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白の勇者のクエスト
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クエストの説明が終わると、四人のあとに続いて現場へと向かう。
討伐対象はロガー。
Aランクモンスターで、本来ならば勇者パーティがわざわざ出向くほどではないはずだ。
その理由は、セシルがすぐに教えてくれた。
「気を抜くなよ。過去にAランクパーティが何度か挑んでいるが返り討ちにあっている」
「ということは変異種かなにかか?」
サクマが聞くと、セシルは頷いた。
「可能性はある。情報によればロガーは武器を持たないモンスターだが、斧をぶん回していたらしい」
セシル、ボーラ、サクマは緊張した面持ち行く先を見つめる。
ただ一人、リリアだけはボーラの影から顔をにぞかせると、俺に向かって手を振ってくる。
まったく、緊張感の欠片もない。
「どうしたんだいリリア。ちょっと腑抜け過ぎじゃないか?」
「そう?もしかして負けるつもりなの?」
余裕の表情で言い返すと、セシルはため息をついた。
「せいぜい仕事はしてくれよ」
「当然よ」
「期待しているよ。さあ、ついた」
目の前に広がるのは砂漠だ。
少し行ったところが岩場になっていて、その横穴にモンスターは生息しているらしい。
「これまた面倒なところにいるな。足場が悪い」
ボーラは何度も地面を踏みつけては足を上げる。そのたびに、砂がさらさらと落ちていく。
「戦うのは横穴のはずだから、大丈夫だと思いたいね」
だが、期待は裏切られた。
横穴は地下に向かって伸びていて、砂が流れ込んでいたのだ。
それでも諦めるはずはなく、より緊迫したムードで中へと向かう。
おちゃらけていたリリアも、さすがに真剣だ。
「さてさてモンスターは」
ボーラは盾を構えつつ、先頭に立って進む。
その後ろにサクマ、セシルが続き、最後尾は回復役のリリアと、万全の布陣だ。
雑談しながら各々が好きなように歩いていたどっかのパーティにも見せてやりたいぐらいだ。
やがて、目の前には巨大な扉が現れた。
Sランク以上のモンスターには知能があり、縄張りを主張するために扉は作られる。
だがおかしい。
今から戦う相手は、Aランクのはずだ。
白の勇者のパーティは異変に気づいているのか?
「開けるぞ」
ボーラの言葉に三人は頷いた。
リリアだけは、ちらっと俺を見て、表情を引きつらせた。
俺の変化を感じ取ったらしい。
扉の先は、椅子があったり、コケまみれだったり、モンスターごとに特色が出る。
赤の勇者パーティと行ったヒドラの部屋なんかは、全面氷だった。
「おいおい、本当にモンスターが居るのか?」
最初に扉の向こうを確認したボーラは声を上げる。
疑うのも無理もない。
扉の先には椅子もなければ、何かが寝ていた痕跡すらない。さっきまで歩いてきた洞窟となんの違いもない空間が広がっているだけで、足場は砂で、壁も岩がむき出しだ。
人間風に言うのならば、生活感がない。
「本当にこんなところにモンスターが…待て、何かが来る」
白の勇者のパーティが一斉にこちらを振り返る。
だが、見ているのは俺ではなく、その後方。さっきまで歩いてきた場所だ。
ドタドタドタと地面が揺れ、何かが近づいてきているのだ。
討伐対象はロガー。
Aランクモンスターで、本来ならば勇者パーティがわざわざ出向くほどではないはずだ。
その理由は、セシルがすぐに教えてくれた。
「気を抜くなよ。過去にAランクパーティが何度か挑んでいるが返り討ちにあっている」
「ということは変異種かなにかか?」
サクマが聞くと、セシルは頷いた。
「可能性はある。情報によればロガーは武器を持たないモンスターだが、斧をぶん回していたらしい」
セシル、ボーラ、サクマは緊張した面持ち行く先を見つめる。
ただ一人、リリアだけはボーラの影から顔をにぞかせると、俺に向かって手を振ってくる。
まったく、緊張感の欠片もない。
「どうしたんだいリリア。ちょっと腑抜け過ぎじゃないか?」
「そう?もしかして負けるつもりなの?」
余裕の表情で言い返すと、セシルはため息をついた。
「せいぜい仕事はしてくれよ」
「当然よ」
「期待しているよ。さあ、ついた」
目の前に広がるのは砂漠だ。
少し行ったところが岩場になっていて、その横穴にモンスターは生息しているらしい。
「これまた面倒なところにいるな。足場が悪い」
ボーラは何度も地面を踏みつけては足を上げる。そのたびに、砂がさらさらと落ちていく。
「戦うのは横穴のはずだから、大丈夫だと思いたいね」
だが、期待は裏切られた。
横穴は地下に向かって伸びていて、砂が流れ込んでいたのだ。
それでも諦めるはずはなく、より緊迫したムードで中へと向かう。
おちゃらけていたリリアも、さすがに真剣だ。
「さてさてモンスターは」
ボーラは盾を構えつつ、先頭に立って進む。
その後ろにサクマ、セシルが続き、最後尾は回復役のリリアと、万全の布陣だ。
雑談しながら各々が好きなように歩いていたどっかのパーティにも見せてやりたいぐらいだ。
やがて、目の前には巨大な扉が現れた。
Sランク以上のモンスターには知能があり、縄張りを主張するために扉は作られる。
だがおかしい。
今から戦う相手は、Aランクのはずだ。
白の勇者のパーティは異変に気づいているのか?
「開けるぞ」
ボーラの言葉に三人は頷いた。
リリアだけは、ちらっと俺を見て、表情を引きつらせた。
俺の変化を感じ取ったらしい。
扉の先は、椅子があったり、コケまみれだったり、モンスターごとに特色が出る。
赤の勇者パーティと行ったヒドラの部屋なんかは、全面氷だった。
「おいおい、本当にモンスターが居るのか?」
最初に扉の向こうを確認したボーラは声を上げる。
疑うのも無理もない。
扉の先には椅子もなければ、何かが寝ていた痕跡すらない。さっきまで歩いてきた洞窟となんの違いもない空間が広がっているだけで、足場は砂で、壁も岩がむき出しだ。
人間風に言うのならば、生活感がない。
「本当にこんなところにモンスターが…待て、何かが来る」
白の勇者のパーティが一斉にこちらを振り返る。
だが、見ているのは俺ではなく、その後方。さっきまで歩いてきた場所だ。
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