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25話 親衛隊隊長の仕事⑤

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 うつ伏せていた顔を上げると、ちょうど秒針は11時半を示していた。

 いつの間にか眠ってたのか、、

 黒板の方ではボソボソと1人でに授業をしているナヨナヨした弱っちそうな男性教員

 クラスの半分くらいはスマホのゲームをしたり友達と喋ったりケラケラ笑っている。

 他は大抵寝ている奴らばかりだ

 真面に授業を受けているのは5分の1にも満たない程度。

 俺はもちろん不真面目な生徒でもなく真面目に授業に取り組みたかったんだけど、、

 何故か、今日も奴等はやって来て、俺が家を出るとすぐに拉致した。そのプロ並みに手慣れた様子が怖かった。

 無理矢理車の後部座席に引き摺り込まれたと思ったら、横にはやっぱり凶悪な悪魔が君臨していた。

 勢い余って頭をぶつけた俺を、悪魔は見下した様に鼻で笑うと、当たり前のように俺の頸を貪った。与えられる無慈悲な痛みに、俺は哀れな生贄の如く悪魔の食事が終わるのをただじっと耐えるしか無かった。

 今朝から精神的ダメージと未だに痛みを覚える頸に耐えられずうつ伏せていたら寝入っちゃってた。

ごめんね先生

次からはちゃんと授業聞くよ

ふと横を見るもチハルは気持ち良さそうにムニャムニャ言いながら寝ている。

おいチハル

お前は授業聞けよ!

って言っても、、

こんな可愛い寝顔してたら起こすのはちょっと気が引ける・・

バン!!!

はい?なんの音?

「親衛隊隊長の稲垣健太君はいる?」

教室の前の扉を音がするくらい激しく開けたのは、前に紹介してもらった遊佐桜都っていう俺の補佐?の人

てか、

え、この人こんな乱暴な人だったの。

びっくりしすぎて思わず目が点になる。

先生なんて驚いて尻餅ついてるし

教室がザワザワしだす


「え、遊佐様だ」

「かわいいー」

「え、さっきの聞いた?」

「あいつが親衛隊隊長にってマジなんだ」

「やだー」

周りの不満が今朝より更に深刻だ

やばいな

・・てか、やだって言ったヤツ!俺の方が嫌なんだよ!!


スタスタ

ピタ

そうこうしてる内に遊佐っていう人物が俺の席の前までやって来た。


「居たんだったら返事くらいしてよね。面倒臭いやつ。」

可愛い顔して高飛車に言いやがる

どこぞの女王様かよ

「あ、、ごめん。」

一言くらい言い返してやろうと思ったけど、周りの目が怖いからやめとく

これは決して俺がチキンだからではない

この女王様の顔を立ててやるのさ

「アノ、、ボクニナニカゴヨウデショウカ。」

思わず片言になってしまった。

「はあ、仕事忘れたの?もう昼前なんだから行かなきゃでしょ。わざわざ迎えに来たの感謝してよね。今日だけだから。」

呆れたようにため息を吐き、最後には冷たい視線を惜しげもなく浴びせると、グッと俺の腕を引き立ち上がらせた。

こんな細腕のどこに力があるのか

伊達に大雅の親衛隊補助をしてるわけじゃないってことか

「ちょっと、、痛いよ。どこ行くのさ。」

「時間ないから歩きながらにして。さっさと行くよ。」

「それとも、またお仕置きされたいの?・・今朝みたいに」

周りには聞こえない小さな声でボソッと言われた。

こ、こいつ

朝の事知ってるのか

思わず首の後ろに手を当てる

思い出したようにジクジク痛む頸

「さ、わかったら僕について来て。」


もう俺の手を引くことはなく女王様は一人でスタスタ教室を出て行く

まるで俺が後をついてくると確信してる様に

首を抑えていた掌をグッと握りしめる

足は自然と何かに引き寄せられるように出口へと向かう

最近、俺へのペナルティーを見つけては嬉々として車の中で痛みを与えてくる悪魔は、恐怖という名で俺を支配してくる。


教室の扉に手をかけ出て行く時

健太?というチハルの声が遠くで聞こえた気がしたーー。

それでも俺の足は止まることはなくてーー
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