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The beginning,―叙事詩と忍者と迷惑沙汰。

超適当ハッカー、助太刀に参る。

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 僕の友人、丹崎 彩芽(タンザキ アヤメ)が失踪したのはちょうどサークルの合宿が終わった次の日だった。彩芽と知り合ったのは、大学のカヤックサークルに入った時からだ。入るのを渋っていた僕に、声をかけ、手をとってくれた。
サークル内に馴染めずいた僕に毎日話しかけてくれた、そんないい奴だったんだ。

 カヤックサークル恒例の秋の初めにあるカヤック講習兼合宿会があると決まった時はもちろん、アイツも喜んでいた。
それこそ合宿中も、合宿後も変わった様子は無かったのに……


  合宿が終わった次の日。


  彼女は突然姿を眩ませた。

 家にも、大学内にも、何処を探しても、彼女は見つからなかった。
 地元のニュースでは取り上げてもらったが彼女の姿を見たという情報は一つたりとも出てこなかった。
唯一わかった情報は、彼女は自身の住んでいるマンションへ帰った後は何処にも出ていないということだけだ。

「……確かに、変よね。部屋に鍵とかは?」

「鍵はかかってました。僕は彼女の部屋へと行ったんですが彼女の部屋は何一つ変わりはなかったです。」

「あらそうなの……」

 霧隠さんは小難しげな表情でじっと話を聞いていた。が、急に何かを思い立ったかのようにスマートフォンをフリックし始める。

「情報が不足し過ぎているのがネックよね。何処かで揉み消されているかもしれないし、ちょっと知り合いを呼ぶから、そしたら何かわかるかもしれないわ。」

 そしてスマートフォンを耳にくっつけたまま、奥の部屋へと消える。微妙に話し声が聞こえるが、どうやら簡単に済んだようで二分とかからずリビングへと戻ってきた。

「たぶん四、五分したら来るわ。今のうちにこの紙に彼女の住所とか諸々、個人情報を書き出しておいて。」

「えっ……こ、個人情報ですか……」

「まぁ大丈夫よ、アイツ個人情報取ったりするようなヤツじゃないし、使い終わったら破棄していいから。」

 なんだか不安になるが、仕方ない。今は手段を選んでる場合ではなかった。
紙に必死で彼女の情報をわかる限り全部書き出し終えた瞬間、後ろのドアがギィっと開く音が聞こえた。

「チィーッス、あんだよ仕事ぉ?」



 後ろを振り返ると、先ほどの電話の相手であろう人物が立っていた。
黒の上下ジャージを着こなし、頭には灰色のニットを被っていて、片方の目が隠れるくらいに髪の毛が伸びている。黒いマスクで鼻からあごまで覆い、その上隈が濃ゆく残る目元には銀色の丸ピアスが2つ付けられている……

……いや、どうみても危ない人だよなぁ……。

「紹介するわね、このクズを擬人化したような男は情報屋的な感じで動いてくれるハッカー、斑目 朧(マダラメ オボロ)よ。」

「前半のいらなくない?!なんで一旦けなしたんだよ!!」

「っさいわね~、ホント。どーせ暇だったのに仕事持ってきてあげただけありがたいと思いなさいよクソニート。」

「誰がニートだ!!俺だって忙しかったさ、ほらあれだよ、電子の海からビーナスを救う作業を……」

「はいはい、エロ画像収集ね。」

 室内には賑やかに2人の掛け合いが響いている。なんだろう、この人たち……怖い通り越してヤバイな……。相談する場所間違えたかな……

「……ま、腕は確かだから。安心して」

 と、言うと霧隠さんは斑目と呼んでいた人物をこちらへとひじで押して持ってくる。
 斑目さんは俺を一瞥すると、

「チッ、男かよ。萎えるわ~、可愛い女の子が来た時だけ俺を呼べよな~ホント」

 と、わけのわからない愚痴をこぼす。反応に困ったが、こぼした瞬間霧隠さんにぶっ叩かれていたから、まぁ、いいんだけど…でもアクが強すぎだろこの人……。

「あ~、わーったわーった。仕事します仕事しますハイハイすりゃいいんすなーすりゃ」

 如何にも不服そうに、持ってきたショルダーバッグから新品であろう銀色のパソコンを取り出す。こなれた調子でパソコンを起動させながら、僕の方へと体を向ける。

「んで、おにぃさぁ~ん。今回はどういった用件で?」

 見た目とは裏腹に軽い調子で問いかけられ、少し戸惑ったが、先ほど話したようなことを再度話すと、じっと黙り込み、何かを思い出しているのか遠くの方を見つめながらマスクごしにあごを指でさすっている。

「…ふぅ~ん…まぁ確かにあのオツムの悪ぃ公務員共にゃあわかんねぇだろうなぁ…。まぁ一応乗り込むか……」

 冷たい起動音を発したパソコンに手を添えると、真剣な眼差しでキーボードを一心不乱に叩く。やけに精密で、正確なその指使いは、確かに霧隠さんがこの人を褒めるだけあるなと感心した。

「……思ったんですけど斑目さん。」

「あ?んだよ二ィちゃん。」

「あ、えっと、の、乗り込むっておっしゃっていたんですけど、乗り込むとは何処に…ですか?」

 キーボードをカタカタと打ち鳴らし、そして右手でターンっとエンターキーを(かっこつけただろうなとあからさまに分かるくらいに)打つと、長い髪の毛ごしに見える目を細めて僕に向けて笑みを浮かべる。

「何処ってそりゃあ、警察署の機密文書を保管してるパソコン内だよ。」





   【プレイヤーNo.2】

  斑目 朧 ─マダラメ オボロ─

   性別 男 職業 情報屋(ハッカー)
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