75 / 222
第三章
初めての従魔師ギルド
しおりを挟む
翌日、僕の頭の中はまだ混乱したままだったのだが、いつものように朝食を作り、いつものように皆と普通に会話して、昨夜の事は夢でも見ていたのかなんて思ったりもしたのだが、僕が視線を向ければロイドは頬を染めて視線を逸らすし、そんな彼をルーファウスは睨むしで大変だった。
いつもと全く変わらないのはアランだけ、だけどロイド情報によるとアランも……なんて、本人から直接聞いたわけじゃないし今は何も考えまい。
何となく落ち着かない朝食を終えて僕達は昨夜の話し合いの通り、連れ立って従魔師ギルドへと足を向けた。
ちなみに従魔師ギルドというのは冒険者ギルドと似たようなものだけど、従魔師だけが所属する組合のような場所だ。他にも魔術師ギルドや商人ギルドなど職業ごとにギルドはあって、そこに行けばその職業に関する情報を得る事ができる。
従魔師ギルドはその名の通り従魔に関するありとあらゆる情報が集まる場所であり、従魔の売買などもされているらしい。
冒険者ギルドにはよくお世話になっている僕達だけど、それ以外のギルドにお邪魔するのは初めてで少しドキドキする。
建物の扉をくぐると少しだけ獣臭を感じる、これはペットショップの匂いに似ている気がする。従魔師ギルドと言うだけあって、そこにいる人達のほとんどが何かしらの従魔を連れていて鳴き声などで賑やかな事この上ない。
従魔の種類は様々で四つ足の獣タイプから鳥類や爬虫類も見てとれる。恐らく天敵同士の従魔もいるのだろうに、どの従魔もしっかり躾がされているのだろう大人しいものだ。中には大きく狂暴そうな見た目をしている魔物もいるのだが、自分の主の傍らで満足気な表情をしていて幸せそうだ。
「従魔とひとくちで言っても色々な種類がいるものなんですねぇ」
「それはそうだ、従魔と従魔師には相性というものがある、従魔師によっては獣タイプには好かれるが小型の魔物には嫌われるとか、鳥類には好かれるが爬虫類には嫌われるとかそういうのもあるからな」
なるほど、相性か。僕はどんな魔物と相性が良いんだろう? ライムは最初から付いてきたくて付いてきたって感じだったから、僕は小動物に好かれる感じだろうか? でもライムが小動物かと問われたら疑問も残る。時々めちゃくちゃ大きくなる時もあるからな。
「従魔師ギルドへようこそ、本日はどういったご用件で?」
受付と思われるギルド職員の前に立つと職員は愛想よくアランとルーファウスの二人を見やる。
「この子と相性のいい従魔を探しています、購入を検討しているのですがギルドで扱っている魔物を見せていただけますか?」
ルーファウスが僕の背に手を添えてそう説明すると「そちらの坊ちゃんのですか?」と職員は少し怪訝そうな表情を見せたのだが、すぐに気を取り直したように笑みを浮かべた。
「どのような魔物をご希望ですか? 愛玩用の手のかからない魔物でしたら当ギルドを通さずとも街の外で簡単に捕らえる事もできると思いますが」
「できれば俺達を乗せて空を飛べるようなのが良いんだ、何か居ないか?」
「皆さまを、ですか……そうしますと大型の鳥類という事になりますが、その、お坊ちゃまは今まで従魔を従えた事はおありで?」
「あ、はい、一応」
「ちなみに獣種を教えていただいても?」
「スライムです」
僕の返答に職員は「スライム?」と一言言って、困ったようにアランとルーファウスの二人を見やる。
「あの、本当にその子にそんな大型の従魔を購入されるおつもりなのですか? 従魔は生き物です、従魔師が世話をしなければ従魔は生きていけません、この子にそれができますか? こちらも商売でやってはいますが、みすみす購入された従魔を不幸にさせるような売買はできません、できればもう少し手のかからないお坊ちゃんに合う従魔を用意された方がよろしいかと……」
ああ、やっぱりそうなっちゃうよね。僕だって、急にそんな大きな従魔を従えるのは無茶なんじゃないかと思っていたのだ、販売する方だってそりゃあ慎重になるよな。
「あの、見せていただくだけでも出来ませんか? 購入はあくまで検討で、無理そうなら諦めますので」
僕の言葉に「そういう事なら」と職員は建物の裏手へと案内してくれた。従魔師ギルドの裏手には大きな建物が立っていて、その中には色々な獣種の魔物達が大小の檻の中に入れられて世話をされていた。
今まで見た事のある魔物もいれば、全く見た事もない魔物もいる、まだ野生に近いのだろうその魔物達は僕達の姿を見るとこちらへと威嚇するように牙を剥いたり、落ち着かない様子でこちらを窺い見ている。
「なんだか今日は魔物達の落ち着きがないな。君、あまり近寄らないでくださいね、怪我をしても責任は負えませんよ」
ギルド職員はそう言って僕達に魔物の種類などの説明をしてくれる、肉食で気の荒い魔物は戦闘向き、比較的大人しい扱いやすい魔物は戦闘には向かないが荷運びなどの仕事に適しているらしい。従魔師が魔物を従える用途と言うのは様々で、僕達は冒険者を生業としてるから従魔師と言うと戦闘向きの魔物を操って戦う人と思い込んでいたけど、魔物を使って何かしらの商いをしている従魔師も多いんだそうだ。
『タケル~ここどこ?』
複数の魔物の気配に気付いたのかローブの中で寝ていたライムがひょこりと顔を覗かせて僕の肩の上にぴょこんと乗った。ライムの頭の上には相変らずあの小さな王冠がちょこんと乗っていてとても可愛い。
「え、あ! そのスライム!」
不意に食い入るようにギルド職員がライムの方へと身を乗り出した。
「ああ、そうか! スライム! 君があのスライムキングだったんだ!」
「?? スライムキングって何ですか?」
突然意味不明の名称で呼ばれて僕は意味が分からず首を傾げる。一方で職員さんは興奮した様子でライムを見やり「従魔師界隈でダンジョンで変わったスライムを操る少年がいるって噂になってたんだ、その名も通称『スライムキング』! 彼の操るスライムがスライムの癖に偉そうに王冠を被ってるって言うんでそんな名前になったみたいなんだけど、その割には従魔師ギルドに現れないからただのデマかと思ってた」と、一気にまくしたてた。
まさかの変な所で噂になってた……しかも変な通称まで付けられてた! スライムキングって、まるで僕がスライムの王様みたいじゃないか! スライムの王様なのはライムであって僕じゃないし!!
ギルド職員は従魔師らしくちょっと変わったスライムに興味津々で上から下から眺め回している。先程まではお客様相手の敬語だった彼なのに、テンションが上がり過ぎたのか言葉遣いもまるで友達にでも語りかけるように砕けてしまっている。まぁ、その方が僕も話しやすくて助かるけど。
「君のこのスライムは魔術を使うらしいって聞いているけど、本当に?」
「魔術は使わないですよ、分裂したり大きくなったりはしますけど」
「あれ? そうなんだ? 聞いてた話と違うなぁ、なんか凄く強力な魔術を放つって聞いていたんだけど」
「ああ、それならたぶん僕の魔術を取り込んで増幅してるのを見られたんだと思います、しいて言うなら僕とライムの合体技ですね」
そう、Eランク試験の時にやったライムの火炎放射、あんな事ができるのならば他の魔術も一旦ライムに取り込ませて放てば凄い事になるのでは? なんて思って試した結果、想像通りにライムはどんな魔術をも取り込んで増幅する事ができるようになった。
僕の放つただの火球だってライムを経由すれば連弾になる、はっきり言って僕とライムのタッグはかなり無敵だ。まぁ、そうなるまでには色々と試行錯誤もしたけれどね。
「従魔との合体技……ほうほう。君、見た目に反して意外と従魔師スキルのレベルが高いのかな?」
「えっと、どうなんでしょうね?」
「教会で確認したりはしていないのかい?」
「この三年くらいしてないですね」
なんてたって教会は僕にとっては鬼門だからね、この三年間一度だって足を踏み入れたりはしなかったよ。さすがに三年も経ったからいい加減諦めてくれてるとは思うけど、特別赴く用事もないからきっとこれからも教会には行かないと思う。
そもそも自分のスキルレベルを知りたかったら自分で自分を鑑定すればいいだけだし、それも特別マメにチェックするような事ではないと僕は思っている。
