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1章。偽勇者、本物に成り代わる
11話。ルカの凱旋
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城門をくぐったボクたちは、大喝采とともに迎えられた。
「ルカ様! ルカ様!」
「我らが勇者! 星屑の聖女様!」
道を埋め尽くした人々が、ボクに向かって手を振り上げ、喜びの声を上げている。
みな一様にボクを褒めたたえるので、心臓に悪いことこの上なかった。
ボクの名については、すでに人々に知れ渡っているようだ。
「イルティア様!」とボクを呼ぶ声が混じると、「バカ! イルティア様じゃねえ! ルカ様だ!」とたしなめる声が飛ぶ。
ボクが幻獣フェリオの上から手を振ると、群衆はわきにわきかえった。
「おおっ! なんと美しく気高く、神々しい姫君なのか!?」
「きゃあ!? ル、ルカ姫様が、私に微笑んでくれたわ!」
ボクが視線を向けた女性は、感激のあまり失神してしまった。
特に兵士たちの熱狂ぶりはすさまじく、感涙にむせんでいる。
うれしいけれど、い、いたたまれない……
これは早く領主の屋敷に帰って、姿を隠してしまいたいな。
「お姉様! ご無事のご帰還なによりです!」
屈強な騎士たちを引き連れた美しい少女が、群衆をかき分けて現れ、ボクの前にひざまずいた。
「えっと、あなたは……オーダンの領主ミリア様!?」
「はい! って、ミリア様?」
まだ15歳のミリアは、ボクの呼びかけに幼さを残した顔を曇らせる。
ミリアは王家と親戚関係にあるティアルフィ公爵家の娘。イルティアとは、幼いころから親しい間柄だった。
もっともミリアの父が、2年前にエルフの国への侵攻に反対したことから、ティアルフィ公爵家は、危険な辺境の地であるオーダンに追いやられた。
それ以来、イルティアとミリアの仲は険悪になったという話を小耳に挟んだことがある。
「あっ、えっと、違いました……ミリア殿」
ミリアに、どう接して良いかわからないが……
たしか、イルティアは公式の場では、ミリアをこのように呼んでいたハズだ。
ミリアの父は、辺境での生活が身体に合わなかったのか。わずらっていた病が悪化し、まだ成人前のミリアに領主の座を渡していた。
「ミリア殿などと、他人行儀に呼ばないでください、お姉様! 昔のようにどうかミリアとお呼びください!」
ミリアは目を輝かせて叫ぶ。
「お姉様は私たちのために逃げずに戦われて、ついに奇跡を起こされたのですね!
なんと気高いお方! まさにルカお姉様こそ、真の勇者にして英雄! 私たちの救世主です!」
「そ、それは。どうも、ありがとうございます……」
ボクはミリアの熱気にいささか気圧されて、返事する。
彼女はだいぶボクを評価してくれているようだ。
ボクは意を決して、ここで大勝負に出ることにした。
「ミリア殿。この際、ハッキリ伝えますが、ボクはアルビオン王家と敵対するつもりです。王家は魔王の財宝を得るために戦争を起こし、窮地に追い込まれると、この地の人々を見捨てました。
ボクは国王に退位を迫まろうと思います。下手をすれば、この地が内乱の場になってしまいますが……ボクの味方になっていただけますか?」
「王家と敵対! 国王に退位!? ルカお姉様がそれをお望みなら、私は喜んでお手伝いします! お父様を疎んじて、中央より遠ざけた陛下とその取り巻き連中を、ギャフンと言わせてやりたかったんです!」
ミリアは勢い込んでまくし立てた。
「なにも心配ありません! ルカお姉様こそ第一王位継承者。この国の次期、女王ではありませんか!?」
「領主様のおっしゃる通りだ! 俺たちを見捨てた国王なんかいらねぇ!」
どうやら国王が援軍を出さなかった事実は、すでに広まっているようだ。
領民たちは国王に対する怒りをあらわにしている。
「ルカ姫様が女王になってくださるなら、我らにとってこれほど喜ばしいことはありません!」
人々が口々にミリアに賛同する。
内乱に発展することなく、ボクが女王となって、すんなり王位の交代が行われると、みんな考えているのだろう。
だが、そんなことは絶対にあり得ない。
