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30.カーブミラーと山頂の影①(怖さレベル:★★★)
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(怖さレベル:★★★:旧2ch 洒落怖くらいの話)
『20代女性 東さん(仮名)』
ええと、どうも。
なんでも、あたしの友人が以前、
山登りで妙なことがあった、
っていう話をさせて貰ったみたいで。
(登山道の鳥居→https://www.alphapolis.co.jp/novel/6718166/504342048/episode/2643642)
あたしも、
彼女と一緒で山が好きで。
いや、山……っていうより、
自然全般ですね。
昔っからアクティブで、
室内で人形遊び、なんてもってのほか。
ひたすら外で追いかけっこやチャンバラ、
取っ組み合いなど、
生傷を作って帰るのが当たり前だったんです。
そんなだから、大学に入って、
いくら世間で山ガールなんてものが流行っていたからといえど、
山岳部に入ろう、なんて思ったのでしょう。
あいつ――河本は
お話しなかったようですが、
大学でもちょいちょい妙なできごとはあったんですよ。
これから語るのは、
あたしたちが大学二年目の夏のことです。
夏休みに入ろうかという頃、
山登りの合宿をやろう、
っていう話を先輩たちが出してきたんです。
まぁ実際は、合宿とは名ばかりの、
山歩き旅行みたいなモノです。
実家暮らしのメンツが多く、
友人同士での二泊三日の旅行ということで、
ウキウキで参加を表面するメンバーばかりで、
ほぼ誰も欠けることなく、実施することが決まったのです。
当日。
四年生の先輩が車を出し、
キャンプ予定地である隣の県へと向かうことになりました。
「なんかさぁ、学生だけで旅行、ってやっぱ特別だよねぇ」
なんてはしゃぐのは、
同級生である小野里。
「そうだね。私も親以外とどっか泊まるの、初めてだよ」
同意するのは、
やはり同級生である河本です。
「今日行くとこ、すっごい見晴らしよくて気持ちいいよー。
私たちはもう何回か行ってるからね」
と笑うのは、
運転をしてくれている女先輩です。
「けっこうお客さんも多いけど、
管理がしっかりしてるから安心だし。
山自体もね、霊山とか言われてて、由緒ある立派な山だから」
「へぇ~、霊山ですか」
「そうそう。……ま、裏山には幽霊がいる、
なんてウワサもあるみたいだけど」
「えっ……幽霊ですか!」
助手席で景色を眺めていた小野里が、
とたん先輩に食いつきました。
「そうそう。その裏山、車で登ろうとするとけっこう急カーブが多いの。
で、そうするとカーブミラーが多いでしょ?
そこにね……映る、って。ま、ありがちっちゃありがちね」
先輩は朗らかに笑って、さらに続けました。
「でもさっきも言った通り、なんどもあそこには行ってるけど、
誰もそれらしいモノを見た人っていないのよね……
ウワサはあくまでウワサ、かな」
「なァんだ。誰も実体験してないんですかぁ」
小野里が、助手席でぐったりとだれてしまいました。
「あはは。ま、見ないほうがいいでしょ? あ、そろそろだよ」
という先輩の目線の先、
現れた看板には「あと1km」の文字がありました。
「ふ~……疲れたッ」
河本が、ゴロリとテントに転がりました。
あの後、キャンプ場に車を停めたうちの山岳部は、
整備されている初心者コースを皆で登りました。
ぐるりと低い山地を巡り、
行きかう登山客とあいさつを交わしながら、
短い登山を終えてキャンプ場に戻ってくれば、
ちょうど夕食の頃合い。
楽しみの一つであるキャンプ飯を皆で存分に堪能し、
テントの設営が完了すれば、
長時間のドライブと軽度の運動による疲労で
身体はずっしりと重くなっていました。
「さ、今日はさっさと寝て、明日に備えましょうか!」
と、女先輩が元気よく宣言します。
そう、今日は簡易コースを上ったので、
明日はもう少し上の中級者コースに登り、
最終日は近場の土産物屋や観光スポットに寄っていこう、
という予定になっていました。
「いやいや、せっかくここに来たんだから、
肝試し、行こうぜ!」
しかし、そんなさなか、
一人の男子の先輩がそんな声を上げました。
「肝試しって……どこに?」
部の仲間が、疑問の声を飛ばします。
「あれー、誰かに聞かなかったか?
