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第35話 夢
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「あたしがも……もっとちゃんとしてれば……」
弱々しい声を上げる葵。
その手は萩人の背中にしがみついている。
だが、葵は涙を見せることはなかった。
あの日から泣くことができないでいる。
いや、泣いちゃいけないとすら思っているのかもしれない。
「あお、お前ちょっと寝ろ。少し冷静になれ。何でもかんでも自分のせいにするな」
抱きしめていた腕を緩め、葵を引き離す萩人。
「……うん、ちょっと寝る。しゅうちゃんありがとう」
葵はそのままソファーに横になり、目を閉じた。
***
葵が目を閉じてから数分後──
脳裏にはあの日の出来事が思い起こされる。
とある倉庫には数人の男達。
その片隅に散乱した鉄パイプと茶髪の男。
男の頭付近は血で真っ赤に染まっていた。
茶髪の男の前で座り込む人物。
フードを被っている為、性別不詳だ。
そして、その人物の後ろには黒髪の男が倒れていた。
腹部からは大量の出血そして、男の近くには血で真っ赤に染まったナイフが落ちている。
それは床に水溜まりができるほどの出血量。
「朔……っ! 柑太っ……。なんで……ッ。2人とも目ぇ覚ましてくれよ……」
フードを被った人物が泣き叫ぶ。
***
「……さ、く……かん、た……め、さまして……よ……」
理事長室のソファーで横になる葵は眉間に皺を寄せ、ボソボソと口を開く。
何度も寝返りを打ち苦しそうな様子だ。
「……お、あお! あおっ!」
そんな葵に声をかけたのが萩人だった。
ソファーの横で両膝をつき何度も葵の肩を揺する。
「……ん。しゅ、しゅうちゃん?」
萩人の呼びかけに反応した葵はゆっくりと目を開けた。
「あお! 大丈夫か! うなされてたぞ」
「……あの日のことが頭から離れない。朔と柑太が……血だらけで……」
「大丈夫、大丈夫だ。誰もお前を恨んじゃいねぇ」
萩人はそのままの体勢で葵を抱きしめ、優しく背中をさする。
「しゅうちゃん……」
葵はそう呟くと安心したのかそのまま深い眠りについた。
葵が目を覚ましたのは下校時刻を回った頃だった。
「……ん。しゅうちゃん?」
いつの間にか萩人は離れソファーには葵だけが横になっていた。
体にはタオルケットがかけられていた。
「あお? 目覚ましたか?」
葵が起きたことに気づいた萩人は部屋の隅に置かれたデスクから立ち上がると、声をかけた。
「しゅうちゃん……ごめんね」
「ごめんじゃないだろ? 俺は迷惑かけられた覚えはない」
萩人は葵の前でしゃがみこみ目線を合わせる。
「……ありがとう」
「おう
その日は、白狼のメンバーには"先に帰る"とだけ連絡を済ませ、家まで萩人が送り届けてくれた。
弱々しい声を上げる葵。
その手は萩人の背中にしがみついている。
だが、葵は涙を見せることはなかった。
あの日から泣くことができないでいる。
いや、泣いちゃいけないとすら思っているのかもしれない。
「あお、お前ちょっと寝ろ。少し冷静になれ。何でもかんでも自分のせいにするな」
抱きしめていた腕を緩め、葵を引き離す萩人。
「……うん、ちょっと寝る。しゅうちゃんありがとう」
葵はそのままソファーに横になり、目を閉じた。
***
葵が目を閉じてから数分後──
脳裏にはあの日の出来事が思い起こされる。
とある倉庫には数人の男達。
その片隅に散乱した鉄パイプと茶髪の男。
男の頭付近は血で真っ赤に染まっていた。
茶髪の男の前で座り込む人物。
フードを被っている為、性別不詳だ。
そして、その人物の後ろには黒髪の男が倒れていた。
腹部からは大量の出血そして、男の近くには血で真っ赤に染まったナイフが落ちている。
それは床に水溜まりができるほどの出血量。
「朔……っ! 柑太っ……。なんで……ッ。2人とも目ぇ覚ましてくれよ……」
フードを被った人物が泣き叫ぶ。
***
「……さ、く……かん、た……め、さまして……よ……」
理事長室のソファーで横になる葵は眉間に皺を寄せ、ボソボソと口を開く。
何度も寝返りを打ち苦しそうな様子だ。
「……お、あお! あおっ!」
そんな葵に声をかけたのが萩人だった。
ソファーの横で両膝をつき何度も葵の肩を揺する。
「……ん。しゅ、しゅうちゃん?」
萩人の呼びかけに反応した葵はゆっくりと目を開けた。
「あお! 大丈夫か! うなされてたぞ」
「……あの日のことが頭から離れない。朔と柑太が……血だらけで……」
「大丈夫、大丈夫だ。誰もお前を恨んじゃいねぇ」
萩人はそのままの体勢で葵を抱きしめ、優しく背中をさする。
「しゅうちゃん……」
葵はそう呟くと安心したのかそのまま深い眠りについた。
葵が目を覚ましたのは下校時刻を回った頃だった。
「……ん。しゅうちゃん?」
いつの間にか萩人は離れソファーには葵だけが横になっていた。
体にはタオルケットがかけられていた。
「あお? 目覚ましたか?」
葵が起きたことに気づいた萩人は部屋の隅に置かれたデスクから立ち上がると、声をかけた。
「しゅうちゃん……ごめんね」
「ごめんじゃないだろ? 俺は迷惑かけられた覚えはない」
萩人は葵の前でしゃがみこみ目線を合わせる。
「……ありがとう」
「おう
その日は、白狼のメンバーには"先に帰る"とだけ連絡を済ませ、家まで萩人が送り届けてくれた。
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