運命に花束を

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運命の子供たち

動き続ける事件の闇

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 騎士団長と浮浪者の闘い。
 圧倒的にスタール騎士団長の方が有利だと思われたその闘いだったが、思いのほかその浮浪者は手強く、なかなか留めの一撃が繰り出せないスタール騎士団長は焦れているようにも見えた。
 何せ場所は騎士団の詰所の中、室内である。大柄な体躯のスタールが剣を振り回すには些か手狭で、場所が悪い。一方で浮浪者の男の方はその細身な体躯でぬるりぬるりとスタールの攻撃を避けるばかりだ。
 周りを取り囲んだ他の騎士団員達も討ち取るタイミングを計ってはいるのだろうが、なかなか動けない様子だ。

「あの人、見かけはアレだけど、ちゃんと訓練された兵士だね」

 ウィルは少しばかり真剣な面持ちで小さく呟いて、そっと俺の前に出た。なんだろう、庇ってくれてるつもりかな? それともいざとなったら自分も出てく気?
 危ないから止めた方がいいと思うけど。

「ウィル、団長の言う通り逃げた方が……」
「スタール団長は負けないよ」

 それでも、ここは一時避難が懸命なのではないかと思うのだが、ウィルは動こうとしないので、俺も動くに動けずそこに立ち尽くした。
 それほど長い時間は経っていないとは思うのだが、しばらくすると浮浪者の動きが鈍ってきた。さすがに体力の差、というやつなのだろう。

「大人しく、縛につけっ!」
「縛にはもう充分過ぎるほどついたさ。俺はもう自由だ!」
「また罪を重ねれば、もう二度と出て来られなくなるぞ」
「望むところだ! 俺の人生はもうあの時に終わっている、だったら好きなように生きて、そして死んでゆくのみ!」

 瞬間、スタールの顔に浮かんだのは憐れみの表情。
 過去この2人の間に何があったのかは分からないのだが、浮浪者のようななりの彼も元々はこんな犯罪者になるような人間ではなかったのではないか……そんな思いが頭を掠めた。

「お前は哀れだな……」
「何とでもほざけ、俺には痛くも痒くもないっ!」

 のらりくらりと剣をかわしていた男が動き、その剣がスタールの脇腹を掠めた。
 それはもはや浮浪者の動きではなく、ウィルの言う通り訓練された兵士を思わせた。

「俺はまだこんな所では終われない。行かせてもらうぞ!」

 言って、その男はスタールに真っ向から突っ込んでいき、その剣を払い俊敏な動きでこちらへと突っ込んできた。そう、こちらへと向かってきたのだ。
 俺が言葉も出せずにただ呆然とその男の動きを目で追っている傍らで、先に反応したのはウィルだった。
 ウィルは武器になるような物は何も持ってはいない。それもそうだろう、子供にそんな危険物を持ち歩かせる親などいない。
 幾ら剣の扱いに長けていたとしても、それを持ち歩いていいのはちゃんと許可を持った大人だけだ、だから俺達2人は完全に丸腰だったのだが、ウィルは脅える様子も見せずににぃっと笑みを見せた。

「悪いけど、犯罪者は必ず倒せって父ちゃんと母ちゃんから教わってる」

 身を低くした体勢からの跳躍、足払い、そして押さえ込み。
 それは一瞬の出来事だった。大きな身体をしていてもそれはまだ子供の身体で身軽なのは分かる、だがその動きは常人の動きとは思えない。そして子供の動きでもない。

「因みに犯罪者相手だったら手加減は必要ないって教わってるから、手加減しないよ」

 相手の身体に乗り上げ、後ろ手に相手の腕を捻り上げる。男はまだじたばたと暴れていたのだが「そんなに暴れたら、折るよ?」という無慈悲な一言に、男は瞬間悔しそうな表情を見せた。

「こんなガキにっ……」
「お前が後ろばかり向いて生きてきた間に、後身は幾らも育ってるってこった」

 押さえ込んだ身柄をウィルから受け取るようにして、スタールはもう一度その男を縛り上げた。

「もう逃がさねぇぞ、せっかく出てきたがお前は牢に逆戻りだ。祭りが終わったらゆっくり取り調べてやるから、檻の中で大人しく冷や飯でも食ってろ」

 そう言ってスタールは今度は本人自ら男を牢へと連行して行き、戻ってくると「怪我した奴等はすぐに処置を。無傷な奴は医者呼んで来い」と次々に指示を飛ばしていった。
 そして、最後に彼はこちらにつかつかと歩いて来て、ウィルの前に立つとひとつ大きな拳骨を落とした。

「いってぇっっ!! 何すんだよっ!」
「俺は逃げろと言ったはずだ、怪我がなかったから良かったものの、あんな犯罪者相手に何かあったらどうするつもりだ!」
「何もなかったんだからいいだろ! ちゃんと捕まえたじゃん!」
「それでもだ! お前はまだ子供、こういうのは大人の仕事でお前達は守られるのが仕事だっ! 分かったら返事!」
「むぅ……」

 完全に不貞腐れたウィルは返事を返さない。確かにスタールの言っている事は正論なのだが、ウィルがいなければあの男を取り逃がしていた可能性があったのも事実なので、どうにもどちらの肩も持てない。

「ウィル坊、返事!」
「父ちゃんだったらそんな事言わねぇもん! 父ちゃんだったら絶対褒めてくれたもん!! スタール騎士団長の馬鹿っっ!」

 ウィルは叫んで、踵を返すと逃げるように駆けて行く。

「ちょ! ウィル!?」

 待って! 俺、置いてかれたら帰り方が分からないっっ!!
 追いかけようとしたのだが、ウィルの足は思いのほか速く、俺はすぐにウィルの姿を見失ってしまった。

「あいつは本当に仕方がない、第3騎士団の奴等がよってたかって甘やかすから怖い物知らずだ。あいつが充分大人と同等に戦える事は分かっているが、それでも年齢的にはまだまだ子供、何かあってからじゃ遅いんだって事を何で誰も理解しないのか……」

 傍らのスタールは零すようにそう呟くのを見上げて、この人の言っている事は物凄く常識的なことだというのは分かるのだが、少しばかり真面目すぎるのではないかとも思ってしまう。
 叱る所は叱ればいい、けれど今回の場合はまず褒めてから叱るべきだった。
 そんな事を思っていると、彼は少し顔を歪めて脇腹を見やる。そこには先程斬りつけられた傷痕から血が滲み出してきていて、思っていたより重傷で驚いた。

「血! 酷い怪我じゃないですか! 手当て! 早く!!」
「あ? あぁ……そこまで騒ぎ立てるほどの怪我じゃねぇよ……」

 溢れる血を抑えるように、スタールは平然と歩き出す。そんなかすり傷みたいな言い方するほど軽い傷じゃないからっ!

「怪我人はとりあえず仕事はいいから、大人しくしていろ! 医者はまだか?」

 けれどスタールはそんな自分の怪我は隠したままおくびにも出さず、また次々に部下に指示を飛ばしていく。
 部下の怪我には配慮するのに、自分の怪我は二の次か?
 俺がそんな事を考えおろおろしていると、幾人かの騎士が連絡でも受けたのか、慌てたように詰所に戻って来て、詰所の中は更に騒然とする。

「騎士団長、何があったのです?!」

 その中の一人の男が、つかつかと寄って来て、スタールに尋ねる。

「あぁ、大した事じゃねぇ、少しばかり暴漢を取り押さえるのに手間どった」

 すらりと長身のその若い男は他の騎士団員より少しばかり細身で威圧感に欠けるのだが、立場的には割りと高い人間なのだろう、スタールが飛ばした指示を確認するかのように回りに目を配っていく。
 その過程で、男はふとこちらに目を留めた。

「この子は?」
「あぁ……コリー副団長の孫らしい」

 瞬間その男も他の者と同じように驚いたような表情を見せる。じいちゃん意外と有名人だったんだな……

「コリー副団長の……? ということは、メリッサさんの?」
「まぁ、そうなんだろうな……」

 男は目を細めるようにまじまじとこちらを見るので、どう反応を返していいのか分からない。

「えっと……あなたも祖父の知り合いですか?」
「え? あぁ……申し訳ない。はい、そうですよ。私の名はハリー。ハリー・ブライトと申します。ここ第5騎士団で副団長を務めさせていただいています」

 若いのに副団長……この国の騎士団はこの武闘会で出世が決まるとは聞いていたが、本当に年齢は関係ないのだな……と妙な感心をしてしまった。

「俺はノエルです。ノエル・カーティス」

 瞬間また驚いたような表情を見せてハリーはスタールを見やったのだが、彼は一言「偶然だ」とぼそりと呟いた。
なんだろう、この意味深な感じ……この人達何か知ってるの?

「因みに年齢を聞いても?」
「え? あぁ……12歳です」

 俺の言葉にハリー副団長はまた考え込むように腕を組み「君、大人っぽいねぇ」と呟き、またスタールを見やる。
彼は居心地悪そうな顔をして「俺を見るな」とぼそりと呟いた。

「あの……もしかして、何か知っているんですか? 俺、ここに自分の父親を捜しに来たんです、もし何か知っているなら……」
「父親を? 父親が誰か分からないのかい?」
「はい、母は何も教えてくれないので……」

 ハリーは少し考え込むような表情を見せたのだが、しばらくすると彼は首を横に振って「私は何も……」とそう言った。

「そういえば先程から気になっていたのですが、団長、顔色悪くないですか……?」
「あ? まぁ、ちぃっと怪我を……」

 言いかけたスタールを上から下まで見渡して、ハリーは不自然に脇腹を押さえるスタールにすぐに気が付いた。

「あなたは何をしているのですか!? 怪我をしているのならさっさと言う! 手を離して、って……酷い怪我じゃないですか! あなたって人はもう!!」

 すぐに身を翻し、どこかへ行ったかと思ったら、すぐに戻ってきたハリーが抱えていたのは救急セットで、彼はすぐにてきぱきとその傷に処置を施していく。

「まったく毎度毎度、生傷が絶えないことですね。おかげでこんな事ばかりすっかり手慣れてしまいましたよ」
「……おまえはすっかり口が悪くなったよな……誰の影響だ?」
「誰のせいでもありません、けれど、しいて言うならあなたです」

 ハリーの返答にスタールは苦虫を噛み潰したような苦い表情を見せる。
 なんだかこの2人仲良いな。まぁ、騎士団長と副団長の仲が悪いよりはいいのだろうけれど。
 ハリーがスタールの怪我の手当てをしていると、医者を呼びに走っていた騎士団員が慌てたように戻ってきた。そしてそれと同時に現れた、派手な人。

「怪我人だって? おや、スタール君もかい?」

 彼は金色の髪をなびかせてにこやかに笑みを見せた。瞬間、渋い顔のスタールの表情が更に渋い顔へと変わる。

「おい、誰がこいつを連れて来いと言った? 他にもっとマトモな医者はいなかったのか?」

 言われた騎士団員もそれを言われるだろう事は分かっていたのだろう、即座に「すみません」と頭を下げた。

「手が空いている医師の方が他にいなくて……」
「スタール、酷い言い草だな。僕はこれでもちゃんと医師免許は持っているんだよ?」
「お前の専門は薬学で外科の方は専門外だろうが!」
「薬はちゃんと持ってきたってば」

 見せびらかすようにその派手な男は鞄を持ち上げる。
 歳は幾つくらいなんだろう? 若くも見えるし、老けても見える、丸眼鏡の奥の瞳を細めて笑うその顔立ちはまるで猫のようだ。
 しかし、彼の特徴はなんといってもその輝く金色の髪。クセが強いのかふわふわとうねっていて、それを適当に括っているだけなので、纏まりが悪く、一層彼を派手に見せているのだ。
 それにしても、なんだかこの感じには既視感を感じる。

「俺はお前の薬は信用しないぞ!」
「大丈夫だって、今日はちゃんと普通の薬だよ。僕だって実験をやっていい時と悪い時の区別くらいちゃんと付けてるんだからね」

 スタールの眉間の皺はますます深くなっていく、騎士団長はこのお医者さんのこと嫌いなのかな?

「さぁ、怪我人はどこ? んん? これは酷いねぇ。大丈夫、僕の薬は良く効くよ」

 にっこり微笑むその人に笑みを向けられた騎士団員達は皆一様に脅えたような表情を見せているのは何故なのか?
 しかし、そんな感じでも彼の手際はとても良く、怪我人の治療はあっという間に片付いていく、ただ手当てされる側の人間の顔は悲壮感が漂っていて、なんだか見ているこっちの方が心配になった。

「もう、皆そんなに怖がらなくていいのに。僕は怪我人・病人には優しいよ? 実験に使うのは健康な人間だけって決めているからね」

 えぇと……それもどうなのだろうか……

「あれ? 君、見かけない子だね? 新人さん?」

 突然声を掛けられ驚いた。

「そいつはまだ子供だ、手を出すな!」
「ん? そうなの? 君幾つ?」
「12歳です」
「へぇ、うちの子より下なんだ。君大きいねぇ」

 瞳を細めて彼は笑う。やっぱりこの人なんだか似てる。

「カイル先生、お代は別途請求お願いします。しかし、うちの団員を実験に使うのは止めてください」
「ハリー、そんなに僕を目の敵にする事ないじゃないか。僕はちゃんとやる時にはやる男だよ?」
「それは分かっていますが、うちの団員が脅えるので止めてください」
「騎士団員の子達は皆頑丈だから実験にはうってつけなのに……」
「何度も言わせないでください。うちの配下は実験台ではありません」

 カイルと呼ばれたその医師は「仕方がないね」と肩を竦めた。

「やっぱり行くならナダールの所か」
「あっちでも迷惑しています。団長が不在だからって、変なちょっかいをかけないでください」
「ハリー、君は昔の方が可愛げがあったよ……」
「あなた達みたいな大人に揉まれて育てば誰でもこうなります!」

 毅然とした態度で言い切ったハリーに、カイル医師は諦めたようにまた肩を竦めた。

「新薬の開発には尊い犠牲が常に必要だというのに……」
「せめて許可を取ってからやるのが筋です」
「承諾はいつも取っているだろ?」
「事後承諾は許可とは言いません」

