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第二章:妊娠編

驚きの出来事

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 俺の名前は渋谷和寿(しぶやかずとし)、突然異世界に送られて、触手に犯されたり騎士様に犯されたり最初は散々だった俺だけど、何だかんだで異世界生活にも慣れてきた。
 どうやら俺の名前はこの世界では発音が難しいようなので今はカズと呼ばれている。そしてそんな俺の名前を愛し気に呼ぶ男が一人、金髪碧眼の美形の騎士様ライザック・オーランドルフ、何を隠そう俺の恋人。
 季節は夏から秋へ、そして冬へと移り変わろうとしている。色々とすれ違う事もあったのだが、俺とライザック、両想いになった俺達は絶賛蜜月期……のはずなんだけど……

「カズ、大丈夫か?」
「ううう、なんか気持ち悪い。風邪かなぁ、寒くなってきたし腹にでも入ったのかも……」

 それにしても気持ちが悪い、俺なにか悪いモノでも喰ったっけ?
 ノロウイルスとかだったら最悪だよなぁ、ここは現代医学の発達した俺の世界とは違って未だに占いや呪術が幅を利かせている異世界だ。勿論ノロウイルスだなんて認知もされていなくて、下手したら感染させまくりで死者だって出しかねない。そんな事になったら一大事だ。

「体調が悪いのなら横になるか?」
「う……ん、ってか、吐く……」

 心配してくれるライザックを置き去りに俺はトイレに駆け込んで戻してしまう。あぁ、これ本格的に駄目かも……

「カズ、顔色が悪い、すぐに病院に行こう! 悪い病気だったら大変だ!」
「ううう……」

 口元を拭ってへたり込む俺を抱え上げるライザック。移るかもしれないし、あんま近寄んない方がいいと思うんだけどな。
 そんな俺の心配をよそにライザックに担ぎ込まれた医師の元で俺に告げられたのは風邪でもインフルエンザでもノロウイルスでもなく「おめでとうございます」の一言で、体調不良の人間を前にしてその言い草は何なのかと俺とライザックは不審顔を隠せない。

「カズがこんなに体調不良で苦しんでいるというのに、何がおめでたいものか! どういう事だ!!」
「こちらがお相手の方ですか?」
「お相手?」
「ええ、ですからお腹の子供の父親なのか? と……」
「子供……? え?」
「ですからおめでたですよ、おめでとうございます」

 医者の言っている言葉が上手く呑み込めない。言葉は通じているのに何を言っているのか意味が理解できないのだ。

「おめでたって……妊娠?」

 言葉が出てこない。だってちょっと待って! 俺、妊娠したの!? 子供産めるの!? どうなってんの俺の身体!? いや確かにこの世界は男しかいない世界だよ、人間は全員子供が産める身体なんだって最初に聞いてたし、ライザックとはやる事やってるけど、でもまさか俺に子供なんて……

「本当に……?」
「カズ!! なんて事だ! はは、凄いぞ! カズ! すぐに母上に報告して祝言の支度を整えなければな!」

 『祝言』って何だっけ? えっと、結婚? 俺、ライザックと結婚するの……?

「カズ、どうした? あぁ、体調が悪いのだったな、1人ではしゃいでしまって申し訳ない!」
「えっと……」
「だが、腹の子の為にも早く準備は整えなければな!」

 きらっきらのライザックの笑顔が眩しい、だけど未だ自分の身体に起こった現実を受け止めきれない俺は医師とライザックが今後の事についてどんどん話を進めていく横で2人の会話が全く耳に入ってこない。
 俺、これからどうなっちゃうの?
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