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2章。学園のナンバー1を目指す

25話。ボス専用武器を手に入れ、妹を救出する

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 ギルベルトとの【栄光なる決闘】グロリアス・デュエルは俺の勝利で終わった。
 しかし、ホッと息をついている暇はない。

「セリカ、すぐに解呪魔法でギルベルトの洗脳を解いてくれ!」
「う、うん。わかったわ!」

 我に返ったセリカが頷く。
 セリカが解呪魔法を詠唱すると、ギルベルトの身体が聖なる光に包まれた。

「うあっ……こ、ここは?」

 目を覚ましたギルベルトは、キョトンとした様子だった。

「ここは学園のダンジョンだ。お前は【傾国】のジゼルに魅了されて、操られていたんだけど、そのことを覚えているか?」
「な、なんのことだ? 君は誰だ?」
「はっ? ヴァイス君がわからないって、冗談でしょ?」

 セリカが、むっとした様子でギルベルトに詰め寄る。

「セリカ王女!? い、いや、ヴァイスって? その制服の家紋はシルフィード!? まさかこの貴公子が、あの変態ヴァイスなんてことは……?」
「もしかして、今までのことを忘れているの?」

 セリカは唖然とした。

「やっぱりか……」

 どうやらゲームと同じく、ジゼルに操られていた者はその洗脳が解けると、洗脳されていた間のことを忘れてしまうようだ。
 ジゼルによる情報漏洩防止策だな。

 できればギルベルトをフィアナに引き渡し、ジゼルに関する情報をすべて吐かせてから、洗脳を解きたかった。

 だけど、今は敵の情報を探るよりも優先すべきことがある。

「実は、エレナが、地下12階に落ちて命が危ないんだ。俺は妹を助けに行く。ギルベルトはセリカを連れてダンジョンから脱出してくれないか? それから、フィアナを応援に連れて来て欲しいんだ」
「ちょ、ちょっとヴァイス君、まさかひとりでエレナを助けに行くつもりなの!? 私も一緒に行くわ!」

 ありがたい申し出だったが、俺は首を横に振った。

「いや、駄目だ。エレナは俺にセリカを頼むと言っていたんだぞ。それじゃ、エレナの気持ちを踏みにじることになるだろ?」
「うっ」

 実際、今のセリカの力では、地下12階の攻略はキツイ。本来なら、最低でも20レベルを超えてから挑む階層だ。

「……状況はなんとなくわかったよ。この僕が大魔族ジゼルに操られていたなんて。最悪じゃないか」

 ギルベルトは拳を握りしめて、屈辱を感じているようだった。

「ヴァイスの言う通り、僕はセリカ王女を連れて、脱出しようと思う。でも、その前に……【不可視の剣】インビジブル・ソード!」

 ギルベルトはユニークスキルで、その場に見えない剣を創りだした。
 バチバチと、ギルベルトの手の中で紫電が飛び散り、無から質量を伴った武器が形作られていく。

「……エレナが危機なのは、僕のせいなんだろう? だったら、せめてもの罪滅ぼしだ。コレは、【聖銀《ミスリル》】くらいの強度がある。良かったら使ってくれないか?」
「本当か? 助かる!」

 俺の剣はつり天井を破壊した時に、砕け散ってしまった。物体の重量は増大できても、強度はそのままなのだから仕方がない。

 俺は【不可視の剣】インビジブル・ソードを受け取って、試し斬りした。近くの岩があっさりと真っ二つになる。

「さすがの切れ味だな。刃こぼれ一つしていない」

 ゲームでは【不可視の剣】インビジブル・ソードはギルベルト専用の暗殺武器で、プレイヤーは使うことができなかったが、かなり強力だったことを思い出した。
 ギルベルトは感嘆の息を吐く。

「へぇ。この【不可視の剣】インビジブル・ソードを正しく知覚できているんだね? やっぱり君は僕の知っているヴァイスじゃない……一体、何があって、そこまで変わったんだい?」
「ふっふん! それはね、私への愛によって変わったのよ!」

 セリカが得意げに叫ぶが、すぐに真面目な顔つきになった。

「すぐにエレナのところに行ってあげてヴァイス君。私はフィアナを呼びに行くわ。それが、エレナを救うための最善策なんでしょう?」
「ありがとう、その通りだ。一刻の猶予もない」
「それじゃあ、これが私が今ここでできることよ【超回復《オーバー・ヒール》】」

 セリカは、俺に回復魔法をかけてくれた。

 【超重量】を使った代償で、2割ほど削られていたHP生命力が全快するどころか、HPの最大値が2割ほどアップした。

「一時的に、HPの最大値が上昇するわ。どう? ヴァイス君の【超重量】と相性、バッチリでしょう?」
「うぉっ、すごい。俺にはやっぱり、セリカが必要だな」
「私が必要って!? ちょっ、うれしいけど、照れちゃうわ!?」

 ゲームでもそうだったが、メインヒロインに選んだ相手は、主人公のビルドの弱点を補うか、相乗効果で長所を高められるビルドにするのが理想的だった。

 【超重量】の欠点は、代償に1割もHPを消費することだ。
 コレを補うには回復魔法の効果を高める【聖女】スキルを持つセリカを、メインヒロイン枠にするのがゲーム攻略的に正しい。

 そう考えると、ちょっとセリカのことを意識してしまうな。
 実際、未熟ながらも懸命に成長しよう、俺の役に立とうとするセリカのことを、いじらしく感じられる。

 この感情が恋なのかは、まだ良くわからないが……セリカのことを守ってやりたいと思う。
 って、今は、色恋にうつつを抜かしている場合じゃない。

「それじゃ、ふたりとも頼んだぞ。行ってくる!」

 俺は地下12階へと続く大穴へと身を躍らせた。

「ヴァイス君、がんばって! さあ、ギルベルト君、そっこうで戻るわよ!」

 俺はものすごい勢いで、地の底に落下していく。
 身体に浴びせられる凄まじい風圧。うわっ、ゲームと違って、めちゃくちゃ怖いじゃないかコレ。

 だけど、俺はエレナを守ると誓ったんだ。
 この程度で怯んではいられない。

 やがて地面が見えてくると、そこにはゴツゴツとした大岩が──いや岩のような鱗を持った地竜がいた。

 地竜はドラゴンの中でも、極めて高い防御力を誇り、物理攻撃がまず通らない。
 ヤツが追いかけているのは……

「エレナァァァ!」

 俺は思わず絶叫した。
 地竜はエレナに鈎爪を振り下ろして、翻弄していた。

 目を凝らすとエレナの持つ剣は折れてしまっており、防戦一方となっていた。
 肩から血を流した妹は、すでに手持ちの【回復薬《ポーション》】を使い切ってしまったようだ。

「うしろに跳べ!」
「ヴァイス兄様!?」

 俺の指示で、エレナが地竜から大きく間合いを取った。
 今だ。

 俺は【不可視の剣】インビジブル・ソードを風魔法の空気圧で射出する。同時に、【超重量】で剣の重量を1000倍に引き上げた。

 ズドォオオオオン!

 空気を切り裂く超重量の剣が、地竜の頭蓋を貫通した。
 血の華が咲いて、地竜の巨体が地面に沈む。

『地竜を倒しました!

 レベルアップ!
 レベルアップ!
 レベルアップ!

 おめでとうございます!
 レベルが16に上がりました!』

「ま、まさか一撃で、ドラゴンを!?」

 俺を見上げたエレナの歓声が響いた。
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