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40話 食事の誘い
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振り向けば、案の定、この世で1番会いたくない嫌いな奴。ローカス・ランペクールがいた。
「おい、いつまでも無視してるんじゃねえよ。仏の顔も三度までって知ってるかぁ?」
「そう。ならあと2回は大丈夫そうだね。」
ローカスの挑発に淡々とクリスは答える。感情的になれば、こっちが不利だ。
「嘘こけ、もう既に超えてるんだよ。」
「はあ。嫌いな奴を避けて何が悪いんだ?お前と話すことは何もない。」
溜め息をつき、首を戻そうとしたら、ローカスの声が一つ低くなり声色が変わった。
「チッ・・相変わらず気が強えな。まあそこも愚かで可愛い所だがな。」
ローカスが何かを思い出すように舌舐めずりをしてゆっくりと手を伸ばしてくる。ビクッとクリスの肩が震えた。
逃げたいのに、その鋭い瞳に囚われて身体が動けない。
危険信号がチカチカと頭の中で響く。
ダメだ、この腕に捕らわれてはいけない。本能的な何かが逃げろと脳内で叫ぶ。
「やめなよ、ローカス。嫌われてもいいのかい?身体だけじゃなくて心も欲しいって言ったでしょ?」
最近は聴き慣れてきたネルの番であるシャルルがローカスとクリスの間に割って入ってきた。
それが気に食わなかったのか、ローカスはシャルルの腕をがっしりと掴みクリスから離す。
「痛いなあ、わかってるよ。君の番くんには何もしないさ。けど、あんまりにビビってて可哀想だからさ。(まあ、本音は側にいるネルがオロオロして大変そうだったからだけど)」
「はっ、お前はこのチンチクリンを心配しただけだろうが。」
ギクっとしたシャルルが誤魔化すように苦笑いをした。けど、チンチクリンは失礼だよ、と自身の番に対する暴言にはちゃんと文句を垂れるのを忘れない。
「あ、ありがとうシャルル。僕は大丈夫だよ。」
「ああ。ネルは今日も可愛いね。そして優しい。」
2人は今日も仲慎ましい。
「で、お前は何の用?」
「口が悪りぃな。この俺に向かってお前なんて言う奴がいるなんてな。しかもオメガが?」
「は!?お前みたいな獣にはお前で十分なんだよ、!」
「ちょっとローカス、何喧嘩してるの。ほら、今日何で会いに来たのか思い出して。」
2人の言い争いを見かねたシャルルがローカスを宥めるように肩をぽんぽんと軽く叩く。
「ああ、そうだったな。」
「おい、クリス。俺と飯を食いに行くぞ。」
それは食事の誘いではなく、既に決定事項のようで、言い終えると同時に小脇に抱えられた。
「お、おいっ!離せっ」
急に身体が浮いた事に驚いたクリスだったが、今の状況をすぐに理解し、早く降ろせと身体を捻って暴れたが、ローカスの力強い筋肉質な腕はびくともしない。顔を上げると後方が見え、ネルがオロオロとこっちに駆け寄ろうとするのを、シャルルが腰を抱いて引き寄せ行かせんとしている様子がわかった。そして、クリスと目が合ったシャルルがニッコリと笑顔で手を軽く振り、エールを送っている。
「ね、ネル!」
パン
「ウギャッ!?」
クリスの小さなお尻をローカスの大きな手が軽く打った。
「相変わらず良い尻だ。感触だけじゃなく音もいいねぇ」
その下品な言い様に身の危険を感じ、尻の痛みも引っ込んだ。
「や、やめろよ、悪かった!僕が悪かったよ。だから、降ろしてくれ!頼むよ!」
必死になって叫んだ、最後の方は半泣きだ。
こいつにどんな目に遭わされたか身体が覚えている。二度とあんな理不尽な目には遭いたくない。
なのにドンドンと周りの景色は変わり、ローカスは先に進んでいく。
クリスの心が不安に包まれた。
「おい、いつまでも無視してるんじゃねえよ。仏の顔も三度までって知ってるかぁ?」
「そう。ならあと2回は大丈夫そうだね。」
ローカスの挑発に淡々とクリスは答える。感情的になれば、こっちが不利だ。
「嘘こけ、もう既に超えてるんだよ。」
「はあ。嫌いな奴を避けて何が悪いんだ?お前と話すことは何もない。」
溜め息をつき、首を戻そうとしたら、ローカスの声が一つ低くなり声色が変わった。
「チッ・・相変わらず気が強えな。まあそこも愚かで可愛い所だがな。」
ローカスが何かを思い出すように舌舐めずりをしてゆっくりと手を伸ばしてくる。ビクッとクリスの肩が震えた。
逃げたいのに、その鋭い瞳に囚われて身体が動けない。
危険信号がチカチカと頭の中で響く。
ダメだ、この腕に捕らわれてはいけない。本能的な何かが逃げろと脳内で叫ぶ。
「やめなよ、ローカス。嫌われてもいいのかい?身体だけじゃなくて心も欲しいって言ったでしょ?」
最近は聴き慣れてきたネルの番であるシャルルがローカスとクリスの間に割って入ってきた。
それが気に食わなかったのか、ローカスはシャルルの腕をがっしりと掴みクリスから離す。
「痛いなあ、わかってるよ。君の番くんには何もしないさ。けど、あんまりにビビってて可哀想だからさ。(まあ、本音は側にいるネルがオロオロして大変そうだったからだけど)」
「はっ、お前はこのチンチクリンを心配しただけだろうが。」
ギクっとしたシャルルが誤魔化すように苦笑いをした。けど、チンチクリンは失礼だよ、と自身の番に対する暴言にはちゃんと文句を垂れるのを忘れない。
「あ、ありがとうシャルル。僕は大丈夫だよ。」
「ああ。ネルは今日も可愛いね。そして優しい。」
2人は今日も仲慎ましい。
「で、お前は何の用?」
「口が悪りぃな。この俺に向かってお前なんて言う奴がいるなんてな。しかもオメガが?」
「は!?お前みたいな獣にはお前で十分なんだよ、!」
「ちょっとローカス、何喧嘩してるの。ほら、今日何で会いに来たのか思い出して。」
2人の言い争いを見かねたシャルルがローカスを宥めるように肩をぽんぽんと軽く叩く。
「ああ、そうだったな。」
「おい、クリス。俺と飯を食いに行くぞ。」
それは食事の誘いではなく、既に決定事項のようで、言い終えると同時に小脇に抱えられた。
「お、おいっ!離せっ」
急に身体が浮いた事に驚いたクリスだったが、今の状況をすぐに理解し、早く降ろせと身体を捻って暴れたが、ローカスの力強い筋肉質な腕はびくともしない。顔を上げると後方が見え、ネルがオロオロとこっちに駆け寄ろうとするのを、シャルルが腰を抱いて引き寄せ行かせんとしている様子がわかった。そして、クリスと目が合ったシャルルがニッコリと笑顔で手を軽く振り、エールを送っている。
「ね、ネル!」
パン
「ウギャッ!?」
クリスの小さなお尻をローカスの大きな手が軽く打った。
「相変わらず良い尻だ。感触だけじゃなく音もいいねぇ」
その下品な言い様に身の危険を感じ、尻の痛みも引っ込んだ。
「や、やめろよ、悪かった!僕が悪かったよ。だから、降ろしてくれ!頼むよ!」
必死になって叫んだ、最後の方は半泣きだ。
こいつにどんな目に遭わされたか身体が覚えている。二度とあんな理不尽な目には遭いたくない。
なのにドンドンと周りの景色は変わり、ローカスは先に進んでいく。
クリスの心が不安に包まれた。
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