「残念ですが、ボクは王家……勇者となる資格を持った者は王位につくべきではないと考えています。勇者の権威があるために、王家はまるで女神様の代理人であるかのように、傲慢に振る舞ってきました。だから、王家を解体して、アルビオン王国を共和制にするつもりです」
ボクの考えを聞くと、ミリアたちは口をぽかんと開けた。
これがボクの反逆の形だ。勇者が王族を兼ねるからこそ、イルティアのような人を人とも思わない存在が生まれてしまうのだ。
隣国サンマリーナ共和国は、選挙によって国民から選ばれた元老院議員によって、国家が運営されている。
イルティアが興した魔王討伐軍には、サンマリーナ共和国の兵も加わっており、王様のいない国があることを知ることができた。ちゃんと調べて、この仕組みをそっくりマネしようと思う。
「だから、ボクは王位を継ぐつもりはないです」
王政を廃し、勇者イルティアと決着をつけたら。できればこの地で家族とのんびり過ごそうと思う。
「そんなルカ姫様は……女神様から直々に、新たなる王となって欲しいと、言われたではありませんか!?」
「そうです! ルカ様以上に王にふさわしい方など、この世にはおりません!」
エリザをはじめたとした聖騎士団の少女たちが、ボクこそ王にふさわしいと口々に叫ぶ。
「……そんな。買いかぶりすぎだって」
なにしろ、冒険者を目指していただけのただの平民ですから。女王の地位につくなど、冗談ではない。というか無理!
「お、お姉様! なんと謙虚で無欲なんですか……!? そして、いじらしい……ま、まさにルカお姉様こそ、地上に舞い降りた天使!」
ミリアが感銘を受けた様子で、胸の前で手を合わせた。
「ルカお姉様の理想を叶えるためなら、私はどんなことでもします!
例え、国王陛下と戦うことになろうとも。この地の者で、お姉様についていかない者など、おりません! そうでしょう、みんな!?」
ミリアが拳を突き上げて振り返ると、民衆が爆発的な大歓声を上げた。
「王家を打倒したら。共和制、最初の国家元首になってくださいね。ルカお姉様!」
究極の聖剣。現在の攻撃力3634
(ルカを支持する人の数と、その想いの強さが攻撃力に反映される)
「ルカ様! ルカ様!」
「我らが勇者! 星屑の聖女様!」
道を埋め尽くした人々が、ボクに向かって手を振り上げ、喜びの声を上げている。
みな一様にボクを褒めたたえるので、心臓に悪いことこの上なかった。
ボクの名については、すでに人々に知れ渡っているようだ。
「イルティア様!」とボクを呼ぶ声が混じると、「バカ! イルティア様じゃねえ! ルカ様だ!」とたしなめる声が飛ぶ。
ボクが幻獣フェリオの上から手を振ると、群衆はわきにわきかえった。
「おおっ! なんと美しく気高く、神々しい姫君なのか!?」
「きゃあ!? ル、ルカ姫様が、私に微笑んでくれたわ!」
ボクが視線を向けた女性は、感激のあまり失神してしまった。
特に兵士たちの熱狂ぶりはすさまじく、感涙にむせんでいる。
うれしいけれど、い、いたたまれない……
これは早く領主の屋敷に帰って、姿を隠してしまいたいな。
「お姉様! ご無事のご帰還なによりです!」
屈強な騎士たちを引き連れた美しい少女が、群衆をかき分けて現れ、ボクの前にひざまずいた。
「えっと、あなたは……オーダンの領主ミリア様!?」
「はい! って、ミリア様?」
まだ15歳のミリアは、ボクの呼びかけに幼さを残した顔を曇らせる。
ミリアは王家と親戚関係にあるティアルフィ公爵家の娘。イルティアとは、幼いころから親しい間柄だった。
もっともミリアの父が、2年前にエルフの国への侵攻に反対したことから、ティアルフィ公爵家は、危険な辺境の地であるオーダンに追いやられた。
それ以来、イルティアとミリアの仲は険悪になったという話を小耳に挟んだことがある。
「あっ、えっと、違いました……ミリア殿」
ミリアに、どう接して良いかわからないが……
たしか、イルティアは公式の場では、ミリアをこのように呼んでいたハズだ。
ミリアの父は、辺境での生活が身体に合わなかったのか。わずらっていた病が悪化し、まだ成人前のミリアに領主の座を渡していた。
「ミリア殿などと、他人行儀に呼ばないでください、お姉様! 昔のようにどうかミリアとお呼びください!」
ミリアは目を輝かせて叫ぶ。
「お姉様は私たちのために逃げずに戦われて、ついに奇跡を起こされたのですね!
