34 / 46
出奔編
虹彩の瞳を持つ子
しおりを挟む
オ、オギャア!オギャア
ァァァァァァ
|||||||||||||
||||||
|||||
||||
ニアが2度目の生を受けたのは、長閑な気質で、海洋鉱物質が豊かな南洋国ルーベンスの第3王女マフィラナ。
彼女の時でさえ、タニアが毒杯を呷ねばならなかったのは、もはや運命だったのだろうか?
||||
オ、、、ギャアァァ!
|||||
他国への政略婚姻として、正妃候補となったマフィラナ。
外交による政略結婚のはずが、国入りをしてみれば待っていたのは『正妃候補』という屈辱。
其の上、覚えの無い王族暗殺の容疑を掛けられた不幸。
目にした広大な後宮には、正妃候補として来たマフィラ以外にも、何人もの側妃や、準妃、末妃までいた。
中でも、王の寵愛を一身に受ける側妃が生んだ赤子を手に掛けたと、夫となる王に断罪される。
其れがニアの前前前世、王女マフィラナの冤罪による毒杯死だ。
|||||
|||||オ、オギャア!
(赤ちゃん、、わたしの赤ちゃん。)
エナリーナの手に抱かれる赤子が上げる産声を、額に汗しながら息を整えるニアが聞いた場所。
其れは、、砂漠の中に居住する異民族のテントだった。
必死に出産した子供は、、
(桃色の髪、、)
砂に汚れた衣服を着るニアは、人知れず安堵した。
(結局、マフィラナも濡れ衣を着せられた。寵妃スーリュヤの赤ちゃんは、、母親、、本人に殺されたのだと思うのよね。)
鮮やかな織布に包まれる赤子の顔。
ニアに似て、愛され令嬢系の大きな瞳は、珍しく無いパープルサファイア色をしている。
ただ、、、
「ねえ、タニア、、あ、ニア。此の子、青紫の瞳に虹彩があるわ。これって。」
「虹彩って何なの?」
「ニアは知らないの?虹彩は瞳に虹の光が出る事よ。虹彩はリュリアール皇族の証で、、」
(、、もしかして、瞳の色はウイルザードに似たの、、)
光の中で覗けば赤子の瞳は、虹彩を秘めたパープルサファイアだったのだ。
例え赤子の瞳を見たところで、皇太子と同じ瞳の色だと知る者もいないだろうと、ニアは考えていたが、さすがに元リュリアール帝国貴族である、学友エナリーナには、『皇族の証』まで分かってしまったらしい。
「其れは、、知らなかったわね、、、」
リュリアール帝国において、没落貴族のニアは、ほぼ平民に等しかった。
民達と同じ暮らしをしてきたニアは、母がエンルーダのアースロに後妻入りした事で、貴族らしい暮らしになったぐらいだ。
とはいえ付け焼き刃で叩き込まれ貴族的知識は、辺境の領土・エンルーダらしく、ひどく偏っていたのだと改めて知る。
ゆえに、ニアの頭の中には皇族の証についてなど、全く記憶自体が無い。
「、、、ニア、わたしの記憶が、あっていたらだけれど、、貴女、あの仮面舞踏会で、殿下と踊ったとか言ってなかった?」
エナリーナが言葉にしたのは、学園の夏至祭で開催された仮面舞踏会。
「・・・・」
「そうなのね。此の子、、やっぱり殿下のお子なの、ね。」
「此の子は、リュリアールと何も関係無い、、!!」
砂嵐が近いのか、ニアが断言すると共にテントが風で揺れ、エナリーナが赤子をしっかりと腕に抱き直した。
(あの日。)
朝になっても姿を消したままだったニアは、心配をしていたエナリーナに、夜通し踊っていたと伝え、踊った男子生徒の中にはウィルザード皇子もいたと嘘を付いた。
目立つ桃色の髪を、金髪に染め上げ、最初の生でデュタントの時に着たドレスに酷似した服装で楽しむニアの後ろに、、仮面を付けたウイルザードが立っていた。
勿論、踊っただけだという言葉が嘘だった証が、エナリーナの手の中に居る。
「どうして。わたし達みたいな髪色で、殿下と関係を持つまでになったのよ、 其れに、、どうするつもりなの?ニア。」
ニアは、エナリーナの問いに思わず瞳を揺らすと、押し黙った。
そもそもエナリーナに前世の話など出来る訳が無いと、産褥の清めもままならないニアは唇を噛んだ。
テントにはニアとエナリーナ。
そして、生まれたばかりの小さな存在だけ。
|||||フ、ギャア、、ァ、
「、、もう!分かったわ。でも気を付けましょう!ニアは呪われた巫女なんて言われているし。襲われなくても、其れこそ殺されるかもしれないんだから。」
どうやらエナリーナは黙るニアの心内を、別の方向へと解釈したのか、赤子の臍の緒を場末の裁縫道具で何とか処理をしている。
無論、其れもニアとエナリーナの此の状況ならば仕方の無い事なのだ。
「、、そうよね、わたし達の身の上だって分からないのに、、子供まで取り上げてくれて、、ありがとう。」
少し前の学園時代では、想像も出来ないエナリーナの姿に、ニアは横になったまま感嘆する。
婚約破棄後に入れられた修道院で、どんな事があったのかとニアは思案する。
「こんな砂漠で、女なんて男の道具でしか無い。其れも出来ないなら何時放逐されも、おかしくないのよ?」
令嬢エナリーナ・ルー・ファッジ。
婚約者エリオットに婚約破棄をされた事により、辺境の修道院へ送られていたはずが、今は砂漠のキャラバン隊にいる不思議さ。
ニアは、エナリーナの言葉に涙が走った。
ァァァァァァ
|||||||||||||
||||||
|||||
||||
ニアが2度目の生を受けたのは、長閑な気質で、海洋鉱物質が豊かな南洋国ルーベンスの第3王女マフィラナ。
彼女の時でさえ、タニアが毒杯を呷ねばならなかったのは、もはや運命だったのだろうか?
||||
オ、、、ギャアァァ!
|||||
他国への政略婚姻として、正妃候補となったマフィラナ。
外交による政略結婚のはずが、国入りをしてみれば待っていたのは『正妃候補』という屈辱。
其の上、覚えの無い王族暗殺の容疑を掛けられた不幸。
目にした広大な後宮には、正妃候補として来たマフィラ以外にも、何人もの側妃や、準妃、末妃までいた。
中でも、王の寵愛を一身に受ける側妃が生んだ赤子を手に掛けたと、夫となる王に断罪される。
其れがニアの前前前世、王女マフィラナの冤罪による毒杯死だ。
|||||
|||||オ、オギャア!
(赤ちゃん、、わたしの赤ちゃん。)
エナリーナの手に抱かれる赤子が上げる産声を、額に汗しながら息を整えるニアが聞いた場所。
其れは、、砂漠の中に居住する異民族のテントだった。
必死に出産した子供は、、
(桃色の髪、、)
砂に汚れた衣服を着るニアは、人知れず安堵した。
(結局、マフィラナも濡れ衣を着せられた。寵妃スーリュヤの赤ちゃんは、、母親、、本人に殺されたのだと思うのよね。)
鮮やかな織布に包まれる赤子の顔。
ニアに似て、愛され令嬢系の大きな瞳は、珍しく無いパープルサファイア色をしている。
ただ、、、
「ねえ、タニア、、あ、ニア。此の子、青紫の瞳に虹彩があるわ。これって。」
「虹彩って何なの?」
「ニアは知らないの?虹彩は瞳に虹の光が出る事よ。虹彩はリュリアール皇族の証で、、」
(、、もしかして、瞳の色はウイルザードに似たの、、)
光の中で覗けば赤子の瞳は、虹彩を秘めたパープルサファイアだったのだ。
例え赤子の瞳を見たところで、皇太子と同じ瞳の色だと知る者もいないだろうと、ニアは考えていたが、さすがに元リュリアール帝国貴族である、学友エナリーナには、『皇族の証』まで分かってしまったらしい。
「其れは、、知らなかったわね、、、」
リュリアール帝国において、没落貴族のニアは、ほぼ平民に等しかった。
民達と同じ暮らしをしてきたニアは、母がエンルーダのアースロに後妻入りした事で、貴族らしい暮らしになったぐらいだ。
とはいえ付け焼き刃で叩き込まれ貴族的知識は、辺境の領土・エンルーダらしく、ひどく偏っていたのだと改めて知る。
ゆえに、ニアの頭の中には皇族の証についてなど、全く記憶自体が無い。
「、、、ニア、わたしの記憶が、あっていたらだけれど、、貴女、あの仮面舞踏会で、殿下と踊ったとか言ってなかった?」
エナリーナが言葉にしたのは、学園の夏至祭で開催された仮面舞踏会。
「・・・・」
「そうなのね。此の子、、やっぱり殿下のお子なの、ね。」
「此の子は、リュリアールと何も関係無い、、!!」
砂嵐が近いのか、ニアが断言すると共にテントが風で揺れ、エナリーナが赤子をしっかりと腕に抱き直した。
(あの日。)
朝になっても姿を消したままだったニアは、心配をしていたエナリーナに、夜通し踊っていたと伝え、踊った男子生徒の中にはウィルザード皇子もいたと嘘を付いた。
目立つ桃色の髪を、金髪に染め上げ、最初の生でデュタントの時に着たドレスに酷似した服装で楽しむニアの後ろに、、仮面を付けたウイルザードが立っていた。
勿論、踊っただけだという言葉が嘘だった証が、エナリーナの手の中に居る。
「どうして。わたし達みたいな髪色で、殿下と関係を持つまでになったのよ、 其れに、、どうするつもりなの?ニア。」
