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03 聖者・聖女条約
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王都を守る城壁都市のひとつ、西のラキア。
高い壁に囲まれた扉をくぐったとたん、広がる見なれない石造りの建物。欧州地域の中世の世界に迷いこんだような、人びとの衣装。
異世界っていうより、まだ外国に来たような……観光気分が抜けないです。
ただ、アラン様やジリオ様が背が高いんだろうな……って、思っていたのに……
巨人の国ですか……?!
女性でも低くて165cmはありそう――! ヒールを履いてギリ160cmの私、いや正直になろう……身長154cmの私は、もしかして子供だと思われている?
豪華な宿の豪華な1室にとおされた私の前には、色とりどりの甘いお菓子。
座るソファーの横には、耳の長い白いもふもふした毛のぬいぐるみまで用意されている。――サイズ的に抱き枕? 癒されそうで心ひかれるけれど……うさピョンと名づけよう(勝手に命名)赤い瞳もウサギみたいだしね。
「馬車酔いには、レモナの蜂蜜漬けがきくので用意させたよ。甘くしてもらったから飲めるよね」
ジリオ様がさしだしてくれた飲み物はレモネードでした。こんなに甘くなくても飲めますよ~酸味が遠すぎるけれど、おいしい。
王都まではあと半日ぐらいの距離……らしいのだけれど……私の体力が底をつきました。
ラキアで今晩の宿をとり、明日、王都へ向けて出発だそうです。
アラン様は自分が一番速いから……と、おひとりで聖女保護の連絡をしに馬を走らせて行きました。体力お化けだと思います。
豪華ホテルだよ! ――な宿の最上階を貸しきり、2ヶ所ある階段には騎士様が1人ずつ立つ。フロアの中央部分の2部屋が、私とシシーリア聖皇国の使節団に割りあてられ、それぞれの扉の前にも騎士様が1人ずつ。
女性が私だけだから、しかたがないのだけれど、とっても広いお部屋を1人で使うの、もうしわけない……
騎士様達、お部屋ないし……徹夜なの? 馬車酔い、本当~にもうしわけない~
「この世界のこと、これからのこと。気になっていると思って説明に来たんだけど、馬車酔いひどいようなら休んでからにする?」
「……いえ、教えてください」
なにも知らないほうが、不安で落ちつかないものね。
私の正面、お菓子山盛りのテーブルをはさんで、3人掛けのソファーにジリオ様と彼の書記官が座る。私のななめ後ろに、馬車にも乗ったアラン様の部下の騎士。ジリオ様のななめ後ろに、御者をやっていた護衛が立った。
じっくり説明してくださる体制に背筋がのびる。
「この世界にはね、数百年に1度の割合で虹色の雲、彩雲がかかり、異世界からの来訪者が来臨する神の御業があるんだ」
異世界人、けっこう来ているようです。無意識にうさピョンを撫でながら、ジリオ様の説明を聞きます。
「異世界からの来訪者は、ひとしく強大な魔力をその身に内包しているため、男性は聖者、女性は聖女と呼ばれている。彩雲から降臨したリオが聖女と呼ばれるのは、この世界での決定事項なんだよ。
強大な魔力を欲した国々が来訪者を奪いあって戦争したり、来訪者が他国からの暗殺者に命を狙われる――なんてこともあった」
――怖い……戦争の火種になることも……死ぬのもイヤ……
思わずうさピョンを抱きしめる。
「安心して。そんな愚かなことは一昔前のできごとだから。現在は『聖者・聖女条約』で来訪者は守られているからね」
あっ、またでてききた『聖者・聖女条約』。
「その『聖者・聖女条約』ってなんですか?」
「――う~ん、簡単にいえば聖者、聖女を守りましょう! っていう、世界のとり決めのことだよ。王族会議で神に誓って『聖者・聖女条約』が締結されたから、リオは絶対守られる」
安心だよ……と、ニッコリ微笑むジリオ様を不安そうに見つめてしまった。
「破れば神罰がくだるからね」
異世界転生じゃないから、定番の神様にも会えなかったし……一般的日本人の私……無宗教に生きていたもので、神罰といわれても、まゆつば感ハンパないです……
――後々、司祭様から、この世界の唯一神、ファリアーナ様は愛と慈愛、豊穣の女神でもあるのだけれど、規律と約定の神でもあるとお聞きした。
平等に罰をあたえる神なので、神に誓った『条約』は『契約』となり神と繋がり、これを破ろうものなら、軽くて自身の死。重くて国の滅亡……とのこと。
実際に神罰をくだす、唯一神の信仰……
規律と約定の神の名をかりた、勝手な『契約』に縛られ……愛と慈愛、豊穣の女神の名をかりた、価値観と貞操観念の違いに苦しめられ……
この世界に心を壊されるのは、もう少し先のはなし……
高い壁に囲まれた扉をくぐったとたん、広がる見なれない石造りの建物。欧州地域の中世の世界に迷いこんだような、人びとの衣装。
異世界っていうより、まだ外国に来たような……観光気分が抜けないです。
ただ、アラン様やジリオ様が背が高いんだろうな……って、思っていたのに……
巨人の国ですか……?!
