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第10話 お化け屋敷
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入り口でお化け屋敷の中で必要となる御札を受け取り、中へ入って行く2人。
暗幕を抜けると途端に辺りは暗くなり、怪しげなぼんやりとした光だけが浮かび上がっていた。
「今日は楽しむんだろ?」
「お化け屋敷は怖いだけだよ!」
愛は恐怖から握られた手に力を入れる。
「大丈夫。俺がいるから」
「絶対離さないでよ……」
「ああ」
平然と答えた翔の耳が真っ赤に染まっていたが、辺りが暗かった為、愛は知る由もなかった。
「……うわっ!」
「大丈夫だよ。それ鏡。写ってるの自分だから……あ、他のも写ってたか」
突き当たりの壁に設置されていたのは大きな鏡。
愛はそこに自分の顔が写り驚いたが、その後そこには愛と翔以外の白い影が入り込んできた。
「き……きゃー!!」
愛は驚き、翔にしがみつく。
「おっと……! 大丈夫?」
どうにかバランスを取った翔は愛の頭を優しく撫でた。
「大丈夫じゃないよっ……。早く出る、やっぱり怖いよっ……」
「ごめんごめん。はい、行こう」
お化け屋敷に入る時は手首を掴んでいた翔。
今度はしっかりと手を繋ぎ歩き出した。
「うん」
繋がれた手を握り返す愛。
「ひっ! 冷たっ! な、なんか顔に……」
「あーこんにゃくだ。大丈夫大丈夫」
愛が通った場所には四角い物体が天井から紐で吊るされていた。
「もう出れる?」
「もうすぐじゃないか? あ、ほら受付で言われたお墓がある」
翔が指さす場所には不気味な雰囲気のお墓とその横に箱が置いてあった。
「ほ、ほんとだ。御札だっけ?」
「これをこの入れ物に入れたら……何も起こらないのか?」
受付で案内された通り、翔は箱の中に御札を入れるが──何かが起こることはなかった。
「なんで、何か起こるのよ! 早くでよ」
出口からは薄光が差し込んでいた。
愛はその光目掛けて翔の手を引っ張り歩いた。
「あ、ああ」
「はぁー、怖かったっ……」
「お疲れさん」
「もう絶対に入らないからね」
「(怖すぎた……序盤から翔に抱きついちゃったし、恥ずかしすぎる。あ……手、いつ離したらいいんだろ? )」
完全に手を離すタイミングを見失った愛は繋がれた手に視線を移す。
「(なんか翔と手繋いでると安心するな……って何考えてるだろ)」
翔の横顔を見つめていた愛は、急に恥ずかしくなり、視線を逸らす。
愛は結局手を離すことはできず、そのまま2人は歩き始めた。
***
「よし、最後にあれ乗るか」
「観覧車! 乗ろう乗ろう!」
最後は観覧車に乗ることになった2人。
「(観覧車ってこんなに緊張するものだっけ? さっきから心臓がうるさい)」
あまり混んでいなかった為、数分でゴンドラに乗り込むことができた2人。
愛は、お化け屋敷を出たあとから原因不明のドキドキに悩まされていた。
密室に2人だけという状況が落ち着かないのか外をキョロキョロとする愛。
翔はそんな愛をただ見つめていた。
暗幕を抜けると途端に辺りは暗くなり、怪しげなぼんやりとした光だけが浮かび上がっていた。
「今日は楽しむんだろ?」
「お化け屋敷は怖いだけだよ!」
愛は恐怖から握られた手に力を入れる。
「大丈夫。俺がいるから」
「絶対離さないでよ……」
「ああ」
平然と答えた翔の耳が真っ赤に染まっていたが、辺りが暗かった為、愛は知る由もなかった。
「……うわっ!」
「大丈夫だよ。それ鏡。写ってるの自分だから……あ、他のも写ってたか」
突き当たりの壁に設置されていたのは大きな鏡。
愛はそこに自分の顔が写り驚いたが、その後そこには愛と翔以外の白い影が入り込んできた。
「き……きゃー!!」
愛は驚き、翔にしがみつく。
「おっと……! 大丈夫?」
どうにかバランスを取った翔は愛の頭を優しく撫でた。
「大丈夫じゃないよっ……。早く出る、やっぱり怖いよっ……」
「ごめんごめん。はい、行こう」
お化け屋敷に入る時は手首を掴んでいた翔。
今度はしっかりと手を繋ぎ歩き出した。
「うん」
繋がれた手を握り返す愛。
「ひっ! 冷たっ! な、なんか顔に……」
「あーこんにゃくだ。大丈夫大丈夫」
愛が通った場所には四角い物体が天井から紐で吊るされていた。
「もう出れる?」
「もうすぐじゃないか? あ、ほら受付で言われたお墓がある」
翔が指さす場所には不気味な雰囲気のお墓とその横に箱が置いてあった。
「ほ、ほんとだ。御札だっけ?」
「これをこの入れ物に入れたら……何も起こらないのか?」
受付で案内された通り、翔は箱の中に御札を入れるが──何かが起こることはなかった。
「なんで、何か起こるのよ! 早くでよ」
出口からは薄光が差し込んでいた。
愛はその光目掛けて翔の手を引っ張り歩いた。
「あ、ああ」
「はぁー、怖かったっ……」
「お疲れさん」
「もう絶対に入らないからね」
「(怖すぎた……序盤から翔に抱きついちゃったし、恥ずかしすぎる。あ……手、いつ離したらいいんだろ? )」
完全に手を離すタイミングを見失った愛は繋がれた手に視線を移す。
「(なんか翔と手繋いでると安心するな……って何考えてるだろ)」
翔の横顔を見つめていた愛は、急に恥ずかしくなり、視線を逸らす。
愛は結局手を離すことはできず、そのまま2人は歩き始めた。
***
「よし、最後にあれ乗るか」
「観覧車! 乗ろう乗ろう!」
最後は観覧車に乗ることになった2人。
「(観覧車ってこんなに緊張するものだっけ? さっきから心臓がうるさい)」
あまり混んでいなかった為、数分でゴンドラに乗り込むことができた2人。
愛は、お化け屋敷を出たあとから原因不明のドキドキに悩まされていた。
密室に2人だけという状況が落ち着かないのか外をキョロキョロとする愛。
翔はそんな愛をただ見つめていた。
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