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番外編
そして愛を知る③
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ウルは思っていた通り獣種は狼で、元々の出身は魔大陸イグシードだと聞いて驚いた。
「凄い! それでそんなに強いんだ!」
「いや、イグシードに暮らしていたのは本当に幼い時分だけで、両親が魔物にやられて親戚に引き取られてからはずっとガレリアなんでそこはあまり関係ない」
「でもイグシードはこっちに比べて物凄く魔物が多いって……」
「それはまぁ、そうだったな。日常に魔物がいるのは当たり前で、その辺の取るに足りない魔物は大人は狩る事もしなかった。むしろそれは子供のおもちゃのようなモノで、狩りの技術は遊びの中で覚えた」
「凄い! 僕なんか魔物を見るだけでも怖いのに!」
ウルは「この街はよほど平和だったんだな」と微かに苦笑する。
「今はそうでもないが、この辺は元々魔物が少ないのだろうな。今は綻びが出ているが街の結界も強力だ、誰が組んだ結界か知らないが、相当な魔術の使い手なのだろう」
「街の結界……」
「修繕の気配がないが、誰かこの結界魔法を修復できる者はいないのか? そういえばこの店も同じ術者の魔力を感じるが……」
またしても、僕の瞳からぼろりと涙が零れ落ちる。もう泣いては駄目だと何度も自分に言い聞かせているのに、その魔術がヨムの物だと気付いてしまったらもう駄目だった。
ヨムはこの街を守っていた。街に結界を張っているなんて知らなかった僕だけど、そうなんだ、ヨムの魔術はまだこの街に残ってるんだ。
「君は、またなんで泣く!」
「それ、僕の旦那さん」
「え……」
「ヨムの力はまだ、この街に残ってるんだね。なんで僕には分からないんだろう、僕はヨムのお嫁さんなのに」
「ヨム……何処かで聞き覚えがあると思っていたら、君の旦那はもしかしてヨウム族の賢者ヨムか?」
「賢……者?」
賢者って魔導士の上の資格だよね? あれ? ヨムって魔導士だよね? 賢者? 僕、そんなの聞いてない。
「なんで……」
「私の師匠が賢者ヨムの弟子だと聞いている。世界の果て近くの狼獣人の集落から私は来た。君はコテツ様を知っているか?」
「!? コテツさんは知ってる、最近来ないけどうちのお店の常連さん!」
僕と同じ半獣人なのに魔導士の資格を持っているというコテツさんは僕がここに嫁いでくる前からの常連客だ。ずいぶん品の良い人で、僕も仲良くしてもらっている。
コテツさんってヨムのお弟子さんだったんだ……確かに元々出身はこの街だと聞いていたけど、そんなの全然知らなかった。
「あれ? でも、だとするとウルはシロウと同郷?」
「!? 君はシロウを知っているのか!?」
「元々はシロウの父親のジロウさんがヨムの所によく来てて、そんな伝手でシロウも魔道具に関してはうちの店を利用してくれてたんだ。ヨムもガレリア調査団の一員だったんだよ、前線には立たないけど、ジロウさんの持ち込む遺物の鑑定とかしていたんだ」
何故かウルの表情が険しくなり何かを考え込むように腕を組む。思わず「どうしたの?」と声をかけると「シロウはここへはよく来るのか?」とやはり険しい顔で問われ、僕は戸惑いながらも頷いた。
「あの……シロウがどうかしたの?」
「あいつは私の仇を匿っている」
「え……」
「君も大賢者クロームの事は知っているだろう、あいつはそのクロームの子供を匿っている」
大賢者クローム、それはこの世界に魔物を呼び込んだ者と言われ、今は中央に幽閉されている大賢者の一人だ。
大賢者クロームが捕らえられた十数年前、ヨムは何度となく中央への出頭を命じられていた。何故ヨムが中央に出頭を命じられるのか、ヨムとクロームの間に何か因縁があるのかなんて僕には分からなくて、ヨムは自分は何もしていないのだから心配する必要はないと僕に言ったし、それ以上は聞いてくれるなという雰囲気で何も話してはくれなかったので僕はそれ以上の事をヨムに聞く事はできなかった。
けれどあの頃、いつも穏やかに泰然としているヨムが珍しく精神的に荒れていたのを僕はよく覚えている。
「今回のこの魔物の襲撃だってそうだ。タイミングが良すぎる、奴らはこの世界を牛耳ろとしている、そしてまんまとそれに成功した」
「ちょ……え? なに? それどういう事?」
ウルの言っている事は僕には完全に意味不明で、ヨムを思い出して涙ぐんでいた涙は完全に引っ込んでしまった。
そもそもシロウってあのシロウだろ? シリウスの尻に敷かれていつもおどおどしている真っ白な狼獣人、そこそこ戦えはするが肉食獣にしては頼りない、半獣人のシリウスの方がよほど獣人らしいともっぱらの評判で、そんなシロウとウルの語る陰謀論が結びつくはずもなく僕は困惑する。
「今回のこの魔物の襲撃で大賢者ヨセフ様と大賢者カトリーヌ様が亡くなったと聞く、その後継に座っている者の名を君は知っているか?」
ウルの問いかけに僕は街で囁かれる噂を頭の中で反芻する。その者はまだずいぶん年若い『人』だと聞いている。繁殖力しか能がないと言われる『人』だが、その人物は魔術や武術に優れ、手下のように獣人達を纏め上げて各地の救済に回っていると聞いた。
魔物の襲撃で亡くなった大賢者様達から命を託されその力を手に入れたのだとか真偽の分からない噂も聞いているし、その者は一部で救世主などと呼ばれているらしいという話も聞いてはいたが、僕は自分の生活に忙しく、その人がどんな人物なのか知りもしない。
「そいつはシリウスという名で、私達の集落で暮らしていた者の姿をしている。けれど、中身はあの憎き魔王の手下、大賢者クロームの子供だ」
「え……」
「シロウは騙されている。奴がどういう手段でシリウスの身体を乗っ取ったのか詳しい事情は私にも分からない、だがあの者がシリウスではないという事と中身はクロームの子供であるという事、そして現在そんな奴がこの世界を牛耳ろうとしている事は間違えようのない事実、私はそれを直接大賢者ヨセフ様から聞いている」
「ちょっと待ってウル、それはシリウスの話? それともスバル君の話?」
瞬間驚いたようにウルがこちらを見やり「君は何故その名を知っている……?」と不審気な瞳を僕へと向けた。
「僕、スバル君とは友達だよ。シリウスは魔術も半獣人も毛嫌いしていてあまり仲良くなれなかったけど、スバル君はとても素直でいい子……」
「君は騙されている!」
最後まで言わせてもらえず叫ぶように吠えられた。思わずびくりと跳ねて身体を縮こませると、それに気付いたのだろうウルは気まずげに瞳を逸らす。
「すまん、怖がらせるつもりはなかった」
「いえ、でも、本当にスバル君はそんな……本当なんですか? 本当に彼はあの大賢者の……?」
「ああ、間違いない。それはシロウも言っていたし、なにより大賢者ヨセフ様が裏付けまで取ってくれた。だがしかし、ヨセフ様は奴等の返り討ちにあい今となっては帰らぬ人だ」
「そんな……」
ウルの語る事を僕は俄かには信じられない、けれどもしそれが事実なのだとしたらヨムを殺したのはあの穏やかで優し気なスバルだという事になる。
「でもまさかこんなに直ぐに仇の情報が得られるとはな、私はとてもツイている。これも何かのお導きか? 大賢者ヨセフ様が自分の仇を討ってくれと私を導いてくれているのかもしれないな。ビット、君は他にも何か情報を持ってはいないか? 何でもいい、少しの情報でも今は貴重な情報だ」
両肩を掴まれぐいっとウルの顔が近付いてくる、それはただ単に情報を得たいウルの行動だったのだろうけれど、僕の心音はまた大きく跳ね上がった。
「あの、えっと……僕も詳しい事は……」
「そうか」
あからさまな落胆の表情、僕はそれに動揺してスバルとの記憶を反芻する。彼は不思議な少年だった。膨大な魔力を持っているらしいのにそれを全く使いこなせず、少しの魔術で倒れる事を繰り返していた。
姿形はシリウスと全く同じなのに話し方も性格も何もかもが違っていて不思議な事ばかり話していた。彼は別の世界からやって来たとそんな事も言っていて、本当にそんな事があるのかと僕も半信半疑だったけれど、それはウルの語る話とも合致する。
けれどシロウとスバルは仲睦まじく、可愛らしいカップルだと微笑ましく思っていたのだ、なのに……どうして……
スバルはシロウを利用してこの世界を支配しようとしていた……? いや、でも彼はそんな素振りは微塵も見せなかったではないか!