「まぁ、最近は教会も少しきな臭い事になってるからあまり近付かない方がいいのかもしれないけれど」
「? そうなんですか? きな臭いって何かあったんですか?」
「最近教会が躍起になって信者を増やそうとしているって噂があるんだよ。どうも王家と教会の確執が深まっているみたいで、王家に対抗するための人の壁を作ろうとしてるんじゃないかってもっぱらの噂」
「人の壁……」
あくまでも噂だと職員さんは言うけれど、何だか少し嫌な感じはするな。元々三年前から聖女であるエリシア様と婚約者である王子との不仲は噂されていた、王子がエリシア様以外の別の女性と結婚したという話は聞かないが、エリシア様と王子が上手くいっているという話も聞かない。
自分には関係ない話だとは思うのだけど、それでも少しだけ気にかかってしまうのは僕がエリシア様とは顔見知りだからなのだろうな。
エリシア様の暴走には辟易していたけれど、あまり話を聞いてあげなかったのは悪かったなと思わなくもないのだ。ただ、聞いたところで僕に何ができる訳でもないのだけれど。
「まぁ、そんな話はさておいて、本来なら従魔師のスキルレベルが5以上じゃないと案内する事が出来ない魔物が居るんだけど、君、興味ない?」
「え? そんな魔物、僕に見せてくれるんですか?」
「従魔との合体技を使える君ならたぶん大丈夫だと思うからね。あ、付き添いの人達はダメですよ」
さらっと言ってのけたギルド職員にルーファウスがムッとしたように鼻白む。
「それは何故ですか?」
「その魔物は人を選ぶからです、従魔師が従魔を選ぶのではなく、そこでは従魔が主を選ぶのです。資質のないモノを魔物は嫌います、従魔師以外はご遠慮ください」
「彼に危険は?」
「ありませんよ、向こうに興味がなければ一瞥されて終わりです」
僕達は魔物を購入しにきたはずなのだが、そこでは魔物が自ら主を選ぶのだと職員は言う。こちらが選ぶのではなく、魔物に選ばれるというのは一体どういう事なのだろう?
いや、それよりもそんな場所にどんな魔物がいるのかが凄く気になる。職員は危険はないと断言してくれたけど、やはり少し怖いな。まぁ、それより好奇心の方が勝るけど。
ギルド職員が僕を促す、僕は「ちょっと見てきますね」と皆を置いて彼の背を追った。
いつもと全く変わらないのはアランだけ、だけどロイド情報によるとアランも……なんて、本人から直接聞いたわけじゃないし今は何も考えまい。
何となく落ち着かない朝食を終えて僕達は昨夜の話し合いの通り、連れ立って従魔師ギルドへと足を向けた。
ちなみに従魔師ギルドというのは冒険者ギルドと似たようなものだけど、従魔師だけが所属する組合のような場所だ。他にも魔術師ギルドや商人ギルドなど職業ごとにギルドはあって、そこに行けばその職業に関する情報を得る事ができる。
従魔師ギルドはその名の通り従魔に関するありとあらゆる情報が集まる場所であり、従魔の売買などもされているらしい。
冒険者ギルドにはよくお世話になっている僕達だけど、それ以外のギルドにお邪魔するのは初めてで少しドキドキする。
建物の扉をくぐると少しだけ獣臭を感じる、これはペットショップの匂いに似ている気がする。従魔師ギルドと言うだけあって、そこにいる人達のほとんどが何かしらの従魔を連れていて鳴き声などで賑やかな事この上ない。
従魔の種類は様々で四つ足の獣タイプから鳥類や爬虫類も見てとれる。恐らく天敵同士の従魔もいるのだろうに、どの従魔もしっかり躾がされているのだろう大人しいものだ。中には大きく狂暴そうな見た目をしている魔物もいるのだが、自分の主の傍らで満足気な表情をしていて幸せそうだ。
「従魔とひとくちで言っても色々な種類がいるものなんですねぇ」
「それはそうだ、従魔と従魔師には相性というものがある、従魔師によっては獣タイプには好かれるが小型の魔物には嫌われるとか、鳥類には好かれるが爬虫類には嫌われるとかそういうのもあるからな」
なるほど、相性か。僕はどんな魔物と相性が良いんだろう? ライムは最初から付いてきたくて付いてきたって感じだったから、僕は小動物に好かれる感じだろうか? でもライムが小動物かと問われたら疑問も残る。時々めちゃくちゃ大きくなる時もあるからな。
