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第一章
神子様って何ですか?
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教会の内部は旅行雑誌なんかでよく見る海外の教会によく似ていた。天窓にはステンドグラスが嵌っていて日差しを受けて室内もキラキラ光って見える。
アランの肩車から降ろされて僕達がキラキラした礼拝堂を三人で歩いて行くと奥から来客に気付いたのだろう白い法衣を着た修道女と思われる老齢の女性が「本日はどういった御用件ですか?」と声をかけてきた。
アランが一通りの説明と僕のステータスの確認、身分証の再発行をお願いしたいと彼女に告げると彼女は僕を手招き別の部屋へと案内してくれる。その部屋は6畳程の広さで部屋の奥には水晶のような物が設置された台が置かれていた。
アランとルーファウスは部屋の前までは一緒に来てくれたのだが、部屋の中に通されたのは僕だけで、これは他人のステータスを覗き見る事を防ぐための措置である事を説明された。いわゆる個人情報保護的措置ってやつだな。
部屋に入ると僕は水晶に手をかざし祈るように指示された。でも祈るって……一体何を祈ればいいのか分からなかったのだが、とりあえず瞳を瞑ってそれらしくしていたら「もう良いですよ」と声をかけられた。
「こちらが貴方の基本的なステータスになります。素晴らしいですね、貴方は何処かの神子様ですか?」
にこやかな修道女に手渡された羊皮紙には様々な文字や数字が書き記されている。けれど、僕はそれの何が素晴らしいのかがさっぱり分からない。
一応文字は読めるのだが、それはあくまで文字と数字の羅列でしかなく僕には見方がさっぱり分からないのだ。
「あの、これは一体どう見ればいいのでしょうか?」
「どうと言うと?」
「今、貴女に僕のステータスを素晴らしいと言っていただきましたが、僕には何が素晴らしいのかが分かりません。それに神子って何ですか?」
修道女が驚いたような様子で僕を見やる。
「今まで御自分のステータスを鑑定した事は?」
「ないです」
そもそも僕は今日この世界に来たばかりだしな。
「そうなのですね。初めてこのステータスを見たのであればもっと驚くべきだと私は思うのですが……」
そう言って彼女は僕にステータスの説明をしてくれる。曰く僕には全属性の魔法適性がある事、特に聖属性魔法の適性がずば抜けている事と魔力量が人より多い事を彼女は教えてくれた。
聖属性という事は回復系だろうな、それ以外も使えるみたいだけど聖属性の適性が高いので聖職者見習い、いわゆる『神子』なのではないかと彼女は思ったのだそうだ。
魔法以外の適性値も決して低くはなく、僕ならどんな職業についてもそれなりに生活が出来るようになるだろうと彼女は太鼓判を押してくれた。やったね!
だけど、適性があっても現在魔法を使った事もなければ魔物を倒した事もない僕のレベルは低い。スキルとして並んでいる数字もほとんどが1~3だ、そんな中で『礼儀作法』だけが6だったのは笑ったけど。
ちなみにスキルレベルは10段階、1~3は普通レベル、5以上は人より優れているという事らしい。ちなみに技能スキルの『礼儀作法』が6だったのは前世の影響なのかもしれない。長く接客業を続けてきたので無意識で腰が低くなっているみたいだ。ちなみに次点は『魅了』と『家事』で4だった。
恋愛経験ゼロの僕が『魅了』だなんてこれまた苦笑してしまったのだけど、神様に恋愛に興味があると告げたので少しだけおまけしてくれたのかもな。『家事』に関しては40まで独身だったのだから察して欲しい。
ついで性格的な面では『忍耐』値が高いとも言われた。
忍耐値って……そんなモノまで可視化されるのかと僕は少しげんなりする。人の事を何でもかんでも数値化するのはどうかと思う。けれど見たくなければ教会で見なければいいだけの話で、僕はやはりこのステータスという仕組みは嫌いだなと思った。
そういえばこのステータス一覧表、自分が現在持っている特殊スキルも見る事ができるのだが、なんか『鑑定』入ってた。アランは鑑定スキルはレアだって言ってたのに、持ってた。教会に来る必要全然なかった……まぁ、身分証の発行という点ではどのみち来なければならなかったのだけど。
ちなみに職業は『迷子』になってた。見た時思わず「おい!」と突っ込んだけれど、僕は現在それ以外の何者でもないのでそれは受け入れるしかないみたいだ。
あと『迷子』の横には『駆け出し従魔師』と書かれていて、一応従魔師の適正もあるみたい。今後伸ばすかどうかは別問題だけど。そもそも魔物とどうやって契約するのかが分からないのだからそこは一から学ばなければどうにもならない。
修道女さんにこれからの僕の伸びしろを鑑定する事も出来ると言われたのだが、それにはある一定以上の寄付金が必要だと言われたので僕はそれを辞退した。
自分のこれからを他人に決めてもらうのはどうかと思うし、そもそもお金も持っていない。
僕が部屋を出るとアランとルーファウスが「どうだった?」と声をかけてきたのだが、どうだったも何も、当然ながら僕について何か分かる事がある訳もない。通常であればステータスを表示すると職業の下に称号というのが出るらしく、そこには「誰それの子」とか「なんとか村の住人」とか表記されるらしいのだが、そういえばそこは真っ白の白紙だったと思う。
「名前が分かってるのに称号が何も出てこないなんてそんな事あるか?」
「基本的にはあり得ないね、考えられるとしたら意図的に隠蔽されているのかもしれない、としか……」
「隠蔽? そんな事できるんですか?」
「できるかできないかで言ったらできる。教会で見られるのは基本的なステータス部分だけだから特殊スキルでもある『隠蔽』を持っていれば、情報開示箇所を選択する事ができると聞いた事がある。君にはもしかしたら他人に知られると不都合な称号が付いているのかも知れないね」
へぇ、そうなんだ……だとしたら僕のステータスにはまだ隠された部分があるのかもしれないな。なにせ神様が直接いじっていたし、その辺僕には分からないけれど。
「鑑定スキルを持っている人に直接鑑定してもらえば、その辺も見られるようになるかもしれないけど、如何せん鑑定スキルはレアな特殊スキルだし個人鑑定はとても高額だと聞いているよ」
「そうなんですね……だとしたら無一文の今の僕では鑑定は無理ですね」
まぁ、自前で鑑定スキル持ってるから見ようと思えば自分で見られるんだろうけど! でももし隠ぺいしたのが神様なのだとしたらその辺りはあまり他人に知られてはいけないという可能性もある。ここは黙っているのが正解だろう。
そういえばステータス画面で確認したのだが、今の僕の年齢は10歳らしい。若いな、ってか若すぎる……こんな子供が無一文で社会に放り出されてこれからどう生活していったらいいかが分からない。
この世界では10歳でも働いて稼ぐ事はできるのだろうか?
僕が率直に不安を吐露すると、アランとルーファウスは「それなら冒険者ギルドに登録するといい」と言ってくれた。
冒険者ギルド! ファンタジーの定番ギルド!!
「僕みたいな子供でも登録できるんですか?」
「試験に合格出来さえすれば登録に年齢制限はないよ」
さらりと返される返答。
おお! さすがにそういう所ゆるゆるだな。子供の人権とかそういうので騒ぐ人間はこの世界にはいないのだろう、というかむしろ働かざる者食うべからずな考えなんだろうな。
「ちなみに試験というのはどういう……?」
「簡単な筆記試験と実技だよ。筆記は必要最低限自分の名前が書ける事、あとどうしたって冒険者として働くなら依頼書を読む事もしなければいけないから、その内容が理解できれば問題ない。実技の方は自分の適性を見誤らなければ大体通ると思うよ。ちなみにタケルの適性はどうだった?」
「魔術には特に適性があると言われました。あと、それ以外も大体適性があるから基本的には何でも出来るだろうって」
「お、それっていわゆる器用貧乏になりやすいタイプなんじゃねぇの?」
『器用貧乏』それは何でも器用にこなすけれど、どれもこれも大成しない一番嫌なタイプだ……確かに言われてしまえばその通りで僕は落ち込む。
「アラン! そういう事言わない! それにタケルは何を伸ばすか決めていないみたいだし、これから好きなスキルを伸ばせばいいだけで問題ないよ。むしろ選択肢が広い分お得なんだから!」
「ルーファウスさん……」
即座にフォローを入れてくれたルーファウスは優しい。一方でアランは歯に衣着せぬタイプなんだな。
「タケルはこれから何をしたい? 魔術だったらある程度私が教えてあげられるし、体術ならアランが教えてくれるよ」
「まぁ、乗り掛かった舟だしな、俺達のできる事はサポートはさせてもらうからやりたい事言ってみ」
二人が代わる代わる僕の顔を覗き込む。僕は今日初めて会ったばかりの見ず知らずのただの子供なのに二人は僕にとても優しい。はっきり迷惑しかかけていないはずなのに何でこんなに優しくしてくれるのか不思議で仕方がない。
もしかしてこれはスキル『魅了』が発動している? 魅了って同性にも効くのだろうか? なんにせよ人間関係が良いのは良い事だ。
「だったら一番適性が高いと言われた魔術を教わりたいです!」
僕がそう答えると、ルーファウスは「任せて」と笑みを見せた。
アランの肩車から降ろされて僕達がキラキラした礼拝堂を三人で歩いて行くと奥から来客に気付いたのだろう白い法衣を着た修道女と思われる老齢の女性が「本日はどういった御用件ですか?」と声をかけてきた。
アランが一通りの説明と僕のステータスの確認、身分証の再発行をお願いしたいと彼女に告げると彼女は僕を手招き別の部屋へと案内してくれる。その部屋は6畳程の広さで部屋の奥には水晶のような物が設置された台が置かれていた。
アランとルーファウスは部屋の前までは一緒に来てくれたのだが、部屋の中に通されたのは僕だけで、これは他人のステータスを覗き見る事を防ぐための措置である事を説明された。いわゆる個人情報保護的措置ってやつだな。
部屋に入ると僕は水晶に手をかざし祈るように指示された。でも祈るって……一体何を祈ればいいのか分からなかったのだが、とりあえず瞳を瞑ってそれらしくしていたら「もう良いですよ」と声をかけられた。
「こちらが貴方の基本的なステータスになります。素晴らしいですね、貴方は何処かの神子様ですか?」
にこやかな修道女に手渡された羊皮紙には様々な文字や数字が書き記されている。けれど、僕はそれの何が素晴らしいのかがさっぱり分からない。
一応文字は読めるのだが、それはあくまで文字と数字の羅列でしかなく僕には見方がさっぱり分からないのだ。
「あの、これは一体どう見ればいいのでしょうか?」
「どうと言うと?」
「今、貴女に僕のステータスを素晴らしいと言っていただきましたが、僕には何が素晴らしいのかが分かりません。それに神子って何ですか?」
修道女が驚いたような様子で僕を見やる。
「今まで御自分のステータスを鑑定した事は?」
「ないです」
そもそも僕は今日この世界に来たばかりだしな。
「そうなのですね。初めてこのステータスを見たのであればもっと驚くべきだと私は思うのですが……」
そう言って彼女は僕にステータスの説明をしてくれる。曰く僕には全属性の魔法適性がある事、特に聖属性魔法の適性がずば抜けている事と魔力量が人より多い事を彼女は教えてくれた。
聖属性という事は回復系だろうな、それ以外も使えるみたいだけど聖属性の適性が高いので聖職者見習い、いわゆる『神子』なのではないかと彼女は思ったのだそうだ。
魔法以外の適性値も決して低くはなく、僕ならどんな職業についてもそれなりに生活が出来るようになるだろうと彼女は太鼓判を押してくれた。やったね!
だけど、適性があっても現在魔法を使った事もなければ魔物を倒した事もない僕のレベルは低い。スキルとして並んでいる数字もほとんどが1~3だ、そんな中で『礼儀作法』だけが6だったのは笑ったけど。
ちなみにスキルレベルは10段階、1~3は普通レベル、5以上は人より優れているという事らしい。ちなみに技能スキルの『礼儀作法』が6だったのは前世の影響なのかもしれない。長く接客業を続けてきたので無意識で腰が低くなっているみたいだ。ちなみに次点は『魅了』と『家事』で4だった。
恋愛経験ゼロの僕が『魅了』だなんてこれまた苦笑してしまったのだけど、神様に恋愛に興味があると告げたので少しだけおまけしてくれたのかもな。『家事』に関しては40まで独身だったのだから察して欲しい。
ついで性格的な面では『忍耐』値が高いとも言われた。
忍耐値って……そんなモノまで可視化されるのかと僕は少しげんなりする。人の事を何でもかんでも数値化するのはどうかと思う。けれど見たくなければ教会で見なければいいだけの話で、僕はやはりこのステータスという仕組みは嫌いだなと思った。
そういえばこのステータス一覧表、自分が現在持っている特殊スキルも見る事ができるのだが、なんか『鑑定』入ってた。アランは鑑定スキルはレアだって言ってたのに、持ってた。教会に来る必要全然なかった……まぁ、身分証の発行という点ではどのみち来なければならなかったのだけど。
ちなみに職業は『迷子』になってた。見た時思わず「おい!」と突っ込んだけれど、僕は現在それ以外の何者でもないのでそれは受け入れるしかないみたいだ。
あと『迷子』の横には『駆け出し従魔師』と書かれていて、一応従魔師の適正もあるみたい。今後伸ばすかどうかは別問題だけど。そもそも魔物とどうやって契約するのかが分からないのだからそこは一から学ばなければどうにもならない。
修道女さんにこれからの僕の伸びしろを鑑定する事も出来ると言われたのだが、それにはある一定以上の寄付金が必要だと言われたので僕はそれを辞退した。
