悪と正義と悪意と。

パティル

文字の大きさ
上 下
5 / 5
悪のト。

05

しおりを挟む
 親分、兄貴と呼ばれている男、楠瀬薫くすのせかおるがコンビニに辿り着くと、監視カメラの情報や血痕の痕跡を消す作業を開始する。そんな事件が起きている現場へと、刻一刻と近づく影が一つ。

 五臺 務ごだいつとむは早朝からの巡回の終着点、町の中央部にあるコンビニへと向かっていた。

 やはりというか、当然というべきか、五臺 務ごだいつとむは巨漢である。身長は二メートルを越し、下駄で更にその長身は底上げされている。

 それ故に、覗けてしまうのだ。遠目に見える、壁側に設置された商品棚の上から店内を覗き込めてしまうのだ。
 目を細めながらガラス越しに店内の様子を伺いながらも、その歩みは止まらない。

「ふむ、今日はレジに誰もいないのか。不用心だな」

 誰にいうでなく、気になった事を声に出して確認する五臺 務ごだいつとむ。この行動で記憶のメモにささいな情報でも忘れないようにするのが彼の癖である。

 実際、コンビニ店内では暴力事件が発生しており、今も楠瀬薫が最後の仕上げとばかりに後処理を行なっている最中である。

 だが、未だ五臺 務ごだいつとむの瞳にその光景がうつることはなかった。
 楠瀬の身長が低かったこと、そして血をふき取る為しゃがんでいたことが起因していた。

 神栖英かみすすぐるも、心のケアとまではいかずとも、尼ヶ崎の着替えを手伝うなどをしていた為、従業員更衣室と店の奥にいた為、その姿を確認されることはなかった。

 しかし、彼らは間違い無く出会う。
 今、この瞬間に発見されずとも、必ず発見されてしまう。

 町の正義のために生きる五臺 務ごだいつとむ、自分の信じる正義の名の下、悪行を行う楠瀬薫くすのせかおる神栖英かみすすぐる

 それらが交わる時、私は最高に光悦に浸る事が出来るであろう。
 アァア、早く彼の歪む顔を見たいわ。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...