまでもないがな」
ボーラがちらっと俺を見た。
その目は、次はどうすればいい?と聞いているように思えた。
「ああ、セシルの動きも速くなっている。三年前の俺と変わらないぐらいかな」
俺の魔法を褒めているのか、自分の能力を自慢しているのかわからない表現をサクマはした。
「さあ、作戦指示を!」
セシルの言葉に、ボーラが、サクマが頷いた。
リリアだけは、ほっとしたように息を吐くと、楽しそうに笑った。
「ふたつ目のやつはセシルとサクマで応戦。邪魔な触手は全部ボーラが受け止めてくれ!」
「「了解!!」」
セシルとサクマが同時に答える。
ただひとり、ボーラだけは戸惑った。
「全部受け止めるって、いくら身軽になったからって無理だぞそんなの」
「心配ない。その場で盾を構えてくれるだけでいい。強化っ強化っ強化っ」
「は?意味がわからな…っておい、嘘だろ…」
ローガを守るように動き、セシルの動きを邪魔するように立ちはだかり、サクマに攻撃をしかけていた無数の触手。
それらが一斉に、ボーラの持っている盾に襲いかかった。
カンカンカンカン。一秒に数十回、金属音が響き渡る。
その衝撃は、重量機が全力で突っ込んでくるほどの重さだ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
ボーラは襲いくる攻撃に大声をあげた。
でかいのは声だけじゃない。実力も相応だ。
ボーラを強化したのは一度だけ。その後に使ったのは盾に対してだ。
ボーラには追加の強化も考えていたが、彼のポテンシャルが俺の想像を越えていた。
真正面から攻撃を受けても、一歩も動かない。
「さて、巨漢のボーラが触手と戯れている間に、僕たちはどうしようか」
触手の攻撃がボーラだけに向けられたことで、セシルの言葉に余裕が戻った。
だが決して油断しているわけではない。
「サクマ、あのふたつ目はルーアと言って、もうひとつ別の目があるらしい」
「じゃあそいつを探せばいいのか?」
「どうだろうね」
セシルが指示を仰いできたので、俺は頷いた。
「もし見つける前に、目の前のやつを倒したらどうなるんだ?」
「さあね、それは聞いてこなかったな」
俺も黒猫に聞いていない。
試しに目をやると、すやすやと眠っていて、答えてくれそうにない。
「倒してしまっても構わないかい?」
しばらく考えた後に、俺は答えた。
「いいんじゃないか?」
セシルとサクマは目をあわせると、にやっと笑った。
どうやら、最後の目を探すつもりはないようだ。
戦況を見て、必要と思しきところを強化していく。
「強化っ」
対象はボーラだ。
ダメージ軽減のために身体能力と、回復補助のために自然治癒力をアップさせる。
タイミングよくとでも言うべきだろうか。
バフをかけ終わったタイミングで触手はサクマに向き、ボーラはすかさず動いた。
「させるかっ、ってうおおおおおおおおおおおお、なんじゃこりゃああああああああああああ」
盾は重量があり、動きはどうしても遅くなる。
だが今のボーラは違う。
筋力がアップしたことで、盾の重さを木の枝ぐらいにしか感じていないはずだ。
いつもとは違う感覚に、ボーラは戸惑いながらも、サクマを守った。
「いつの間にそんなに速く動けるようになったんだ?」
サクマが聞くと、ボーラは声を上げた。
「俺が聞きてえよ。ま、考えるまでもないがな」
ボーラがちらっと俺を見た。
その目は、次はどうすればいい?と聞いているように思えた。
「ああ、セシルの動きも速くなっている。三年前の俺と変わらないぐらいかな」
俺の魔法を褒めているのか、自分の能力を自慢しているのかわからない表現をサクマはした。
「さあ、作戦指示を!」
セシルの言葉に、ボーラが、サクマが頷いた。
リリアだけは、ほっとしたように息を吐くと、楽しそうに笑った。
「ふたつ目のやつはセシルとサクマで応戦。邪魔な触手は全部ボーラが受け止めてくれ!」
「「了解!!」」
セシルとサクマが同時に答える。
ただひとり、ボーラだけは戸惑った。
「全部受け止めるって、いくら身軽になったからって無理だぞそんなの」
「心配ない。その場で盾を構えてくれるだけでいい。強化っ強化っ強化っ」
「は?意味がわからな…っておい、嘘だろ…」
ローガを守るように動き、セシルの動きを邪魔するように立ちはだかり、サクマに攻撃をしかけていた無数の触手。
それらが一斉に、ボーラの持っている盾に襲いかかった。
カンカンカンカン。一秒に数十回、金属音が響き渡る。
その衝撃は、重量機が全力で突っ込んでくるほどの重さだ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
ボーラは襲いくる攻撃に大声をあげた。
でかいのは声だけじゃない。実力も相応だ。
ボーラを強化したのは一度だけ。その後に使ったのは盾に対してだ。
ボーラには追加の強化も考えていたが、彼のポテンシャルが俺の想像を越えていた。
真正面から攻撃を受けても、一歩も動かない。
「さて、巨漢のボーラが触手と戯れている間に、僕たちはどうしようか」
触手の攻撃がボーラだけに向けられたことで、セシルの言葉に余裕が戻った。
だが決して油断しているわけではない。
「サクマ、あのふたつ目はルーアと言って、もうひとつ別の目があるらしい」
「じゃあそいつを探せばいいのか?」
「どうだろうね」
セシルが指示を仰いできたので、俺は頷いた。
「もし見つける前に、目の前のやつを倒したらどうなるんだ?」
「さあね、それは聞いてこなかったな」
俺も黒猫に聞いていない。
試しに目をやると、すやすやと眠っていて、答えてくれそうにない。
「倒してしまっても構わないかい?」
しばらく考えた後に、俺は答えた。
「いいんじゃないか?」
セシルとサクマは目をあわせると、にやっと笑った。
どうやら、最後の目を探すつもりはないようだ。
0
お気に入りに追加
81
あなたにおすすめの小説
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
一度目は勇者、二度目は魔王だった俺の、三度目の異世界転生
染井トリノ
ファンタジー
この度、アルファポリス様から書籍化されることになりました。
それに伴ってタイトルが変更になります。
旧題:一度目は勇者、二度目は魔王だった俺は、三度目の人生をどう生きればいいですか?
勇者として異世界を救った青年は、二度目の転生で魔王となって討伐された。そして三度目の転生。普通の村人レイブとして新たな生を受けた彼は、悩みながらものんびり生きることを志す。三度目の転生から十五年後。才能がありすぎるのを理由に村から出ていくことを勧められたレイブは、この際、世界を見て回ろうと決意する。そして、王都の魔法学園に入学したり、幻獣に乗ったり、果ては、謎の皇女に頼られたり!? 一度目・二度目の人生では経験できなかった、ほのぼのしつつも楽しい異世界ライフを満喫していくのだった。
ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!
桜井正宗
ファンタジー
辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。
そんな努力もついに報われる日が。
ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。
日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。
仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。
※HOTランキング1位ありがとうございます!
※ファンタジー7位ありがとうございます!
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる