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おまけ
とある後輩の願い
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エリオット君が、あの結末を迎えるまでに何があったかの余話になります。
◇ ◇ ◇
薄く開かれた目蓋の向こう、見上げたのは薄暗い天井。光の差さない空間。まるで空気が纏わり付くようにだるい四肢。
ご奉仕で酷使された以上に疲労しているのは、身体ではなくトクトクと打ちつける自分の胸。行き場を失った感情を捨て去ることもできない奥底。
まるで大きな穴が空いたように感じるのに、苦痛はこぼれ落ちることなく、ずっとエリオットの中を埋め尽くしている。
満たされているのに、埋まることのない虚しさ。矛盾した感覚。
当然だ、この喪失感を埋められるのはたった一人だけ。
薄暗い視界の中、望んだ姿は記憶の中にしか存在しない。
柔らかな亜麻色の髪も、自分を見て笑った空色の瞳も、あの癖のある口調も、エリオットを励まし続けた明るい笑顔も。
それが演技だと明かした姿だって……もう、エリオットはこの目で見ることができない。
今だって、こんなにも鮮明に思い出すことができる。
初めて手を差し伸べてくれた日。失態を犯した自分を笑って慰めてくれた顔。反逆者たちになじられ、怒りに満ちながらも冷静だった姿。そして……そんな彼が紅潮し、エリオットの前で達してしまった光景だって。
エリオットは全部覚えている。忘れられない。忘れられるわけがない。
だって、ペーター――否、クラロこそが、彼にとっての光だったのだから。
エリオットは、何てことはない普通の家庭で生まれ育った。
気弱な父と、しっかり者の母。あえて言うなら血筋に聖職者がいた程度で、それもエリオットにはほとんど関係のなかったことだ。
そもそも、それを知ったのだってエリオットが成人を迎えた日。淫魔様によって、城に勤められる資格を有しているか検査された時だった。
侵略時に両親と生き別れ、一人きり。淫魔様に管理される前でも、何の能力もない人間が一人で生きていけるほど優しい世界ではない。
周囲は淫魔様にご奉仕できることは名誉であると口々に言うが、道具のように使い捨てられている他者の姿に憧れを抱けというのは到底無理な話だ。
少なくとも、エリオットは装うことはできても、そうだと思い込むことはできなかった。
城勤めを選んだのも、一番マシな場所だと知っていたからだ。
奉仕することは変わらなくても、まだ人として扱ってもらえる数少ない場所。
服を着ることさえ許されず、生き物ではないナニかのように扱われ、最悪は息絶える。そんな終わりを迎えたい者がどこにいるというのか。
そんな最期を迎えるのは旧世代でいう貧困層なもの。違うのは、その運命は金ではなく淫魔の機嫌によって定められることだろう。
口には出さずとも、考えることは皆同じ。故に、競争率が高くとも、安全な場所で居場所を確保できたエリオットは、運が良かったのだ。
だからといって、絶望的な状況には変わりなかった。
聖職者の血を引く者が優遇されるのは、それだけ需要があるから。城に入ったその日に奉仕を求められ、どれだけエリオットが恐れたことか。
淫魔に奉仕したくないと拒めば、非国民として処刑される。そうでなくとも、自分たちの平穏を奪った彼らに、人間ではない魔物にあれだけの距離で対峙したのはアレが初めてのこと。
名誉であるなら、助けが差し伸べられるはずもなく。むしろ恒例だと笑われ、羨ましがられ、為す術もなく。
だが、一人だけエリオットを助けてくれた人がいた。
聞き慣れない訛りで淫魔に話しかけ、邪険にされながらも臆することなく。そうしてエリオットを解放させただけでなく、彼らのいない場所にまで一緒に逃げてくれたのだ。
それが持ち場へ案内するための一連だったとしても、彼の仕事の一つだと理解していても、エリオットにとってどれだけ救いになったか。
大丈夫かと笑いかけ、初めてだから慣れないよなと気遣って。
それが演技だったと知った今でも、あの一瞬は輝き、眩しくて。決して、エリオットの中で消えることのない。
ああ、まさしく。クラロはエリオットにとっての光だったのだ。
結局、エリオットも奉仕からは逃れられず、クラロが明確に助けてくれたのはあの一度だけ。
それでも、辛い日常の中で関われることが、どれだけエリオットを支え続けたか。
先輩と呼ぶ度に、奴隷に後輩も何もないだろうと苦笑し。助けを求めた時にはどうしようもないと呆れ笑われ、落ち込んだときは微笑み励まして。
あの人がいなければ、きっと耐えられなかった。クラロがいたからこそ、エリオットは今日まで耐えられたのだ。
上級にあがり、想いを伝えられないままクラロから離れて。一時は、ただの憧れだと誤魔化そうとした。
助けてもらったから。先輩として慕っているから。こんな状況でも明るく生きていこうとする彼に憧れていたから。
どれだけ言葉を連ねても、クラロへの想いは失われることはなく。それが愛だと気付いたのは、彼の正体を知った時。
反逆者たちに捕まった自分を助けに来てくれたあの日。他に恋慕している相手がいると代弁された瞬間、まるで頭を殴られたような衝撃に襲われた。
淫魔に対しての言い訳だと理解してもエリオットの心を蝕み、刑罰という名の辱めでも薄れることなく。
衆人の前にあられもない姿で晒されたことより、それを嘲笑われるより、あの人に否定されたことの方がもっとずっと辛く、苦しく。
そして……あまりにも、耐えがたかったのだ。
勘違いでも、錯覚でも、思い込みでもない。自分は確かに、あの人を愛している。
本当は淫魔を恐れているはずなのに、それを誰にも零すことなく、たった一人で立ち向かおうとする姿が眩しくて。
何度も何度も励まされて、助けてもらって、支えられて。なのに、自分が彼にできたことは一つだってない。
彼の光に照らされる度に自分の弱さを突きつけられて、情けなくて。こんな自分があの人を愛しているなんて、それこそおこがましくて。
それでも、エリオットは見たかったのだ。彼の笑顔を。
なりたかったのだ、彼が本当の意味で安心できる相手に。
今までずっと助けてくれたクラロを、今度は、自分が守りたかったのだ。
大したことはできないと分かっていた。聖女の息子であるクラロでさえ敵わない相手に、何の力もないエリオットが立ち向かえるはずがない。今だって、淫魔と対峙するだけで恐ろしくてたまらない。
それでも、あの人の支えにはなれたはずだ。
クラロの抱える苦しみを。エリオットでは測ることのできない悲しみを。その一欠片でもいいから、彼の傍で支えたかったのだ。
クラロにとっての、特別になりたかった。エリオットにとって、クラロがそうであるように。エリオットもそうなりたかったのだ。
……そう望んだこと自体、欲深かったのだろう。
『お前は俺を助けられないし、俺は誰も助けない』
否定する声が。軽蔑する空色の瞳が、エリオットを拒絶する彼の表情が、あの日からずっとこびり付いて剥がれない。
そうだ、欲を掻いたのだ。自分なんかが救えると考えたことも、頼られたいなんて考えたことも、過ちだった。
ただ、エリオットは彼の傍にいられるだけでよかったのに。
上級にあがり、生活の質は良くなった。下級にいた頃に比べれば天と地の差。奴隷への扱いだって、まだ人のように扱ってくれる。
柔らかく身を包むベッド。質のいい家具。三食欠かさず与えられる食事。清潔な服。だけど、エリオットの心が満たされることはない。
虚ろな瞳は天井を仰いだまま。朝の訪れは遠く、ただ夜が過ぎ去るのを待つだけ。
だが、どれだけ眺めようと意味などないのだ。この虚しさを埋められるのはたった一人。
彼から拒絶された今、エリオットに持てる希望など、もうどこにも――。
「ひっどい顔ッスね~! そんなにクラロ君にフラれたのがショックだったんッスかぁ?」
気怠さが嘘のように起き上がった身体は、すぐにその影を捉える。
一拍遅れ、灯された照明の眩しさに呻くエリオットを笑う声は幻聴ではない。
丈の短いメイド服。その上から羽織られた身の幅に合わぬ白衣。まるで少女のように高く結い上げたツインテール。
ギラギラと輝く金色の瞳を、エリオットは忘れていない。忘れられるはずがない。
その姿は、クラロのあられもない姿と共に強く刻みつけられているのだから。
「い、いんま、さま」
「あっはは! すごい隈。あれだけで眠れなくなるほどショックを受けるなんて、人間ってほんと繊細ッスね~」
いつ入ってきたのか、どうしてエリオットの元に来たのか。疑問は声にできず、唯一安らげるはずだった場所を侵され、装うこともままならない。
エリオットの記憶が正しければ、この淫魔はヴェルゼイの部下だ。
嫌がるクラロを、無理矢理『散歩』に連れ出し、今もあの人を傷付けている、あの男の。
奥歯を噛み締めるのは、震えを誤魔化すため。湧き上がる怒りよりも勝るのは、やはり魔物と対峙する恐怖。
奉仕の延長ならエリオットも耐えられた。されど、そうではない今、この男の目的が理解できず、されど逃げることもできず。シーツを握る指は強張り、震え、止まらない。
そんな情けない奴隷の姿を、金はニコニコと歪んだまま見つめ、言葉を連ねる。
「そうかしこまる必要はないッスよ。ただ、ちょっとお願いがあって来ただけッスから」
「お……お願い……?」
「そ! 命令じゃなくて、お願いッス」
聞き間違いではないと繰り返される単語は、奴隷に対するものではない。
淫魔が、人間にお願いなど。城に勤めてさほど経っていなくとも、あり得ない話だとエリオットにも理解できる。
淫魔が奴隷の意見を聞く必要などない。奴隷は例外なく淫魔の所有物であり、人間は彼らに仕えることこそ至高だと言い聞かせられているのに。
呼びつけるのではなく、わざわざ部屋に来てまで何を伝えようとしているのか。
「オイラ、ベゼ様のメイドと一緒に研究所の局長もしてるんッスけど、ちょ~っと実験に協力して貰えないかな~って」
「きょ……うりょく……?」
「そ。ちょっと特別な実験だから、相手にも同意を得たって証拠がないと色々面倒臭いんッスよ。とは言っても、そんな大した内容じゃないんッスけどね」
エリオットの理解はいよいよ追いつかない。研究所の局長。同意を得た証拠。何もかもがあり得ない。
実際にエリオットがかの研究所に足を踏み入れたことはないが、その実態は何度も聞かされている。
研究所送りにされるのは、実質的な死刑。それこそ、死を望むほどの苦痛が待っていると。
磔や晒し者など比にならない、本当の地獄が待っているのだと。
たとえ大した内容でないと言っても頷けるはずがない。同意したが最後、それこそエリオットは終わりを迎えるだろう。
虚無感に空いた穴に注がれる恐怖。希望の見えない状況で、全てを諦めかけて。それでも生にしがみついてしまうのは、やっぱり死にたくないからだ。
ああ、そうだ。死ぬのは怖い。死にたくなんてない。生きていたい。助かりたい。だけど、エリオットに何ができるというのか。
クラロを助けることもできず、拒絶され。彼のそばにいることさえもできない自分が。
「うーん……とは言っても、やっぱり嫌ッスよねぇ」
だが、予想に反しあっさりと引き下がる男に、やはりエリオットの理解は進まない。
本当に拒否権があるのか? 奴隷相手に……選ばせると、本気で?
