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第14話 お家デート
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それから1ヶ月後──
「翔、借りてきたDVD何見る?」
愛は翔の部屋に設置されているテレビとテーブルの間の床で借りてきたDVDを並べていた。
モノトーンで統一された翔の部屋は綺麗に整頓されていた。
「ホラーでも見るか?」
「見ないよ! じゃあ、これね!」
「(あたしが怖いの苦手だって知ってるのに酷い)」
愛は借りてきたDVDの中から一番見たかったものを手に取る。
「何見るんだ?」
「意地悪な人には教えません」
無愛想に言い放った愛は翔に背を向け、デッキにDVDを入れた。
「もう言わないから、ごめんな」
「別に怒ってないよ。この映画はお母さん達が学生の時にやってたみたいで、おすすめされたんだ」
愛はそう言うと立ち上がり、ソファーを背にテーブルの前に座った。
「母さん達が学生の時じゃ、20年以上前の映画か」
「そうだね。ん? なに?」
もの言いたげな目つきをする翔に愛は問いかける。
「なんで下で見るんだよ。こっち来いよ」
「なんか、こっちの方が落ち着くんだよね」
「へぇ。俺は落ち着かないな」
「え、な……ちょっと」
翔は腰を浮かせると愛の脇の下に手を入れる。
「隣に来ないのが悪い。ここで見ろよ」
そのまま持ち上げられた愛は翔の足の間にすっぽりと収まる。
「あたしは落ち着かないんだけど」
「ほら、始まるぞ」
「(背中に翔の胸板が……こんなの落ち着いて見られないよ……)」
愛の緊張を他所にDVDが再生され、映画「どんな君も好きだよ」が始まった。
♢♢♢
付き合って3年になる夢乃(ユメノ)と幸哉(ユキヤ)。
突然、幸哉と連絡が付かなくなり、夢乃は心配で自宅を訪れた。
公園で幸哉の母から事実を聞いた夢乃は泣き崩れる。
幸哉は交通事故で記憶を失っていた──
記憶を失った幸哉に対し、夢乃は友達として接し、恋人ということは伏せることにした。
徐々に笑顔を見せるようになった幸哉。
ある日、夢乃の妹、綾乃(アヤノ)と幸哉が出会うことに。
とある共通点があり、2人の仲は──そして、付き合うことに……。
ある日を境に幸哉は記憶を取り戻すこととなる。
その時、幸哉がとった行動とは……。
──という内容だ。
♢♢♢
DVDを見終わった翔の部屋では愛のすすり泣く声だけが聞こえていた。
「愛、お前泣きすぎだろ」
翔は背後から愛の顔を覗き込むと驚愕した。
「だ、だって……」
翔はそう言うと後ろから愛を抱きしめる。
小柄な愛は翔の腕の中に包まれた。
「大丈夫。俺は居なくならないから。お前から別れを切り出されない限り、ずーっと一緒だ」
座った際、愛と翔身長差はちょうど頭一個分。
愛の頭にはちょうどいい具合に翔の顎が乗せられていた。
「あたしだって……ずっと一緒だよ」
「愛……好きだよ」
翔は背後から覗き込むような形で愛の唇に自分のそれを重ねた。
「可愛い」
唇が離れ照れる愛に対し翔はそう口にした。
「あ……翔、電話鳴ってるよ」
突然、テーブルの上に置いてある翔のスマホから着信音が鳴り響いた。
「ん? あー大丈夫」
翔は愛を左手で抱きしめたまま腰を浮かせると、テーブルの上に置いてあるスマホに右手を伸ばした。
だが、スマホの画面を確認した翔は電話に出ることはなかった。
「いいの?」
不思議に思った愛は問いかけた。
「悪い……元カノからだ……」
翔はソファーに座り直すと、掠れた声を絞り出した。
「元カノ? よく連絡くるの?」
「ああ。別れてからも連絡くる。けど、ちゃんと断ってるから」
「翔……ありがとう」
愛は嬉しさからか、翔に背中を預けると安心仕切ったような顔をした。
「あのさ……」
「なに?」
「あの、高校の時、俺……色んなやつと付き合ってたじゃん」
翔はしきりに言葉を探し、やっとの思いで絞り出した。
「うん」
「愛が……他のやつと付き合ったのが悔しくて色んなやつと付き合ってた。ごめん」
翔が頭を下げれば愛のそれにコツンと軽く音を立てぶつかる。
愛を抱きしめる翔の手は微かに震えていた。
「え、そうだったの?」
「これだけは信じて。誰でも良かったんじゃない。俺はずっと昔から愛が好きだ。だから、連絡先ちゃんと消すから安心してな」
「安心? 別に消さなくてもいいよ。翔は浮気しないって信じてるから」
「愛……俺は愛だけだから」
翔は再び、愛を強く抱きしめた。
──この時までは、楽しくてドキドキする日々がずっと続くと思ってた。
まさか、あんな決断を迫られるとは愛は思ってもみなかっただろう。