 なんだか、2人の言い合いを聞いているだけで、この先生はとんでもない人なのだと言うのはなんとなく分かる。そして、こんな言動で人を振り回す人を俺は最近見たばかりだ。

「もしかして、先生ってカイトの……?」
「あぁ、君、カイトの友達? うちの子可愛いだろ? 仲良くしてやってね」

 あぁぁあぁぁ、やっぱり!
 なんか違う! 聞いてた印象と違う!
 妻子ある男に手を出された日陰の人のイメージ全然ない! ってか、この人がむしろぐいぐいいくタイプだろ、優しい人なら押し切られるのなんとなく分かる……

「ところで君、名前は? どこの子?」
「え? ノエルです。ノエル・カーティス……」

 瞬間カイルはまたしても他の人同様驚いたような表情を見せた。この人も祖父ちゃんの知り合いなのか?

「君、もしかしてメリッサの?! うわぁ、驚いた! 大きくなったねぇ」

 祖父ちゃんじゃないのか? 母さんの方と知り合い?

「メリッサは? 来てないの?」
「来てないです。先生は母と知り合いですか?」
「ルーンにいた頃懇意にしてもらっていたよ。というか、メリッサのお産で君を取り上げたの僕だよ? あの赤ん坊がもうこんなに大きいんだ……カイトも育つ訳だよねぇ」

 なんだかしみじみした表情のカイル。まさかこの人が自分を取り上げた人だとは思わなかった。

「あ……もしかしてノエルは父親に会いに来たの?」

 言われた言葉に硬直した? え? この人もしかして俺の父親知ってるの?!

「あれ? 違うの?」
「先生、俺の父親誰だか知ってるんですか!?」
「え? 聞いてない……?」

 しまったな……という表情で慌てたようにカイルは自身の口を押さえる。

「誰ですか! どこにいますか!? ここにいるんですか!?」
「えっと……いると言えば……うん、いるね」
「誰ですか!? 俺、探しに来たんです! 自分の父親が誰なのか! 俺はそれが知りたい!」
「うぅ~ん……僕の口からは言えないかなぁ……お母さんに直接聞いて」
「教えてくれないから聞いてるんですよ!」

 あぁ……とカイルは瞳をそらした。

「言ってないんだねぇ……まぁ、言えないよねぇ……」
「言えないって、どういう事ですか!?」

 カイルは困ったように周りを見回し、そしてひとつ息を零した「うん、やっぱり僕の口からは言えないかな」と呟いた。

「常に非常識な奴が常識的な事を言いやがる。知っているなら教えてやればいいものを……」
「スタール、うるさい。僕はちゃんと良識を弁えた上で非常識な事をしているのであって、常に非常識な訳じゃないんだよ」
「非常識な事をしている自覚を持った上で非常識な事をしている人間が、良識があるとかのたまうのは可笑しな笑い話だな」
「スタール、僕にそんな事を言って、あとで後悔しても知らないよ!」
「生憎と俺は後悔の残る人生は送っちゃいねぇ、処置が終わったんならさっさと帰れ」

 カイルは少し憮然とした表情を見せたのだが、すぐに元の笑みを見せこちらに向き直った。

「ごめんね、これはメリッサとの約束だから今は言えない。だけど、君のお父さんは君が思っているよりすぐ近くにいるよ」

 彼はそう言って、怪我人一人一人に薬を手渡し去って行った。
 薬を貰った者達は皆一様に複雑な表情でその薬を眺めている。

「なんで、皆あんな顔になってるんですか?」
「あいつの薬は本当によく効くんだよ。それは分かっているんだが、あいつは時々まだ完成していない試作品を何の説明もなく俺等に使う。死人が出た事はないが、酷い目にあった奴等はごまんといてな、あいつに手渡された薬は危険物と隣り合わせだ。買うなら薬局を通すに限る」

 やはり苦々しい顔でスタールはそう説明してくれた。

「ハリーもわざわざ悪かったな。向こうの様子はどうだ?」
「まだ様子を見ている所ですね。なにせ人質の数が分からなくて、下手に突入して殺されでもしたら目も当てられません」
「でも、中にお嬢もいるんじゃなかったか?」
「はは、そのようですね。ですが、お嬢は別に隔離されているようで、やはり中の事は分からない様子です。お嬢の居場所だけは分かっているのですが、それ以外の方々は一般市民ですからね」
「隔離って……何をやらかしたのやら」

 呆れたようにスタールは息を吐く。
 『お嬢』その言葉はここイリヤに来て何度か聞いている。ユリウスの『坊』と恐らく対で使われているのであろうその言葉はユリウスの姉である「ルイ」の事を指すのだろう。

「そういえば、あの屋敷の持ち主が判明しましたよ」
「お、そうなのか。誰だった?」
「それが……私達にはあまり縁起のいい名前ではなくてですね……」

 言いよどんだハリーにスタールは片眉を上げる。

「ロイヤー家ですよ、あのクレール・ロイヤーの弟、クロウがあの屋敷の持ち主です」
「ロイヤー……あの馬鹿貴族の弟か、これは確かに縁起が悪い。あいつ等確か貴族の資格は剥奪されたんじゃなかったか?」
「私もそのように伺っていたのですけどね……」

 二人揃って溜息を吐くのを何とはなしに聞いていた俺なのだが、よく考えたら俺、こんな話聞いていていいものだろうか?