困惑するエリオットなど、もう眼中にもないのだろう。肩をすくめ、首を振り、わざとらしく大きな息を吐く。
「うまくいけば、君の大好きな先輩と、ずーっと一緒にいられたかもしれないのに……」
聞き漏らすはずのない言葉。その二文字に見開く青に映ったのは、翻る白衣。
「でも嫌なら仕方ないッス! 別の子に――」
「待って!」
今にも消えそうになった姿を咄嗟に呼び止め、衝動のまま動いた身体はベッドの下に転がり落ちる。
受け身も取れずに無様に這いつくばり。それでも、確かに聞き間違いではないと見上げる姿は、まだ背を向けたまま。
「いっ……今、なんと……!」
「あれ、言わなかったッスっけ。この実験にはクラロ君も関係してるんッス。と言ってもクラロ君の場合は実験体ってわけじゃないんッスけどね。で、もし上手くいったらご褒美に君をオイラの専属に異動させてあげようかなーって」
必死に訴えるエリオットの前に戻り、屈んだ金色はその姿を見下ろしてニコニコと笑う。
この反応を見たいからこそ、わざと焦らしていたことにさえ気付かないエリオットを、それはもう楽しそうに。
「専属になれば、多くはなくても会う機会も増えるし、クラロ君だってその頃には君を遠ざける理由だってなくなるし……下級にいた頃とまでは言わないけど、また一緒に過ごせるようになるッスよ!」
嬉しいよねと、淫魔が囁く。それが欲しかったんだろうと、甘い言葉でエリオットを惑わせるように。
専属になれば、クラロとまた会えるようになる。研究に協力さえすれば、もう一度あの人のそばにいられるようになる。
まるで光が差すように頭の中が煌めいて、息が弾む。
もしエリオットに少しでも理性が働けば、これがいかに危険な誘いか理解できたはずだ。
人間相手にさえ同意を得なければならないほどの実験。対価に専属を確約するほどの内容。ただ一方的に虐げることのできる相手へそこまでする必要のある行為が、ただの協力で終わるはずがない。
命の保証はないと言われているものだ。過大な報酬は、適性のある人間を吊り上げるための餌。仮に死ななかったとしても、無傷であるはずがない。
そう、少しでも考えることができたなら、頷くことはなかったはずだ。
上級に所属し、待遇も恵まれ、これまでうまく生きてきた。
最低限、人としての扱いをされる今が、自分がたどり着ける最高であるともエリオットは分かっていたはずだ。
それでも。否、それらを捨ててでも、エリオットは求めてしまった。
クラロの元に戻るチャンスを。彼を――自分の光を、もう一度この目に納めるための権利を。
「で、どうするッス?」
だからこそ、エリオットにその誘惑を断ち切る術はなかったのだ。
◇ ◇ ◇
……そうして、エリオットは人間をやめることとなった。
説明されたのは、そもそも全てが終わった後。
淫魔の魔力を注がれ、内側から作り替えられ、精神と肉体の乖離に生死を彷徨い、気付けば全てが終わっていたのだ。
辛うじて覚えているのは、成功を喜ぶ複雑なあの男と、約束だからと仕方なくエリオットを迎えたアモルの声。
そして、これでクラロにまた会えるようになるという、途方もない幸福感。
淫魔に転換したとはいえ、元は人間。地位としては低く、扱いは奴隷とほぼ変わりない。むしろ、身体機能が強化されたせいで前より酷いと感じるときだって多々ある。
注がれた魔力のせいか、植え付けられた本能をまだ制御し切れていない。それでも、抑えつけなければならない矛盾と苦痛に何度苛まれたことか。
欲望のまま振る舞いたい衝動と、してはならないという理性の板挟み。人間の時には感じなかった欲求に翻弄され、辛くて、耐えがたくて。
でも、それも全てクラロに会うためだと理解すれば、何も苦しくなくなった。
エリオットが優秀であれば、本来は会うことができないクラロに会わせてくれると。クラロも自分を、受け入れてくれると。
ああ、そうだとも。だって、ようやく再会できたあの日、あの人は驚いて。それでも、エリオットに笑いかけてくれたのだ。
「頑張ったな」と声をかけて、頭まで撫でてくれた。エリオットがずっと求めていた笑顔で、もう何も怖くないと微笑んで。
あの高揚感を、どうして言葉に表すことができるだろう。全身の血が沸騰し、視界に光が満ちて、眩しくて。
きっと自分に尾があったなら、それこそ千切れんばかりに振っていた程に。
人間だった時には得られなかった。もう、これだけでいいとすら思えるほどに、エリオットは満たされていたのだ。
クラロの不安を取り除いたのが自分ではなかったことは、少しだけ悔しくて、悲しくて、情けなくて。結局、自分ではできなかったのだと見せつけられて。
それでも、エリオットの願いは、間違いなく果たされたのだ。
もし誰かがこの一連を知り、騙されただけだと同情して。それは違うと否定しようとも、エリオットは受け入れることはないだろう。
クラロと会えるだけで、エリオットは間違いなく幸せなのだから。
だって、エリオットの願いは途中で歪みはしたが、結局最初から変わっていない。
たとえ数ヶ月に一回であろうと、ほんの数分しか対面できなくても。クラロがエリオットのことをどう認識していようと。
エリオットが望んだのは、ただ一つ。クラロの傍にいたいという、些細な願いだったのだから。
◇ ◇ ◇
薄く開かれた目蓋の向こう、見上げたのは薄暗い天井。光の差さない空間。まるで空気が纏わり付くようにだるい四肢。
ご奉仕で酷使された以上に疲労しているのは、身体ではなくトクトクと打ちつける自分の胸。行き場を失った感情を捨て去ることもできない奥底。
まるで大きな穴が空いたように感じるのに、苦痛はこぼれ落ちることなく、ずっとエリオットの中を埋め尽くしている。
満たされているのに、埋まることのない虚しさ。矛盾した感覚。
当然だ、この喪失感を埋められるのはたった一人だけ。
薄暗い視界の中、望んだ姿は記憶の中にしか存在しない。
柔らかな亜麻色の髪も、自分を見て笑った空色の瞳も、あの癖のある口調も、エリオットを励まし続けた明るい笑顔も。
それが演技だと明かした姿だって……もう、エリオットはこの目で見ることができない。
今だって、こんなにも鮮明に思い出すことができる。
初めて手を差し伸べてくれた日。失態を犯した自分を笑って慰めてくれた顔。反逆者たちになじられ、怒りに満ちながらも冷静だった姿。そして……そんな彼が紅潮し、エリオットの前で達してしまった光景だって。
エリオットは全部覚えている。忘れられない。忘れられるわけがない。
だって、ペーター――否、クラロこそが、彼にとっての光だったのだから。
エリオットは、何てことはない普通の家庭で生まれ育った。
気弱な父と、しっかり者の母。あえて言うなら血筋に聖職者がいた程度で、それもエリオットにはほとんど関係のなかったことだ。
そもそも、それを知ったのだってエリオットが成人を迎えた日。淫魔様によって、城に勤められる資格を有しているか検査された時だった。
侵略時に両親と生き別れ、一人きり。淫魔様に管理される前でも、何の能力もない人間が一人で生きていけるほど優しい世界ではない。
周囲は淫魔様にご奉仕できることは名誉であると口々に言うが、道具のように使い捨てられている他者の姿に憧れを抱けというのは到底無理な話だ。
少なくとも、エリオットは装うことはできても、そうだと思い込むことはできなかった。
城勤めを選んだのも、一番マシな場所だと知っていたからだ。
奉仕することは変わらなくても、まだ人として扱ってもらえる数少ない場所。
服を着ることさえ許されず、生き物ではないナニかのように扱われ、最悪は息絶える。そんな終わりを迎えたい者がどこにいるというのか。
そんな最期を迎えるのは旧世代でいう貧困層なもの。違うのは、その運命は金ではなく淫魔の機嫌によって定められることだろう。
口には出さずとも、考えることは皆同じ。故に、競争率が高くとも、安全な場所で居場所を確保できたエリオットは、運が良かったのだ。
だからといって、絶望的な状況には変わりなかった。
聖職者の血を引く者が優遇されるのは、それだけ需要があるから。城に入ったその日に奉仕を求められ、どれだけエリオットが恐れたことか。
淫魔に奉仕したくないと拒めば、非国民として処刑される。そうでなくとも、自分たちの平穏を奪った彼らに、人間ではない魔物にあれだけの距離で対峙したのはアレが初めてのこと。
名誉であるなら、助けが差し伸べられるはずもなく。むしろ恒例だと笑われ、羨ましがられ、為す術もなく。
だが、一人だけエリオットを助けてくれた人がいた。
聞き慣れない訛りで淫魔に話しかけ、邪険にされながらも臆することなく。そうしてエリオットを解放させただけでなく、彼らのいない場所にまで一緒に逃げてくれたのだ。
それが持ち場へ案内するための一連だったとしても、彼の仕事の一つだと理解していても、エリオットにとってどれだけ救いになったか。
大丈夫かと笑いかけ、初めてだから慣れないよなと気遣って。
それが演技だったと知った今でも、あの一瞬は輝き、眩しくて。決して、エリオットの中で消えることのない。
ああ、まさしく。クラロはエリオットにとっての光だったのだ。
結局、エリオットも奉仕からは逃れられず、クラロが明確に助けてくれたのはあの一度だけ。
それでも、辛い日常の中で関われることが、どれだけエリオットを支え続けたか。
先輩と呼ぶ度に、奴隷に後輩も何もないだろうと苦笑し。助けを求めた時にはどうしようもないと呆れ笑われ、落ち込んだときは微笑み励まして。
あの人がいなければ、きっと耐えられなかった。クラロがいたからこそ、エリオットは今日まで耐えられたのだ。
上級にあがり、想いを伝えられないままクラロから離れて。一時は、ただの憧れだと誤魔化そうとした。
助けてもらったから。先輩として慕っているから。こんな状況でも明るく生きていこうとする彼に憧れていたから。
どれだけ言葉を連ねても、クラロへの想いは失われることはなく。それが愛だと気付いたのは、彼の正体を知った時。
反逆者たちに捕まった自分を助けに来てくれたあの日。他に恋慕している相手がいると代弁された瞬間、まるで頭を殴られたような衝撃に襲われた。
淫魔に対しての言い訳だと理解してもエリオットの心を蝕み、刑罰という名の辱めでも薄れることなく。
衆人の前にあられもない姿で晒されたことより、それを嘲笑われるより、あの人に否定されたことの方がもっとずっと辛く、苦しく。
そして……あまりにも、耐えがたかったのだ。
勘違いでも、錯覚でも、思い込みでもない。自分は確かに、あの人を愛している。
本当は淫魔を恐れているはずなのに、それを誰にも零すことなく、たった一人で立ち向かおうとする姿が眩しくて。
何度も何度も励まされて、助けてもらって、支えられて。なのに、自分が彼にできたことは一つだってない。
彼の光に照らされる度に自分の弱さを突きつけられて、情けなくて。こんな自分があの人を愛しているなんて、それこそおこがましくて。
それでも、エリオットは見たかったのだ。彼の笑顔を。
なりたかったのだ、彼が本当の意味で安心できる相手に。
今までずっと助けてくれたクラロを、今度は、自分が守りたかったのだ。
大したことはできないと分かっていた。聖女の息子であるクラロでさえ敵わない相手に、何の力もないエリオットが立ち向かえるはずがない。今だって、淫魔と対峙するだけで恐ろしくてたまらない。
それでも、あの人の支えにはなれたはずだ。
クラロの抱える苦しみを。エリオットでは測ることのできない悲しみを。その一欠片でもいいから、彼の傍で支えたかったのだ。
クラロにとっての、特別になりたかった。エリオットにとって、クラロがそうであるように。エリオットもそうなりたかったのだ。
……そう望んだこと自体、欲深かったのだろう。
『お前は俺を助けられないし、俺は誰も助けない』
否定する声が。軽蔑する空色の瞳が、エリオットを拒絶する彼の表情が、あの日からずっとこびり付いて剥がれない。
そうだ、欲を掻いたのだ。自分なんかが救えると考えたことも、頼られたいなんて考えたことも、過ちだった。
ただ、エリオットは彼の傍にいられるだけでよかったのに。
