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第16話 決断
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次の日──
「ごめん、お待たせ」
「大丈夫よ」
愛は待ち合わせ場所のカフェに少し遅れて到着した。
静かな店内には懐かしい友人の姿があった。
「あーやん、久々だね。優菜から聞いたよ。赤ちゃんおめでとう」
テーブル席のソファーに腰かけた愛は、久々の友人との再会に嬉しそうに笑みを浮かべた。
「ありがとう。そうね、高校卒業以来かしら。今日はね、愛にお願いがあって来たのよ」
「お願い? なに?」
彼女の真剣な眼差しに身構える愛。
「今って翔と付き合ってるの?」
「え? な、なんで知ってるの?」
その質問に驚く愛。
翔と付き合ったことなほとんどの人が知らないはずだ。
ましてや久々に再会した彼女が知る由がない。
「知ってるも何も、ずっと見てきたからわかるわよ。あたしだって翔のことが好きだった。でも、あなたは別の人と付き合った。なのに……! なんで……? なんで、今は翔と付き合ってるの?」
静かな店内には女性の悲痛な叫びが響き渡った。
「え……あーやん翔のこと好きだった……の?」
「そうよ。あなたと違って、あたしは翔だけが好きだった。だから、中学卒業する時に私から告白したの。でも振られたわ。他に好きな人がいるからって」
「……」
友人からの告白に愛はただ目の前にいる彼女を見つめることしかできないでいた。
「いつしか彼は変わったわ。色んな女を取っかえ引っ変えするようになった。チャンスだと思った。もう一度告白したら今までの流れで付き合ってくれるかもしれないって。そしたら本当に付き合えたの。でも些細なことで別れちゃったけどね」
「そ、そうだったんだ……」
愛はただ一言そう返すので精一杯だ。
「今さ、なんでこんな話聞かされてるんだろって思ってるでしょ?」
「え、いや……そんなことは…」
図星を付かれた愛は言葉を濁す。
「本当あれよね。昔から自分のことは話さないで周りに合わせてばかり。あまりあなたのこと好きじゃなかったのよね」
先程よりも話すトーンが落ちた彼女。
それは怒りと苛立ちを含んだ声だった。
「え、あーやん……」
「(ずっと友達だと思ってたんだけどな……)」
あーやんの言葉に愛は視線を落とし、唇を噛み締めた。
「ねえ、翔を返してよっ!」
彼女は拳でテーブルを叩いた。
口いっぱいまで注がれたコーヒーがカップからこぼれるほどだ。
静かな店内に響き渡る音に、数組の客が一斉に振り向いた。
「返してってどういうこと?」
「そのままの意味よ。あたしには彼が必要なの」
そう言うと彼女、絢瀬菜奈(アヤセ ナナ)は自身のお腹に手を当て優しそうにさする。
「え……もしかして」
「そうよ。あたしのお腹には彼との子がいるの。だから返して。あたしはこの子を産みたいの。別れたけど、まだ翔のことは好きなの。だから大好きな彼との子を産みたいの!」
「あーやん……」
「ね、お願い」
「……ごめん。あたしも翔のことが好きだから、あたしからは別れられない」
愛は悲しい声を絞り出す。
だが、眼差しは真剣そのものだった。
「2人して同じこと言うのね。彼もあなたと別れる気はないみたいだから」
「え、翔も知ってるの?」
「ええ。けど、あなたと別れる気はないって言ってたわ。あなた達は酷いわね。ここに小さな命があるのに……無かったことにするなんて」
「無かったことにはしてないよ。ただ、翔とは別れたくないって言っただけで……」
菜奈の言葉に愛の心が揺れ、その声は震えていた。
「一緒よ。翔を返してくれないなら、この子も諦めるわ」
「え……それって……」
"小さな命"を天秤にかけるかのような脅しに、思わず言葉を失う愛。
「そう、そのままよ。ここに小さな命が生きてるの。だから、返してくれないかしら」
「……わ、分かった」
愛は涙を呑んで嫌々決断した。
「ありがとう。翔にはあなたから別れを切り出してちょうだいね。彼、あなたと別れる気ないみたいだから」
「……ちゃ、ちゃんと別れるから……少しだけ時間をください」
「時間?」
「最後に思い出が欲しいの」
「そんなのやめなさい。ただ、辛いだけよ。今別れるって決めたのだから、すぐ伝えるべきよ。返事楽しみにしてるわ」
涙ぐみながら、発せられた愛の言葉は菜奈にバッサリと切り捨てられた。
「ごめん、お待たせ」
「大丈夫よ」
愛は待ち合わせ場所のカフェに少し遅れて到着した。
静かな店内には懐かしい友人の姿があった。
「あーやん、久々だね。優菜から聞いたよ。赤ちゃんおめでとう」
テーブル席のソファーに腰かけた愛は、久々の友人との再会に嬉しそうに笑みを浮かべた。
「ありがとう。そうね、高校卒業以来かしら。今日はね、愛にお願いがあって来たのよ」
「お願い? なに?」
彼女の真剣な眼差しに身構える愛。
「今って翔と付き合ってるの?」
「え? な、なんで知ってるの?」
その質問に驚く愛。
翔と付き合ったことなほとんどの人が知らないはずだ。
ましてや久々に再会した彼女が知る由がない。
「知ってるも何も、ずっと見てきたからわかるわよ。あたしだって翔のことが好きだった。でも、あなたは別の人と付き合った。なのに……! なんで……? なんで、今は翔と付き合ってるの?」
静かな店内には女性の悲痛な叫びが響き渡った。
「え……あーやん翔のこと好きだった……の?」
「そうよ。あなたと違って、あたしは翔だけが好きだった。だから、中学卒業する時に私から告白したの。でも振られたわ。他に好きな人がいるからって」
「……」
友人からの告白に愛はただ目の前にいる彼女を見つめることしかできないでいた。
「いつしか彼は変わったわ。色んな女を取っかえ引っ変えするようになった。チャンスだと思った。もう一度告白したら今までの流れで付き合ってくれるかもしれないって。そしたら本当に付き合えたの。でも些細なことで別れちゃったけどね」
「そ、そうだったんだ……」
愛はただ一言そう返すので精一杯だ。
「今さ、なんでこんな話聞かされてるんだろって思ってるでしょ?」
「え、いや……そんなことは…」
図星を付かれた愛は言葉を濁す。
「本当あれよね。昔から自分のことは話さないで周りに合わせてばかり。あまりあなたのこと好きじゃなかったのよね」
先程よりも話すトーンが落ちた彼女。
それは怒りと苛立ちを含んだ声だった。
「え、あーやん……」
「(ずっと友達だと思ってたんだけどな……)」
あーやんの言葉に愛は視線を落とし、唇を噛み締めた。
「ねえ、翔を返してよっ!」
彼女は拳でテーブルを叩いた。
口いっぱいまで注がれたコーヒーがカップからこぼれるほどだ。
静かな店内に響き渡る音に、数組の客が一斉に振り向いた。
「返してってどういうこと?」
「そのままの意味よ。あたしには彼が必要なの」
そう言うと彼女、絢瀬菜奈(アヤセ ナナ)は自身のお腹に手を当て優しそうにさする。
「え……もしかして」
「そうよ。あたしのお腹には彼との子がいるの。だから返して。あたしはこの子を産みたいの。別れたけど、まだ翔のことは好きなの。だから大好きな彼との子を産みたいの!」
「あーやん……」
「ね、お願い」
「……ごめん。あたしも翔のことが好きだから、あたしからは別れられない」
愛は悲しい声を絞り出す。
だが、眼差しは真剣そのものだった。
「2人して同じこと言うのね。彼もあなたと別れる気はないみたいだから」
「え、翔も知ってるの?」
「ええ。けど、あなたと別れる気はないって言ってたわ。あなた達は酷いわね。ここに小さな命があるのに……無かったことにするなんて」
「無かったことにはしてないよ。ただ、翔とは別れたくないって言っただけで……」
菜奈の言葉に愛の心が揺れ、その声は震えていた。
「一緒よ。翔を返してくれないなら、この子も諦めるわ」
「え……それって……」
"小さな命"を天秤にかけるかのような脅しに、思わず言葉を失う愛。
「そう、そのままよ。ここに小さな命が生きてるの。だから、返してくれないかしら」
「……わ、分かった」
愛は涙を呑んで嫌々決断した。
「ありがとう。翔にはあなたから別れを切り出してちょうだいね。彼、あなたと別れる気ないみたいだから」
「……ちゃ、ちゃんと別れるから……少しだけ時間をください」
「時間?」
「最後に思い出が欲しいの」
「そんなのやめなさい。ただ、辛いだけよ。今別れるって決めたのだから、すぐ伝えるべきよ。返事楽しみにしてるわ」
涙ぐみながら、発せられた愛の言葉は菜奈にバッサリと切り捨てられた。
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