ここ、カーブミラーに霊が映る、って話があるの。
だからドライブがてら山頂まで上ろう、って企画さ」
そういう先輩は、
うちの部内でもお調子者で知られており、
上機嫌のまま更に続けました。
「マジで目撃情報すげぇあるんだぜ?
明日の夜じゃもっと疲れてるし、
ちょっと行ってみねぇ?」
と、ノリ気な先輩に対し、
眠気や疲労のせいか、
皆あいまいな返事ばかり返しています。
あたしもさっさと寝てしまいたい、
とフラフラとテントに戻ろうとしたところで、
ぐいっと腕を引かれました。
「ねーねー、ひがっちゃん! 肝試し行こうよ!」
犯人は、これ以上ないほどに
目をキラキラと輝かせている小野里でした。
「えー……行くの?」
「こんなチャンスめったにないよ! かわちゃんも誘ってさ。
だって見られるかもしれないんだよ、幽霊!
行くっきゃないっしょ」
と、のんびり欠伸をしている河本の方にもにじり寄って、
あたしと同じように力説していました。
「行こ! かわちゃん」
「あはは……小野里、さすがだね」
苦笑する河本が白旗を上げ、
結局、例の先輩の肝試し計画に
参加することになったのは、私たち三人のみ。
つまり、計、たったの四人でした。
「先輩、面白い企画なのに残念でしたね!」
「まあ、突然過ぎたかな。三人が来てくれて嬉しいよ!」
「ぜったい見ましょうね! 幽霊」
「もちろん! バッチリ写真にも納めたいね!」
と、前の座席の二人はさっそく意気投合し、
後部座席の私たちを置いて、
なにやら幽霊談義に花を咲かせ始めました。
「カーブミラー……映るかねぇ」
先輩から渡されたデジカメを片手に
ぼうっと外を眺める河本に、
あたしは苦笑まじりに声をかけました。
>>
『20代女性 東さん(仮名)』
ええと、どうも。
なんでも、あたしの友人が以前、
山登りで妙なことがあった、
っていう話をさせて貰ったみたいで。
(登山道の鳥居→https://www.alphapolis.co.jp/novel/6718166/504342048/episode/2643642)
あたしも、
彼女と一緒で山が好きで。
いや、山……っていうより、
自然全般ですね。
昔っからアクティブで、
室内で人形遊び、なんてもってのほか。
ひたすら外で追いかけっこやチャンバラ、
取っ組み合いなど、
生傷を作って帰るのが当たり前だったんです。
そんなだから、大学に入って、
いくら世間で山ガールなんてものが流行っていたからといえど、
山岳部に入ろう、なんて思ったのでしょう。
あいつ――河本は
お話しなかったようですが、
大学でもちょいちょい妙なできごとはあったんですよ。
これから語るのは、
あたしたちが大学二年目の夏のことです。
夏休みに入ろうかという頃、
山登りの合宿をやろう、
っていう話を先輩たちが出してきたんです。
まぁ実際は、合宿とは名ばかりの、
山歩き旅行みたいなモノです。
実家暮らしのメンツが多く、
友人同士での二泊三日の旅行ということで、
ウキウキで参加を表面するメンバーばかりで、
ほぼ誰も欠けることなく、実施することが決まったのです。
当日。
四年生の先輩が車を出し、
キャンプ予定地である隣の県へと向かうことになりました。
「なんかさぁ、学生だけで旅行、ってやっぱ特別だよねぇ」
なんてはしゃぐのは、
同級生である小野里。
「そうだね。私も親以外とどっか泊まるの、初めてだよ」
同意するのは、
やはり同級生である河本です。
「今日行くとこ、すっごい見晴らしよくて気持ちいいよー。
私たちはもう何回か行ってるからね」
と笑うのは、
運転をしてくれている女先輩です。
「けっこうお客さんも多いけど、
管理がしっかりしてるから安心だし。
山自体もね、霊山とか言われてて、由緒ある立派な山だから」
「へぇ~、霊山ですか」
「そうそう。……ま、裏山には幽霊がいる、
なんてウワサもあるみたいだけど」
「えっ……幽霊ですか!」
助手席で景色を眺めていた小野里が、
とたん先輩に食いつきました。
「そうそう。その裏山、車で登ろうとするとけっこう急カーブが多いの。
で、そうするとカーブミラーが多いでしょ?
そこにね……映る、って。ま、ありがちっちゃありがちね」
先輩は朗らかに笑って、さらに続けました。
「でもさっきも言った通り、なんどもあそこには行ってるけど、
誰もそれらしいモノを見た人っていないのよね……
ウワサはあくまでウワサ、かな」
「なァんだ。誰も実体験してないんですかぁ」
小野里が、助手席でぐったりとだれてしまいました。
「あはは。ま、見ないほうがいいでしょ? あ、そろそろだよ」
という先輩の目線の先、
現れた看板には「あと1km」の文字がありました。
「ふ~……疲れたッ」
河本が、ゴロリとテントに転がりました。
あの後、キャンプ場に車を停めたうちの山岳部は、
整備されている初心者コースを皆で登りました。
ぐるりと低い山地を巡り、
行きかう登山客とあいさつを交わしながら、
短い登山を終えてキャンプ場に戻ってくれば、
ちょうど夕食の頃合い。
楽しみの一つであるキャンプ飯を皆で存分に堪能し、
テントの設営が完了すれば、
長時間のドライブと軽度の運動による疲労で
身体はずっしりと重くなっていました。
「さ、今日はさっさと寝て、明日に備えましょうか!」
と、女先輩が元気よく宣言します。
そう、今日は簡易コースを上ったので、
明日はもう少し上の中級者コースに登り、
最終日は近場の土産物屋や観光スポットに寄っていこう、
という予定になっていました。
「いやいや、せっかくここに来たんだから、
肝試し、行こうぜ!」
しかし、そんなさなか、
一人の男子の先輩がそんな声を上げました。
「肝試しって……どこに?」
部の仲間が、疑問の声を飛ばします。
「あれー、誰かに聞かなかったか?
ここ、カーブミラーに霊が映る、って話があるの。
だからドライブがてら山頂まで上ろう、って企画さ」
そういう先輩は、
うちの部内でもお調子者で知られており、
上機嫌のまま更に続けました。
「マジで目撃情報すげぇあるんだぜ?
明日の夜じゃもっと疲れてるし、
ちょっと行ってみねぇ?」
と、ノリ気な先輩に対し、
眠気や疲労のせいか、
皆あいまいな返事ばかり返しています。
あたしもさっさと寝てしまいたい、
とフラフラとテントに戻ろうとしたところで、
ぐいっと腕を引かれました。
「ねーねー、ひがっちゃん! 肝試し行こうよ!」
犯人は、これ以上ないほどに
目をキラキラと輝かせている小野里でした。
「えー……行くの?」
「こんなチャンスめったにないよ! かわちゃんも誘ってさ。
だって見られるかもしれないんだよ、幽霊!
行くっきゃないっしょ」
と、のんびり欠伸をしている河本の方にもにじり寄って、
あたしと同じように力説していました。
「行こ! かわちゃん」
「あはは……小野里、さすがだね」
苦笑する河本が白旗を上げ、
結局、例の先輩の肝試し計画に
参加することになったのは、私たち三人のみ。
つまり、計、たったの四人でした。
「先輩、面白い企画なのに残念でしたね!」
「まあ、突然過ぎたかな。三人が来てくれて嬉しいよ!」
「ぜったい見ましょうね! 幽霊」
「もちろん! バッチリ写真にも納めたいね!」
と、前の座席の二人はさっそく意気投合し、
後部座席の私たちを置いて、
なにやら幽霊談義に花を咲かせ始めました。
「カーブミラー……映るかねぇ」
先輩から渡されたデジカメを片手に
ぼうっと外を眺める河本に、
あたしは苦笑まじりに声をかけました。
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