女性でも低くて165cmはありそう――! ヒールを履いてギリ160cmの私、いや正直になろう……身長154cmの私は、もしかして子供だと思われている?
豪華な宿の豪華な1室にとおされた私の前には、色とりどりの甘いお菓子。
座るソファーの横には、耳の長い白いもふもふした毛のぬいぐるみまで用意されている。――サイズ的に抱き枕? 癒されそうで心ひかれるけれど……うさピョンと名づけよう(勝手に命名)赤い瞳もウサギみたいだしね。
「馬車酔いには、レモナの蜂蜜漬けがきくので用意させたよ。甘くしてもらったから飲めるよね」
ジリオ様がさしだしてくれた飲み物はレモネードでした。こんなに甘くなくても飲めますよ~酸味が遠すぎるけれど、おいしい。
王都まではあと半日ぐらいの距離……らしいのだけれど……私の体力が底をつきました。
ラキアで今晩の宿をとり、明日、王都へ向けて出発だそうです。
アラン様は自分が一番速いから……と、おひとりで聖女保護の連絡をしに馬を走らせて行きました。体力お化けだと思います。
豪華ホテルだよ! ――な宿の最上階を貸しきり、2ヶ所ある階段には騎士様が1人ずつ立つ。フロアの中央部分の2部屋が、私とシシーリア聖皇国の使節団に割りあてられ、それぞれの扉の前にも騎士様が1人ずつ。
女性が私だけだから、しかたがないのだけれど、とっても広いお部屋を1人で使うの、もうしわけない……
騎士様達、お部屋ないし……徹夜なの? 馬車酔い、本当~にもうしわけない~
「この世界のこと、これからのこと。気になっていると思って説明に来たんだけど、馬車酔いひどいようなら休んでからにする?」
「……いえ、教えてください」
なにも知らないほうが、不安で落ちつかないものね。
私の正面、お菓子山盛りのテーブルをはさんで、3人掛けのソファーにジリオ様と彼の書記官が座る。私のななめ後ろに、馬車にも乗ったアラン様の部下の騎士。ジリオ様のななめ後ろに、御者をやっていた護衛が立った。
じっくり説明してくださる体制に背筋がのびる。
「この世界にはね、数百年に1度の割合で虹色の雲、彩雲がかかり、異世界からの来訪者が来臨する神の御業があるんだ」
異世界人、けっこう来ているようです。無意識にうさピョンを撫でながら、ジリオ様の説明を聞きます。
「異世界からの来訪者は、ひとしく強大な魔力をその身に内包しているため、男性は聖者、女性は聖女と呼ばれている。彩雲から降臨したリオが聖女と呼ばれるのは、この世界での決定事項なんだよ。
強大な魔力を欲した国々が来訪者を奪いあって戦争したり、来訪者が他国からの暗殺者に命を狙われる――なんてこともあった」
――怖い……戦争の火種になることも……死ぬのもイヤ……
思わずうさピョンを抱きしめる。
「安心して。そんな愚かなことは一昔前のできごとだから。現在は『聖者・聖女条約』で来訪者は守られているからね」
あっ、またでてききた『聖者・聖女条約』。
「その『聖者・聖女条約』ってなんですか?」
「――う~ん、簡単にいえば聖者、聖女を守りましょう! っていう、世界のとり決めのことだよ。王族会議で神に誓って『聖者・聖女条約』が締結されたから、リオは絶対守られる」
安心だよ……と、ニッコリ微笑むジリオ様を不安そうに見つめてしまった。
「破れば神罰がくだるからね」
異世界転生じゃないから、定番の神様にも会えなかったし……一般的日本人の私……無宗教に生きていたもので、神罰といわれても、まゆつば感ハンパないです……
――後々、司祭様から、この世界の唯一神、ファリアーナ様は愛と慈愛、豊穣の女神でもあるのだけれど、規律と約定の神でもあるとお聞きした。
平等に罰をあたえる神なので、神に誓った『条約』は『契約』となり神と繋がり、これを破ろうものなら、軽くて自身の死。重くて国の滅亡……とのこと。
実際に神罰をくだす、唯一神の信仰……
規律と約定の神の名をかりた、勝手な『契約』に縛られ……愛と慈愛、豊穣の女神の名をかりた、価値観と貞操観念の違いに苦しめられ……
この世界に心を壊されるのは、もう少し先のはなし……
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