なんと気高いお方! まさにルカお姉様こそ、真の勇者にして英雄! 私たちの救世主です!」
「そ、それは。どうも、ありがとうございます……」
ボクはミリアの熱気にいささか気圧されて、返事する。
彼女はだいぶボクを評価してくれているようだ。
ボクは意を決して、ここで大勝負に出ることにした。
「ミリア殿。この際、ハッキリ伝えますが、ボクはアルビオン王家と敵対するつもりです。王家は魔王の財宝を得るために戦争を起こし、窮地に追い込まれると、この地の人々を見捨てました。
ボクは国王に退位を迫まろうと思います。下手をすれば、この地が内乱の場になってしまいますが……ボクの味方になっていただけますか?」
「王家と敵対! 国王に退位!? ルカお姉様がそれをお望みなら、私は喜んでお手伝いします! お父様を疎んじて、中央より遠ざけた陛下とその取り巻き連中を、ギャフンと言わせてやりたかったんです!」
ミリアは勢い込んでまくし立てた。
「なにも心配ありません! ルカお姉様こそ第一王位継承者。この国の次期、女王ではありませんか!?」
「領主様のおっしゃる通りだ! 俺たちを見捨てた国王なんかいらねぇ!」
どうやら国王が援軍を出さなかった事実は、すでに広まっているようだ。
領民たちは国王に対する怒りをあらわにしている。
「ルカ姫様が女王になってくださるなら、我らにとってこれほど喜ばしいことはありません!」
人々が口々にミリアに賛同する。
内乱に発展することなく、ボクが女王となって、すんなり王位の交代が行われると、みんな考えているのだろう。
だが、そんなことは絶対にあり得ない。
「残念ですが、ボクは王家……勇者となる資格を持った者は王位につくべきではないと考えています。勇者の権威があるために、王家はまるで女神様の代理人であるかのように、傲慢に振る舞ってきました。だから、王家を解体して、アルビオン王国を共和制にするつもりです」
ボクの考えを聞くと、ミリアたちは口をぽかんと開けた。
これがボクの反逆の形だ。勇者が王族を兼ねるからこそ、イルティアのような人を人とも思わない存在が生まれてしまうのだ。
隣国サンマリーナ共和国は、選挙によって国民から選ばれた元老院議員によって、国家が運営されている。
イルティアが興した魔王討伐軍には、サンマリーナ共和国の兵も加わっており、王様のいない国があることを知ることができた。ちゃんと調べて、この仕組みをそっくりマネしようと思う。
「だから、ボクは王位を継ぐつもりはないです」
王政を廃し、勇者イルティアと決着をつけたら。できればこの地で家族とのんびり過ごそうと思う。
「そんなルカ姫様は……女神様から直々に、新たなる王となって欲しいと、言われたではありませんか!?」
「そうです! ルカ様以上に王にふさわしい方など、この世にはおりません!」
エリザをはじめたとした聖騎士団の少女たちが、ボクこそ王にふさわしいと口々に叫ぶ。
「……そんな。買いかぶりすぎだって」
なにしろ、冒険者を目指していただけのただの平民ですから。女王の地位につくなど、冗談ではない。というか無理!
「お、お姉様! なんと謙虚で無欲なんですか……!? そして、いじらしい……ま、まさにルカお姉様こそ、地上に舞い降りた天使!」
ミリアが感銘を受けた様子で、胸の前で手を合わせた。
「ルカお姉様の理想を叶えるためなら、私はどんなことでもします!
例え、国王陛下と戦うことになろうとも。この地の者で、お姉様についていかない者など、おりません! そうでしょう、みんな!?」
ミリアが拳を突き上げて振り返ると、民衆が爆発的な大歓声を上げた。
「王家を打倒したら。共和制、最初の国家元首になってくださいね。ルカお姉様!」
究極の聖剣。現在の攻撃力3634
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