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第3話 理事長
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「え、あ、しゅうちゃん?」
そこには、葵の知っている人物がいた。
「あおー! やっと来たか!
朝来ないから心配したんだぞ」
理事長室の窓際に大きく設置された机と高そうな椅子。
その椅子に腰掛けるしゅうちゃんと呼ばれる男が満面の笑みで出迎えた。
「え、なんでここにいるの?」
理事長室のドアを閉めた葵はそう問いかける。
「なんでって理事長だから?」
男は黒髪のツンツンした頭を傾けた。
「え、何この学校……。なんでしゅうちゃんが理事長?」
「この学校の名前は?」
「立河学園……」
「俺の名前は?」
「萩人……立河萩人(タチカワ シュウト)。
え、立河学園?」
萩人の名前を口に出し、何故萩人が理事長をやっているのか理解した葵。
「そう、ここ俺のひいじいちゃんから代々受け継がれてんだ」
萩人は椅子から立ち上がると葵の元へ歩み寄る。
「そうなんだ。だからあたしもここに入れたのか」
「まあ、1年からなのは許せよ」
「別に大丈夫。向こうでも元々留年だったし」
「まあ、俺は昔みたいにあおに会えて嬉しいよ」
萩人は満面の笑みを浮かべ、葵の頭を撫でた。
それを嬉しそうな顔で見つめていた柊真。
「しゅうちゃん……ありがとう」
「おうよ。それより昼にしようぜ。
なんか買ってきたか?」
「コンビニでおにぎり買ってきただけ」
「よし、じゃあ食うか」
理事長室のど真ん中には長いローテーブル、それを囲うように立派なソファーが置かれていた。
ドア側に葵が座り、右手側が柊真、その反対に萩人が座った。
「まさか、また葵と飯食えるとはな」
「そうっすね。俺らがまだ現役の時だから4年振りくらいですかね?」
萩人と柊真がコンビニ弁当の蓋を開けながらそう口にした。
「そうだね。でも、龍華の総長と幹部だった人が学校の先生やってるなんて知ったらみんなびっくりしそうだね」
そう微笑んだ葵の顔は誇らしげだった。
今は普通に学校の先生をやっているが、
萩人は龍華の8代目総長、柊真は副総長だった。
「だろうな」
「俺は萩人さんが理事長やってなかったら先生なんてやってなかったから感謝しかないっすね」
「は? そんなん初めて聞いたぞ」
「初めて言いましたからね」
そう、真顔で言う柊真に対し、萩人は恥ずかしそうに頭をかいた。
「あいつらは元気か?」
萩人はふと思い出したかのように口を開く。
「わかんない……」
「結局まだ会えてないんだな」
「え、なんの話っすか?」
全く話の内容が理解出来ない柊真が口を挟む。
「あー柊真は知らなかったよな。
こいつこの前まで龍華の10代目総長だったんだよ。辞めちまったみたいで、俺がこの学校教えてやった」
「そうだったんすか……え、総長! え、葵が?」
柊真は驚き数回瞬きをした。
「そうだよ。もう辞めちゃったけどね」
「え、それって……理由聞いても……?」
悲しそうな顔を浮かべる葵に柊真は恐る恐る訊ねる。
「ごめん……まだ言えない。そのうち……ちゃんと言うから」
「……ほら、そんな湿気た面すんなよ。飯が不味くなる。葵、言いたくないことは無理に言わなくてもいい。気にするな」
「……ありがとう」
「ほら、柊真も食え」
萩人は柊真の弁当から唐揚げを1つ箸で掴むと口に押し込んだ。
「ちょ……しゅう…とさん…なにすん、すか」
唐揚げを押し込まれた柊真はリスみたいに口がパンパンになっていた。
そこには、葵の知っている人物がいた。
「あおー! やっと来たか!
朝来ないから心配したんだぞ」
理事長室の窓際に大きく設置された机と高そうな椅子。
その椅子に腰掛けるしゅうちゃんと呼ばれる男が満面の笑みで出迎えた。
「え、なんでここにいるの?」
理事長室のドアを閉めた葵はそう問いかける。
「なんでって理事長だから?」
男は黒髪のツンツンした頭を傾けた。
「え、何この学校……。なんでしゅうちゃんが理事長?」
「この学校の名前は?」
「立河学園……」
「俺の名前は?」
「萩人……立河萩人(タチカワ シュウト)。
え、立河学園?」
萩人の名前を口に出し、何故萩人が理事長をやっているのか理解した葵。
「そう、ここ俺のひいじいちゃんから代々受け継がれてんだ」
萩人は椅子から立ち上がると葵の元へ歩み寄る。
「そうなんだ。だからあたしもここに入れたのか」
「まあ、1年からなのは許せよ」
「別に大丈夫。向こうでも元々留年だったし」
「まあ、俺は昔みたいにあおに会えて嬉しいよ」
萩人は満面の笑みを浮かべ、葵の頭を撫でた。
それを嬉しそうな顔で見つめていた柊真。
「しゅうちゃん……ありがとう」
「おうよ。それより昼にしようぜ。
なんか買ってきたか?」
「コンビニでおにぎり買ってきただけ」
「よし、じゃあ食うか」
理事長室のど真ん中には長いローテーブル、それを囲うように立派なソファーが置かれていた。
ドア側に葵が座り、右手側が柊真、その反対に萩人が座った。
「まさか、また葵と飯食えるとはな」
「そうっすね。俺らがまだ現役の時だから4年振りくらいですかね?」
萩人と柊真がコンビニ弁当の蓋を開けながらそう口にした。
「そうだね。でも、龍華の総長と幹部だった人が学校の先生やってるなんて知ったらみんなびっくりしそうだね」
そう微笑んだ葵の顔は誇らしげだった。
今は普通に学校の先生をやっているが、
萩人は龍華の8代目総長、柊真は副総長だった。
「だろうな」
「俺は萩人さんが理事長やってなかったら先生なんてやってなかったから感謝しかないっすね」
「は? そんなん初めて聞いたぞ」
「初めて言いましたからね」
そう、真顔で言う柊真に対し、萩人は恥ずかしそうに頭をかいた。
「あいつらは元気か?」
萩人はふと思い出したかのように口を開く。
「わかんない……」
「結局まだ会えてないんだな」
「え、なんの話っすか?」
全く話の内容が理解出来ない柊真が口を挟む。
「あー柊真は知らなかったよな。
こいつこの前まで龍華の10代目総長だったんだよ。辞めちまったみたいで、俺がこの学校教えてやった」
「そうだったんすか……え、総長! え、葵が?」
柊真は驚き数回瞬きをした。
「そうだよ。もう辞めちゃったけどね」
「え、それって……理由聞いても……?」
悲しそうな顔を浮かべる葵に柊真は恐る恐る訊ねる。
「ごめん……まだ言えない。そのうち……ちゃんと言うから」
「……ほら、そんな湿気た面すんなよ。飯が不味くなる。葵、言いたくないことは無理に言わなくてもいい。気にするな」
「……ありがとう」
「ほら、柊真も食え」
萩人は柊真の弁当から唐揚げを1つ箸で掴むと口に押し込んだ。
「ちょ……しゅう…とさん…なにすん、すか」
唐揚げを押し込まれた柊真はリスみたいに口がパンパンになっていた。
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