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中庭のベンチで仮眠をとっていた恵一は2時間目の授業が終わったチャイムで目を覚ました。
すぐさま男子トイレに駆け込んで個室に鍵をかける。
「頼むぞ」
仮面へむけて声をかけ、それを顔につけた。
つるりとした仮面が肌に吸い付いてくるのを感じる。
それはとても心地よく恵一と一体化していくような感覚だ。
このまま仮面と一緒になってしまってもいいと思うくらいだが、それでは普段の生活がままならなくなってしまう。
仮面をつけた恵一はまた自分の行動に身をゆだねた。
仮面は自分の思考回路を読んでいるかのように、勝手に体を動かしてくれる。
自分が次になにをしたいのか言葉で伝える必要がないのはとても便利だった。
足は勝手に外へ向かい、女子更衣室へと向かう。
その間もメインのルートではなく遠回りをして生徒たちに見つからないようにしていた。
「いいぞ、その調子だ」
そんな言葉が口をついて出て、恵一は自分の口を塞いだ。
昨日は悲鳴も出すことができなかったのに、今は自分の意思で言葉を出すことができた。
一瞬混乱したが、すぐに冷静さをとり戻す。
もしかしたら回数を重ねるごとに自分の意思も反映されるようになるのかもしれない。
最初のときは恵一も驚いて悲鳴をあげてしまいそうになったから、牽制の意味があったのかも。
そう考えることにした。
なにせこの仮面は人間の想像を超えたものだ。
そのくらいのことができても、もう不思議だとは思わなかった。
そうこうしているうちに気がつけば女子更衣室の裏へ到着していた。
小さな窓の向こうからは女子生徒たちの明るい話声が聞こえてくる。
この窓も換気のために少しだけ開けられていたが、天井付近なのでとても手は届かない。
すると恵一の足は更衣室を隠すように植えるられている生垣へと向かった。
生垣の中に両手を突っ込み、なにかを探している。
指先に触れたそれを両手で引っ張り出してみると、赤色のブロックだった。
生垣の奥には花壇が作られていて、それに使われているものと同じだとすぐにわかった。
きっと余分に持ってきてしまったものをここに放置したのだろう。
けれどそんなこと恵一は知らなかった。
この仮面は恵一よりももっとこの学校について詳しいようだ。
ともあれ、このブロックに乗って手を伸ばせば窓の中を撮影することができそうだ。
恵一はブロックを縦に置き、その上に足を乗せた。
バランスをとりながらブロックの上で背伸びをし、手を伸ばす。
カメラを少し斜め下に向けてシャッターを切る。
更衣室にいる女子たちは外で起きている異変に気がつくことなく、いつまでも明るい声を響かせていたのだった。
☆☆☆
外のトイレに身を潜めた恵一は再びデジタルカメラの写真を確認した。
そこにはついさっき撮影したばかりの女子更衣室の様子が写っていた。
ロッカーに向かって立つ女子生徒たち。
その大半が下着姿だった。
恵一は生唾を飲み込んで次々と写真を確認する。
いた、リナだ!
リナは更衣室の真ん中のロッカーの前に立っていて、カメラには背中を向けた状態でブラウスを脱いでいるところだった。
ブラウスが肩から外され、白いキャミソールが見えている。
また唾を飲み込んで、写真を送る。
次に写っていたのはブラウスを脱ぎ、スカートを半分ほど脱いでいるリナの写真だった。
白いフリルのついたショーツに体が熱くなっていくのを感じる。
他の女子生徒たちの下着姿も一緒に移っていたが、恵一にはリナの姿しか見えていなかった。
形のいいヒップがこちらへ向いていて、手を伸ばして触れたくなってしまう。
太ももは思っていたよりもムッチリとしているが、手足は長くてバランスが取れている。
このアングルだと胸の大きさを確認できないのが残念だった。
恵一は舌なめずりをして写真を見つめる。
「まだだ……まだまだ過激なものが撮影できるはずだ」
そう呟いて真っ白か仮面を見つめた恵一は口角をゆがめて笑ったのだった。
☆☆☆
恵一の最終目標はリナの全裸を撮影することだった。
だけれどそれはプールの授業がないと難しい。
残念ながら恵一の通っている高校はプールの授業自体がなかった。
その目標は一旦保留にすることになってしまったが、まだもう1つの目標があった。
学校内で撮影できるもっとも過激な写真。
それはトイレ内の写真だった。
その写真を撮るためには女子トイレに入る必要があるが、それは今日休んでいることになっている恵一にとっては簡単なことだった。
授業中にあらかじめ女子トイレに侵入し、個室に鍵をかけて待機。
運よく、自分が入っている個室の左右どちらかにリナが入ってくれればいいだけだった。
恵一はさっそくB組から一番近い女子トイレに侵入した。
授業が終わるまであと20分ほど。
リナがトイレに入ってくる可能性。
そして左右のどちからの個室に入ってくる可能性は極めて低い。
だけど大丈夫。
1日はまだまだ長い。
チャンスは一度きりじゃないんだから。
恵一は舌なめずりをして、その時を待ったのだった。
学校が昼休憩に入ったとき、ようやくそのチャンスはやってきた。
個室で手持ち無沙汰にしていたときにリナの声が聞こえてきたのだ。
恵一はハッと息を飲んで仮面をかぶった。
右手はすぐにデジタルカメラを取り出す。
リナの声が恵一のいる隣の個室へ吸い込まれていったとき、内心でガッツポーズをとる。
いいぞ。
これ以上のチャンスはきっと二度とこない。
そう考えたとき、体がトイレの床にベッタリと這い蹲った。
「げっ」
一瞬そんな声が出て慌てて口をつぐむ。
完璧な盗撮をするために必要なことなのだと自分自身に言い聞かせて、息を止める。
アンモニア臭のする床に自分の頬がベッタリと張り付いたとき、さすがに吐き気を感じた。
そんなことはお構いなしに右手はトイレの下の隙間から隣の個室を連写する。
今リナがすぐ隣で放尿している。
そう思うと体がカッと熱くなり、吐き気はどこかへ吹き飛んでしまった。
時間にしてほんの2分か3分。
いや、そんなにかかっていなかったかしれない。
女子のトイレが意外と短いことを知って恵一は少し驚いていた。
長くなるのはその後の立ち話や身だしなみのチェックに忙しいからみたいだ。
今日の目標をすべて達成した恵一はようやくトイレの床から離れて、手の甲で自分の頬をぬぐったのだった。
☆☆☆
みんなが午後の授業を受けている間に恵一は自宅へと戻ってきていた。
キッチンへ向かって母親が作っておいてくれたおかゆを温めて食べて、それから自室へ戻るとゆっくりと今日撮影したものを見直していった。
リナの着替え姿。
そしてトイレ姿。
どれも後ろから撮影したものだったが、これはきっと誰もみたことのない写真に違いない。
恵一は最初にショーツ姿のリナをまじまじと見つめ、それからトイレで下着を下ろしているリナの姿を見つめた。
自分の体の内側がカッと熱くなるのを感じる。
大きく息を吸い込んで気持ちを落ち尽かせて、他の盗撮写真も確認した。
恵一は今日1日で何百枚というリナの写真を撮っていた。
その中にはクラスメートの女子と会話している写真も含まれている。
日常生活のワンシーンを切り取ったその写真を見ているうちに、ふと気がつくことがあって眉を寄せた。
リナと一緒に写っているのはB組の四条クルミだ。
クルミは金持ちの家のお嬢様らしく、その立ち振る舞いも他の生徒たちと少し違っていて目立つ存在だった。
写真の中の2人は普通に仲よさそうに会話しているように見える。
しかし連写で撮影した何枚かの中で、リナの表情が険しくなっているのだ。
一方のクルミは満面の笑みを浮かべて話かけている。
2人の間に感じる温度差は気のせいだろうか?
