12 / 20
第12話 イルカショー
しおりを挟む「それで?」
「うーん、何が...かな?」
ヘラヘラと笑う目の前の青年に、ついついこめかみがピクピクしてしまいます。
平民を装う為に地味な色合いのチュニックやズボンを着たのは分かりますが、生地が上等過ぎますよ?
髪もサラサラ過ぎますし、肌も白く綺麗過ぎます。
ハァー、平民を装うのであれば1日くらいお風呂に入らずに来てほしかったですわ。
護衛の方々も冒険者風の出で立ちにはしておりましたが立ち振舞いが下手くそ過ぎて、近所の皆様にもバレバレでした。
馬鹿なの?と、ついつい声に出してしまいましたもの...ウフフ、ごめんなさいね?
「ウフフ、そ・れ・で?...このようなあばら家に何用でしょうか?
クリストテルト王太子殿下?」
「ハッハッハッ!
たしかに似てるとは言われるが、私は」
「クリストテルト王太子殿下?
私達平民は、王族様やお貴族様のように暇ではありませんのよ?」
腹の探り合いなんて面倒臭いので、さっさと本題に入ってくださいませ!
持ってきておられるのでしょう?
「......フゥー、分かったよ。
ベル嬢、我が妻より手紙を預かって来たのだが、今すぐここで読んでもらえるかな?」
「まぁ!クリストテルト王太子殿下の奥様であるクリスフィア王太子妃様からのお手紙ですか?
それならば早急に読ませていただきますわ!
あぁ、この家には遮音・消臭・遮蔽などなど様々な効果のある結界を張っておりますので、声などをお気になさらずとも大丈夫ですわ。
クリスフィア王太子妃様からお聞きではありませんでしたか?」
「...................うん。
キイテナカッタシ、シラナカッタナー。」
やはり、クリスフィア王太子妃様からのお手紙をお持ちでしたのね?
この前の密偵さんの報告を聞いて、当事者でもあるクリストテルト王太子殿下をこちらに寄越してくださったのでしょうけれど、クリスフィア王太子妃様はどうなさるおつもりなのでしょうか?
中身を読むのが楽しみですわ!
あらあら、クリスフィア王太子妃様ったら、ご夫君にも話しておられなかったのね?
してやったりという悪戯なお顔をして微笑む、クリスフィア王太子妃様が目に浮かぶわ。
「おーじしゃま!
おちゃちゃでしゅ!
あとー、おぁしになぃましゅ!」
「クリストテルト王太子殿下!
こちら、お茶にですわ!
それと、お茶菓子になりますわ!」
「う、うん...ありがとう。」
「クィシュでしゅ!」
「この子はクリスですわ。
私はリルと申しますの。
一応自己紹介はいたしますけれど、別に覚えていただかなくとも大丈夫ですわ。」
「そうか、クリス君とリル嬢だね...よろしく。」
リルったら、よそ行きの猫を5~6匹背負ってるわね...とっても可愛いわ。
でも、お貴族様とか権力者とかが嫌いだから...毒を撒き散らしてるわね。
でも、しすぎなくらいに警戒するのは女の子としてはとても良いことだからやめさせませんけども!
それにしても、クリスは相変わらず人が大好きね。
まぁ、クリスフィア王太子妃様のご夫君だということが分かっているからというのもありそうだけど...護衛の方々に突撃しないだけマシだと思おうかしら?
「はぁい!」
あ、ついに行ったわね...護衛の方々に抱っこを強請りに...。
両手を上にあげてピョンコピョンコと飛びながらクリスに抱っこを強請られて、戸惑う護衛の方々が面白いわ。
ウフフ、人懐っこくってとっても可愛いでしょう?
出来れば、抱っこしてあげてもらえません?
私やリルでは、長時間抱っこしてあげられないんです。
「ウフフ、クリストテルト王太子殿下は、そちらが放たれました密偵さんを引き取られますか?」
「えっと...こちらから放ったのはそちらのミュゼリアだけだから、王宮が放ったのかもしれないな...うーん、その密偵達にはどういう処置を?」
「薬漬けにしてありますわ。」
「え...?!」
「こちらをジロジロと無遠慮に見てこられてとても不快でしたから、捕獲させていただいて媚薬の試作品を試していただいておりますの...皆様楽しそうにお過ごしですわ。」
リルったら、わざとね?
そんな、誤解を招くような言い方をするなんて...ほら、クリストテルト王太子殿下の顔が青褪めているじゃない。
流石はリルだわ!
*
「うーん、何が...かな?」
ヘラヘラと笑う目の前の青年に、ついついこめかみがピクピクしてしまいます。
平民を装う為に地味な色合いのチュニックやズボンを着たのは分かりますが、生地が上等過ぎますよ?
髪もサラサラ過ぎますし、肌も白く綺麗過ぎます。
ハァー、平民を装うのであれば1日くらいお風呂に入らずに来てほしかったですわ。
護衛の方々も冒険者風の出で立ちにはしておりましたが立ち振舞いが下手くそ過ぎて、近所の皆様にもバレバレでした。
馬鹿なの?と、ついつい声に出してしまいましたもの...ウフフ、ごめんなさいね?
「ウフフ、そ・れ・で?...このようなあばら家に何用でしょうか?
クリストテルト王太子殿下?」
「ハッハッハッ!
たしかに似てるとは言われるが、私は」
「クリストテルト王太子殿下?
私達平民は、王族様やお貴族様のように暇ではありませんのよ?」
腹の探り合いなんて面倒臭いので、さっさと本題に入ってくださいませ!
持ってきておられるのでしょう?
「......フゥー、分かったよ。
ベル嬢、我が妻より手紙を預かって来たのだが、今すぐここで読んでもらえるかな?」
「まぁ!クリストテルト王太子殿下の奥様であるクリスフィア王太子妃様からのお手紙ですか?
それならば早急に読ませていただきますわ!
あぁ、この家には遮音・消臭・遮蔽などなど様々な効果のある結界を張っておりますので、声などをお気になさらずとも大丈夫ですわ。
クリスフィア王太子妃様からお聞きではありませんでしたか?」
「...................うん。
キイテナカッタシ、シラナカッタナー。」
やはり、クリスフィア王太子妃様からのお手紙をお持ちでしたのね?
この前の密偵さんの報告を聞いて、当事者でもあるクリストテルト王太子殿下をこちらに寄越してくださったのでしょうけれど、クリスフィア王太子妃様はどうなさるおつもりなのでしょうか?
中身を読むのが楽しみですわ!
あらあら、クリスフィア王太子妃様ったら、ご夫君にも話しておられなかったのね?
してやったりという悪戯なお顔をして微笑む、クリスフィア王太子妃様が目に浮かぶわ。
「おーじしゃま!
おちゃちゃでしゅ!
あとー、おぁしになぃましゅ!」
「クリストテルト王太子殿下!
こちら、お茶にですわ!
それと、お茶菓子になりますわ!」
「う、うん...ありがとう。」
「クィシュでしゅ!」
「この子はクリスですわ。
私はリルと申しますの。
一応自己紹介はいたしますけれど、別に覚えていただかなくとも大丈夫ですわ。」
「そうか、クリス君とリル嬢だね...よろしく。」
リルったら、よそ行きの猫を5~6匹背負ってるわね...とっても可愛いわ。
でも、お貴族様とか権力者とかが嫌いだから...毒を撒き散らしてるわね。
でも、しすぎなくらいに警戒するのは女の子としてはとても良いことだからやめさせませんけども!
それにしても、クリスは相変わらず人が大好きね。
まぁ、クリスフィア王太子妃様のご夫君だということが分かっているからというのもありそうだけど...護衛の方々に突撃しないだけマシだと思おうかしら?
「はぁい!」
あ、ついに行ったわね...護衛の方々に抱っこを強請りに...。
両手を上にあげてピョンコピョンコと飛びながらクリスに抱っこを強請られて、戸惑う護衛の方々が面白いわ。
ウフフ、人懐っこくってとっても可愛いでしょう?
出来れば、抱っこしてあげてもらえません?
私やリルでは、長時間抱っこしてあげられないんです。
「ウフフ、クリストテルト王太子殿下は、そちらが放たれました密偵さんを引き取られますか?」
「えっと...こちらから放ったのはそちらのミュゼリアだけだから、王宮が放ったのかもしれないな...うーん、その密偵達にはどういう処置を?」
「薬漬けにしてありますわ。」
「え...?!」
「こちらをジロジロと無遠慮に見てこられてとても不快でしたから、捕獲させていただいて媚薬の試作品を試していただいておりますの...皆様楽しそうにお過ごしですわ。」
リルったら、わざとね?
そんな、誤解を招くような言い方をするなんて...ほら、クリストテルト王太子殿下の顔が青褪めているじゃない。
流石はリルだわ!
*
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
サクラブストーリー
桜庭かなめ
恋愛
高校1年生の速水大輝には、桜井文香という同い年の幼馴染の女の子がいる。美人でクールなので、高校では人気のある生徒だ。幼稚園のときからよく遊んだり、お互いの家に泊まったりする仲。大輝は小学生のときからずっと文香に好意を抱いている。
しかし、中学2年生のときに友人からかわれた際に放った言葉で文香を傷つけ、彼女とは疎遠になってしまう。高校生になった今、挨拶したり、軽く話したりするようになったが、かつてのような関係には戻れていなかった。
桜も咲く1年生の修了式の日、大輝は文香が親の転勤を理由に、翌日に自分の家に引っ越してくることを知る。そのことに驚く大輝だが、同居をきっかけに文香と仲直りし、恋人として付き合えるように頑張ろうと決意する。大好物を作ってくれたり、バイトから帰るとおかえりと言ってくれたりと、同居生活を送る中で文香との距離を少しずつ縮めていく。甘くて温かな春の同居&学園青春ラブストーリー。
※特別編7-球技大会と夏休みの始まり編-が完結しました!(2024.5.30)
※お気に入り登録や感想をお待ちしております。
忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる