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第19話 真実
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* * *
──挙式、披露宴が無事終了した。
「無事に終わってよかったわね」
帰宅するなり、菜奈は荷物を置いた。
「ああ」
「ママとパパは結婚しましたよー」
菜奈はベビーベッドで眠る愛娘を撫でながら嬉しそうに話しかける。
愛娘の顔は菜奈、翔のどちらとも似つかない顔をしていた。
2人とも二重だが、生まれてきた子は一重。
そして、極めつけはクルクルとしている髪の毛だ。
2人とも直毛なのに生まれてきた子供は癖毛だ。
「なあ、ひとつ聞いていいか?」
「なあに?」
「本当に俺の子か?」
翔の視線は菜奈ではなくベビーベッドで眠る子供に向けられていた。
「な、何言ってるのよ? あたし達の子供に決まってるでしょ?」
「俺も菜奈も二重で直毛。けど、その子は一重で癖毛だ。他に男がいたんじゃないのか?」
「……だったらなんなのよ! そうよ! この子は別の人の子よ……。本当に翔の子だと思ってた……っ!」
菜奈は一息つくと再び口を開く。
「けど、生まれてきたら全然あなたに似てなくて……2ヶ月経った今、この子はあの人そっくりなのよ」
「じゃあ浮気してたってことだよな?」
「浮気じゃない! 酔っ払って気づいたら……"コト"が終わってたのよ。だから……ごめんなさい。でも、翔のことは別れてからもずっと好きだったわ」
菜奈は翔の向くと座ったまま頭を下げた。
「あっそ。俺は好きじゃないね。結婚式上げる前に気づくべきだったわ。すぐに離婚は……参列してくれた人に申し訳ないから頃合見て離婚届けにサインしてくれな」
翔は座って頭を下げる菜奈を睨みつける。
「ごめんなさい……あたしがちゃんと気をつけてればこんな事にならなかったし、翔も愛と別れることなんてなかったのよね……」
「は? どういうことだ?」
菜奈の言葉に翔の眉間にシワが寄る。
「あたしが愛に言ったのよ。翔と別れないとあの子を堕ろすって……」
「はあ? ふざけんなよ!! それで愛は俺に別れるって言ってきたってことか?」
翔は怒鳴り声を上げる。
それに驚いたのか子供の鳴き声が響き渡る。
「ご、ごめんなさい……。本当にあたしは翔との子だと思って……うっ……ごめん、なさい……」
「もういい……話したくもない。2ヶ月したら離婚しような。俺が出て行くか菜奈が出て行くか。どっちがいい?」
子供を全く相手にしない菜奈。
そんな菜奈を睨みつけながら、翔は子供を優しく抱き抱えた。
「ごめんな。大き声出してびっくりしたよな」
翔が優しく声をかけながら背中を撫でる。
「あ、ごめん。えっと……あたしが決めていいの?」
「羽菜を育てるのは菜奈だろ? だから菜奈が決めていい」
"羽菜"
翔と菜奈の名前の一部を取って付けられた名だ。
「翔との子じゃないんだよ……」
「それでも1度結婚してんだ。血の繋がりがなくても俺の子だろ」
先程まで泣きじゃくってた羽菜。
今は大人しく翔の腕の中で眠っている。
翔はそんな羽菜の頭を優しく撫でた。
「ありがとう……もう、これ以上迷惑かけられないから実家に帰るよ……」
「わかった」
羽菜をベビーベッドに戻した翔はそのままリビングを出て行った。
***
そして、2ヶ月後──
「翔、サインしたよ」
「ああ。じゃあこれは俺が出しとくから」
「うん。じゃあ……今までありがとう」
「ああ」
翔は菜奈と羽菜が出て行った玄関のドアを見つめていた。
「はぁ……出しに行くか。バツ付いちまうな」
リビングのテーブルに置いてある離婚届けを手に取った翔はため息をついた。
──挙式、披露宴が無事終了した。
「無事に終わってよかったわね」
帰宅するなり、菜奈は荷物を置いた。
「ああ」
「ママとパパは結婚しましたよー」
菜奈はベビーベッドで眠る愛娘を撫でながら嬉しそうに話しかける。
愛娘の顔は菜奈、翔のどちらとも似つかない顔をしていた。
2人とも二重だが、生まれてきた子は一重。
そして、極めつけはクルクルとしている髪の毛だ。
2人とも直毛なのに生まれてきた子供は癖毛だ。
「なあ、ひとつ聞いていいか?」
「なあに?」
「本当に俺の子か?」
翔の視線は菜奈ではなくベビーベッドで眠る子供に向けられていた。
「な、何言ってるのよ? あたし達の子供に決まってるでしょ?」
「俺も菜奈も二重で直毛。けど、その子は一重で癖毛だ。他に男がいたんじゃないのか?」
「……だったらなんなのよ! そうよ! この子は別の人の子よ……。本当に翔の子だと思ってた……っ!」
菜奈は一息つくと再び口を開く。
「けど、生まれてきたら全然あなたに似てなくて……2ヶ月経った今、この子はあの人そっくりなのよ」
「じゃあ浮気してたってことだよな?」
「浮気じゃない! 酔っ払って気づいたら……"コト"が終わってたのよ。だから……ごめんなさい。でも、翔のことは別れてからもずっと好きだったわ」
菜奈は翔の向くと座ったまま頭を下げた。
「あっそ。俺は好きじゃないね。結婚式上げる前に気づくべきだったわ。すぐに離婚は……参列してくれた人に申し訳ないから頃合見て離婚届けにサインしてくれな」
翔は座って頭を下げる菜奈を睨みつける。
「ごめんなさい……あたしがちゃんと気をつけてればこんな事にならなかったし、翔も愛と別れることなんてなかったのよね……」
「は? どういうことだ?」
菜奈の言葉に翔の眉間にシワが寄る。
「あたしが愛に言ったのよ。翔と別れないとあの子を堕ろすって……」
「はあ? ふざけんなよ!! それで愛は俺に別れるって言ってきたってことか?」
翔は怒鳴り声を上げる。
それに驚いたのか子供の鳴き声が響き渡る。
「ご、ごめんなさい……。本当にあたしは翔との子だと思って……うっ……ごめん、なさい……」
「もういい……話したくもない。2ヶ月したら離婚しような。俺が出て行くか菜奈が出て行くか。どっちがいい?」
子供を全く相手にしない菜奈。
そんな菜奈を睨みつけながら、翔は子供を優しく抱き抱えた。
「ごめんな。大き声出してびっくりしたよな」
翔が優しく声をかけながら背中を撫でる。
「あ、ごめん。えっと……あたしが決めていいの?」
「羽菜を育てるのは菜奈だろ? だから菜奈が決めていい」
"羽菜"
翔と菜奈の名前の一部を取って付けられた名だ。
「翔との子じゃないんだよ……」
「それでも1度結婚してんだ。血の繋がりがなくても俺の子だろ」
先程まで泣きじゃくってた羽菜。
今は大人しく翔の腕の中で眠っている。
翔はそんな羽菜の頭を優しく撫でた。
「ありがとう……もう、これ以上迷惑かけられないから実家に帰るよ……」
「わかった」
羽菜をベビーベッドに戻した翔はそのままリビングを出て行った。
***
そして、2ヶ月後──
「翔、サインしたよ」
「ああ。じゃあこれは俺が出しとくから」
「うん。じゃあ……今までありがとう」
「ああ」
翔は菜奈と羽菜が出て行った玄関のドアを見つめていた。
「はぁ……出しに行くか。バツ付いちまうな」
リビングのテーブルに置いてある離婚届けを手に取った翔はため息をついた。
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