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静けさが伴う深夜の空港に人目を忍ぶように2人の男が向かい合う。
1人は170cm程度の細身で、もう1人は筋肉質でガタイが良く180は軽く超えている。2人とも二十代後半から三十前半ほどの若い男で、何かを言い争っている。
「悠介、本当に行くのか。向こうに行けばどんな目に遭うか本当にわかっているのか!?」
「ああ、無事では済まないかもしれないな。けど、こうなってしまった以上、行かない訳にはいかない。これ以上奴の介入を許せば会社は倒産し、家族は路頭に迷う。」
「俺が何とかする!あの男は、、もう昔のアイツじゃない。夢を見てるんだったら今すぐ帰ろう、な?悠介。」
普段頼れる兄貴肌の千里が悠介の肩を揺らして、顔をくしゃりと歪め、泣きそうな表情をする。
「・・千里、君の気持ちは痛いほど伝わるよ。けど、あの男が冗談で済ます様なヤツでは無い事はお前がよく分かっているだろう?敵となるとどれ程恐ろしい奴か、な。」
「それに、こうして誰にも見つからずに此処に来れたのはお前のお陰だ。感謝するよ。妹に見つかれば泣いて阻止されて行けなかっただろう。」
千里の背中を抱きしめて、あやすように肩をなでる。
「お・・お前は俺が泣いても良いのか?傷つけても良い存在だと?」
「いや、それは違う誤解だ!お前なら俺の気持ちを一番理解してくれると思ったからこんな事を頼んだんだ、バレたらお前は妹にどやされるだろう、だけど、昔俺を愛してくれたお前なら俺が日本を離れても妹も会社も上手くやってくれると。」
「俺が向こうに向かえば、人質は解放され、こっちの会社への圧力も柔らぐ筈だ、安心しろ、俺は上手く立ち回るさ。・・だから頼むよ、君には、家族を妹を守ってやってほしい。・・図々しいとは思うけど、」
最後は崩れる様に膝を地面につき、千里の腰をグッと掴んだ。
我慢していた溢れるさまざまな思いが胸をついて苦しい。
「俺は・・今でも、そしてこれからもお前を愛しく想うよ、お前の妹と同じくらいに俺は愛しい、2人とも愛しているんだ。長年持ちづけたこの気持ちはずっと消えない。むしろ、お前への片想いの方が長いがな。安心しろ、お前の妹と家族は俺が命に変えても守ってやる、、だから、、お前も必ず帰ってこい。でなければ、俺が迎えに行く。」
「・・ありがとう千里、本当ありがとな。でも・・もう、行かないと・・どこでアイツの部下が見張っているかもわからないから。」
曲げていた膝に力を入れ、立ち上がると千里の腰を掴んでいた手をゆっくりと離す。
千里は静かに泣いていた。その意思の強そうなはっきりとした顔立ちが今はくしゃりと歪んでいる。
その顔を見たら胸が痛かった。彼に押し付ける自分の家族と自分への思いを利用する卑怯な手段を使った自分を責めない千里の深い愛情が自分に重くのし掛かる。しかし、目を閉じて、名残惜しい気持ちを無理矢理押し込めると、踵を返して地下階段を駆け降りた。
あいつを、千里を愛する事が出来ればどんなに良かったか、、
夜遅く、人気のない真っ暗な地下階段を降りていく悠介の後ろ姿は暗かった。暗闇が彼を覆い尽くすように。まるで、今後の彼の行く末を示しているかの様だった。
1人は170cm程度の細身で、もう1人は筋肉質でガタイが良く180は軽く超えている。2人とも二十代後半から三十前半ほどの若い男で、何かを言い争っている。
「悠介、本当に行くのか。向こうに行けばどんな目に遭うか本当にわかっているのか!?」
「ああ、無事では済まないかもしれないな。けど、こうなってしまった以上、行かない訳にはいかない。これ以上奴の介入を許せば会社は倒産し、家族は路頭に迷う。」
「俺が何とかする!あの男は、、もう昔のアイツじゃない。夢を見てるんだったら今すぐ帰ろう、な?悠介。」
普段頼れる兄貴肌の千里が悠介の肩を揺らして、顔をくしゃりと歪め、泣きそうな表情をする。
「・・千里、君の気持ちは痛いほど伝わるよ。けど、あの男が冗談で済ます様なヤツでは無い事はお前がよく分かっているだろう?敵となるとどれ程恐ろしい奴か、な。」
「それに、こうして誰にも見つからずに此処に来れたのはお前のお陰だ。感謝するよ。妹に見つかれば泣いて阻止されて行けなかっただろう。」
千里の背中を抱きしめて、あやすように肩をなでる。
「お・・お前は俺が泣いても良いのか?傷つけても良い存在だと?」
「いや、それは違う誤解だ!お前なら俺の気持ちを一番理解してくれると思ったからこんな事を頼んだんだ、バレたらお前は妹にどやされるだろう、だけど、昔俺を愛してくれたお前なら俺が日本を離れても妹も会社も上手くやってくれると。」
「俺が向こうに向かえば、人質は解放され、こっちの会社への圧力も柔らぐ筈だ、安心しろ、俺は上手く立ち回るさ。・・だから頼むよ、君には、家族を妹を守ってやってほしい。・・図々しいとは思うけど、」
最後は崩れる様に膝を地面につき、千里の腰をグッと掴んだ。
我慢していた溢れるさまざまな思いが胸をついて苦しい。
「俺は・・今でも、そしてこれからもお前を愛しく想うよ、お前の妹と同じくらいに俺は愛しい、2人とも愛しているんだ。長年持ちづけたこの気持ちはずっと消えない。むしろ、お前への片想いの方が長いがな。安心しろ、お前の妹と家族は俺が命に変えても守ってやる、、だから、、お前も必ず帰ってこい。でなければ、俺が迎えに行く。」
「・・ありがとう千里、本当ありがとな。でも・・もう、行かないと・・どこでアイツの部下が見張っているかもわからないから。」
曲げていた膝に力を入れ、立ち上がると千里の腰を掴んでいた手をゆっくりと離す。
千里は静かに泣いていた。その意思の強そうなはっきりとした顔立ちが今はくしゃりと歪んでいる。
その顔を見たら胸が痛かった。彼に押し付ける自分の家族と自分への思いを利用する卑怯な手段を使った自分を責めない千里の深い愛情が自分に重くのし掛かる。しかし、目を閉じて、名残惜しい気持ちを無理矢理押し込めると、踵を返して地下階段を駆け降りた。
あいつを、千里を愛する事が出来ればどんなに良かったか、、
夜遅く、人気のない真っ暗な地下階段を降りていく悠介の後ろ姿は暗かった。暗闇が彼を覆い尽くすように。まるで、今後の彼の行く末を示しているかの様だった。
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