98 / 113
番外編:その後のある幸せな家庭
話の齟齬
しおりを挟む
俺の腕の中で周りを見渡しキョロキョロしている我が子シズクを見やると、瞳が合ったシズクは満面の笑みだ。
シズクには少しだけ不思議な力がある。触手持ちだというのもそうなのだが、俺に何か不快な事がありそうな時は全力でぐずるし、泣く。
けれど今日のシズクはいつも以上に大人しく、そしてご機嫌さんだ。これも未来予知の占い師と同じような能力なのだろうか? だとしたらこの先悪い事にはならなさそうだけど、俺を放置して事態が進んでいくのはどうかと思う。
玄関先でどうしようかと途方に暮れているとお義父さんに色々と荷物を手渡された。俺、シズクも連れてるから持ち切れません、お義父さん!
「それにしても、やっぱりハロルドはミレニアが可愛くて仕方がないんだね」
「え?」
「ハロルドがあんな風に血相変えるの初めて見たよ」
荷物の準備をしながらお義父さんが微かに笑う。あ、あの顔、お義父さんでもレアだったんだ。それに、お義母さんとミレニアさん、そんなに仲良かったんだ?
まぁ、確かに長年同じ屋敷に暮らしていて、お義母さんは常にミレニアさんを傍に置いてたけどさ。でもそれって、主人と使用人の関係で、ミレニアさんがハロルド様に対して従順だったからじゃないのか?
「不思議そうな顔。ハロルドはね、ミレニアの事を自分の子供みたいに思っていたみたいだよ。ここだけの話、ライザックがロゼッタを選ばなかった場合、ミレニアだったらライザックの嫁にしてもいいと思ってたみたい」
え~、それ、現ライザックの嫁である俺に言う?
「ただそれに関しては、ミレニアが断っていたみたいだけどね。自分には婚約者がいるから裏切れないって、健気な子だよね」
ん? んん~??? ちょっとその話はめちゃくちゃ腑に落ちないんですけど!
だってミレニアさん、バートラム様のことずっと拒否ってたじゃないか、どういう事だよ!? あ、それって嘘も方便的なやつ?
そういえば過去、バートラム様からの求婚を拒むために俺を生贄に差し出した事もあったもんな。
「僕には全然お声がかからなかったんだけど、ロゼッタの婿選びの時にロゼッタとミレニアの婚約者が仲良くなっちゃったんだって? 話聞く限りだとすごく面白い催しだったみたいだよね、だけどハロルドはそれに関してはすごく反省しててミレニアには悪い事をしたってずっと言ってたんだよ」
マジか!
「だけど、オーランドルフの屋敷を売る時、その婚約者と一緒に暮らすために屋敷に残るって話だったからほっとしたって、そんな風に僕は聞いてる。その割にはいつまで経っても結婚式の案内がこないって心配もしてたけど」
それはまぁ、ミレニアさんが結婚は頑なに拒否してたし当たり前だろうけど、俺の知ってるミレニアさんとお義母さんの語る話の齟齬がひどすぎるよ!
「? カズ君、なんか腑に落ちないって顔してるの気のせい?」
「だって変ですよ、ミレニアさんはバートラム様と一緒に暮らすのがストレスでぶっ倒れたんですよ、それってちょっとおかしくないです?」
「え? あれ? どういう事?」
「それを聞きたいのは俺の方です」
本当は俺だって最初はミレニアさんがライザックの事好きなんだって思ってた。だけど、本家でのあのロゼッタさんとの戦いの時は親身になって俺の心配してくれて、俺の手助けをしてくれたりしたから、ライザックの事はそこまで好きなんじゃないのかと、何処かで思ってたんだ。
ついでに言うならミレニアさんは隠してるけどバートラム様の事が好きなんだとも思っていた、だけどストレスでぶっ倒れるほど嫌っている風でもあるし、彼の真意は全く分からない。
結局ミレニアさんは誰とも結婚する気なんてなくて、バートラム様を瞳で追ってたのも俺の気のせいなのか? 俺からライザックを横取りしてやるみたいな事言っても結局それは口だけで、ミレニアさんの行動はちぐはぐすぎて本当によく分からない。
そもそも俺はミレニアさんの事なんてこれっぽっちも知らないんだって、改めて考えさせられる。
「色々よく分からないけど、いつまでも病人を一人にはしておけないし、カズ君は先に帰ってて。僕はハロルドとシノックさんを一緒に連れてくから」
お義父さんに促されるようにして俺は自宅に足を向けたけれど、やはり考えれば考えるほどミレニアさんの事がよく分からなくて、ミレニアさんの熱が下がったらもっと色々と話を聞かないとだなとそう思った。
シズクには少しだけ不思議な力がある。触手持ちだというのもそうなのだが、俺に何か不快な事がありそうな時は全力でぐずるし、泣く。
けれど今日のシズクはいつも以上に大人しく、そしてご機嫌さんだ。これも未来予知の占い師と同じような能力なのだろうか? だとしたらこの先悪い事にはならなさそうだけど、俺を放置して事態が進んでいくのはどうかと思う。
玄関先でどうしようかと途方に暮れているとお義父さんに色々と荷物を手渡された。俺、シズクも連れてるから持ち切れません、お義父さん!
「それにしても、やっぱりハロルドはミレニアが可愛くて仕方がないんだね」
「え?」
「ハロルドがあんな風に血相変えるの初めて見たよ」
荷物の準備をしながらお義父さんが微かに笑う。あ、あの顔、お義父さんでもレアだったんだ。それに、お義母さんとミレニアさん、そんなに仲良かったんだ?
まぁ、確かに長年同じ屋敷に暮らしていて、お義母さんは常にミレニアさんを傍に置いてたけどさ。でもそれって、主人と使用人の関係で、ミレニアさんがハロルド様に対して従順だったからじゃないのか?
「不思議そうな顔。ハロルドはね、ミレニアの事を自分の子供みたいに思っていたみたいだよ。ここだけの話、ライザックがロゼッタを選ばなかった場合、ミレニアだったらライザックの嫁にしてもいいと思ってたみたい」
え~、それ、現ライザックの嫁である俺に言う?
「ただそれに関しては、ミレニアが断っていたみたいだけどね。自分には婚約者がいるから裏切れないって、健気な子だよね」
ん? んん~??? ちょっとその話はめちゃくちゃ腑に落ちないんですけど!
だってミレニアさん、バートラム様のことずっと拒否ってたじゃないか、どういう事だよ!? あ、それって嘘も方便的なやつ?
そういえば過去、バートラム様からの求婚を拒むために俺を生贄に差し出した事もあったもんな。
「僕には全然お声がかからなかったんだけど、ロゼッタの婿選びの時にロゼッタとミレニアの婚約者が仲良くなっちゃったんだって? 話聞く限りだとすごく面白い催しだったみたいだよね、だけどハロルドはそれに関してはすごく反省しててミレニアには悪い事をしたってずっと言ってたんだよ」
マジか!
「だけど、オーランドルフの屋敷を売る時、その婚約者と一緒に暮らすために屋敷に残るって話だったからほっとしたって、そんな風に僕は聞いてる。その割にはいつまで経っても結婚式の案内がこないって心配もしてたけど」
それはまぁ、ミレニアさんが結婚は頑なに拒否してたし当たり前だろうけど、俺の知ってるミレニアさんとお義母さんの語る話の齟齬がひどすぎるよ!
「? カズ君、なんか腑に落ちないって顔してるの気のせい?」
「だって変ですよ、ミレニアさんはバートラム様と一緒に暮らすのがストレスでぶっ倒れたんですよ、それってちょっとおかしくないです?」
「え? あれ? どういう事?」
「それを聞きたいのは俺の方です」
本当は俺だって最初はミレニアさんがライザックの事好きなんだって思ってた。だけど、本家でのあのロゼッタさんとの戦いの時は親身になって俺の心配してくれて、俺の手助けをしてくれたりしたから、ライザックの事はそこまで好きなんじゃないのかと、何処かで思ってたんだ。
ついでに言うならミレニアさんは隠してるけどバートラム様の事が好きなんだとも思っていた、だけどストレスでぶっ倒れるほど嫌っている風でもあるし、彼の真意は全く分からない。
結局ミレニアさんは誰とも結婚する気なんてなくて、バートラム様を瞳で追ってたのも俺の気のせいなのか? 俺からライザックを横取りしてやるみたいな事言っても結局それは口だけで、ミレニアさんの行動はちぐはぐすぎて本当によく分からない。
そもそも俺はミレニアさんの事なんてこれっぽっちも知らないんだって、改めて考えさせられる。
「色々よく分からないけど、いつまでも病人を一人にはしておけないし、カズ君は先に帰ってて。僕はハロルドとシノックさんを一緒に連れてくから」
お義父さんに促されるようにして俺は自宅に足を向けたけれど、やはり考えれば考えるほどミレニアさんの事がよく分からなくて、ミレニアさんの熱が下がったらもっと色々と話を聞かないとだなとそう思った。
32
お気に入りに追加
2,770
あなたにおすすめの小説
美しい側近は王の玩具
彩月野生
BL
長い金糸に青目、整った顔立ちの美しい側近レシアは、
秘密裏に奴隷を逃がしていた事が王にばれてしまった。敬愛する王レオボールによって身も心も追い詰められ、性拷問を受けて堕落していく。
(触手、乱交、凌辱注意。誤字脱字報告不要)
主神の祝福
かすがみずほ@11/15コミカライズ開始
BL
褐色の肌と琥珀色の瞳を持つ有能な兵士ヴィクトルは、王都を警備する神殿騎士団の一員だった。
神々に感謝を捧げる春祭りの日、美しい白髪の青年に出会ってから、彼の運命は一変し――。
ドSな触手男(一応、主神)に取り憑かれた強気な美青年の、悲喜こもごもの物語。
美麗な表紙は沢内サチヨ様に描いていただきました!!
https://www.pixiv.net/users/131210
https://mobile.twitter.com/sachiyo_happy
誠に有難うございました♡♡
本作は拙作「聖騎士の盾」シリーズの派生作品ですが、単品でも読めなくはないかと思います。
(「神々の祭日」で当て馬攻だったヴィクトルが受になっています)
脇カプの話が余りに長くなってしまったので申し訳ないのもあり、本編から独立しました。
冒頭に本編カプのラブシーンあり。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される
Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木)
読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!!
黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。
死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。
闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。
そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。
BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)…
連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。
拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。
Noah
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる