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16week

秒で馴染むなよ!お前!

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『ダン!♪ダダダダダダーーーン♪!ダルダダ♪ダルダダアアン』

「あっ!あぁー↗️。これはですね、我が課の忘年会にですね↗️、何故か、受付のヤシナ女史がぁ混じってましてぇ↗️。えらく酔いつぶれとりましたもので。何故か、僕がタクシーを拾う流れになり、道でヤシロ女史に襲われた案件ですねぇ↗️↗️」

 ピアノ曲・革命のエチュードが鳴り響く中、僕は必死に説明をする。

 はい。全く濡れ衣なんです↗️!!

 脳筋レスラーに再び絞められながら、懺悔する僕を尻目にキヨヒコは、突然鳴り響くピアノの傍らへ。

「会長ご子息さまは、さすがピアノも嗜んでいらっしゃるとは!素晴らしい音ですね!」

 え、 

 頭ん中でショックからの妄想BGMだと思ったら、僕の義長兄が弾いてた曲なの?!

「何、手習い程度。名器なれば私の手に馴染んでいい音を出してくれるものだよ、君。」

 茶番だ!!キヨヒコの逃避だ!!

「いやー、クラブピアノしか聞いたことないんで!いい名器が奏者を助ける!なるほど産婦人科医をなさる
 御子息の言葉は深くエロイ!」

 あぁ、失言ジョーク。だだ滑り。
 全員のジト目が痛い。

 主に、キヨヒコに。

「う、え、あー。失礼しました。」

 まるで放送事故よろしくなアナウンサーみたいに誤魔化し、再びデカソファーに鎮座するキヨヒコが、

「あー、アマネな、『うちのハニトラは、社内女子
   には手を出さぬ』が、暗黙の了解だったろ?これ出回りゃ、なし崩しの総当たり戦が社内で繰り広げられるぞ?」

 何ーんにもなかったように、妻の電話待ち受けを印籠に、僕ににじり寄る!?
 鋼の話術師だなっ!

「ううーっ。」

 でも、ぐうの音も出ない。なぜなら、僕、首絞まってるし。

 酸素の足りない頭で考えてもすぐに、キヨヒコの言い分は、わかる。

 実際すでに、妻んとこに誰がしが、送り付けてる=社内広報されとるぐらいは、思わねばならん事案だ。

 さすがに目を白黒させる僕に、

「お前が我が社で、蟻地獄に落ちようが知ったこっちゃないわ!!カレンが傷付いて家出したんぞ!!落とし前つけろや!!」

 たちどころに会長の雷が落ちて一瞬、大理石に日本刀がぶっ刺さる幻覚がみえた。

「父さん、落とし前の前に、カレンを戻さないと、このバカとの離縁も進められませんよ。」

 さらりと、ピアノ前から戻ったお堅し産婦人科医 兄が、僕がマンションのリビングから持ってきた離婚届けを指でピッと挟む。

 妻の名前入りのやつね。

「あの!どうして、カレンさんには、護衛とか、影と  
  か、着けなかったん ですか!」

 妻が実家に帰っても、さして焦らなかったのは、この濃ゆい家族達が妻を囲うからだと思ってのこと。

 それを覆された!!
 妻のおもったよりも発揮された本気度で!

「貴方、うちを王族か何かと思っているの?流石につけれてボディーガード。脅迫状でも送られたわけでもあるまいし、そうそう、邸の中で付けれる訳ないでしょ!!」

 義母カツコさんの呆れた声と、脳筋3男の実現されなかった代案が僕の耳に入る。

「やっぱり、おれの舎弟に、見張らせれば良かったんだ!」

「プロレスラー見習いなんかの筋肉男を、カレンの部屋に置けるわけないよ暑苦しい。」

 熱血予備校次男の尤もな言葉に、ふと僕は何か忘れている気分になったんだが?

 何だろう?

「でもGPS付いてるでしょ。あー電話は置いてるか。なら、アクセサリーに仕込んでたとか?」

 キヨヒコが、妻の電話を上からと下からに眺めながて呟く。
 僕も大きく頭を立てに振った。

 そうだ、なんかのチップとか埋めてたりしないのか?体に。

「うちのカレンは犬か!!スパイ映画でもあるまいし!おい、アマネ!警察犬借りてこい!タラシコミ専門のお前なら出来るだろ!!」

 会長がふんぞり返るけど、えっと、まだ僕達の方が
現実的捜索方法を提案してるんじゃね?

「あの、、その前にですね。カレンさんが書いてた、彼氏ってのは、、知ってます?」

 僕はようやく、妻の濃ゆい家族達に1番の重要議案を提示する。

「そうだ!義弟!まさか別宅に入り浸り、冷遇されたカレンが真の愛に目覚めたとかなのか?」

 3男がようやく僕の技を外してくれたのに、今度は次男が、僕の肩をガクンガクン揺らして、とんでもないバカな台詞をぶちこんでくる。

「ま、待ってください!僕はは別宅に愛人囲ってませんん!お 遅くとも、朝方でもも、ちちゃんとと、つ妻のところろへ、帰っててますす。」

「悲しきかな、入り婿リターン習性だな、それ。つまり、カレンさんに彼氏がいたことをアマネは知らなかったと。」

 ずっと僕は思ってたけどキヨヒコは秒で、会長家族、妻の濃ゆい家族に馴染んだよね。

「カレンが、その彼氏が良いっていうなら、認知するさ。なんならアマネ君とは別れればいい。意外に、父さんの社内の男かもしれない。それなら、アマネ君と入れ替えばいいだけの話だ。」

 とうとう、長兄が恐れていた事を言い出しやがった。

「待ってください!!カレンさんにまずは、話を!」

 その為にも彼氏とやらの居場所を突き止めねば!

 僕は次男の手を振り払ってソファーから立ち上がる。

「そうだよな。どうせさ、電話を置いて行っても、カード類は持って出てるわけだ。使えば居場所も直ぐわかるよ、兄さん。いざとなれば、顧問弁護士から探させればいい。」

 そんな僕を嘲笑うかに次男は自分のジャケットから、電話を出してかけ始めた。

 きっとこの邸のお抱え弁護士を呼びつける気だ。

「家出っていっても、隣国とかじゃないだろ!ちゃんと、パスポートもあるんだな!?」

 納得した顔で、3男が控えていたシモセキさんに、部屋の様子を聞いている。

「確かに、お嬢様のパスポートはお部屋にございますので。」

 お手伝いのシモセキさんは難なく答えたりして、キヨヒコが無神経な返事を返してきた。

「隣国って、それじゃあ、北に拉致られになりますもんもんね。あはは、アマネ!良かったな。カレンさん、すぐ見つかって協議だってよ。」

 キヨヒコの奴はそう言って涼しげに、ようやく出された高っかそうな薫りするコーヒーを一気飲み干している。

 あ、お暇カウントダウンだ!まずい!!
 いや、旨いコーヒーをしっかり飲み干しやがって!

「とにかくアマネさん。カレンが彼氏とやらと連れもって、戻り次第、離婚協議に入りますよ。」

 戦友に何気にデスられ、旨いコーヒーに口も付けれず、長兄の言葉に止めを刺された僕に、容赦なく義母の声が浴びせられ、

「待ってください!僕は!」

 僕は、3男と次男に否応なしに羽交い締めされて、

「よし!家族会議終了!解散!」

 キヨヒコが号令する会長に一礼する中、

 無惨にもズルズルと脇を抱えられ、応接ホールから引き摺り出された。


16週、終了。18週へつづくだな。
   

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