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家族2 蘭紗視点

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「これは……なんだろう?汗でもかくのだろうか?」
「僑先生がおっしゃるには、もしかして羽毛の生え変わり時期なのかもと」
「なるほど……それで痒いのか……まあ、逃げていてもだめだぞ、翠、君は男の子なんだ。しっかりせねばな」
「あい……」

決心したようで背中を見せたままじっとするので、薫がくすくす笑いながら塗り始める。

「さっき左側は塗ったので右ね」

薫がそっと羽毛を立たせて地肌に軟膏を塗り込むのを見ていたのだが、我にはその羽毛が動いているように見えた。

「ちょっとまて……翠、お前はこの羽毛を動かせるのか?」
「えっと……こう?」

笑うのを我慢していた翠は涙目で「うーん」と力を入れた、すると背中の羽毛はフサっと一斉に動く。

「かわいい!」

薫は無邪気に喜んでいるが……こんなのは聞いたこと無い。

「いつから動かせるのだ?」
「ん、わかんない」
「そうか……」
「どうかなさったのですか?」

薫が不安そうに聞いてくる。

「いや、不思議なこともあるものだと思って……こういう子は獣化はできないと聞いていたが、もしかして翠はできるのかもしれないな」
「え!」

驚いた薫が目を見開いているので我は薫の肩に手を置き、安心させるように微笑んだ。

「まあ、どちらにしてもそんなに悪いことじゃない、それに、できてもできなくてもどちらでも良いのだ、今は戦争がある時代じゃないから、獣化はできなくても関係ないのだよ、戦力にならないといって罵られることもないしな」
「……普通の狐族でもできない人がいるんです?」
「魔力が足りずに半端な獣化しかできないものも大勢いるが、今は皆それほど気にしていないだろう。人として生きているんだからな」
「そうですね、その通りです。できてもできなくていいんですよね」

薫は噛みしめるように言葉を紡いで翠を抱きしめた。

「翠、そうだ、まだ早いから昨日ちゃんと入れなかったお風呂3人で入る?昨日はびっくりしたよねえ、お湯に浸かってたら龍がでてきて!」
「なんだって?」

我は突然の言葉に驚いて聞き返した。

「昨日お風呂に入っている時にアイデン王がいらして……」
「僕とおうひさま、裸んぼうのまま怖かったの」
「なんだと……」

聞き捨てならない言葉を聞いた気がする。

「それでね、久しぶりの露天で、翠にとっては初めての露天だったから早く湯船に入りたくてきちんと洗ってなかったんだよね、髪の毛も」
「でもおくすりぬったのに、おふろはいったらまたぬるの?」
「ああそうか」

薫はけらけら笑い出した。
しかし我はそれどころではない。
あのアイデンは我の嫁の入浴中に全裸を見たというのか?

「薫」
「はい?」
「まさかアイデンの前で全裸だったとか……」
「そりゃそうですよー、お湯に浸かってたんですから、翠を膝に乗せて」
「な……」

我は立ち上がって拳を握り込んだ。
これは一発殴らせてもらおう。

「蘭紗様?」
「いや、我の愛する薫の裸体を見たなどと、許せようはずもない。制裁を加えなくては」
「ええ?!ちょっとやめてください!」
「止めるな薫」
「いえいえ!おかしいですから!だいたい男同士なんですし、ね!」
「男同士がどうした」
「日本では男同士なら他人がいたってお風呂に入る習慣もあるんですよ!つまり、同性ならば一緒にお風呂入っていいんです!おかしなことではありませんから!」
「なんだその……卑猥な習慣は」
「卑猥じゃありませんから!みんなでお風呂って気持ちいいですよ」
「とにかく……薫はいやではなかったのか」
「嫌とかないですよ……まあ、驚きましたけどね……あは」

翠もうんうん頷いている。

なるほど男同士ならば良いとな……
言わんとする事はわかる。

「まあ……今回はアイデン王もわざとではありませんでしたしね……許してあげてください」
「……わかった……」
「じゃあ、お風呂3人ではいりましょ!朝風呂!」
「おうさまいっしょ!」

翠も喜んでベッドで跳ねている。

仕方ない、仕事の前のひとっ風呂も悪くないだろう。
我ははしゃぐ2人の手を引いて3人で廊下を歩く。
明け方酷い降りだったが小雨になったようだ。
「軽く防御壁を張って露天に入ろう」と提案すると2人は喜んだ。
この2人が喜ぶ顔を見て我の心も満足する。

なるほど……
これが家族、なのだな。

経験したことのない心の安らかさに、我は気持ちよく浸った。


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