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白の勇者のパーティ

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 なぜ俺はここにいるのだろうか?
 セシルの問いかけに考えを巡らせる。

 赤の勇者に会いたくなくて、リリアと一緒に町を出て、途中で村を救い、そのままなんとなく着いてきた。

 つまり、ここにいる必要はない?

「じゃあな、助かったよリリア。ここまで連れてきてくれただけで感謝してるよ」

 もう赤の勇者パーティに会うことはない。
 仕事を見つけるのは大変だろうが、少なくとも不快な思いをすることはないはずだ。

「ちょっと待って、どこに行くつもり?」

 リリアの必死な声に足を止める。
 空を見上げると、日は沈み始めていた。

「特には決めていないかな。ギルドはそろそろ閉まるだろうし、とりあえず夜明けを待って仕事を探しに行くよ」
「それじゃあ、会った時と何も変わらないじゃない」

 そういえばあの時も、金も行き先もなくて途方にくれていたところで、リリアの悲鳴が聞こえたんだっけ。

「僕からも1ついいかい?」

 セシルは小さく手を上げると、俺の返事を待たずに続けた。

「君は今、赤のパーティにいないのかい?」

 しきりに周囲を見渡す彼は、赤の勇者を探しているのだろう。

「そうだよ」

 今更否定することでもないので、あっさりと肯定する。
 するとどうだろう、セシルだけでなく、サクマとボーラも呆れた顔をした。

「あいつらはバカなのか?」
「そいつは今更だろう」

 ボーラのつぶやきに、サクマはため息混じりに答えた。

「それでね、セシル。彼に私達のクエストを手伝ってもらおうの」

 無邪気に笑うリリアとは裏腹に、3人の顔が曇っていく。
 
 お前の差し金か?
 セシルの目がそう言っていたので、全力で首を振って否定する。
 動きが激しすぎたようで、腕の中の黒猫は不満そうに呻いた。

「そういえば気になっていたのだけれど、その猫はなんだい?」
「なんだと聞かれてもただの猫としか」
「君の飼い猫かい?」
「いや、拾った。クエストの帰りに。そのあとパーティを追い出された」

「つまりそいつは4人目にとっては疫病神なのか」

 ボーラは腕組みをしたまま言うと、うんうんと勝手に納得している。

 疫病神か。果たしてそうだろうか?

 ずっと抱えているので腕は疲れる。
 けれどそれだけだ。
 
 むしろ、力を与えてくれた分、恩恵の方が大きいまである。
 ヒドラと戦ったあの時、黒猫がいなければ間違いなく死んでいた。

「気持ち良さそうに眠っているようだが、目を覚ましたことはあるのかい?」
「あるよ。一度だけ」
「その時に変わったことはあったかい?」
「変わったことというか」

 力をくれた。
 黒猫は制限を解除したって言っていたか。
 
 本来は他者にしかかけられないはずの強化魔法を、自分にも使えるようになった。
 
「ないわ」

 俺が答えようとすると、リリアはきっぱり言い切った。

「何もなかったわ。にゃーにゃー鳴いて、食事をねだっただけよ」

 核を丸呑みにしたって意味では間違っていない。
 が、肝心なところが抜けている。

「そうよね、コウヨウ?」
「え、ああ…」

 圧に押されて、ただ頷くことしか出来ない。
 どうやらリリアは力のことを隠したいようだ。

「そうか、リリアがそう言うのならそうなのだろうな」

 納得しているのかはイマイチ分からない。
 だが、俺に向けられる視線は未だに厳しいままだ。
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