1 / 75
プロローグ
しおりを挟む
人々が賑わうクリスマスイブの深夜、
真っ暗な道路に数本の光が射す。
「あおー! 楽しいなー!」
特攻服に身を包み単車に跨る男が声を上げる。
「ああ。お前らと走れて良かったよ」
そう答えたのはヘルメットから金色とピンク色の髪をなびかせた小柄な人。
「あおちゃん寒くない?」
車の助っ席から顔を出したのは茶色い髪の毛を束ねた男。
「大丈夫だよ! 桜玖(サク)! 後ろ乗る?」
「俺は車で大丈夫! ありがとー!」
桜玖と呼ばれた男は手を振ると後部座席の窓を閉めた。
「やばっ! サツがきた! 撒くぞ!」
最後尾で単車を走らせてた男が叫ぶと一斉にスピードを上げた。
脇道などを通りどうにか撒いたようだ。
本日はクリスマス暴走。
彼らは龍華──全国No.1の暴走族。
このクリスマス暴走を境に彼らの人生は一変する。
楽しい日々がずっと続くと誰もが思っていた。
まさかあんな事が起こるとは誰もが予想していなかった。
* * *
「お母さん、私……龍華の11代目総長になるよ」
夕食を終え、リビングのソファーでくつろいでいると、まだ幼さが残る彼女の口から突然告げられた。
「そう、あなたもあたしと同じ道を行くのね。
ひとつだけ約束して。決して自分を見失わないで。強い人っていうのは何かを守ることができる人。
ただ、闇雲に喧嘩してたらいつか壊れる……いつかのあたしのように」
彼女の隣に座る、母と呼ばれる女性は一瞬影を落とすと淡々と口にした。
「お母さん?」
彼女はいつもと話し方が違う母に戸惑いつつも問いかける。
「今から昔話するから聞いてくれる? きっとあなたの役に立つと思うの」
「うん、お母さんとお父さんの出会いも聞きたい」
彼女は母と父の馴れ初めを聞くことが余程嬉しかったのか、目を輝かせていた。
この時は、母の辛い過去を知ることになるとは思ってもみなかっただろう。
──これは今から20年前、ある母と父との出会いのお話。
真っ暗な道路に数本の光が射す。
「あおー! 楽しいなー!」
特攻服に身を包み単車に跨る男が声を上げる。
「ああ。お前らと走れて良かったよ」
そう答えたのはヘルメットから金色とピンク色の髪をなびかせた小柄な人。
「あおちゃん寒くない?」
車の助っ席から顔を出したのは茶色い髪の毛を束ねた男。
「大丈夫だよ! 桜玖(サク)! 後ろ乗る?」
「俺は車で大丈夫! ありがとー!」
桜玖と呼ばれた男は手を振ると後部座席の窓を閉めた。
「やばっ! サツがきた! 撒くぞ!」
最後尾で単車を走らせてた男が叫ぶと一斉にスピードを上げた。
脇道などを通りどうにか撒いたようだ。
本日はクリスマス暴走。
彼らは龍華──全国No.1の暴走族。
このクリスマス暴走を境に彼らの人生は一変する。
楽しい日々がずっと続くと誰もが思っていた。
まさかあんな事が起こるとは誰もが予想していなかった。
* * *
「お母さん、私……龍華の11代目総長になるよ」
夕食を終え、リビングのソファーでくつろいでいると、まだ幼さが残る彼女の口から突然告げられた。
「そう、あなたもあたしと同じ道を行くのね。
ひとつだけ約束して。決して自分を見失わないで。強い人っていうのは何かを守ることができる人。
ただ、闇雲に喧嘩してたらいつか壊れる……いつかのあたしのように」
彼女の隣に座る、母と呼ばれる女性は一瞬影を落とすと淡々と口にした。
「お母さん?」
彼女はいつもと話し方が違う母に戸惑いつつも問いかける。
「今から昔話するから聞いてくれる? きっとあなたの役に立つと思うの」
「うん、お母さんとお父さんの出会いも聞きたい」
彼女は母と父の馴れ初めを聞くことが余程嬉しかったのか、目を輝かせていた。
この時は、母の辛い過去を知ることになるとは思ってもみなかっただろう。
──これは今から20年前、ある母と父との出会いのお話。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
〖完結〗私が死ねばいいのですね。
藍川みいな
恋愛
侯爵令嬢に生まれた、クレア・コール。
両親が亡くなり、叔父の養子になった。叔父のカーターは、クレアを使用人のように使い、気に入らないと殴りつける。
それでも懸命に生きていたが、ある日濡れ衣を着せられ連行される。
冤罪で地下牢に入れられたクレアを、この国を影で牛耳るデリード公爵が訪ねて来て愛人になれと言って来た。
クレアは愛するホルス王子をずっと待っていた。彼以外のものになる気はない。愛人にはならないと断ったが、デリード公爵は諦めるつもりはなかった。処刑される前日にまた来ると言い残し、デリード公爵は去って行く。
そのことを知ったカーターは、クレアに毒を渡し、死んでくれと頼んで来た。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全21話で完結になります。
女官になるはずだった妃
夜空 筒
恋愛
女官になる。
そう聞いていたはずなのに。
あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。
しかし、皇帝のお迎えもなく
「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」
そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。
秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。
朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。
そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。
皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。
縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。
誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。
更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。
多分…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる