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断罪編

城にて、奇襲の報

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 『ブーォーン、、ブーォーン、、ブーォーン、、』

不穏な音がエンルーダに鳴り響き!
城にある応接室の扉が開け放たれ、飛び込んできたのは見張りの侍従だった!!

「襲撃、墓守りの建屋が襲撃されています!!」

 領主アースロが眼下のエンルーダに拡がる火の手に戦慄き、ウイルザードの胸倉を掴み上げ詰め寄る。

「殿下!!一体貴方は、何を我が領地に運び込んだのだ!!」

 其れを必死に、エリオットが止めに入った。

 片腕で、ウイルザードの胸倉をアースロが掴み上げたまま更に高く掲げれば、1段とウイルザードの首が締まる。

 ただでさえ巨体に見えるアースロのオーラが、更に身体を膨れ上がらせているかの様に、呻くエリオットは錯覚した。

「エンルーダ殿、待ってください。何かの間違いでも無いかもしれませんが、殿下のせいではありません!!」

 其れでもエリオットは必死に2人の間で止めようと、声を上げ続けた。
 が、更にエリオットの言葉で、イグザムが怒りを爆発させた!

「なにを!!結果、殿下に責任がある物言いじゃないか!其れは予定していたと言う事だろ!いい加減にしろよ、どれだけ馬鹿にするんだ!父上、火の中心は何処だとお思いですか!!」

 イグザムはテラスから乗り出し、眼下の領土を見る為、胸元から携帯の双眼鏡を取り出す。

 広大な辺境を統べるには双眼鏡は必需品。
 そのイグザムの様子に、ウイルザードが首が締まるが故に苦虫を嚙み潰したような顔になりつつも、アースロに状況と思われる情報を開示する。

(パメラの経緯を公にしてはいない事が、裏目に出た結果か。)

「く、エンル、、ーダ殿、ガ、ガラテアの核石、
、、が狙わ れる可能性がっ、、あった。も、申し訳ないい、、。しか し、我あ 、が皇帝騎士 いも連れてき て、ている、、。直ぐ た、に対処している はずっ だ、。」

「核石だとーーーーー!父上、墓守りの建屋です!!」

 しかしウイルザードの言葉に反応したのはイグザム。
 その形相は鬼畜に豹変し、次期当主の恐ろしさを知らしめる。
 
 今度はイグザムがウイルザードの胸倉を掴み上げると、アースローの手からウイルザードを叩き落とし馬乗りに締め上げたのだ! 

「ぎ!ぐ、!!!」

「ウイルザード様!!」

 ウイルザードが背中から床に激しく落とされ、直ぐに受け身を取った所からのイグザムの所業に、エリオットが三度声を上げた。

「うぬ、グリーグがおるから大丈夫だとは思うが。落ち着け。いらぬ事を言うな、イグザム!!」

 アースロは先程までウイルザードを掴んでいた手を降ろすと、形だけイグザムを嗜めるが、直ぐに見張りの侍従に指示を出す。
 そして、参謀側近を呼び出した。

「情報隊からの報告で、各陣営での自走戦闘を許可する。領民に緊急避難道を開放!!イグザムは隊のまとめだ!!当主の義務を果たせ!!」

「しかし、タニアが心配です。父上、行かせてもらいます!呼ばれぬ客人よ、失礼する!!」

 その間に、イグザムは客間に飾りとして備えていた武器と鎧を装着していく。

 ゲリラ戦が得意だと言うだけあり、武器も様々揃えられていた。
 
 常に帯剣する自前の剣だけでは足りないとイグザムは判断したのだ。
 すでに、敵の襲来という規模を超え、戦争が勃発した様な状態が眼下に拡がっている。
 
 帯剣している1本では、血で直ぐに使えなくなるとの考えが、常から戦闘を繰り広げている証拠だと、エリオットは嫌でも感じた。

「待て!今、令嬢の名を言われたか?生きているのか!」

 その最中でイグザムが口にした名前に、ウイルザードが床から身体をお越しながらも反応した!
直ぐにアースロが言い留める。

「殿下、聞き間違いでございましょう。ニアという墓守りの娘でございます。イグザム血迷うな。」

 けれどもイグザムは止まらない。

「は、いい加減しろよ、皇太子!我が叔父上から妻を側妃にと無理やり娶り、挙句自死させ、そのショックで我が母上も死に追いやられた!!皇族は人の女を奪う事しか能が無いのか!!父上、こんな奴の相手はやめて、直ぐに墓守りの建屋に参ります!」

 当主としての落ち着きをアースロは見せるが、堰を切った様に罵るイグザムの言葉は、エンルーダと皇族の愛憎確執。
 イグザムが言う叔父とはグリーグを差す。
 タニアの事が無くても、最初からエンルーダと皇族には因縁があった事をエンルーダ家は忘れてはいない。

「おい!殿下にその言い様は無いだろ?」

 イグザムの言い様に、さすがのエリオットも立場を忘れる。エリオットが知らない世代の醜聞だからかもしれないが、エリオットに取ってはウイルザードが貶された事に怒髪天をつく怒りを覚えたのだ。

「エリオットいいんだ。本当の事だ。其れどころじゃ無い。」

 ウイルザードがエリオットを控えさせて、自分の剣を渡す様にエリオットに言いつけた。
 自ら戦闘に出る覚悟は、都シャルドーネを出発した時にしている。
 けれども、ウイルザードにアースロの視線は冷たい。

「では、我が領地の救済に当主として動かねばなりません。お引き取り願う。」
 
 装備を終えたイグザムを一瞥し、アースロが容赦なくウイルザードに言い放つ。
 しかしウイルザードも引いてはいない。何としてもアースロに援軍を出す事を申し出た!

「だから!エンルーダ殿、私も戦いますので、同行を!」

「殿下の手は煩わせられませんので。」

 言葉では丁重さを口にするが、アースロからのはっきりとした拒否。

 その瞳に、ウイルザードはアースローに真の怒りを見た。
 戦ならば、勝利の為に手を選んではいられない事は、辺境の王が1番よく知っているのだから。

「どけ!!役立たず!!」

 とうとうイグザムが、立ちはだかるウイルザードを横から殴り飛ばして、進路を取る。

 ウイルザードを飛ばしたイグザムに掴みかかるエリオット。客間は騒然となり収集が付かなくなった。

「貴様殿下に!」

 ドガーーーーーーーーーーンンンン!!

 瞬間テラスの向こうから、膨大な風圧が客間にまで流れ、全員が頭を床にふせる!!そして次に降りかかる伝令の声!エンルーダ家が固まった。

「アースロ様!!グリーグ様が!!やられました!!」

「「っっ!!!!」」

「タニアは?!タニアーーー!!!」

 テラスに向かって絶叫するイグザムが、城の上層階にも関わらず、下へと飛び降りた!!

「イグザム殿!!」

 ウイルザードが落行くイグザムを窓から視線で追い掛ける。

「あの馬鹿が。心配なさるな、屋根伝いに降りて行くだけですぞ。」

 イグザム奇行にウイルザードとエリオットがテラスまで外に出て駆け寄る。
 もうイグザムの姿は、階下の森に遮られ、見付ける事が出来ない。
 
 少し落ち着きを戻したアースロがウイルザードに応えた後、辺境を揺るがさん大音声で、侍従に叫んだ!!

「エンルーダ、反撃!!」

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