上級にあがり、生活の質は良くなった。下級にいた頃に比べれば天と地の差。奴隷への扱いだって、まだ人のように扱ってくれる。
柔らかく身を包むベッド。質のいい家具。三食欠かさず与えられる食事。清潔な服。だけど、エリオットの心が満たされることはない。
虚ろな瞳は天井を仰いだまま。朝の訪れは遠く、ただ夜が過ぎ去るのを待つだけ。
だが、どれだけ眺めようと意味などないのだ。この虚しさを埋められるのはたった一人。
彼から拒絶された今、エリオットに持てる希望など、もうどこにも――。
「ひっどい顔ッスね~! そんなにクラロ君にフラれたのがショックだったんッスかぁ?」
気怠さが嘘のように起き上がった身体は、すぐにその影を捉える。
一拍遅れ、灯された照明の眩しさに呻くエリオットを笑う声は幻聴ではない。
丈の短いメイド服。その上から羽織られた身の幅に合わぬ白衣。まるで少女のように高く結い上げたツインテール。
ギラギラと輝く金色の瞳を、エリオットは忘れていない。忘れられるはずがない。
その姿は、クラロのあられもない姿と共に強く刻みつけられているのだから。
「い、いんま、さま」
「あっはは! すごい隈。あれだけで眠れなくなるほどショックを受けるなんて、人間ってほんと繊細ッスね~」
いつ入ってきたのか、どうしてエリオットの元に来たのか。疑問は声にできず、唯一安らげるはずだった場所を侵され、装うこともままならない。
エリオットの記憶が正しければ、この淫魔はヴェルゼイの部下だ。
嫌がるクラロを、無理矢理『散歩』に連れ出し、今もあの人を傷付けている、あの男の。
奥歯を噛み締めるのは、震えを誤魔化すため。湧き上がる怒りよりも勝るのは、やはり魔物と対峙する恐怖。
奉仕の延長ならエリオットも耐えられた。されど、そうではない今、この男の目的が理解できず、されど逃げることもできず。シーツを握る指は強張り、震え、止まらない。
そんな情けない奴隷の姿を、金はニコニコと歪んだまま見つめ、言葉を連ねる。
「そうかしこまる必要はないッスよ。ただ、ちょっとお願いがあって来ただけッスから」
「お……お願い……?」
「そ! 命令じゃなくて、お願いッス」
聞き間違いではないと繰り返される単語は、奴隷に対するものではない。
淫魔が、人間にお願いなど。城に勤めてさほど経っていなくとも、あり得ない話だとエリオットにも理解できる。
淫魔が奴隷の意見を聞く必要などない。奴隷は例外なく淫魔の所有物であり、人間は彼らに仕えることこそ至高だと言い聞かせられているのに。
呼びつけるのではなく、わざわざ部屋に来てまで何を伝えようとしているのか。
「オイラ、ベゼ様のメイドと一緒に研究所の局長もしてるんッスけど、ちょ~っと実験に協力して貰えないかな~って」
「きょ……うりょく……?」
「そ。ちょっと特別な実験だから、相手にも同意を得たって証拠がないと色々面倒臭いんッスよ。とは言っても、そんな大した内容じゃないんッスけどね」
エリオットの理解はいよいよ追いつかない。研究所の局長。同意を得た証拠。何もかもがあり得ない。
実際にエリオットがかの研究所に足を踏み入れたことはないが、その実態は何度も聞かされている。
研究所送りにされるのは、実質的な死刑。それこそ、死を望むほどの苦痛が待っていると。
磔や晒し者など比にならない、本当の地獄が待っているのだと。
たとえ大した内容でないと言っても頷けるはずがない。同意したが最後、それこそエリオットは終わりを迎えるだろう。
虚無感に空いた穴に注がれる恐怖。希望の見えない状況で、全てを諦めかけて。それでも生にしがみついてしまうのは、やっぱり死にたくないからだ。
ああ、そうだ。死ぬのは怖い。死にたくなんてない。生きていたい。助かりたい。だけど、エリオットに何ができるというのか。
クラロを助けることもできず、拒絶され。彼のそばにいることさえもできない自分が。
「うーん……とは言っても、やっぱり嫌ッスよねぇ」
だが、予想に反しあっさりと引き下がる男に、やはりエリオットの理解は進まない。
本当に拒否権があるのか? 奴隷相手に……選ばせると、本気で?
