上 下
44 / 70
3章。バフ・マスター、Lv6覚醒

44話。勝って帰ったら、リディアと愛し合うと約束する

しおりを挟む
「決まりね! じゃあアベル。さっそく、出陣しましょう」

 リディアが僕に腕を絡めて言う。

「いや、何を言っておるのだリディア! アベルは千人にも満たぬ数で1万5千の敵軍を迎え撃ちに行くのだぞ? そんな危険な戦場に出向くなど、絶対に許さん!」

 国王陛下が泡を食って、リディアを止めた。

「まことにその通りでございますぞ、王女殿下! 聞けば先日、アンジェラ王女と直接戦われたとか。まだお世継ぎも生まれていないのに……御身に何かあればアーデルハイド王国はお終いですぞ」

「……うん。その通りだよな」

 武官たちから上がった声は、まったくの正論だった。
 僕も同意である。

「その通りって。お世継ぎのことね! それじゃ、まだ結婚前だけど、今夜から激しく愛し合い……っ」

「違います! リディア様を戦場にはお連れできないという意味です!」

 ティファが、僕に擦りつくリディアに怒鳴った。

「ええっ!? だって、アンジェラ王女に対抗するには、パワーアップした私の大聖女の力が必要でしょ?」

「確かにそうなんだけど。おそらくアンジェラ王女は北の魔物軍団を率いている可能性が高いと思うんだ。
 もしそうだとしたら、フォルガナの大軍の中に、リディアを連れていく危険をおかすだけになってしまう。リディアを危険な目に合わす訳にいかないだろう?」

 本音を言えば、リディアの力を借りずにアンジェラを倒したかった。
 剣聖イブが戦力に加わってくれれば、それは十分に可能だと思う。

「そうじゃ!」

「ぶぅ~。回復魔法だって、私は得意なのよ。大聖女になったんだし、今までよりずっとアベルの役に立ってみせるわ!」

 リディアは唇を尖らせる。

「気持ちはありがたいんだけど……国王陛下も心配されるし、駄目だよ」

「そもそも敵は、リディア王女殿下を狙っているのですよ? 虎の口にわざわざ飛び込むようなモノです。なので、アベル様から離れてください!」

 ティファが、リディアを僕から引き剥がす。

「ティファ! ちょっと痛いわよ。もうっ、わかったわよ。それじゃ、城で大人しくしているわ。
 夫の留守を守るのも妻の役目だしね」

 リディアはしぶしぶといった感じで、納得してくれた。

「じゃあアベル、約束して。勝って帰ったら、私といっぱい愛し合うって!」

「愛し合う? それはもちろん」

 すでにリディアとは、そういう関係になっていると思うが……婚約した訳だし。

「やったぁ!」

「お、お、王女殿下!?」

 リディアは僕の返答に、飛び上がって大はしゃぎしていた。
 なぜかティファは唇を噛んで、耳まで真っ赤になっている。

「ねぇアベル。私、子供は男の子と女の子がひとりずつ欲しいわ! あなたそっくりのかわいい男の子をこの手で育てるの!」

「子供?」

 リディアは、一体、何の話をしてるのだろうか。僕は訳が分からず、首をひねった。

「もちろん。あなたが望むなら何人だって産んであげるわよ。えへへっ! 今から夢が膨らむわね」

「リディア。お主は少々、恥じらいを持った方が良いな。皆が呆れておるぞ」

 国王陛下が困ったように溜め息をついた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

戦争から帰ってきたら、俺の婚約者が別の奴と結婚するってよ。

隣のカキ
ファンタジー
国家存亡の危機を救った英雄レイベルト。彼は幼馴染のエイミーと婚約していた。 婚約者を想い、幾つもの死線をくぐり抜けた英雄は戦後、結婚の約束を果たす為に生まれ故郷の街へと戻る。 しかし、戦争で負った傷も癒え切らぬままに故郷へと戻った彼は、信じられない光景を目の当たりにするのだった……

【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…

三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった! 次の話(グレイ視点)にて完結になります。 お読みいただきありがとうございました。

処理中です...