獣人をその魔力で持ち上げ巨大な火柱も上げて見せたスバルだが、その自分の力をまったく使いこなせてはいなかった。まさかアレも演技だったとでも言うのだろうか? だが大賢者クロームもまた魔術師としては稀有な能力を持った獣人だと聞いている、もしスバルがそんなクロームの子供なのだとしたらあの魔力にも納得がいくけれど……
「あれ、でも待って……その救世主って言われてるの僕は『人』だって聞いているよ、でもスバル君は半獣人だ」
「高位の魔術師ならば自身の姿などいくらでも変えられる」
「それはそうかもしれないけど……」
それにしても、だったら何故それが『人』の姿でなければならないのか、この世界は獣人が支配している世界、姿を変じるのならば『人』ではなく『獣人』に変じた方がよほど身動きが取りやすいはずだ。
「それに大賢者ヨセフ様も『人』だった、その方が都合が良かったのだろう」
「え……」
この世界を支配しているのは中央に集う獣人達、そこには優秀な者が集められてこの世界を統治している。大賢者はその中でも高位の役職で世界の中枢であると言ってもいい、それが『人』であるなどとは俄かには信じ難い。
「何はともあれ奴等の情報を得られたのは有難い、もしまた何か思い出す事があったら私に教えてくれ」
ウルは満足気な表情でそんな事を言うので、僕はあまり納得はいかないのだけど、こくりと首を縦に振った。
あの魔物の襲撃からこの世界は何もかもが変わってしまった。
何を信じ、どう生きていけばいいのか自分自身も迷走気味で、僕はその時頷く事しか出来なかったんだ。
「凄い! それでそんなに強いんだ!」
「いや、イグシードに暮らしていたのは本当に幼い時分だけで、両親が魔物にやられて親戚に引き取られてからはずっとガレリアなんでそこはあまり関係ない」
「でもイグシードはこっちに比べて物凄く魔物が多いって……」
「それはまぁ、そうだったな。日常に魔物がいるのは当たり前で、その辺の取るに足りない魔物は大人は狩る事もしなかった。むしろそれは子供のおもちゃのようなモノで、狩りの技術は遊びの中で覚えた」
「凄い! 僕なんか魔物を見るだけでも怖いのに!」
ウルは「この街はよほど平和だったんだな」と微かに苦笑する。
「今はそうでもないが、この辺は元々魔物が少ないのだろうな。今は綻びが出ているが街の結界も強力だ、誰が組んだ結界か知らないが、相当な魔術の使い手なのだろう」
「街の結界……」
「修繕の気配がないが、誰かこの結界魔法を修復できる者はいないのか? そういえばこの店も同じ術者の魔力を感じるが……」
またしても、僕の瞳からぼろりと涙が零れ落ちる。もう泣いては駄目だと何度も自分に言い聞かせているのに、その魔術がヨムの物だと気付いてしまったらもう駄目だった。
ヨムはこの街を守っていた。街に結界を張っているなんて知らなかった僕だけど、そうなんだ、ヨムの魔術はまだこの街に残ってるんだ。
「君は、またなんで泣く!」
「それ、僕の旦那さん」
「え……」
「ヨムの力はまだ、この街に残ってるんだね。なんで僕には分からないんだろう、僕はヨムのお嫁さんなのに」
「ヨム……何処かで聞き覚えがあると思っていたら、君の旦那はもしかしてヨウム族の賢者ヨムか?」
「賢……者?」
賢者って魔導士の上の資格だよね? あれ? ヨムって魔導士だよね? 賢者? 僕、そんなの聞いてない。
「なんで……」
「私の師匠が賢者ヨムの弟子だと聞いている。世界の果て近くの狼獣人の集落から私は来た。君はコテツ様を知っているか?」
「!? コテツさんは知ってる、最近来ないけどうちのお店の常連さん!」
僕と同じ半獣人なのに魔導士の資格を持っているというコテツさんは僕がここに嫁いでくる前からの常連客だ。ずいぶん品の良い人で、僕も仲良くしてもらっている。
