狂依存

橘スミレ

文字の大きさ
上 下
5 / 17

第五話 ドタバタな感情

しおりを挟む
「おーい、大丈夫かい?」
 まだ曖昧な意識を無理矢理引き戻す。
「あ、木村先生。ここは……保健室?」
 直前の記憶はモザイクがかかったように思い出せない。
「大丈夫?木下さん。あなた、事故で強いDomの力にあたってフラフラしたらしいけど」
 あ、そうだ。確か黒髪の人が自殺しかけてて、それを止めた後、ふわふわしたんだ。
「何があったか教えてくれる?」
 自殺のことは言わない方がいいだろう。面倒事は避けて、今はとにかく休みたい。
「ごめんなさい。あんまり覚えてなくて」
「そう。また思い出したら教えてね。あと落ち着いたら帰って大丈夫だから」
 先生は忙しそうにファイルの山へと向かって行った。これ以上迷惑をかけるわけには行かないのですぐに部屋を出て帰る。

 次の日の朝は不思議と早く目が覚めてしまった。頑張って目をつむっても、覚醒した頭はさえるばかりだった。そのためもあり不機嫌に、なってしまう。
「おはよー」
「おはよう佳子」
 奈々はいつもの笑顔で話しかけてくる。ああ、大人しい彼女は今日も変わらない。きっとNormalなのだろう。羨ましい。彼女は今まで通りに生きていくのだろう。乱暴に鞄を置き中身を取り出す。
「あ!あぁ……もう」
 教科書が飛び出したのを拾う。廊下側の席で、扉も開いていたせいで、廊下までノートが滑っていった。めんどくさい。心の中で舌打ちしながら廊下まで歩く。
 すると優しい誰かが拾ってくれた。視線を上げると見覚えのある顔が。
「あ、昨日の人!おはようございます」
「あんた、昨日邪魔してきたやつか。このノートもあんたのか?」
 彼女の手にはピンク色のノート。一番可愛い、お気に入りのものだ。
「は、はい!そうです。拾ってくれてありがとうございます」
「ふーん。一年三組木下佳子、見た目どおり可愛い字だな」
 そう言いながら渡されたノートは短時間しか持っていなかったはずなのに暖かい。平熱が高いのだろうか。だが顔をのぞくと心なしか赤い。熱があるのかもしれない。
「ほら、はやく教室戻らないと遅れるぞ」
 ぼーっとしていた私にノートを押し付け帰ってしまう。熱がありそうだったが大丈夫だろうか。不安だがひとまず教室に戻る。
 奈々が片付けてくれたのだろう。机の上に綺麗に筆記用具が並んでいる。
「ありがとう、奈々」
「いいよ。親友だもの」
 どうしてだろう、先程のは打って変わって今は彼女の笑顔がいつもどおり可愛らしく見える。ころころと感情が変わって今日はおかしい。疲れているのだろうか。チャイムの音をぼんやりと聞きながら考える。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?

さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。 私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。 見た目は、まあ正直、好みなんだけど…… 「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」 そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。 「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」 はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。 こんなんじゃ絶対にフラれる! 仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの! 実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。 

【完結】【R18百合】女子寮ルームメイトに夜な夜なおっぱいを吸われています。

千鶴田ルト
恋愛
本編完結済み。細々と特別編を書いていくかもしれません。 風月学園女子寮。 私――舞鶴ミサが夜中に目を覚ますと、ルームメイトの藤咲ひなたが私の胸を…! R-18ですが、いわゆる本番行為はなく、ひたすらおっぱいばかり攻めるガールズラブ小説です。 おすすめする人 ・百合/GL/ガールズラブが好きな人 ・ひたすらおっぱいを攻める描写が好きな人 ・起きないように寝込みを襲うドキドキが好きな人 ※タイトル画像はAI生成ですが、キャラクターデザインのイメージは合っています。 ※私の小説に関しては誤字等あったら指摘してもらえると嬉しいです。(他の方の場合はわからないですが)

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

さくらと遥香(ショートストーリー)

youmery
恋愛
「さくらと遥香」46時間TV編で両想いになり、周りには内緒で付き合い始めたさくちゃんとかっきー。 その後のメインストーリーとはあまり関係してこない、単発で読めるショートストーリー集です。 ※さくちゃん目線です。 ※さくちゃんとかっきーは周りに内緒で付き合っています。メンバーにも事務所にも秘密にしています。 ※メインストーリーの長編「さくらと遥香」を未読でも楽しめますが、46時間TV編だけでも読んでからお読みいただくことをおすすめします。 ※ショートストーリーはpixivでもほぼ同内容で公開中です。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

処理中です...