「あぁ、そういえばそこに縁者がいるじゃないか。お前、本家がどうなってるか、じいさんから聞いてたりしないか?」

 突然話を振られて驚いた。

「は? ……え? 本家?」
「カーティスの家はロイヤーの分家だと聞いているが、聞いていないか?」
「そんな事言われても……うち、そもそも貴族なんかじゃないですよ?」
「なんだ、じいさんは本当に何も話してないんだな。カーティス家はそれほど大きくはないが、貴族の端くれのはずだぞ」
「そんなの、聞いたことないです……」

 全くの初耳に動揺を隠せない。我が家が貴族の出だなんて、誰もそんな事一言ですら言った事はないはずだ。

「コリー副団長は、そういうしがらみも面倒になってしまったのですかね。あの方らしいといえばそれまでですが」

 「確かにな」とスタールもハリーに同意する形で頷いた。

「それで、そのロイヤー家って縁起が悪いって言ってましたけど、何かあったんですか?」
「じいさんが何も話していないものを話すのもなんだが、ロイヤー家の息子が昔ちょっとした事件を起してな、貴族の位を剥奪されたんだよ。その事件に俺達も関わっていたから、少しばかり縁起が悪い。ついでにその時ロイヤー家を嬉々として叩き潰したのはお前のじいさんだったんだがな」
「本家を叩き潰したんですか……?」
「昔何か色々あったみたいでな、恨みつらみを楽しそうに呟きながら叩き潰していたのを今でもはっきり覚えている。あの人だけは敵に回したくないな、とあの時俺は思ったよ」

 なんだか妙に恐れられていた祖父の現役時代の話に、そんな事があったのかと驚いてしまった。

「まぁ、何も知らないのならこれ以上首を突っ込む話しではない。それにしてもロイヤーか……どいつもこいつも全く」
「何かありましたか?」
「さっき暴れて牢に放り込んだ男。あいつだ、ジミー・コーエン」

 瞬間、ハリーは驚いたような表情を見せ、その後困ったように眉間に皺を寄せた。

「……あの人、出てきてたんですか……」
「そのようだ、まったくこのクソ忙しい時期に問題ばかり起しやがる」

 そうぼやきながら、スタール騎士団長は「お前はもう行っていいぞ」と手を振った。
 行っていいと言われても、ウィルもどこかに行ってしまったし、これはもう第一騎士団の詰所に戻るしかないのだが、自分の現在位置すらよく分からない。
 城を見ながら歩いて行けば辿り着けない事はないだろうが……と少しばかり途方に暮れた。
 とりあえず大通りに向けて歩いて行けばどうにかなると思い、そちらに向かって歩いて行ったのだが、俺は昨日の今日で完全に失念していたのだ、その大通りの人の数を……

「やばい……この人波を渡れる気がしない……」

 その人波を抜けて向こう側に行ってしまえばいいのだが、そこまで辿り着けるのか分からないその人波に俺はまた途方に暮れた。
 どうしようか……としばし考え込んでいると突然脇で「ヒナは!?」という叫びが聞こえた。
 何事かとそちらを見やればたくさんの子供達に囲まれた綺麗な赤毛のすらりとした女性が青褪めて周りを見回していた。
 「さっきまで手繋いでたんだけど、引っ張られた時に離れちゃって……」と幼い子供は涙目で訴える、それを慌てて「泣かなくていい」と慰めつつも、困ったようにその人はまた周りを見回した。
 子供達は彼女の子供だろうか? それにしても数が多い、ぱっと見て5人はいるし、年齢はばらばらだがさすがにこの子供達が全員彼女の子供とは考えにくい。
 それでも酷く困った様子に見ていられず、俺は思わずその人に声をかけた。

「どうかしましたか?」
「え? あ……子供が一人はぐれたみたいで、その辺に見当たらなくて。近くで赤毛の女の子を見なかった?」
「赤毛の?」

 そう言われれば彼女の髪も綺麗な赤髪だ、彼女はメリア人なのだろうか? なんだか瞳も赤いし、こんな瞳の色の人初めて見た。彼女が連れている子供達は赤毛もいるのだが、髪色も瞳の色もばらばらでなんの団体なのかよく分からない。