クラスメートといえど2人とは挨拶くらいしか交わしたことのない恵一は、ただ写真を見て自分の想像を膨らませることしかできなかったのだった。
すぐさま男子トイレに駆け込んで個室に鍵をかける。
「頼むぞ」
仮面へむけて声をかけ、それを顔につけた。
つるりとした仮面が肌に吸い付いてくるのを感じる。
それはとても心地よく恵一と一体化していくような感覚だ。
このまま仮面と一緒になってしまってもいいと思うくらいだが、それでは普段の生活がままならなくなってしまう。
仮面をつけた恵一はまた自分の行動に身をゆだねた。
仮面は自分の思考回路を読んでいるかのように、勝手に体を動かしてくれる。
自分が次になにをしたいのか言葉で伝える必要がないのはとても便利だった。
足は勝手に外へ向かい、女子更衣室へと向かう。
その間もメインのルートではなく遠回りをして生徒たちに見つからないようにしていた。
「いいぞ、その調子だ」
そんな言葉が口をついて出て、恵一は自分の口を塞いだ。
昨日は悲鳴も出すことができなかったのに、今は自分の意思で言葉を出すことができた。
一瞬混乱したが、すぐに冷静さをとり戻す。
もしかしたら回数を重ねるごとに自分の意思も反映されるようになるのかもしれない。
最初のときは恵一も驚いて悲鳴をあげてしまいそうになったから、牽制の意味があったのかも。
そう考えることにした。
なにせこの仮面は人間の想像を超えたものだ。
そのくらいのことができても、もう不思議だとは思わなかった。
そうこうしているうちに気がつけば女子更衣室の裏へ到着していた。
小さな窓の向こうからは女子生徒たちの明るい話声が聞こえてくる。
この窓も換気のために少しだけ開けられていたが、天井付近なのでとても手は届かない。
すると恵一の足は更衣室を隠すように植えるられている生垣へと向かった。
生垣の中に両手を突っ込み、なにかを探している。
指先に触れたそれを両手で引っ張り出してみると、赤色のブロックだった。
生垣の奥には花壇が作られていて、それに使われているものと同じだとすぐにわかった。
きっと余分に持ってきてしまったものをここに放置したのだろう。
けれどそんなこと恵一は知らなかった。
この仮面は恵一よりももっとこの学校について詳しいようだ。
ともあれ、このブロックに乗って手を伸ばせば窓の中を撮影することができそうだ。
恵一はブロックを縦に置き、その上に足を乗せた。
バランスをとりながらブロックの上で背伸びをし、手を伸ばす。
カメラを少し斜め下に向けてシャッターを切る。
更衣室にいる女子たちは外で起きている異変に気がつくことなく、いつまでも明るい声を響かせていたのだった。
☆☆☆
外のトイレに身を潜めた恵一は再びデジタルカメラの写真を確認した。
そこにはついさっき撮影したばかりの女子更衣室の様子が写っていた。
ロッカーに向かって立つ女子生徒たち。
その大半が下着姿だった。
恵一は生唾を飲み込んで次々と写真を確認する。
いた、リナだ!
リナは更衣室の真ん中のロッカーの前に立っていて、カメラには背中を向けた状態でブラウスを脱いでいるところだった。
ブラウスが肩から外され、白いキャミソールが見えている。
また唾を飲み込んで、写真を送る。
次に写っていたのはブラウスを脱ぎ、スカートを半分ほど脱いでいるリナの写真だった。
白いフリルのついたショーツに体が熱くなっていくのを感じる。
他の女子生徒たちの下着姿も一緒に移っていたが、恵一にはリナの姿しか見えていなかった。
形のいいヒップがこちらへ向いていて、手を伸ばして触れたくなってしまう。
太ももは思っていたよりもムッチリとしているが、手足は長くてバランスが取れている。
このアングルだと胸の大きさを確認できないのが残念だった。
恵一は舌なめずりをして写真を見つめる。
「まだだ……まだまだ過激なものが撮影できるはずだ」
そう呟いて真っ白か仮面を見つめた恵一は口角をゆがめて笑ったのだった。
☆☆☆
恵一の最終目標はリナの全裸を撮影することだった。
だけれどそれはプールの授業がないと難しい。
残念ながら恵一の通っている高校はプールの授業自体がなかった。
その目標は一旦保留にすることになってしまったが、まだもう1つの目標があった。
学校内で撮影できるもっとも過激な写真。
それはトイレ内の写真だった。
その写真を撮るためには女子トイレに入る必要があるが、それは今日休んでいることになっている恵一にとっては簡単なことだった。
授業中にあらかじめ女子トイレに侵入し、個室に鍵をかけて待機。
運よく、自分が入っている個室の左右どちらかにリナが入ってくれればいいだけだった。
恵一はさっそくB組から一番近い女子トイレに侵入した。
授業が終わるまであと20分ほど。
リナがトイレに入ってくる可能性。
そして左右のどちからの個室に入ってくる可能性は極めて低い。
だけど大丈夫。
1日はまだまだ長い。
チャンスは一度きりじゃないんだから。
恵一は舌なめずりをして、その時を待ったのだった。
学校が昼休憩に入ったとき、ようやくそのチャンスはやってきた。
個室で手持ち無沙汰にしていたときにリナの声が聞こえてきたのだ。
恵一はハッと息を飲んで仮面をかぶった。
右手はすぐにデジタルカメラを取り出す。
リナの声が恵一のいる隣の個室へ吸い込まれていったとき、内心でガッツポーズをとる。
いいぞ。
これ以上のチャンスはきっと二度とこない。
そう考えたとき、体がトイレの床にベッタリと這い蹲った。
「げっ」
一瞬そんな声が出て慌てて口をつぐむ。
完璧な盗撮をするために必要なことなのだと自分自身に言い聞かせて、息を止める。
アンモニア臭のする床に自分の頬がベッタリと張り付いたとき、さすがに吐き気を感じた。
そんなことはお構いなしに右手はトイレの下の隙間から隣の個室を連写する。
今リナがすぐ隣で放尿している。
そう思うと体がカッと熱くなり、吐き気はどこかへ吹き飛んでしまった。
時間にしてほんの2分か3分。
いや、そんなにかかっていなかったかしれない。
女子のトイレが意外と短いことを知って恵一は少し驚いていた。
長くなるのはその後の立ち話や身だしなみのチェックに忙しいからみたいだ。
今日の目標をすべて達成した恵一はようやくトイレの床から離れて、手の甲で自分の頬をぬぐったのだった。
☆☆☆
みんなが午後の授業を受けている間に恵一は自宅へと戻ってきていた。
キッチンへ向かって母親が作っておいてくれたおかゆを温めて食べて、それから自室へ戻るとゆっくりと今日撮影したものを見直していった。
リナの着替え姿。
そしてトイレ姿。
どれも後ろから撮影したものだったが、これはきっと誰もみたことのない写真に違いない。
恵一は最初にショーツ姿のリナをまじまじと見つめ、それからトイレで下着を下ろしているリナの姿を見つめた。
自分の体の内側がカッと熱くなるのを感じる。
大きく息を吸い込んで気持ちを落ち尽かせて、他の盗撮写真も確認した。
恵一は今日1日で何百枚というリナの写真を撮っていた。
その中にはクラスメートの女子と会話している写真も含まれている。
日常生活のワンシーンを切り取ったその写真を見ているうちに、ふと気がつくことがあって眉を寄せた。
リナと一緒に写っているのはB組の四条クルミだ。
クルミは金持ちの家のお嬢様らしく、その立ち振る舞いも他の生徒たちと少し違っていて目立つ存在だった。
写真の中の2人は普通に仲よさそうに会話しているように見える。
しかし連写で撮影した何枚かの中で、リナの表情が険しくなっているのだ。
一方のクルミは満面の笑みを浮かべて話かけている。
2人の間に感じる温度差は気のせいだろうか?
クラスメートといえど2人とは挨拶くらいしか交わしたことのない恵一は、ただ写真を見て自分の想像を膨らませることしかできなかったのだった。
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