元聖女ですが、元仲間＝変態狂愛野郎達が追いかけてきました。もう勘弁して下さい。

8話

　勇者「おい、命が惜しかったら、その地下の場所を教えろ。俺たちの国でもその転生技術を欲している人間がいてな。俺達が直々に調査させて貰う。」

　沈黙が続く中、急に勇者一行が息を合わせたかのように、それぞれの武器を老魔族の急所に当てた。私の目では追えないくらいにとても早い動きだった。

　そんな彼等の目はどこか血走っており、底見えぬ畏怖さえ感じた。

　けれど、そんな彼等に睨まれた老魔族の顔はピクリとも動かず、怯む様子は一切無かった。まるで、全てを理解しているかのように余裕に満ちたように口元を緩ませている。

　「ええ、宜しいですよ。」

　武者揃いな勇者達を恐れず、悪魔ながらにも勇敢な姿勢を見せていた老魔族は呆気なく了承した。

　案外、内心ではビビっていたのかもしれない。まあ、どんなにクズで変態野郎の集団だったとしても、奴等の強さだけは本物だ。魔王群との戦いの場面で見た奴等の戦いは、目を覆いたくなる程の一方的な殺戮だった。彼等が通った道には悪魔達の無惨な亡骸が積み重なることは度々で、その冷酷で嗜虐的な趣向は本当に恐ろしかった。奴等が魔王側じゃなくて良かったと何度思ったことだろう。だから、老魔族は賢明な判断をした事になる。

　ふと、一瞬だけ老魔族の口元がニヤリと不気味に吊り上がった気がした。気のせいだろうか。

　「ご覧のとおり、私はもう老い先短い悪魔で御座います。無駄死にはなりなくありません。私の命を助けて頂けるという条件でしたら勇者様の要求を喜んで御受けしましょう。どうでしょうか？」

　勇者「話のわかる悪魔だな。よし、良いだろう、お前の命は貰わない。」

　？？？「ケッ、命拾いしたな爺さん！なら、さっさと案内しな！」

　交渉成立というように、老魔人が恭しく丁寧にお辞儀をすると、パチンと指を鳴らした。すると、何処から出て来たのか、この世の物とは思えない異様な雰囲気を伴った巨大な扉が出て来た。その扉には、カタカタ嗤い声を挙げる不気味な骸や頑丈な鎖、蝙蝠などの趣味の悪い装飾が施されている。見るからに怪しい。

　「これは地下へ繋がる禁忌の扉で御座います。しかし、この扉を潜れば二度とこの世には戻って来れませんが、それでも望まれますか？」

　勇者「構わない。」

　？？？「ていうか、勿体ぶらずに早く僕らを入れてよね。」

　え、二度と戻れない？何それ、コイツらにもう二度と会う事ないとか嬉し過ぎるんだけど。内心の喜びが顔に出てしまわないように、必死に奥歯を噛み締めて、口角が上がらないように頑張った。