「従魔師ギルドへようこそ、本日はどういったご用件で?」
受付と思われるギルド職員の前に立つと職員は愛想よくアランとルーファウスの二人を見やる。
「この子と相性のいい従魔を探しています、購入を検討しているのですがギルドで扱っている魔物を見せていただけますか?」
ルーファウスが僕の背に手を添えてそう説明すると「そちらの坊ちゃんのですか?」と職員は少し怪訝そうな表情を見せたのだが、すぐに気を取り直したように笑みを浮かべた。
「どのような魔物をご希望ですか? 愛玩用の手のかからない魔物でしたら当ギルドを通さずとも街の外で簡単に捕らえる事もできると思いますが」
「できれば俺達を乗せて空を飛べるようなのが良いんだ、何か居ないか?」
「皆さまを、ですか……そうしますと大型の鳥類という事になりますが、その、お坊ちゃまは今まで従魔を従えた事はおありで?」
「あ、はい、一応」
「ちなみに獣種を教えていただいても?」
「スライムです」
僕の返答に職員は「スライム?」と一言言って、困ったようにアランとルーファウスの二人を見やる。
「あの、本当にその子にそんな大型の従魔を購入されるおつもりなのですか? 従魔は生き物です、従魔師が世話をしなければ従魔は生きていけません、この子にそれができますか? こちらも商売でやってはいますが、みすみす購入された従魔を不幸にさせるような売買はできません、できればもう少し手のかからないお坊ちゃんに合う従魔を用意された方がよろしいかと……」
ああ、やっぱりそうなっちゃうよね。僕だって、急にそんな大きな従魔を従えるのは無茶なんじゃないかと思っていたのだ、販売する方だってそりゃあ慎重になるよな。
「あの、見せていただくだけでも出来ませんか? 購入はあくまで検討で、無理そうなら諦めますので」
僕の言葉に「そういう事なら」と職員は建物の裏手へと案内してくれた。従魔師ギルドの裏手には大きな建物が立っていて、その中には色々な獣種の魔物達が大小の檻の中に入れられて世話をされていた。
今まで見た事のある魔物もいれば、全く見た事もない魔物もいる、まだ野生に近いのだろうその魔物達は僕達の姿を見るとこちらへと威嚇するように牙を剥いたり、落ち着かない様子でこちらを窺い見ている。
「なんだか今日は魔物達の落ち着きがないな。君、あまり近寄らないでくださいね、怪我をしても責任は負えませんよ」
ギルド職員はそう言って僕達に魔物の種類などの説明をしてくれる、肉食で気の荒い魔物は戦闘向き、比較的大人しい扱いやすい魔物は戦闘には向かないが荷運びなどの仕事に適しているらしい。従魔師が魔物を従える用途と言うのは様々で、僕達は冒険者を生業としてるから従魔師と言うと戦闘向きの魔物を操って戦う人と思い込んでいたけど、魔物を使って何かしらの商いをしている従魔師も多いんだそうだ。
『タケル~ここどこ?』
複数の魔物の気配に気付いたのかローブの中で寝ていたライムがひょこりと顔を覗かせて僕の肩の上にぴょこんと乗った。ライムの頭の上には相変らずあの小さな王冠がちょこんと乗っていてとても可愛い。
「え、あ! そのスライム!」
不意に食い入るようにギルド職員がライムの方へと身を乗り出した。
「ああ、そうか! スライム! 君があのスライムキングだったんだ!」
「?? スライムキングって何ですか?」
突然意味不明の名称で呼ばれて僕は意味が分からず首を傾げる。一方で職員さんは興奮した様子でライムを見やり「従魔師界隈でダンジョンで変わったスライムを操る少年がいるって噂になってたんだ、その名も通称『スライムキング』! 彼の操るスライムがスライムの癖に偉そうに王冠を被ってるって言うんでそんな名前になったみたいなんだけど、その割には従魔師ギルドに現れないからただのデマかと思ってた」と、一気にまくしたてた。
まさかの変な所で噂になってた……しかも変な通称まで付けられてた! スライムキングって、まるで僕がスライムの王様みたいじゃないか! スライムの王様なのはライムであって僕じゃないし!!
