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第1話 再会
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「おい、おめーら静かにしろっ!」
教室のドアが勢いよく開かれると一人の男が入ってきた。
彼はこのクラス、1年2組の担任だ。
真っ黒な髪の毛はワックスで整えられていた。
スーツに身を包んだ彼の顔は切れ長の瞳に鬼のような形相だった。
先程まで騒がしかった教室も彼の一言で静まりかえる。
このクラスを受け持って3ヶ月あまりだが、カラフルな頭の生徒達は彼を恐れていた。
「じゃあ、今日は転校生を紹介する。入っていいぞ」
「失礼します」
先程とは打って変わって優しい声色で転校生を呼ぶ彼。
「柊真、顔がうるさい」
柊真と呼ばれる彼は顔がニヤケないよう、しきりに抑えていた。
彼の名は平岡柊真(ヒラオカ トウマ)。
「うるさいって酷いな。はい、自己紹介して」
「西山葵(ニシヤマ アオイ)。よろしく」
転校生の彼女、葵は柊真から目の前に座るカラフルな生徒達に視線を向けた。
「え、ちょー可愛い!」
「彼氏いる?」
「この学校に女子がきたー!」
「久々じゃね?」
「目の保養だ」
クラスの生徒達は言いたい放題。
騒ぐのも無理はない。
葵の髪は黒色に染められ、肩まで伸ばされていた。前髪はぱっちり二重の瞳にギリギリかからないくらい。
彼女はいわゆる美人の分類に入るのであろう。
「……」
葵はそんな生徒たちの言葉に聞く耳を持たなかった。
そして、この学校、立河学園は元々男子校だった。
昨年から共学となり女子生徒も数名入学してきた。
だが、不良生徒が多く女子生徒は恐怖からか皆、別の高校へと転校してしまった。
「(……あんな状態じゃ女子がいないのも納得できるな)」
葵は今朝見た学校の外観や教室の風景を思い起こし納得した。
窓ガラスは割れ、外壁、教室の至る所にスプレーやペンで落書きされていた。
「(みんな頭カラフルだし……いや、ツルツルもいた。そういえば、誰かにぶつかった時も凄いキレられたな……ちょっと殺気だしたら大人しくなったっけ)」
朝、時間がなく急いで職員室に向かってる途中にスキンヘッドにぶつかったなと教室にいる同じ頭を見て思い出したようだ。
「柊真、席どこ?」
ずっと立っているこの状態に耐えられなくなったのか、葵が口を開く。
「あーそこの窓側の1番前な」
「はーい」
葵はそう、返事をすると指定された席についた。
周りの席は綺麗に空席だ。
「じゃあホームルーム終わり」
葵が外を眺めていると柊真が教室から出ていくのが見えた。
葵はその後を追いかけた。
「柊真!」
「ん? なんだ?」
廊下に出たところで葵が呼びとめると柊真は足を止め振り向いた。
「ありがとうね」
「礼言われるようなこと俺したっけ?」
「いいの。ただ言いたくなっただけ」
「(何も知らないだろうけど、変わらずあたしに接してくれるのが嬉しかった。こんなの恥ずかしくて言えないけど)」
そう言った葵の顔はどことなく微笑んでいた。余程嬉しかったのだろう。
「おい、おめーら静かにしろっ!」
教室のドアが勢いよく開かれると一人の男が入ってきた。
彼はこのクラス、1年2組の担任だ。
真っ黒な髪の毛はワックスで整えられていた。
スーツに身を包んだ彼の顔は切れ長の瞳に鬼のような形相だった。
先程まで騒がしかった教室も彼の一言で静まりかえる。
このクラスを受け持って3ヶ月あまりだが、カラフルな頭の生徒達は彼を恐れていた。
「じゃあ、今日は転校生を紹介する。入っていいぞ」
「失礼します」
先程とは打って変わって優しい声色で転校生を呼ぶ彼。
「柊真、顔がうるさい」
柊真と呼ばれる彼は顔がニヤケないよう、しきりに抑えていた。
彼の名は平岡柊真(ヒラオカ トウマ)。
「うるさいって酷いな。はい、自己紹介して」
「西山葵(ニシヤマ アオイ)。よろしく」
転校生の彼女、葵は柊真から目の前に座るカラフルな生徒達に視線を向けた。
「え、ちょー可愛い!」
「彼氏いる?」
「この学校に女子がきたー!」
「久々じゃね?」
「目の保養だ」
クラスの生徒達は言いたい放題。
騒ぐのも無理はない。
葵の髪は黒色に染められ、肩まで伸ばされていた。前髪はぱっちり二重の瞳にギリギリかからないくらい。
彼女はいわゆる美人の分類に入るのであろう。
「……」
葵はそんな生徒たちの言葉に聞く耳を持たなかった。
そして、この学校、立河学園は元々男子校だった。
昨年から共学となり女子生徒も数名入学してきた。
だが、不良生徒が多く女子生徒は恐怖からか皆、別の高校へと転校してしまった。
「(……あんな状態じゃ女子がいないのも納得できるな)」
葵は今朝見た学校の外観や教室の風景を思い起こし納得した。
窓ガラスは割れ、外壁、教室の至る所にスプレーやペンで落書きされていた。
「(みんな頭カラフルだし……いや、ツルツルもいた。そういえば、誰かにぶつかった時も凄いキレられたな……ちょっと殺気だしたら大人しくなったっけ)」
朝、時間がなく急いで職員室に向かってる途中にスキンヘッドにぶつかったなと教室にいる同じ頭を見て思い出したようだ。
「柊真、席どこ?」
ずっと立っているこの状態に耐えられなくなったのか、葵が口を開く。
「あーそこの窓側の1番前な」
「はーい」
葵はそう、返事をすると指定された席についた。
周りの席は綺麗に空席だ。
「じゃあホームルーム終わり」
葵が外を眺めていると柊真が教室から出ていくのが見えた。
葵はその後を追いかけた。
「柊真!」
「ん? なんだ?」
廊下に出たところで葵が呼びとめると柊真は足を止め振り向いた。
「ありがとうね」
「礼言われるようなこと俺したっけ?」
「いいの。ただ言いたくなっただけ」
「(何も知らないだろうけど、変わらずあたしに接してくれるのが嬉しかった。こんなの恥ずかしくて言えないけど)」
そう言った葵の顔はどことなく微笑んでいた。余程嬉しかったのだろう。
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