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コツン
コツン
速度を緩め、ゆっくりと階段を降りる悠介の足音だけが辺りに響く。
本来、ここは非常用の際に用いられる地下階段で一般人はまず使わない。この扉を開けた先にはVIP専用の個人ジェット機があるプライベートジェット駐機場へと繋がる。
自身もビジネスで何回か使用した事があったが、あくまで一時的に、貸し出しとして。でないと維持費だけでどれだけかかるか。
今から乗せられるであろう大型のジェット機をやすやすと個人使用出来るのは世界中探してもあの男くらいかも知れない。
固く閉じられた鉄の扉に手を掛ける。自分の手が僅かに震えている事に気づいた。
「・・はっ、今更、恐怖がでてくるか」
切羽詰まった今ですら、僅かな己の矜持は残っており、長年のケリをつける為にもこうして自分を奮い立たせ立ち向かうと決めた。
家族や千里の前ではカッコつけたものの・・奴に植え付けられたトラウマは今でもこうして俺を縛り付ける。いったい何度あの男を思い出して、怒りに震え、与えられる深すぎる愛に戸惑い怯えたか。またそんなあの男を狂おしい程に愛しく想ってしまう自分にどれだけ嫌悪感を抱いたか。
俺たちの愛は、誰も幸せにしない。
出した結論は至ってはシンプル、お互いそれで納得したんじゃなかったのか?今更何を・・。
・・いや、憎んでいるのか俺を。アイツを捨てたこの俺を。
だが、それならお互い様だろう、お前も俺を傷つけたのだから。忘れる事なんて出来やしない。
心身ともに疲れ果て、悩み悩んで最終的にお前に別れを告げ、逃げた俺を捕らえ監禁し強姦したあの屈辱的な日々を俺は忘れない。
挙げ句の果てには、俺の親しい人間にまで手を掛けて。誤解だと?そんな事信じられる訳がない。俺たちの愛は周りを巻き込み、取り返しのつかない事になった。もうお前の側には居られないのに。またこうして連れ戻すのか。また繰り返すのか。
ガチャ
ゆっくりと閉ざされていた固い扉が開いていく。淡い光と共に、見覚えのある懐かしい青年が顔を覗かせる。
「待ってても、ぜんぜん開けてもらえないんで、俺が開けちゃいましたっスよ。」
その青年は、ニッコリと人懐っこそうな可愛らしい顔で悠介に笑いかける。人畜無害そうなその顔。しかし、悠介は知っている。嘗て、その顔の裏に狡猾な狐を飼い、さまざまな悪事を働いていたのを。人を陥れる才覚に長けた人物だったことを。あの男に忠実で、悠介を騙し踊らせた過去を忘れはしない。
もう、騙されるか。過去に自分が嵌められ彼の主人に献上された哀れな獲物になった苦い記憶を思い出し取り繕う素振りもなく思いっきり顔を顰めた。
「ありゃ?やだなぁ~、俺ってば思いっきり嫌われてる感じっスか?」
戯けた様に、両手を掲げて肩をすくめる姿が態とらしくて腹立たしい。
「まだ、アイツの側にいたんだな。ワンコロ具合は変わらない様だな、一角」
悠介の嫌味にも、青年はニヤッと嗤うだけで、答えはしない。ゆっくりと身体の向き変えて、悠介に目の前に準備されたジェット機に乗る様無言で示した。
コツン
速度を緩め、ゆっくりと階段を降りる悠介の足音だけが辺りに響く。
本来、ここは非常用の際に用いられる地下階段で一般人はまず使わない。この扉を開けた先にはVIP専用の個人ジェット機があるプライベートジェット駐機場へと繋がる。
自身もビジネスで何回か使用した事があったが、あくまで一時的に、貸し出しとして。でないと維持費だけでどれだけかかるか。
今から乗せられるであろう大型のジェット機をやすやすと個人使用出来るのは世界中探してもあの男くらいかも知れない。
固く閉じられた鉄の扉に手を掛ける。自分の手が僅かに震えている事に気づいた。
「・・はっ、今更、恐怖がでてくるか」
切羽詰まった今ですら、僅かな己の矜持は残っており、長年のケリをつける為にもこうして自分を奮い立たせ立ち向かうと決めた。
家族や千里の前ではカッコつけたものの・・奴に植え付けられたトラウマは今でもこうして俺を縛り付ける。いったい何度あの男を思い出して、怒りに震え、与えられる深すぎる愛に戸惑い怯えたか。またそんなあの男を狂おしい程に愛しく想ってしまう自分にどれだけ嫌悪感を抱いたか。
俺たちの愛は、誰も幸せにしない。
出した結論は至ってはシンプル、お互いそれで納得したんじゃなかったのか?今更何を・・。
・・いや、憎んでいるのか俺を。アイツを捨てたこの俺を。
だが、それならお互い様だろう、お前も俺を傷つけたのだから。忘れる事なんて出来やしない。
心身ともに疲れ果て、悩み悩んで最終的にお前に別れを告げ、逃げた俺を捕らえ監禁し強姦したあの屈辱的な日々を俺は忘れない。
挙げ句の果てには、俺の親しい人間にまで手を掛けて。誤解だと?そんな事信じられる訳がない。俺たちの愛は周りを巻き込み、取り返しのつかない事になった。もうお前の側には居られないのに。またこうして連れ戻すのか。また繰り返すのか。
ガチャ
ゆっくりと閉ざされていた固い扉が開いていく。淡い光と共に、見覚えのある懐かしい青年が顔を覗かせる。
「待ってても、ぜんぜん開けてもらえないんで、俺が開けちゃいましたっスよ。」
その青年は、ニッコリと人懐っこそうな可愛らしい顔で悠介に笑いかける。人畜無害そうなその顔。しかし、悠介は知っている。嘗て、その顔の裏に狡猾な狐を飼い、さまざまな悪事を働いていたのを。人を陥れる才覚に長けた人物だったことを。あの男に忠実で、悠介を騙し踊らせた過去を忘れはしない。
もう、騙されるか。過去に自分が嵌められ彼の主人に献上された哀れな獲物になった苦い記憶を思い出し取り繕う素振りもなく思いっきり顔を顰めた。
「ありゃ?やだなぁ~、俺ってば思いっきり嫌われてる感じっスか?」
戯けた様に、両手を掲げて肩をすくめる姿が態とらしくて腹立たしい。
「まだ、アイツの側にいたんだな。ワンコロ具合は変わらない様だな、一角」
悠介の嫌味にも、青年はニヤッと嗤うだけで、答えはしない。ゆっくりと身体の向き変えて、悠介に目の前に準備されたジェット機に乗る様無言で示した。
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