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第18話 結婚式
しおりを挟む数日後──
「あ、Limeだわ。……ちゃんと別れたのね」
菜奈が手に持つスマホの画面には愛からのLimeが表示されていた。
"翔とは別れました"
「(まさか、本当に別れるとは思わなかったけど)」
それを見た菜奈は嬉しそうに口角をあげた。
菜奈はスマホを操作するとどこかへ電話をかけた。
「話したいことがあるんだけど今日会えるかしら?」
「無理」
電話口から低く凍りついた翔の声が聞こえてきた。
「私達の子供について話があるのよ」
「……分かった」
"お腹の子供"
それを言われてしまえば断れない翔は菜奈の指示通り待ち合わせの場所へ向かった。
「翔! こっちよ」
菜奈は翔の姿が見えるとテーブルから乗り出し左手を上げた。
そこは個室のカフェになっていた。
「……ああ。で、話は?」
翔はそう言うと菜奈の対面のイスに腰掛けた。
「来てくれてありがとう。ねえ、やっぱり私達もう一度やり直さない? この子の為にも──」
「無理だ……。第一俺の子だっていう証拠はあるのか?」
「それは……! 前にも言ったわよね? あたし翔としか付き合ってないのよ」
「俺としか……なあ、子供って何ヶ月?」
「な、7ヶ月よ……」
菜奈はそう言うと大きく膨らんだお腹を右手で優しくさすった。
「……別れたのが……半年前だから浮気してない限り俺の可能性があるのか……」
「う、浮気なんてしないわよ!」
「……わかった。責任取るよ……」
「ありがとう」
菜奈は嬉し涙を浮かべた。
両手でそれを隠すかのように顔を覆う。
その覆われた手の中で菜奈がニヤリと笑っていた事に翔は気づいていなかった。
***
数ヶ月後──
台風の多い秋。
久々の晴れ間となったある日。
チャペルでは、挙式が行われていた。
「新郎、香月翔あなたはここにいる綾瀬菜奈を、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、妻として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか? 」
「……はい、誓います」
牧師の問いかけに、真っ白なタキシードに身を包んだ翔が答える。
「新婦、綾瀬菜奈あなたはここにいる香月翔を病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、夫として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか? 」
「はいっ……誓いますっ……」
同じく、牧師の問いかけに答えたのは、純白なドレスに身を包んだ菜奈だ。
菜奈の膨らんでいたお腹はぺったんことなり、静かなチャペルには赤ん坊の泣き声が聞こえてくる。
──本日は、翔と菜奈の結婚式だ。
「(はぁ……なんで、元彼の結婚式に来てるんだろ?)」
愛は指輪の交換を行う2人を悔しそうに顔を歪めながら見つめていた。
「(あーやんから絶対来て! 来ないと翔がどうなっても知らないからって脅されて仕方なく来たけどさ……)」
「では、誓のキスを」
牧師言葉を聞いた翔は菜奈のベールを捲る。
2人は互いに顔を近づけ、唇を重ねた。
そして触れるだけのキスをした。
「(こんなの見たくなかった……)」
2人がキスする瞬間、愛は思わず顔を逸らした。
俯き唇を噛み締める愛。
その手はキツく握りしめられていた。
「愛、大丈夫?」
愛の隣に座る優奈はコソッと声をかける。
「大丈夫」
愛は優奈を見つめ、小さく頷いた。
「あ、Limeだわ。……ちゃんと別れたのね」
菜奈が手に持つスマホの画面には愛からのLimeが表示されていた。
"翔とは別れました"
「(まさか、本当に別れるとは思わなかったけど)」
それを見た菜奈は嬉しそうに口角をあげた。
菜奈はスマホを操作するとどこかへ電話をかけた。
「話したいことがあるんだけど今日会えるかしら?」
「無理」
電話口から低く凍りついた翔の声が聞こえてきた。
「私達の子供について話があるのよ」
「……分かった」
"お腹の子供"
それを言われてしまえば断れない翔は菜奈の指示通り待ち合わせの場所へ向かった。
「翔! こっちよ」
菜奈は翔の姿が見えるとテーブルから乗り出し左手を上げた。
そこは個室のカフェになっていた。
「……ああ。で、話は?」
翔はそう言うと菜奈の対面のイスに腰掛けた。
「来てくれてありがとう。ねえ、やっぱり私達もう一度やり直さない? この子の為にも──」
「無理だ……。第一俺の子だっていう証拠はあるのか?」
「それは……! 前にも言ったわよね? あたし翔としか付き合ってないのよ」
「俺としか……なあ、子供って何ヶ月?」
「な、7ヶ月よ……」
菜奈はそう言うと大きく膨らんだお腹を右手で優しくさすった。
「……別れたのが……半年前だから浮気してない限り俺の可能性があるのか……」
「う、浮気なんてしないわよ!」
「……わかった。責任取るよ……」
「ありがとう」
菜奈は嬉し涙を浮かべた。
両手でそれを隠すかのように顔を覆う。
その覆われた手の中で菜奈がニヤリと笑っていた事に翔は気づいていなかった。
***
数ヶ月後──
台風の多い秋。
久々の晴れ間となったある日。
チャペルでは、挙式が行われていた。
「新郎、香月翔あなたはここにいる綾瀬菜奈を、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、妻として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか? 」
「……はい、誓います」
牧師の問いかけに、真っ白なタキシードに身を包んだ翔が答える。
「新婦、綾瀬菜奈あなたはここにいる香月翔を病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、夫として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか? 」
「はいっ……誓いますっ……」
同じく、牧師の問いかけに答えたのは、純白なドレスに身を包んだ菜奈だ。
菜奈の膨らんでいたお腹はぺったんことなり、静かなチャペルには赤ん坊の泣き声が聞こえてくる。
──本日は、翔と菜奈の結婚式だ。
「(はぁ……なんで、元彼の結婚式に来てるんだろ?)」
愛は指輪の交換を行う2人を悔しそうに顔を歪めながら見つめていた。
「(あーやんから絶対来て! 来ないと翔がどうなっても知らないからって脅されて仕方なく来たけどさ……)」
「では、誓のキスを」
牧師言葉を聞いた翔は菜奈のベールを捲る。
2人は互いに顔を近づけ、唇を重ねた。
そして触れるだけのキスをした。
「(こんなの見たくなかった……)」
2人がキスする瞬間、愛は思わず顔を逸らした。
俯き唇を噛み締める愛。
その手はキツく握りしめられていた。
「愛、大丈夫?」
愛の隣に座る優奈はコソッと声をかける。
「大丈夫」
愛は優奈を見つめ、小さく頷いた。
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