ごめん、大好きだよ。

織山青沙

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第7話 デートして

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「け、結婚!? ご、ごめん! そういうつもりで言ったんじゃなくて……」


愛は驚き、思わず立ち上がった。


「じゃあ、どういうつもりだよ?」


不貞腐れたように頬杖をつき愛を見つめる翔。


「た、ただ嬉しかっただけで……返事はもう少し待ってくだ……さい」


椅子に座り直した愛はそう言うと頭を下げた。


「やっぱり……。別にいいけどさ、俺はいつまでも待つから。愛……好きだよ」


申し訳なさそうに俯く愛に翔は優しく声をかける。

その声はどこか色っぽささえ感じさせた。


「あ、え、えっと……」
「可愛い。飯冷めちまうから食おうぜ」
「う、うん」


翔は何事もなかったかのように食べ始めた。


一方、愛はそれどころではなかった。

顔を真っ赤にした愛は、俯き料理を口にする。


「(美味しいはずなのに……緊張で味が分からない……。心臓うるさい……聞こえてないよね?)」
「……っ!」


愛が恐る恐る顔を上げれば再び翔と目が合い、視線を逸らす。


「また逸らした。さっきから目合わないし、合ったと思ったらすぐ逸らすし、もしかして意識してる?」
「……してない訳ないじゃん!」
「ま、まじ?」


愛の言葉に顔を真っ赤に染める翔。

それは愛にも負けないほど真っ赤だった。


「だ、だって……告白されれば、それは……気になるし」
「……」
「なんか言ってよ。恥ずかしいじゃん!」


無言の翔に愛は恥ずかしそうに声を上げる。


「あ、いや……悪い。想像以上に嬉しくて、こんなんで嬉しがってどうするんだよって感じだけどさ……」


翔は両手で顔を覆い、嬉しさを噛み締めていた。


「……っ!」
「(いや、何今のキュンって……あんまり見たことない翔だけど。うん、きっとそれでだ!)」


愛は自分にそう言い聞かせた。


「……なあ、どうしたら俺のこと好きになってくれんの?」


翔の消え入りそうな声に愛は視線を移す。


そこに居たのは悲しそうな表情を浮かべた翔だった。


「へっ!?」
「なあ……俺どうしたらいい?」
「あ……いや、翔はそのままでいいと思う。ただ、幼なじみっていう感覚が抜けないから……」
「じゃあさ、俺とデートして」


急に立ち上がった翔は先程とは打って変わって嬉しそうな表情をしていた。


「デート?」
「そう。場所の候補は……そうだな、遊園地、水族館、動物園、映画とショッピングあたりか? どれがいい?」


愛は指を折りながら数える翔をただ見つめていた。


あまりにも状況が急すぎて付いていけないでいた。


「どれがいいって言われても……」
「まあ、いいや。今度の日曜日行くからそれまでに考えとけよ」
「今度って……今日が木曜だから、あと3日しかないじゃん」
「ああ。空いてる?」
「空いてるけどさ……」
「じゃあ、決まりな」


翔はそう言うと肉じゃがを口に入れた。


「うまっ……」


愛は美味しそうに肉じゃがを食べる翔をただ見つめていた。




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