「しっかりした子だから一人でも目的地まで辿り着けるとは思うけど……」

 そう言いながらも彼女はきょろきょろと周りを見渡している、それでもその荒波のような人波の中から子供一人を探し出すのは難しいと思われた。しかも、彼女の周りには不安そうな表情を浮かべた子供達が何人もいる。

「ねぇね、迷子……? どっか行っちゃった……?」

 先程手を繋いでいたと言っていた幼子が途端に瞳を潤ませ泣き出した。

「あぁぁあ、泣くな。大丈夫だから! ねぇねはちゃんと、先に行ってる、とりあえず行こう!」
「え? ちょっと、それ大丈夫なんですか?!」
「うちの子はちょっとやそっとでへこたれる子じゃないから大丈夫。目的地も分かってるし、さっきまでは一緒にいたんだ、問題ない」

 えぇえぇぇ……さすがに母親としてそれはどうなんだ?
 いや、でもこれだけの人数の子供を抱えていたらそうなるのか? でも、その子一人で泣いてたらどうすんだよ……

「少年、心配してくれてありがとう、でも大丈夫。もし万が一その辺で赤毛の女の子見付けたら先に行ったって伝えて貰っていい?」
「え……それは構いませんけど」
「じゃあ、よろしく!」

 それだけ捲し立てると、彼女は「行くよ」と子供達を抱えるようにして行ってしまった。
 なんか引率大変そう。だけど子供達も皆彼女の言う事を聞いていて統率は取れている、これで一人でも空気を読まないような子がいたら統率は大変そうだが、纏まりは良さそうだ。
 彼女達が人波に姿を消しても、俺はまだそこで人の流れをぼんやり眺めていた。
 俺は一体こんな所で何をやっているんだろうな……なんだか、すっかり当初の予定からは外れてしまっている気がする。
 父親探しは一進一退、でもカイトの父親(?)は俺の父親を知っているようだったし、彼はここイリヤに俺の父親はいると言ったのだ。
 この街のどこかに俺の父親はいるはずだ。

「ママ、見付けたです!」

 どすん! と腰の辺りに衝撃が走り思わずよろける。
 は? ママ?
 声の主は「よかったですぅ」と息を吐きながら上を見上げて俺の顔を見た瞬間「違うです!」と叫んだ。
 それは小さな少女だった、とはいえ自分が大き過ぎるだけでたぶん歳は自分と大差ないと思われる。
 少女の髪は綺麗な赤髪、そして瞳は真っ赤な真紅。先程の女性の娘なのだと一目で分かった。

「ごめんなさい、人違いです! はわわ……完全にはぐれたですよ……」

 先程の女性も綺麗な人だと思ったが、娘も非常に可愛らしい顔立ちで少しドキドキしてしまう。母親の方は長い髪を後ろで括って纏めていたが、彼女はその長い髪を風になびかせぺこぺこと頭を下げた。

「もしかして、さっき子供をたくさん連れてた人を見かけたけど……」
「私みたいな髪色の? こんな瞳の?」
「あ、うん、そう」
「母です、どっちに行きました!?」
「えっと、向こう」

 彼女の消えた方向を指差すと彼女は「はわぁ……」と絶句した。
 俺は少しばかり背が高いから、人波の向こうが見えるけど、彼女の背は俺の胸辺りまでしかない、どう頑張っても人波しか見えないよなぁ……

「さっき、その人、娘は行き先を知っているからって言ってたけど?」
「母と話したですか? 確かに聞いてはいますが、私イリヤに来るのは初めてで……いえ、幼い頃には暮らしていたらしいのですよ? ですが、覚えていないですよ」

 泣きはしないが、彼女はどうにも途方に暮れたような顔をしていて居たたまれない。

「君の母親、先に行くって言ってたけど……」
「この人波では妥当な判断ですね」
「行き先分かる?」
「はい、まずは第一騎士団の詰所です」

 はきはきと彼女は答える。しっかりしていてへこたれないというのは母親の言葉通りだ。
 それにしても第一騎士団の詰所って、自分と行き先同じじゃないか。

「誰か知り合いでもいるの?」
「父がそこで働いているものですから、まずはご挨拶です」

 なんだか本当にしっかりした娘だな。

「実は俺もそこに行きたいんだけど、一緒について行ってもいい?」
「知らない人とはあまり親しくするなと父に言われているです」
「ぐっ……確かに、それは至極まともな意見だと思う」
「ですが、私一人では今とても心細いとも思っているです」
「だよね、俺もすごく心細い」
「お兄さんもですか?」
「俺、まだ昨日イリヤに着いたばかりで、この街のことまだちゃんと把握してなくて……」
「それは大変ですね。ではお兄さんお名前を教えてくださいです」

 彼女は綺麗な笑みでにっこり微笑んだ。

「名前……ノエル。ノエル・カーティス」
「ノエルさん、私の名前はヒナノです。これで私とノエルさんは知り合いです。さぁ、行きましょう!」
「え?」

 彼女は果敢にも人波へと突っ込んで行く。

「ちょっと待って! また迷うよ!」
「迷ったら迷った時です!」

 えぇ……なんだか言動が男前。それでも小さな彼女に一人で先を歩かせる訳にはいかない。
 俺は彼女を人波から守るように、2人でどうにかその人波を掻き分け歩き出した。





 どうにか一番の難関だった最初の大通りを抜け、俺達は歩き続けた。
 ユリウスと歩いていた時にはわりとすぐに人波が途切れた気がしていたのだが、進んでも進んでもなかなか人波は途切れない。
 一本脇道に逸れればいいのかもしれないが、大きな通りを行かないと迷ってしまいそうで、俺はそれを言い出せなかったのだ。
 それと同時にヒナノと名乗った彼女もどんどん真っ直ぐ前を向いて進んでいくので、進行を止める事もできなかった。

「ちょっと待って、ねぇ? 場所ちゃんと分かってる?」
「よくは分からないですが、母は城を目指せと言っていたので、真っ直ぐお城を目指しているです」

 何というか、やはりどこか真っ直ぐな行動に笑ってしまう。

「あのね、一本脇道に入ったら格段に歩きやすくなると思うんだけど、どうかな?」
「脇道に……それは盲点でした!」

 ようやく大通りの人混みを抜けて息を吐く。やはり真っ直ぐ抜けるだけなら格段に歩き易い。お祭りの店を見て回るのなら大通りをふらふら進んでいくのもやぶさかではないのだが、急ぐのならこちらの方が断然楽だ。

「はわぁ、一本入っただけでずいぶん歩きやすくなったですよ」
「こっちはお店が少ないからね。観光の人達も通らないだろうし」
「そう言われたらその通りですね」

 俺達はようやく人心地ついて話しながら歩く事ができるようになった。

「ヒナノさん達は何をしにここへ?」
「それはもちろんお祭り見物ですよ。今回は父と兄が参加予定なのです」
「お兄さんもいるんだ」
「はいです、兄も騎士団員なのですよ。お兄さんは? 観光ですか?」
「俺は父親探しをしに来たらちょうどお祭りにぶち当たっただけで、お祭り目当ての観光客じゃないよ。それにお兄さんって呼ばれるほど年上でもないと思う」
「そうなのですか?」
「俺、12歳」
「あら? ヒナの方が少しだけお姉さんでした。私はこのお祭りの間に13歳になるのですよ」

 やはり年相応だった。ここイリヤにきてから年齢不詳の人間ばかりに遭遇していたので、よもやうんと年上だったらどうしようかと一瞬思ったのだが、普通だった。

「ノエル君はお父さんを探しているですか? イリヤにいるですか?」
「どうやらそうみたいなんだけど、まだはっきりしてないです」

 あ……語尾の「です」が移った。なんだか特徴的な話し方で、ついクセになる。

「お父さん見付かるといいですね」

 彼女はにっこり人の良い笑みを見せる。なんだかこんな笑顔を自分は知っている。
 というか彼女、最初に見た時から思っていたのだが、なんだか誰かに似ている。
 先程出会った母親に似ているのは勿論なのだが、そうではなく、最近出会った誰か……誰だ?
 なんだか非常にもやっとする、なんだかイメージと違うのだ、笑顔はユリウスにも似て人懐こいのだが、顔立ちは違う、誰だ……?

「どうかしたですか?」
「いや……なんだか君の顔を見てると誰かを思い出しそうなのに、誰だか思い出せなくて……」
「私に似ている人がいるですか? 兄の事でしょうか? どちらでしょう?」
「お兄さん、2人いるの?」
「はい。ですが、言っても一人は従兄弟なのですけどね。実の兄よりその従兄弟の方がよく似ていると言われますです。名前も似ているですしね」

 ヒナノ……ヒナ、ノ……あぁぁ!

「ツキノ君!」
「はい、正解です。ノエル君はツキ君のお知り合いですか?」

 ぽんと両手を合わせて、彼女は小首を傾げた。なんだよ、そのあざとい感じ可愛いなっ。
 でも、よく分からない違和感に納得した。似ているのはあの仏頂面の黒髪のツキノだ。
 表情が違いすぎてまるで分からなかった。