自分のこれからを他人に決めてもらうのはどうかと思うし、そもそもお金も持っていない。
僕が部屋を出るとアランとルーファウスが「どうだった?」と声をかけてきたのだが、どうだったも何も、当然ながら僕について何か分かる事がある訳もない。通常であればステータスを表示すると職業の下に称号というのが出るらしく、そこには「誰それの子」とか「なんとか村の住人」とか表記されるらしいのだが、そういえばそこは真っ白の白紙だったと思う。
「名前が分かってるのに称号が何も出てこないなんてそんな事あるか?」
「基本的にはあり得ないね、考えられるとしたら意図的に隠蔽されているのかもしれない、としか……」
「隠蔽? そんな事できるんですか?」
「できるかできないかで言ったらできる。教会で見られるのは基本的なステータス部分だけだから特殊スキルでもある『隠蔽』を持っていれば、情報開示箇所を選択する事ができると聞いた事がある。君にはもしかしたら他人に知られると不都合な称号が付いているのかも知れないね」
へぇ、そうなんだ……だとしたら僕のステータスにはまだ隠された部分があるのかもしれないな。なにせ神様が直接いじっていたし、その辺僕には分からないけれど。
「鑑定スキルを持っている人に直接鑑定してもらえば、その辺も見られるようになるかもしれないけど、如何せん鑑定スキルはレアな特殊スキルだし個人鑑定はとても高額だと聞いているよ」
「そうなんですね……だとしたら無一文の今の僕では鑑定は無理ですね」
まぁ、自前で鑑定スキル持ってるから見ようと思えば自分で見られるんだろうけど! でももし隠ぺいしたのが神様なのだとしたらその辺りはあまり他人に知られてはいけないという可能性もある。ここは黙っているのが正解だろう。
そういえばステータス画面で確認したのだが、今の僕の年齢は10歳らしい。若いな、ってか若すぎる……こんな子供が無一文で社会に放り出されてこれからどう生活していったらいいかが分からない。
この世界では10歳でも働いて稼ぐ事はできるのだろうか?
僕が率直に不安を吐露すると、アランとルーファウスは「それなら冒険者ギルドに登録するといい」と言ってくれた。
冒険者ギルド! ファンタジーの定番ギルド!!
「僕みたいな子供でも登録できるんですか?」
「試験に合格出来さえすれば登録に年齢制限はないよ」
さらりと返される返答。
おお! さすがにそういう所ゆるゆるだな。子供の人権とかそういうので騒ぐ人間はこの世界にはいないのだろう、というかむしろ働かざる者食うべからずな考えなんだろうな。
「ちなみに試験というのはどういう……?」
「簡単な筆記試験と実技だよ。筆記は必要最低限自分の名前が書ける事、あとどうしたって冒険者として働くなら依頼書を読む事もしなければいけないから、その内容が理解できれば問題ない。実技の方は自分の適性を見誤らなければ大体通ると思うよ。ちなみにタケルの適性はどうだった?」
「魔術には特に適性があると言われました。あと、それ以外も大体適性があるから基本的には何でも出来るだろうって」
「お、それっていわゆる器用貧乏になりやすいタイプなんじゃねぇの?」
『器用貧乏』それは何でも器用にこなすけれど、どれもこれも大成しない一番嫌なタイプだ……確かに言われてしまえばその通りで僕は落ち込む。
「アラン! そういう事言わない! それにタケルは何を伸ばすか決めていないみたいだし、これから好きなスキルを伸ばせばいいだけで問題ないよ。むしろ選択肢が広い分お得なんだから!」
「ルーファウスさん……」
即座にフォローを入れてくれたルーファウスは優しい。一方でアランは歯に衣着せぬタイプなんだな。
「タケルはこれから何をしたい? 魔術だったらある程度私が教えてあげられるし、体術ならアランが教えてくれるよ」
「まぁ、乗り掛かった舟だしな、俺達のできる事はサポートはさせてもらうからやりたい事言ってみ」
二人が代わる代わる僕の顔を覗き込む。僕は今日初めて会ったばかりの見ず知らずのただの子供なのに二人は僕にとても優しい。はっきり迷惑しかかけていないはずなのに何でこんなに優しくしてくれるのか不思議で仕方がない。
もしかしてこれはスキル『魅了』が発動している? 魅了って同性にも効くのだろうか? なんにせよ人間関係が良いのは良い事だ。
「だったら一番適性が高いと言われた魔術を教わりたいです!」
僕がそう答えると、ルーファウスは「任せて」と笑みを見せた。
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