ニアは、エナリーナの問いに思わず瞳を揺らすと、押し黙った。
そもそもエナリーナに前世の話など出来る訳が無いと、産褥の清めもままならないニアは唇を噛んだ。
テントにはニアとエナリーナ。
そして、生まれたばかりの小さな存在だけ。
|||||フ、ギャア、、ァ、
「、、もう!分かったわ。でも気を付けましょう!ニアは呪われた巫女なんて言われているし。襲われなくても、其れこそ殺されるかもしれないんだから。」
どうやらエナリーナは黙るニアの心内を、別の方向へと解釈したのか、赤子の臍の緒を場末の裁縫道具で何とか処理をしている。
無論、其れもニアとエナリーナの此の状況ならば仕方の無い事なのだ。
「、、そうよね、わたし達の身の上だって分からないのに、、子供まで取り上げてくれて、、ありがとう。」
少し前の学園時代では、想像も出来ないエナリーナの姿に、ニアは横になったまま感嘆する。
婚約破棄後に入れられた修道院で、どんな事があったのかとニアは思案する。
「こんな砂漠で、女なんて男の道具でしか無い。其れも出来ないなら何時放逐されも、おかしくないのよ?」
令嬢エナリーナ・ルー・ファッジ。
婚約者エリオットに婚約破棄をされた事により、辺境の修道院へ送られていたはずが、今は砂漠のキャラバン隊にいる不思議さ。
ニアは、エナリーナの言葉に涙が走った。
414
お気に入りに追加
1,554
あなたにおすすめの小説
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
女官になるはずだった妃
夜空 筒
恋愛
女官になる。
そう聞いていたはずなのに。
あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。
しかし、皇帝のお迎えもなく
「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」
そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。
秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。
朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。
そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。
皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。
縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。
誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。
更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。
多分…
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
つがいの皇帝に溺愛される幼い皇女の至福
ゆきむら さり
恋愛
稚拙な私の作品をHOTランキング(7/1)に入れて頂き、ありがとうございます✨ 読んで下さる皆様のおかげです🧡
〔あらすじ〕📝強大な魔帝国を治める時の皇帝オーブリー。壮年期を迎えても皇后を迎えない彼には、幼少期より憧れを抱く美しい人がいる。その美しい人の産んだ幼な姫が、自身のつがいだと本能的に悟る皇帝オーブリーは、外の世界に憧れを抱くその幼な姫の皇女ベハティを魔帝国へと招待することに……。
完結した【堕ちた御子姫は帝国に囚われる】のスピンオフ。前作の登場人物達の子供達のお話に加えて、前作の登場人物達のその後も書かれておりますので、気になる方は是非ご一読下さい🤗
ゆるふわで甘いお話し。溺愛。ハピエン♥️
※設定などは独自の世界観でご都合主義となります。
運命の歯車が壊れるとき
和泉鷹央
恋愛
戦争に行くから、君とは結婚できない。
恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。
他の投稿サイトでも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる