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悪のト。
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突如、店内に現れた男は三人組の学生達(私服姿なので学生とは認知していないだろうが)に詰め寄った。
「おいガキども、さっきから鬱陶しいんだよ!」
中肉中背、特徴という特徴を持ち合わさない男は神栖英という名の男だった。
そんな男の登場に、一瞬だけ怖気づく三人組だが、見た目がチャラいだけで自分たちが本気を出せばこんな奴一人なんか怖くないだろうと考え直した。若さゆえの判断ミスが始まる。
「う、うっせぇボケ! 殺すぞ!」
「何? おっさん俺達に文句でもあんの?」
「俺達に手ぇ出せば、おっさんの人生終わりだな!」
「「「ハハハハッハハ」」」
何が面白いのだろうか、手に持った商品をカウンターに置き、そんな挑発的な台詞を吐きゲラゲラ笑う男達。
だが、相手が悪かった。
無邪気な悪は自分たちが絶対安全だと信じて止まない。目に見えない何かに守られていて、かつ自由が効くのが現実だと信じて止まない。すなわち、無知の知、馬鹿の極みであったと言えよう。
次の瞬間、目にも止まらぬスピードで繰り出された拳が男の顔にぬめりこむ。
「ふべっぇ」
男は体を浮かせ、そのまま後方にあったドリンク棚に頭から激突していた。
「ったく、ガキがギャーギャー煩せぇんだよ」
「お、おいっ田中! お前、ぜってー訴えてやんからな!」
「お前も黙れ」
「ぎぃうああああああああ」
思いっきり膝に蹴り込まれた男は、片膝をつき壊された膝を抱くように抑える。
「田中、伊藤……お前、ぶっ殺すぞ!」
定番である。ここで刃物なんて取りだしたら正当防衛と言えるか危ういにも関わらず、刃物を取りだす。
本気で相手を殺してやろうと、後先考えずに行動出来るのは若さゆえか、いやこれもただの馬鹿故か。
「しねぇぇぇ!」
「キャ、キャアアアアアアア」
このタイミングでやっと現状を理解したのだろうか、目の前に現れた救世主が殺されてしまうと思い込み天ヶ崎は目を瞑り大声をあげていた。しゃがみ込み、ショッキングな光景を前に粗相をしてしまうのは、現代人としてはしょうがない事だろう。
そんな天ヶ崎のショックとは裏腹に、中肉中背の男、神栖は刃物を握る手を再び足蹴りで砕き、落した刃物を拾い上げると容赦なく男の肩へ突き刺していた。
「ァ、アアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
「おいおい、ガキがいきってるじゃねぇか? どうすっかなぁ、どっか埋めちゃうかぁ? どうせだしどっかに売りさばくかぁ? あぁ、聞いてんのかガキども!? ちっ、こっちゃ目立ちたくないってのによぉ、後で兄貴に相談だこりゃ」
気を失ってしまった三人を放置して、神栖はレジでしゃがみ込んでいる天ヶ崎に声をかけた。
「おい、大丈夫か嬢ちゃん? あー、ちょっと嬢ちゃんにゃ激しすぎたか。立てるかい?」
「あ、ぅ……」
恥ずかしさや、足腰に力が入らない状況、目の前で何が起きたのか理解出来ないと情報量が多すぎパニック状態の天ヶ崎は言葉を詰まらせた。こんな状況でも動じないのは立ち読み中の美人ただ一人だけである。
「兄貴? ちょっとコンビニで色々ありましてね……ええ、ああ、はい」
「……目立つなって言っただろう?」
「女の子が絡まれてたら、助けるしかないっしょ?」
「……はぁ、わかった。お前のそういうトコを俺は評価している。ちゃんと介抱してやれよ、後クソどもはトイレにでも突っ込んどけ」
「了解っす」
とるべき行動が決まり、気絶している三人をひょいひょいと担いでは運んでを繰り返しトイレの個室に放り込んだ。そして戻ってくると、先ほどよりも時間が経過したからかツンとコンビニ内に異臭が漂っている。
空調を弱めに設定(節電)しているため、血の匂いやアンモニア臭が漂っているのだ。未だに地面に座り込んでいる天ヶ崎の体をお姫様抱っこをして持ち上げると、レジ内の奥にあった椅子まで運び座らせた。
「ぁ、ぅ、汚れちゃう……」
何とか絞り出せた声は、恥じらい9割、恐怖5分、期待5分といったところだろうか。
さっそうと現れ、結果はどうであれ助けてくれた人を悪くは思わないのが思春期女子である。
「気にすんな、怖かったか? ごめんな、俺はああいうの許せないんだわ」
神栖にとっての正義とは、守る力ことである。
だから女の子を守るのも当然で、悪に容赦は一切しない。
水たまり処理をテキパキとこなす神栖の姿を見て、極度の恥じらいから胸のときめきを覚えた天ヶ崎は当然、瞳の形をハートに変え胸の高鳴りが聞こえぬよう、必死に両腕を胸元に寄せ鎮まるように身を縮めていた。
天ヶ崎にとって、神栖は守ってくれた正義の人。勿論、神栖にとっても自分の行いを正義だとしか信じちゃいない。だが、神栖は世間一般的に言う悪の側だという事は、本人も含め気づいていない。
あーあ、無知故にとってしまう行動は何てしょうもないのだろうか。
本当に可愛そうな人たち。
早く彼が来ないかしら。
「おいガキども、さっきから鬱陶しいんだよ!」
中肉中背、特徴という特徴を持ち合わさない男は神栖英という名の男だった。
そんな男の登場に、一瞬だけ怖気づく三人組だが、見た目がチャラいだけで自分たちが本気を出せばこんな奴一人なんか怖くないだろうと考え直した。若さゆえの判断ミスが始まる。
「う、うっせぇボケ! 殺すぞ!」
「何? おっさん俺達に文句でもあんの?」
「俺達に手ぇ出せば、おっさんの人生終わりだな!」
「「「ハハハハッハハ」」」
何が面白いのだろうか、手に持った商品をカウンターに置き、そんな挑発的な台詞を吐きゲラゲラ笑う男達。
だが、相手が悪かった。
無邪気な悪は自分たちが絶対安全だと信じて止まない。目に見えない何かに守られていて、かつ自由が効くのが現実だと信じて止まない。すなわち、無知の知、馬鹿の極みであったと言えよう。
次の瞬間、目にも止まらぬスピードで繰り出された拳が男の顔にぬめりこむ。
「ふべっぇ」
男は体を浮かせ、そのまま後方にあったドリンク棚に頭から激突していた。
「ったく、ガキがギャーギャー煩せぇんだよ」
「お、おいっ田中! お前、ぜってー訴えてやんからな!」
「お前も黙れ」
「ぎぃうああああああああ」
思いっきり膝に蹴り込まれた男は、片膝をつき壊された膝を抱くように抑える。
「田中、伊藤……お前、ぶっ殺すぞ!」
定番である。ここで刃物なんて取りだしたら正当防衛と言えるか危ういにも関わらず、刃物を取りだす。
本気で相手を殺してやろうと、後先考えずに行動出来るのは若さゆえか、いやこれもただの馬鹿故か。
「しねぇぇぇ!」
「キャ、キャアアアアアアア」
このタイミングでやっと現状を理解したのだろうか、目の前に現れた救世主が殺されてしまうと思い込み天ヶ崎は目を瞑り大声をあげていた。しゃがみ込み、ショッキングな光景を前に粗相をしてしまうのは、現代人としてはしょうがない事だろう。
そんな天ヶ崎のショックとは裏腹に、中肉中背の男、神栖は刃物を握る手を再び足蹴りで砕き、落した刃物を拾い上げると容赦なく男の肩へ突き刺していた。
「ァ、アアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
「おいおい、ガキがいきってるじゃねぇか? どうすっかなぁ、どっか埋めちゃうかぁ? どうせだしどっかに売りさばくかぁ? あぁ、聞いてんのかガキども!? ちっ、こっちゃ目立ちたくないってのによぉ、後で兄貴に相談だこりゃ」
気を失ってしまった三人を放置して、神栖はレジでしゃがみ込んでいる天ヶ崎に声をかけた。
「おい、大丈夫か嬢ちゃん? あー、ちょっと嬢ちゃんにゃ激しすぎたか。立てるかい?」
「あ、ぅ……」
恥ずかしさや、足腰に力が入らない状況、目の前で何が起きたのか理解出来ないと情報量が多すぎパニック状態の天ヶ崎は言葉を詰まらせた。こんな状況でも動じないのは立ち読み中の美人ただ一人だけである。
「兄貴? ちょっとコンビニで色々ありましてね……ええ、ああ、はい」
「……目立つなって言っただろう?」
「女の子が絡まれてたら、助けるしかないっしょ?」
「……はぁ、わかった。お前のそういうトコを俺は評価している。ちゃんと介抱してやれよ、後クソどもはトイレにでも突っ込んどけ」
「了解っす」
とるべき行動が決まり、気絶している三人をひょいひょいと担いでは運んでを繰り返しトイレの個室に放り込んだ。そして戻ってくると、先ほどよりも時間が経過したからかツンとコンビニ内に異臭が漂っている。
空調を弱めに設定(節電)しているため、血の匂いやアンモニア臭が漂っているのだ。未だに地面に座り込んでいる天ヶ崎の体をお姫様抱っこをして持ち上げると、レジ内の奥にあった椅子まで運び座らせた。
「ぁ、ぅ、汚れちゃう……」
何とか絞り出せた声は、恥じらい9割、恐怖5分、期待5分といったところだろうか。
さっそうと現れ、結果はどうであれ助けてくれた人を悪くは思わないのが思春期女子である。
「気にすんな、怖かったか? ごめんな、俺はああいうの許せないんだわ」
神栖にとっての正義とは、守る力ことである。
だから女の子を守るのも当然で、悪に容赦は一切しない。
水たまり処理をテキパキとこなす神栖の姿を見て、極度の恥じらいから胸のときめきを覚えた天ヶ崎は当然、瞳の形をハートに変え胸の高鳴りが聞こえぬよう、必死に両腕を胸元に寄せ鎮まるように身を縮めていた。
天ヶ崎にとって、神栖は守ってくれた正義の人。勿論、神栖にとっても自分の行いを正義だとしか信じちゃいない。だが、神栖は世間一般的に言う悪の側だという事は、本人も含め気づいていない。
あーあ、無知故にとってしまう行動は何てしょうもないのだろうか。
本当に可愛そうな人たち。
早く彼が来ないかしら。
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