コテツさんってヨムのお弟子さんだったんだ……確かに元々出身はこの街だと聞いていたけど、そんなの全然知らなかった。
「あれ? でも、だとするとウルはシロウと同郷?」
「!? 君はシロウを知っているのか!?」
「元々はシロウの父親のジロウさんがヨムの所によく来てて、そんな伝手でシロウも魔道具に関してはうちの店を利用してくれてたんだ。ヨムもガレリア調査団の一員だったんだよ、前線には立たないけど、ジロウさんの持ち込む遺物の鑑定とかしていたんだ」
何故かウルの表情が険しくなり何かを考え込むように腕を組む。思わず「どうしたの?」と声をかけると「シロウはここへはよく来るのか?」とやはり険しい顔で問われ、僕は戸惑いながらも頷いた。
「あの……シロウがどうかしたの?」
「あいつは私の仇を匿っている」
「え……」
「君も大賢者クロームの事は知っているだろう、あいつはそのクロームの子供を匿っている」
大賢者クローム、それはこの世界に魔物を呼び込んだ者と言われ、今は中央に幽閉されている大賢者の一人だ。
大賢者クロームが捕らえられた十数年前、ヨムは何度となく中央への出頭を命じられていた。何故ヨムが中央に出頭を命じられるのか、ヨムとクロームの間に何か因縁があるのかなんて僕には分からなくて、ヨムは自分は何もしていないのだから心配する必要はないと僕に言ったし、それ以上は聞いてくれるなという雰囲気で何も話してはくれなかったので僕はそれ以上の事をヨムに聞く事はできなかった。
けれどあの頃、いつも穏やかに泰然としているヨムが珍しく精神的に荒れていたのを僕はよく覚えている。
「今回のこの魔物の襲撃だってそうだ。タイミングが良すぎる、奴らはこの世界を牛耳ろとしている、そしてまんまとそれに成功した」
「ちょ……え? なに? それどういう事?」
ウルの言っている事は僕には完全に意味不明で、ヨムを思い出して涙ぐんでいた涙は完全に引っ込んでしまった。
そもそもシロウってあのシロウだろ? シリウスの尻に敷かれていつもおどおどしている真っ白な狼獣人、そこそこ戦えはするが肉食獣にしては頼りない、半獣人のシリウスの方がよほど獣人らしいともっぱらの評判で、そんなシロウとウルの語る陰謀論が結びつくはずもなく僕は困惑する。
「今回のこの魔物の襲撃で大賢者ヨセフ様と大賢者カトリーヌ様が亡くなったと聞く、その後継に座っている者の名を君は知っているか?」
ウルの問いかけに僕は街で囁かれる噂を頭の中で反芻する。その者はまだずいぶん年若い『人』だと聞いている。繁殖力しか能がないと言われる『人』だが、その人物は魔術や武術に優れ、手下のように獣人達を纏め上げて各地の救済に回っていると聞いた。
魔物の襲撃で亡くなった大賢者様達から命を託されその力を手に入れたのだとか真偽の分からない噂も聞いているし、その者は一部で救世主などと呼ばれているらしいという話も聞いてはいたが、僕は自分の生活に忙しく、その人がどんな人物なのか知りもしない。
「そいつはシリウスという名で、私達の集落で暮らしていた者の姿をしている。けれど、中身はあの憎き魔王の手下、大賢者クロームの子供だ」
「え……」
「シロウは騙されている。奴がどういう手段でシリウスの身体を乗っ取ったのか詳しい事情は私にも分からない、だがあの者がシリウスではないという事と中身はクロームの子供であるという事、そして現在そんな奴がこの世界を牛耳ろうとしている事は間違えようのない事実、私はそれを直接大賢者ヨセフ様から聞いている」
「ちょっと待ってウル、それはシリウスの話? それともスバル君の話?」
瞬間驚いたようにウルがこちらを見やり「君は何故その名を知っている……?」と不審気な瞳を僕へと向けた。
「僕、スバル君とは友達だよ。シリウスは魔術も半獣人も毛嫌いしていてあまり仲良くなれなかったけど、スバル君はとても素直でいい子……」
