ごめん、大好きだよ。

織山青沙

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第12話 イルカショー

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「それで?」

「うーん、何が...かな?」

ヘラヘラと笑う目の前の青年に、ついついこめかみがピクピクしてしまいます。
平民を装う為に地味な色合いのチュニックやズボンを着たのは分かりますが、生地が上等過ぎますよ?
髪もサラサラ過ぎますし、肌も白く綺麗過ぎます。
ハァー、平民を装うのであれば1日くらいお風呂に入らずに来てほしかったですわ。
護衛の方々も冒険者風の出で立ちにはしておりましたが立ち振舞いが下手くそ過ぎて、近所の皆様にもバレバレでした。
馬鹿なの?と、ついつい声に出してしまいましたもの...ウフフ、ごめんなさいね?

「ウフフ、そ・れ・で?...このようなあばら家に何用でしょうか?
クリストテルト王太子殿下?」

「ハッハッハッ!
たしかに似てるとは言われるが、私は」

「クリストテルト王太子殿下?
私達平民は、王族様やお貴族様のように暇ではありませんのよ?」

腹の探り合いなんて面倒臭いので、さっさと本題に入ってくださいませ!
持ってきておられるのでしょう?

「......フゥー、分かったよ。
ベル嬢、我が妻より手紙を預かって来たのだが、今すぐここで読んでもらえるかな?」

「まぁ!クリストテルト王太子殿下の奥様であるクリスフィア王太子妃様からのお手紙ですか?
それならば早急に読ませていただきますわ!

あぁ、この家には遮音・消臭・遮蔽などなど様々な効果のある結界を張っておりますので、声などをお気になさらずとも大丈夫ですわ。
クリスフィア王太子妃様からお聞きではありませんでしたか?」

「...................うん。
キイテナカッタシ、シラナカッタナー。」

やはり、クリスフィア王太子妃様からのお手紙をお持ちでしたのね?
この前の密偵さんの報告を聞いて、当事者でもあるクリストテルト王太子殿下をこちらに寄越してくださったのでしょうけれど、クリスフィア王太子妃様はどうなさるおつもりなのでしょうか?
中身を読むのが楽しみですわ!

あらあら、クリスフィア王太子妃様ったら、ご夫君にも話しておられなかったのね?
してやったりという悪戯なお顔をして微笑む、クリスフィア王太子妃様が目に浮かぶわ。

「おーじしゃま!
おちゃちゃでしゅ!
あとー、おぁしになぃましゅ!」

「クリストテルト王太子殿下!
こちら、お茶にですわ!
それと、お茶菓子になりますわ!」

「う、うん...ありがとう。」

「クィシュでしゅ!」

「この子はクリスですわ。
私はリルと申しますの。
一応自己紹介はいたしますけれど、別に覚えていただかなくとも大丈夫ですわ。」

「そうか、クリス君とリル嬢だね...よろしく。」

リルったら、よそ行きの猫を5~6匹背負ってるわね...とっても可愛いわ。
でも、お貴族様とか権力者とかが嫌いだから...毒を撒き散らしてるわね。
でも、しすぎなくらいに警戒するのは女の子としてはとても良いことだからやめさせませんけども!

それにしても、クリスは相変わらず人が大好きね。
まぁ、クリスフィア王太子妃様のご夫君だということが分かっているからというのもありそうだけど...護衛の方々に突撃しないだけマシだと思おうかしら?

「はぁい!」

あ、ついに行ったわね...護衛の方々に抱っこを強請りに...。
両手を上にあげてピョンコピョンコと飛びながらクリスに抱っこを強請られて、戸惑う護衛の方々が面白いわ。
ウフフ、人懐っこくってとっても可愛いでしょう?
出来れば、抱っこしてあげてもらえません?
私やリルでは、長時間抱っこしてあげられないんです。

「ウフフ、クリストテルト王太子殿下は、そちらが放たれました密偵さんを引き取られますか?」

「えっと...こちらから放ったのはそちらのミュゼリアだけだから、王宮が放ったのかもしれないな...うーん、その密偵達にはどういう処置を?」

「薬漬けにしてありますわ。」

「え...?!」

「こちらをジロジロと無遠慮に見てこられてとても不快でしたから、捕獲させていただいて媚薬の試作品を試していただいておりますの...皆様楽しそうにお過ごしですわ。」

リルったら、わざとね?
そんな、誤解を招くような言い方をするなんて...ほら、クリストテルト王太子殿下の顔が青褪めているじゃない。
流石はリルだわ!





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