「昨日、少しだけお話しました」
「そうでしたか。ではもう一人の兄もご存知ですか?」

 ですよね、そうですよね! ツキノを兄と呼ぶからには妹ですよね、あぁ、そうかぁ……

「ユリウスさんには昨日から色々とお世話になっています」
「あら、そうでしたかぁ。ユリ君とツキ君のお知り合いでしたら、もう警戒の必要はないですね」

 あ……まだ警戒されてたんだ。まぁ、そうだよね。知らない人、ましてや男に声を掛けられて警戒しない女の子はいないよね。
 その割にはぐいぐい引っ張ってこられた気もするけど、まだ信用はされてなかったんだね。
 それにしても、さっきの女性が噂の騎士団長の妻じゃないか! 滅茶苦茶美人な嫁じゃないか! あれを嫁に娶って浮気ってどうなのさ! ってか、イリヤに来るのもう少し先って聞いてたのに……

「どうかしたですか?」

 もしかしたら半年年上の腹違いの姉……滅茶苦茶可愛いのに恋愛対象外かと思うとほんのり切ない。

「いや、何でもないです」
「でしたら、張り切って行きますですよ!」
「あ、待って……」

 追いかけようとして、すれ違い際、人にぶつかった。
 「すみません」と頭を下げて先を歩く彼女を追いかけようとしたら、何故か進行方向を塞がれいらっとする。

「あの……」

 顔を上げて抗議をしようとした刹那、思い切り腹を殴られた。

「な……」
「ちょっと何をするですか!」

 ヒナノの方にも幾人かの男が集ってきていて、何が起こったのかと混乱する。
 それにしても腹が痛い。今日は無闇に暴力を受ける最低な日だ。
 それでも、腹を押さえて倒れ込むのを我慢したら、更にもう一回、今度は蹴りが入った。

「お前に用はない」

 男はにやにやとこちらを見ていて、がっと一気に怒りが湧いた。

「ふざけんなっ!」

 理不尽に暴力をふるわれて、用はない、はいそうですか、と引き下がれるかっ!
 こちらをにやけた顔で見ていた男に体当たりをかまして、その勢いのまま蹴り倒した。
 男の急所に当たったのは、まぁ、わざとだけど、仕方ないよな? 俺を怒らせたのはそっちだし?
 目の前の男は急所を押さえ悶絶し、まさか反撃を食らうと思っていなかったのであろう、他の男達にも動揺が走る。
 その隙を見計らったかのようにヒナノも掴まれかけていた腕を振り払い、俺の方へと駆けてきた。

「大丈夫です?!」
「なんとか……」

 腹を押さえて相手を睨む、こいつ等一体何なんだ?
 壁際に追い詰められるように男達はこちらににじり寄ってくる。俺に用は無いらしいから、狙われているのは彼女の方だ。

「こいつら、知り合い?」
「ヒナにはこんな野蛮な知り合いはいないのですよ!」

 だとしたら、人攫い……もしかしてΩ狩りとかいうやつか!?
 脇道に入ったのは失敗だった、まさかこんな輩が潜んでいるとは夢にも思っていなかった。
 男達は皆フードで顔を覆い隠していて人相もよく分からない。
 逃げようにも壁際に追い込まれて、右も左も抜けられない。しかも後ろ手にはヒナノを庇って大の大人相手には分が悪すぎる。
 せめてここにウィルがいたらと思いはするが、思っているだけでは埒が明かない。
 せめてヒナノだけでも逃がせれば……
 じりじりと男達はにじり寄って来て、俺はヒナノを抱き締めた。
 先程ウィルが自分の頭を守るように抱えてくれたように、今の自分にできるのはこのくらいの事しかないのが悔しくて仕方がない。
 少なくとも狙われているのはヒナノで、俺が彼女を離さなければ、彼女が攫われる事はないはずだ。

「ちょっと、ノエル君!?」
「君だけはちゃんと守るから!」

 男達に背を向けるようにして、俺はヒナノを抱え込む。男達はヒナノと自分を引き剥がそうと俺に遠慮なく拳や蹴りを入れてくるが、絶対離すものかと俺は更に彼女の小さな身体を抱き締めた。

「ノエル君、離すです!」
「駄目、絶対っ」
「ノエル君っっ!!」

 ふいに辺りに甘い薫りが広がった。
 その薫りがどこからきているのか分からなかったのだが、その甘さはどこか人を惹きつける甘さで、つい身体の力が弛む。

「ノエル君、離すですよっ!」

 それでも、俺は彼女の身体を離しはしなかったのだが、いつの間にか男達からの攻撃は止んでいて、背後から何故かくぐもったような呻き声が聞こえた。

「っ! なんだお前! 裏切るのかっ!」

 そんな声と共に更に何かを切り裂くような音、打撃音、背後で何かが起こっているのは分かるのだが、痛めつけられた身体はなかなか自由には動いてくれない。

「ノエル君、今のうちに逃げるです!」

 俺の弛んだ腕から抜け出してヒナノは逆に俺の手を掴んだ。
 俺は訳が分からなかったのだが後ろも振り向かず、手を引かれるままにヒナノと一緒に駆け出していた。
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