「君は騙されている!」
最後まで言わせてもらえず叫ぶように吠えられた。思わずびくりと跳ねて身体を縮こませると、それに気付いたのだろうウルは気まずげに瞳を逸らす。
「すまん、怖がらせるつもりはなかった」
「いえ、でも、本当にスバル君はそんな……本当なんですか? 本当に彼はあの大賢者の……?」
「ああ、間違いない。それはシロウも言っていたし、なにより大賢者ヨセフ様が裏付けまで取ってくれた。だがしかし、ヨセフ様は奴等の返り討ちにあい今となっては帰らぬ人だ」
「そんな……」
ウルの語る事を僕は俄かには信じられない、けれどもしそれが事実なのだとしたらヨムを殺したのはあの穏やかで優し気なスバルだという事になる。
「でもまさかこんなに直ぐに仇の情報が得られるとはな、私はとてもツイている。これも何かのお導きか? 大賢者ヨセフ様が自分の仇を討ってくれと私を導いてくれているのかもしれないな。ビット、君は他にも何か情報を持ってはいないか? 何でもいい、少しの情報でも今は貴重な情報だ」
両肩を掴まれぐいっとウルの顔が近付いてくる、それはただ単に情報を得たいウルの行動だったのだろうけれど、僕の心音はまた大きく跳ね上がった。
「あの、えっと……僕も詳しい事は……」
「そうか」
あからさまな落胆の表情、僕はそれに動揺してスバルとの記憶を反芻する。彼は不思議な少年だった。膨大な魔力を持っているらしいのにそれを全く使いこなせず、少しの魔術で倒れる事を繰り返していた。
姿形はシリウスと全く同じなのに話し方も性格も何もかもが違っていて不思議な事ばかり話していた。彼は別の世界からやって来たとそんな事も言っていて、本当にそんな事があるのかと僕も半信半疑だったけれど、それはウルの語る話とも合致する。
けれどシロウとスバルは仲睦まじく、可愛らしいカップルだと微笑ましく思っていたのだ、なのに……どうして……
スバルはシロウを利用してこの世界を支配しようとしていた……? いや、でも彼はそんな素振りは微塵も見せなかったではないか!
獣人をその魔力で持ち上げ巨大な火柱も上げて見せたスバルだが、その自分の力をまったく使いこなせてはいなかった。まさかアレも演技だったとでも言うのだろうか? だが大賢者クロームもまた魔術師としては稀有な能力を持った獣人だと聞いている、もしスバルがそんなクロームの子供なのだとしたらあの魔力にも納得がいくけれど……
「あれ、でも待って……その救世主って言われてるの僕は『人』だって聞いているよ、でもスバル君は半獣人だ」
「高位の魔術師ならば自身の姿などいくらでも変えられる」
「それはそうかもしれないけど……」
それにしても、だったら何故それが『人』の姿でなければならないのか、この世界は獣人が支配している世界、姿を変じるのならば『人』ではなく『獣人』に変じた方がよほど身動きが取りやすいはずだ。
「それに大賢者ヨセフ様も『人』だった、その方が都合が良かったのだろう」
「え……」
この世界を支配しているのは中央に集う獣人達、そこには優秀な者が集められてこの世界を統治している。大賢者はその中でも高位の役職で世界の中枢であると言ってもいい、それが『人』であるなどとは俄かには信じ難い。
「何はともあれ奴等の情報を得られたのは有難い、もしまた何か思い出す事があったら私に教えてくれ」
ウルは満足気な表情でそんな事を言うので、僕はあまり納得はいかないのだけど、こくりと首を縦に振った。
あの魔物の襲撃からこの世界は何もかもが変わってしまった。
何を信じ、どう生きていけばいいのか自分自身も迷走気味で、僕はその時頷く事しか出来なかったんだ。
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