困惑するエリオットなど、もう眼中にもないのだろう。肩をすくめ、首を振り、わざとらしく大きな息を吐く。
「うまくいけば、君の大好きな先輩と、ずーっと一緒にいられたかもしれないのに……」
聞き漏らすはずのない言葉。その二文字に見開く青に映ったのは、翻る白衣。
「でも嫌なら仕方ないッス! 別の子に――」
「待って!」
今にも消えそうになった姿を咄嗟に呼び止め、衝動のまま動いた身体はベッドの下に転がり落ちる。
受け身も取れずに無様に這いつくばり。それでも、確かに聞き間違いではないと見上げる姿は、まだ背を向けたまま。
「いっ……今、なんと……!」
「あれ、言わなかったッスっけ。この実験にはクラロ君も関係してるんッス。と言ってもクラロ君の場合は実験体ってわけじゃないんッスけどね。で、もし上手くいったらご褒美に君をオイラの専属に異動させてあげようかなーって」
必死に訴えるエリオットの前に戻り、屈んだ金色はその姿を見下ろしてニコニコと笑う。
この反応を見たいからこそ、わざと焦らしていたことにさえ気付かないエリオットを、それはもう楽しそうに。
「専属になれば、多くはなくても会う機会も増えるし、クラロ君だってその頃には君を遠ざける理由だってなくなるし……下級にいた頃とまでは言わないけど、また一緒に過ごせるようになるッスよ!」
嬉しいよねと、淫魔が囁く。それが欲しかったんだろうと、甘い言葉でエリオットを惑わせるように。
専属になれば、クラロとまた会えるようになる。研究に協力さえすれば、もう一度あの人のそばにいられるようになる。
まるで光が差すように頭の中が煌めいて、息が弾む。
もしエリオットに少しでも理性が働けば、これがいかに危険な誘いか理解できたはずだ。
人間相手にさえ同意を得なければならないほどの実験。対価に専属を確約するほどの内容。ただ一方的に虐げることのできる相手へそこまでする必要のある行為が、ただの協力で終わるはずがない。
命の保証はないと言われているものだ。過大な報酬は、適性のある人間を吊り上げるための餌。仮に死ななかったとしても、無傷であるはずがない。
そう、少しでも考えることができたなら、頷くことはなかったはずだ。
上級に所属し、待遇も恵まれ、これまでうまく生きてきた。
最低限、人としての扱いをされる今が、自分がたどり着ける最高であるともエリオットは分かっていたはずだ。
それでも。否、それらを捨ててでも、エリオットは求めてしまった。
クラロの元に戻るチャンスを。彼を――自分の光を、もう一度この目に納めるための権利を。
「で、どうするッス?」
だからこそ、エリオットにその誘惑を断ち切る術はなかったのだ。
◇ ◇ ◇
……そうして、エリオットは人間をやめることとなった。
説明されたのは、そもそも全てが終わった後。
淫魔の魔力を注がれ、内側から作り替えられ、精神と肉体の乖離に生死を彷徨い、気付けば全てが終わっていたのだ。
辛うじて覚えているのは、成功を喜ぶ複雑なあの男と、約束だからと仕方なくエリオットを迎えたアモルの声。
そして、これでクラロにまた会えるようになるという、途方もない幸福感。
淫魔に転換したとはいえ、元は人間。地位としては低く、扱いは奴隷とほぼ変わりない。むしろ、身体機能が強化されたせいで前より酷いと感じるときだって多々ある。
注がれた魔力のせいか、植え付けられた本能をまだ制御し切れていない。それでも、抑えつけなければならない矛盾と苦痛に何度苛まれたことか。
欲望のまま振る舞いたい衝動と、してはならないという理性の板挟み。人間の時には感じなかった欲求に翻弄され、辛くて、耐えがたくて。
でも、それも全てクラロに会うためだと理解すれば、何も苦しくなくなった。
エリオットが優秀であれば、本来は会うことができないクラロに会わせてくれると。クラロも自分を、受け入れてくれると。
ああ、そうだとも。だって、ようやく再会できたあの日、あの人は驚いて。それでも、エリオットに笑いかけてくれたのだ。
「頑張ったな」と声をかけて、頭まで撫でてくれた。エリオットがずっと求めていた笑顔で、もう何も怖くないと微笑んで。
あの高揚感を、どうして言葉に表すことができるだろう。全身の血が沸騰し、視界に光が満ちて、眩しくて。
きっと自分に尾があったなら、それこそ千切れんばかりに振っていた程に。
人間だった時には得られなかった。もう、これだけでいいとすら思えるほどに、エリオットは満たされていたのだ。
クラロの不安を取り除いたのが自分ではなかったことは、少しだけ悔しくて、悲しくて、情けなくて。結局、自分ではできなかったのだと見せつけられて。
それでも、エリオットの願いは、間違いなく果たされたのだ。
もし誰かがこの一連を知り、騙されただけだと同情して。それは違うと否定しようとも、エリオットは受け入れることはないだろう。
クラロと会えるだけで、エリオットは間違いなく幸せなのだから。
だって、エリオットの願いは途中で歪みはしたが、結局最初から変わっていない。
たとえ数ヶ月に一回であろうと、ほんの数分しか対面できなくても。クラロがエリオットのことをどう認識していようと。
エリオットが望んだのは、ただ一つ。クラロの傍にいたいという、些細な願いだったのだから。
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