それから1ヶ月後──
「翔、借りてきたDVD何見る?」
愛は翔の部屋に設置されているテレビとテーブルの間の床で借りてきたDVDを並べていた。
モノトーンで統一された翔の部屋は綺麗に整頓されていた。
「ホラーでも見るか?」
「見ないよ! じゃあ、これね!」
「(あたしが怖いの苦手だって知ってるのに酷い)」
愛は借りてきたDVDの中から一番見たかったものを手に取る。
「何見るんだ?」
「意地悪な人には教えません」
無愛想に言い放った愛は翔に背を向け、デッキにDVDを入れた。
「もう言わないから、ごめんな」
「別に怒ってないよ。この映画はお母さん達が学生の時にやってたみたいで、おすすめされたんだ」
愛はそう言うと立ち上がり、ソファーを背にテーブルの前に座った。
「母さん達が学生の時じゃ、20年以上前の映画か」
「そうだね。ん? なに?」
もの言いたげな目つきをする翔に愛は問いかける。
「なんで下で見るんだよ。こっち来いよ」
「なんか、こっちの方が落ち着くんだよね」
「へぇ。俺は落ち着かないな」
「え、な……ちょっと」
翔は腰を浮かせると愛の脇の下に手を入れる。
「隣に来ないのが悪い。ここで見ろよ」
そのまま持ち上げられた愛は翔の足の間にすっぽりと収まる。
「あたしは落ち着かないんだけど」
「ほら、始まるぞ」
「(背中に翔の胸板が……こんなの落ち着いて見られないよ……)」
愛の緊張を他所にDVDが再生され、映画「どんな君も好きだよ」が始まった。
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付き合って3年になる夢乃(ユメノ)と幸哉(ユキヤ)。
突然、幸哉と連絡が付かなくなり、夢乃は心配で自宅を訪れた。
公園で幸哉の母から事実を聞いた夢乃は泣き崩れる。
幸哉は交通事故で記憶を失っていた──
記憶を失った幸哉に対し、夢乃は友達として接し、恋人ということは伏せることにした。
徐々に笑顔を見せるようになった幸哉。
ある日、夢乃の妹、綾乃(アヤノ)と幸哉が出会うことに。
とある共通点があり、2人の仲は──そして、付き合うことに……。
ある日を境に幸哉は記憶を取り戻すこととなる。
その時、幸哉がとった行動とは……。
──という内容だ。
♢♢♢
DVDを見終わった翔の部屋では愛のすすり泣く声だけが聞こえていた。
「愛、お前泣きすぎだろ」
翔は背後から愛の顔を覗き込むと驚愕した。
「だ、だって……」
翔はそう言うと後ろから愛を抱きしめる。
小柄な愛は翔の腕の中に包まれた。
「大丈夫。俺は居なくならないから。お前から別れを切り出されない限り、ずーっと一緒だ」
座った際、愛と翔身長差はちょうど頭一個分。
愛の頭にはちょうどいい具合に翔の顎が乗せられていた。
「あたしだって……ずっと一緒だよ」
「愛……好きだよ」
翔は背後から覗き込むような形で愛の唇に自分のそれを重ねた。
「可愛い」
唇が離れ照れる愛に対し翔はそう口にした。
「あ……翔、電話鳴ってるよ」
突然、テーブルの上に置いてある翔のスマホから着信音が鳴り響いた。
「ん? あー大丈夫」
翔は愛を左手で抱きしめたまま腰を浮かせると、テーブルの上に置いてあるスマホに右手を伸ばした。
だが、スマホの画面を確認した翔は電話に出ることはなかった。
「いいの?」
不思議に思った愛は問いかけた。
「悪い……元カノからだ……」
翔はソファーに座り直すと、掠れた声を絞り出した。
「元カノ? よく連絡くるの?」
「ああ。別れてからも連絡くる。けど、ちゃんと断ってるから」
「翔……ありがとう」
愛は嬉しさからか、翔に背中を預けると安心仕切ったような顔をした。
「あのさ……」
「なに?」
「あの、高校の時、俺……色んなやつと付き合ってたじゃん」
翔はしきりに言葉を探し、やっとの思いで絞り出した。
「うん」
「愛が……他のやつと付き合ったのが悔しくて色んなやつと付き合ってた。ごめん」
翔が頭を下げれば愛のそれにコツンと軽く音を立てぶつかる。
愛を抱きしめる翔の手は微かに震えていた。
「え、そうだったの?」
「これだけは信じて。誰でも良かったんじゃない。俺はずっと昔から愛が好きだ。だから、連絡先ちゃんと消すから安心してな」
「安心? 別に消さなくてもいいよ。翔は浮気しないって信じてるから」
「愛……俺は愛だけだから」
翔は再び、愛を強く抱きしめた。
──この時までは、楽しくてドキドキする日々がずっと続くと思ってた。
まさか、あんな決断を迫られるとは愛は思ってもみなかっただろう。
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