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3章。黒幕の王妃との対決

32話。なぜか学園3大美少女と同じ部屋で寝るハメになる

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「ヴァイス君、良かったぁあああッ! 心配していたよの!」
「ヴァイス兄様、お約束通り帰ってきてくださったのですね!」

 フィアナと共に生徒会室に戻ってくると、セリカとエレナが俺を大歓迎してくれた。

 前世では、クタクタになって帰ってきても、俺を出迎え、労ってくれる人など居なかったので、思わずジ~ンと来てしまう。

「……ただいま。二人とも無事で良かった」

 心の底からそう思う。
 涙ぐむセリカとエレナは損得勘定を抜きで、俺との再会を喜んでくれていた。

 そんな二人を今では、愛しいと思えるようになっていた。

「どこもお怪我はされていませんか!? 私は、もう心配で心配で!」

 エレナが俺に抱きついて、身体に異常が無いかアチコチ触ってくる。そんなことをされると、くすぐったいというより、赤面してしまうぞ。

「うぉ。大丈夫だって! それよりエレナの方こそ、怪我は無かったか?」
「はい! 兄様からいただいた【不可視の剣】インビジブル・ソードのおかげで、無事切り抜けられました!」
「ちょ! エレナ、ヴァイス君の怪我の治療なら、恋人の私がやるわ! ヴァイス君、どこも痛くしていない!? 毒や呪いを受けていない!?」

 さらにセリカまで、俺の身体をベタベタ触ってチェックしてくる。そんなことをされると、 下半身が元気になってしまって、いろいろと困る。

「お二人とも、ヴァイスさんが困っていましてよ! 怪我などされてませんから、まずは休ませて差し上げなさいな」

 フィアナが一喝して、二人を強引に手で退けた。

「ふん、戻ったかヴァイス。君を倒すのは、この僕だ。地竜王ごときに殺されては困るからな」

 もう外は暗くなっているというのに、律儀に残っていたレオナルドが鼻を鳴らした。
 あれ? レオナルドも、もしかして俺を心配してくれていたのか?

「……レオナルド先輩も、セリカの警護を引き受けてくださり、ありがとうございました」
「ふん、当然だ」

 礼を述べると、レオナルドは不機嫌そうにそっぽを向いた。

「セリカ王女は、僕の婚約者となる方だ。なにより、この栄光あるグロリアス騎士学園で魔族の専横を許すなど、あってはならないことだからな」
 
 フィアナによると、今後はレオナルドもセリカの警護に加わってくれるということだ。

 捕らえたジゼルの下僕から情報を引き出せば、学園に潜伏しているジゼルも炙り出せるだろう。そうなれば、おそらく王妃にも捜査の手が伸びて、一件落着だ。

 無論、奴らもこのまま手をこまねいてはいないだろうが……

「今回の君の命がけの告発と活躍には、生徒会副会長として、礼を述べておこう。君のおかげで、大惨事を防ぐことができた。アルバン殿のご子息というのは、伊達では無かったようだな」
 
 レオナルドは俺と目線を合わせぬまま、意外なことを言ってきた。どうやら、多少は俺のことを認めてくれたらしい。

 ゲーム本編では、勇者アレンを平民だと見下し続けたレオナルドだったが、もしかして同じ貴族である俺には、仲間意識を持ちやすいということか?

「それにしても、さすがはフィアナ会長です。噂の地竜王レッドバロンが出現したとエレナ君から聞かされた時は、卒倒しそうになりましたが、見事、あの怪物を討伐されたのですね」
「それは違いましてよ、レオナルドさん。わたくしが到着した時には、すでに地竜王はヴァイスさんによって倒されていましたわ」
「なっ!? そんなことが……!」
「ま、まさかヴァイス兄様はあの怪物にソロで勝利されたのですか!?」
「すごいわヴァイス君!」

 フィアナの言葉に、生徒会室に残っていた全員が度肝を抜かれた。

「……かなりギリギリの勝利で危なかったです。動けなくなっていたので、フィアナ会長が来てくださって助かりました」
「何をおっしゃいますの。12階層は、ヴァイスさんによって制圧されたと言って良い状態でしたわ。わたくしの出る幕など、無かったではありませんか?」

 フィアナが肩をすくめる。

「それとヴァイスさん、その他人行儀な話し方は、おやめになってくださいな。昔のように、わたくしのことは、フィアナで結構ですわよ」
「えっ?」

 高飛車なフィアナとは思えない申し出だった。

「お待ち下さい! ブレイズ公爵家の令嬢で、【栄光なる席次】グロリアス・ランキングナンバー1のフィアナ会長を呼び捨てにせよと!? そんな不遜な態度をお許しになっては!」
「お黙りなさい、レオナルドさん。生徒会長であるわたくしの決定に異を唱えるおつもりですの?」
「い、いえ。決してそのような……!」

「【強き者こそが正しく美しい】が、この学園の理念ではありませんか? 魔族ガロンと地竜王を倒した功績を鑑みれば、ヴァイスさんが、このわたくしと同等の強者であることは疑いようが無い事実です。強者には、それにふさわしい遇し方がありますわ」
「で、ですが。フィアナ会長は、今まで誰にも、この僕にもそのような……」

 レオナルドは口惜しそうに肩を落とす。
 
「……じゃあフィアナのお言葉に甘えさせてもらおうかな」

 俺はさっそく砕けた口調で話す。
 正直、ゲームでお馴染みだったフィアナに敬語というのは、堅苦しくて違和感があった。

「フィアナ様に実力を認められるなんて、さすがは私のヴァイス兄様です! でもフィアナ様、兄様への横恋慕はご法度ですからね!」

 エレナが腰に手を当てて警告した。
 どうもエレナは、フィアナが俺との婚約を一方的に破棄したことについて、強いわだかまりがあるようだ。

「ふふっ、横恋慕などと。エレナさんは、何もわかっておりませんのね。まあ、仕方ありませんわ。まだ恋も知らぬお子様でいらっしゃいますものね」
「し、失礼ではありませんか!? 私にだって、初恋の人くらいいます」
「あら、どうせ私のヴァイス兄様だとか、おっしゃるのでしょう?」
「うぐっ!」

 図星だったようで、エレナは顔を真っ赤にして押し黙った。
 兄が初恋の人だなんて、エレナはかわいいな。

「ところで、ヴァイスさん。他にあなたが掴んでいる情報があれば、お聞きしたいですわ。今夜、わたくしの部屋にいらっしゃいな。二人っきりで、ゆっくりと語り合いましょう」
「えっ、へ、部屋に来い?」

 いくらなんでも、それはマズイような。

「ちょ! フィアナ、そんなのダメに決まっているでしょ!? ヴァイス君は、今夜から私と同じ部屋で寝るのよ! これはお父様もご承知のことなんだから!」
「いかに国王陛下ご公認といえど、今回のことは王国の根幹を揺るがしかねない大事件ですわ。ブレイズ公爵家の威信にかけて、早急に大魔族ジゼルを見つけ出して叩き潰す必要があります。それには、ヴァイスさんから詳しく話を聞く必要があるのですわ」
「むぐっ!?」

 正論で返されて、セリカは言葉に詰まった。

「そ、それに、ヴァイス君は風魔法の修行だってする必要があるのよ! ソレには私の協力が必要不可欠なの!」
「あら、魔法の修行でしたら、王宮よりもブレイズ公爵家にこそ、専門の設備が整っておりますわ。なにより、このわたくしがお相手して差し上げた方が、ヴァイスさんの修行になるのではなくて?」
「えっ、そ、ソレは……」

 フィアナの言っていることは正しいが、修行とは要するにスカートめくりなのである。しかもチラリズムの境地とかいう変態行為だ。

 さすがに、そんなことを学園ナンバー1の公爵令嬢にするわけにいかない。王女様相手に、毎晩、修行と称して、スカートめくりをしているなどという噂が立っても困る。

「フィアナには悪いんだけど、門外不出のシルフィード伯爵家の奥義に関する修行なんだ」
「そうですよ、フィアナ様! 兄様と婚約破棄されたあなたに、奥義の修行をお見せする訳にいきません!」

 エレナもここぞとばかりに援護してくれた。

「……なるほど。わたくしと婚約するために、是が非でも風魔法の奥義を身に着ける必要がお有りということですわね? くふふっ、おかわいいですわ!」
「はぁ?」

 喜悦を浮かべるフィアナに、俺たちは呆気に取られた。

「では、風魔法の修行には、わたくしは関知いたしませんわ。その代わり、わたくしも今夜から王宮のセリカさんのお部屋で、ヴァイスさんと一緒に寝泊まりすることにいたしますわ。これなら、何の問題もございまんわよね!?」
「いや、問題大有りだろ!? しかも1日だけじゃなく、今夜からって、どういうことだ!?」
「大丈夫ですわ! わたくしとヴァイスさんは幼馴染の婚約者として、昔は良く同じベッドで眠った仲ではありませんか!?」
「いつの時代の話だぁ!?」

 俺は頭を抱えて絶叫した。

「フィアナ様、何をおっしゃっているんですか!?」
「そうよ! 私だって、同じベッドで寝るのはご法度なのに!?」
「これは大魔族ジゼルからセリカさんをお守りするために必要なことなのですわ! セリカさんだって、このわたくしが側についていた方が安心してお休みになれるでしょう? レッツ、お泊り会ですわ!」
「全然、安心できないわ。むしろ逆ぅ!」
「許せません! なら、私もお目付け役として、兄様と同じベッドで寝ます!」

 エレナが俺に引っ付いて叫ぶ。

「はぁああああッ!? いや、ちょっと待て!」

 なぜか、学園の3大美少女全員と同じ部屋で、寝るという話になっているぞ。
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