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第三章

ダンジョン城攻略への手段

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 久しぶりに四人で囲む食卓は賑やかだ。ロイドのDランク試験合格のお祝いでもあるので今日は奮発してベヒモスのステーキだ。ベヒモスは体躯は大きい
魔物なのだが草食で肉に臭みがないので牛肉に似ているなと僕は思っている。
 他にもギムル草と川魚のホイル焼きにポポン草と海藻のサラダ、コカトリスの卵のスープ等々、僕の料理のレパートリーもずいぶん広がったよ。

「はぁ、やっぱりタケルの料理は最高だな! やっぱり出来立てが最高に美味い! 準備してもらってなんだけど、保存食はやっぱり味気ないからな」

 僕はアランとルーファウスがダンジョンに籠る時にはお弁当、というか作り置き料理のようなものを大量に製作する。二人ともサイズの違いはあれどマジックバックを持っていて、準備した料理が痛む事はないのでそこは安心して渡しているのだけど、出来たてほやほやの料理と比べたらやはり味気なくなってしまうのだろうな。

「まだまだおかわりはあるので、たくさん食べてくださいね」
「俺はもうタケルの飯のない生活なんて考えられん、いっそ俺のところに嫁に来い」
「あはは、またそういう事言う。アランは口が上手だよね、そうやって奥さんも口説いたんですか?」
「まぁな」

 アランは奥さんの話題を出してもニコニコしている。最初は奥さんの話題は禁句かなと思っていたのだけど、この数年ですっかり吹っ切れたのか僕に色々な昔話を語ってくれるので、僕はずいぶん奥さんの情報にも詳しくなってしまった。
 アランの奥さんは娘さんと一緒に王都に住んでいて、現在親から継いだ宿屋を営んでいるらしい。名前はイライザさん。アランとの馴れ初めは奥さんの営む宿屋に泊まったアランが食堂で給仕をしていた奥さんに一目惚れして猛アタックの結果、落としたのだとか。
 奥さんは人族なので半獣人であるアランとの結婚には当初奥さんの両親に大反対されたらしいのだけど、周りからのフォローと後押しがあって無事に結婚出来たんだって。子供は娘さんが一人いて、名前はアリア、時々「もうずいぶん大きくなったんだろうなぁ」なんて、僕を眺めて言っている事がある。
 奥さんはどうやらアラン不在の間に再婚をしてしまったみたいだけれど、嫌い合って別れた訳ではないだろう二人だ、一度くらい会いに行けばいいのにと思わなくもない。だけど、男女の機微なんて未だ彼女居ない歴と童貞歴を更新し続けてる僕に分かるはずもなく、そこは何も言えないままだ。

「そういえば、ダンジョン城の48階層ってどんな感じだったんですか?」
「ん~……一言で言うなら大海原だったな」
「大海原? え? 海、ですか?」
「そう、一面に水面が広がっていて途方に暮れたな」

 アランの言う事には48階層へと続く階段を降りた先にはもう水面しかなく、しかも異次元空間になっているダンジョン内には太陽も照り付けていて、言ってしまえば真夏の海(魔物付き)だったそうだ。
 見渡す限りの大海原を泳いで行く訳にもいかず、船を作ろうにも材料になる物もなく、こんなんどうすんだよ……と思っていたらルーファウスが「まぁ、こんな時もありますよね」って、マジックバックから簡易の船を取り出したのだとか。
 ルーファウスのマジックバックは四次元ポケットか!? いや、機能的には完全に四次元ポケットだけど!

「その鞄の中には船まで入ってるんですか? っていうか、入るんですか!??」
「今アランも言ったと思うけど簡易の船だよ、大型の魔物の腸皮を加工して作られているんだ、使う時には空気を入れて膨らませて使うから、持ち運ぶ時はコンパクトですよ」

 それは言ってしまえばゴムボート? そういうものがこっちの世界にもあるんだね。というか魔物の活用範囲広いな、引取りの際に色々な部位が高額で取引される訳だよ。

「でも、そんな簡易の船では魔物なんか出たら対処大変ですよね……」

 普通の船ならともかく、ゴムボートに乗ってダンジョン攻略なんて僕にはちょっと想像ができない。海に住まう魔物との戦闘だってきっと大変だろうし、海の深さがどの程度か分からないけれど落ちただけでも命取りだ。

「だから様子見だけして今回は帰ってきたんだよ。あそこを攻略するにはちゃんとした船を用意するか、俺達を乗せて泳げる、もしくは空を飛べる従魔を手配した方がいいのかもな」
「アラン、それは新たに従魔師を仲間に加えるという事ですか? 私は嫌ですよ。だったら私が海の上に氷を張って道を作った方がマシです!」
「お前、それ滅茶苦茶大変なの分かってるか?」
「大変なのは分かっています、けれどそれくらい嫌だとこちらも言っているんですよ」

 今後の48階層攻略に向けての意見交換を始めてしまったアランとルーファウス、僕にも何かお手伝いできればいいんだけど、僕ができる事なんて美味しいお弁当を作って持たせてあげる事くらいだもんなぁ……

「あ、そういえばいるじゃねぇか、適任者」
「適任者? 何を言ってるんですか? 私は新たに仲間を増やすのは嫌だと……」
「でも、お前だってタケルと一緒にいけたら嬉しいだろう?」
「は? あんな危険な場所にタケルを連れて行けるわけないでしょう!」
「でもタケルは従魔師テイマーの素質もあるからな」

 え? あれ? なんの話??

「確かにそれはそうですけど従魔がいませんよ、ライムは泳げる、というか浮けはしますけどやはり戦闘力と機動力には欠けますし」
「タケルの為に新たな従魔を購入するのはどうだ? 確かこの街には従魔師ギルドもあったはずだろ? どうせなら飛べるやつがいいな」
「そこは従魔と従魔師の相性次第ですからねぇ……」

 そう言ってアランとルーファウスの二人が僕の方を向く。

「という訳で、明日従魔師ギルドに行ってみるか、タケル」
「え? は? 話が全く見えませんが!?」
「48階層を攻略するには何かしらの策が必要なんだよ、もしタケルが空を飛べる魔物と従魔契約できるようなら俺達はとても助かる」
「それはもしかしてワイバーンとか、そういう魔物を従魔にって事ですか?」

 一応従魔師テイマースキルも持っている僕だけど、現在連れている魔物はスライムのライム一匹だけ。僕にとって従魔は飼い犬、飼い猫みたいなものなので面倒はきちんと飼い主がみなければいけないと考えている。だから僕は飼えないペットは飼わないと決めているのだけど、ワイバーンって確か結構サイズも大きかったよな、果たして僕に扱いきれる魔物なのだろうか?
 ライムみたいにサイズが伸縮自在で聞き分けのいい子ならいいけれど、あまり大きな魔物は食べさせるのも管理するのも大変そうだよな。

「僕にそんな従魔のお世話ができるでしょうか……」
「できるかできないかはやってみないと分からないだろう、とりあえず見に行くだけでも、な」

 アランに説得されて僕は頷く。こんな僕でも二人の役に立てるのならば、できる事はやりたいものな。
 でもワイバーンか、ここメイズでも運送用に使われているワイバーンをたまに見かける事がある。王都にはワイバーン騎兵団なんてのもあると聞いているくらいだからきっと扱いやすい魔物ではあるのだろう。
 言ってしまえば馬と同じようなものだろうか? でも仮に馬だとしたら馬小屋だって必要だし運動をさせる馬場だって必要だろう、そう考えるとワイバーンも飼おうと思い立って簡単に飼える魔物ではないように思う。 
 二人の役に立ちたいとは思うけど、大丈夫なのかなと僕は不安が隠せなかった。

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