オメガの王 

むつみ

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39話 

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 午前の講義が終わり、ネルと一緒に講義場を出た。

 「お腹すいたね。今日はどこで食べる?」

 ネルがクリスの方を向き、お腹を軽く摩り空腹を訴える。

 本来、上位貴族であるクリス達は2階中央にある貴族専用のレストランにて食事をする事ができる。

 勿論、部屋で自ら調理する事も可能だが、大抵の貴族出身者は自炊はしない。

 しかし、学園内の貴族出身者と言えば、ほとんどがアルファだ。優秀な遺伝子を持つアルファは貴族から生まれる事が多く、貴族と言えば大抵がアルファを連想させる。歴史を辿れば、貧民出身で数も少ないオメガが家族の窮困を救うために身売りのように貴族のアルファに嫁ぐケースは決して珍しくはなかった。

 そういったオメガを軽んじる偏見は未だに残っている。王都付近なら近代的な思考への取り組みが発展しつつあるが、こうした修学途中の未熟な学生、特に貴族出身の者は格式を下げない為にも古風な考えを重んじる傾向がまだ根強く、家からの影響を強く受けている。

 いくらΩの王のクリスとしても、アルファ達の集団と食事を共にするなんて考えただけで気が滅入る。

 情報を得る為にも、数人のアルファ達から話を聞く機会が必要だと思ってはいたがレストランに行くほど、愚かではない。

 先日の『ご友人』事件から、アルファ達のクリスに対する見方はさまざまだ。

 αの王の将来の側近候補として、近づき媚びを売る対象と見る者もいれば、オメガでありながら、己の身体を使い学園内での数少ないご友人枠に入り込んだ赦し難い排除すべき者、、前者であれば適当に対処すれば良いが、後者であれば最悪、危険に晒される場合もある。より警戒が必要だ。無闇にレストランに入り彼等を刺激すれば問題が生じる可能性もあるわけだ。

 ・・話をするアルファも人を選ぶ必要があるな。

 「はあ。」

 思わずため息が出た。

 「大丈夫?クリス。レストランはアルファが沢山いるだろうし今日も中庭に行ってみる?ミルシェ達もいるかもよ。」

 「うん、そうだね。」

 僕らは中庭に続く細道に出ようと足を踏み出した。

 「おい、そこのご学友。自分の務めをいつまで放棄するんだぁ?」

 背後から低い声が僕らの足を止めた。

 気にせずそのまま直進したいが、雰囲気的にも無視すれば何をされるか分からない。ああ、一気に食欲が失せてきた。

 ・・横暴な獣め。

 
 

 
 
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