ギルド職員は従魔師らしくちょっと変わったスライムに興味津々で上から下から眺め回している。先程まではお客様相手の敬語だった彼なのに、テンションが上がり過ぎたのか言葉遣いもまるで友達にでも語りかけるように砕けてしまっている。まぁ、その方が僕も話しやすくて助かるけど。
「君のこのスライムは魔術を使うらしいって聞いているけど、本当に?」
「魔術は使わないですよ、分裂したり大きくなったりはしますけど」
「あれ? そうなんだ? 聞いてた話と違うなぁ、なんか凄く強力な魔術を放つって聞いていたんだけど」
「ああ、それならたぶん僕の魔術を取り込んで増幅してるのを見られたんだと思います、しいて言うなら僕とライムの合体技ですね」
そう、Eランク試験の時にやったライムの火炎放射、あんな事ができるのならば他の魔術も一旦ライムに取り込ませて放てば凄い事になるのでは? なんて思って試した結果、想像通りにライムはどんな魔術をも取り込んで増幅する事ができるようになった。
僕の放つただの火球だってライムを経由すれば連弾になる、はっきり言って僕とライムのタッグはかなり無敵だ。まぁ、そうなるまでには色々と試行錯誤もしたけれどね。
「従魔との合体技……ほうほう。君、見た目に反して意外と従魔師スキルのレベルが高いのかな?」
「えっと、どうなんでしょうね?」
「教会で確認したりはしていないのかい?」
「この三年くらいしてないですね」
なんてたって教会は僕にとっては鬼門だからね、この三年間一度だって足を踏み入れたりはしなかったよ。さすがに三年も経ったからいい加減諦めてくれてるとは思うけど、特別赴く用事もないからきっとこれからも教会には行かないと思う。
そもそも自分のスキルレベルを知りたかったら自分で自分を鑑定すればいいだけだし、それも特別マメにチェックするような事ではないと僕は思っている。
「まぁ、最近は教会も少しきな臭い事になってるからあまり近付かない方がいいのかもしれないけれど」
「? そうなんですか? きな臭いって何かあったんですか?」
「最近教会が躍起になって信者を増やそうとしているって噂があるんだよ。どうも王家と教会の確執が深まっているみたいで、王家に対抗するための人の壁を作ろうとしてるんじゃないかってもっぱらの噂」
「人の壁……」
あくまでも噂だと職員さんは言うけれど、何だか少し嫌な感じはするな。元々三年前から聖女であるエリシア様と婚約者である王子との不仲は噂されていた、王子がエリシア様以外の別の女性と結婚したという話は聞かないが、エリシア様と王子が上手くいっているという話も聞かない。
自分には関係ない話だとは思うのだけど、それでも少しだけ気にかかってしまうのは僕がエリシア様とは顔見知りだからなのだろうな。
エリシア様の暴走には辟易していたけれど、あまり話を聞いてあげなかったのは悪かったなと思わなくもないのだ。ただ、聞いたところで僕に何ができる訳でもないのだけれど。
「まぁ、そんな話はさておいて、本来なら従魔師のスキルレベルが5以上じゃないと案内する事が出来ない魔物が居るんだけど、君、興味ない?」
「え? そんな魔物、僕に見せてくれるんですか?」
「従魔との合体技を使える君ならたぶん大丈夫だと思うからね。あ、付き添いの人達はダメですよ」
さらっと言ってのけたギルド職員にルーファウスがムッとしたように鼻白む。
「それは何故ですか?」
「その魔物は人を選ぶからです、従魔師が従魔を選ぶのではなく、そこでは従魔が主を選ぶのです。資質のないモノを魔物は嫌います、従魔師以外はご遠慮ください」
「彼に危険は?」
「ありませんよ、向こうに興味がなければ一瞥されて終わりです」
僕達は魔物を購入しにきたはずなのだが、そこでは魔物が自ら主を選ぶのだと職員は言う。こちらが選ぶのではなく、魔物に選ばれるというのは一体どういう事なのだろう?
いや、それよりもそんな場所にどんな魔物がいるのかが凄く気になる。職員は危険はないと断言してくれたけど、やはり少し怖いな。まぁ、それより好奇心の方が勝るけど。
ギルド職員が僕を促す、僕は「ちょっと見てきますね」と皆を置いて彼の背を追った。
35
お気に入りに追加
561
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
【完結】魔法薬師の恋の行方
つくも茄子
BL
魔法薬研究所で働くノアは、ある日、恋人の父親である侯爵に呼び出された。何故か若い美人の女性も同席していた。「彼女は息子の子供を妊娠している。息子とは別れてくれ」という寝耳に水の展開に驚く。というより、何故そんな重要な話を親と浮気相手にされるのか?胎ました本人は何処だ?!この事にノアの家族も職場の同僚も大激怒。数日後に現れた恋人のライアンは「あの女とは結婚しない」と言うではないか。どうせ、男の自分には彼と家族になどなれない。ネガティブ思考に陥ったノアが自分の殻に閉じこもっている間に世間を巻き込んだ泥沼のスキャンダルが展開されていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる