ごめん、大好きだよ。

織山青沙

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第5話 脈あり?

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電車が目の前を通り過ぎ、再び口を開く翔。


「あー、本当は愛の顔が見たくて……会いたくて大学に行った」


人目もはばからずそう告げた翔。

その頬はほんのり赤く染まっていた。


「えっ……?」
「だからっ!」


さらに赤くなる翔の頬。


「そ、それは分かった……分かったんだけどっ……」


愛の顔は真っ赤に染まっていた。


「何その反応? 脈あり?」


真っ赤に頬を染めた愛に翔は興奮気味に問いかける。


「え、あ……えっと……わかんないっ!」
「そっか。……まあ、俺はいつまでも待つから」
「ごめん……」
「気にしなくていいから。それより、こないだの落ち着いたか?」


落ち込む愛に翔は優しく声をかける。


「あ、うん。なんか翔に聞いてもらったからかな。そんなに辛くないんだ……本当にありがとうね」
「おう! それはよかった。俺で良ければ話くらいいつでも聞くからな」
「ありがとう」


ちょうど電車が到着し、乗り込む2人。

だが、その電車は平日のこの時間帯にはめずらしく混んでいた。

その頃には2人の頬の赤みはほとんど引いていた。

「愛、大丈夫か?」
「だ、大丈夫……っ!」


愛はあまりの近さに再び頬が熱くなるのが分かった。


「(ど、どうしよう。近い……というか、これって壁ドン?)」


そう、愛が現在進行形で翔にされているのは壁ドンだ。


満員電車で愛が潰されないよう、翔が咄嗟にとった行動。


「(うわっ! 近ぇ……いつまでこのままなんだ。てか、めっちゃくちゃいい匂いすんだけど。落ち着け……俺)」


翔は顔には出さなかったが内心ドキドキだった。


電車に揺られること10分──

2人は最寄りの駅に到着した。


「いつもあの電車乗ってんのか?」
「そうだよ。けど、今日はいつもより混んでたなぁ。なんかあったのかな?」
「心配だから、明日から迎えいく」
「え!? 大丈夫だよ。いつもはこんなに混んでないし、座れるから」


翔からの突然の提案に驚く愛。


「そうか。ならいいっか……」
「うん。でも、心配してくれてありがとう」
「ああ」


翔は恥ずかしそうに頭をかいた。


「じゃあな」
「バイバイ。ありがとうね」


そして、家の前に到着し、ほぼ同時に玄関のドアを開けた2人。


「愛、おかえりー。悪いんだけど、今日の夜ご飯、冬空(トア)の家で食べてもらえる?」
「翔の家?」


冬空とは翔の母親のことだ。


「そう。お母さん達これから出かけるから悪いんだけどお願いね」
「はーい」
「(翔の家でご飯久しぶりだな。翔ママ達にも会えるしちょっと楽しみ)」
「ふうちゃんそろそろ行くよ」


家の中から男性の呼び声が聞こえてきた。


「春くんちょっとだけ待ってて」
「(お母さんとお父さん本当仲良いな。
子供の前でも変わらず名前で呼びあってるし、あたし将来そういう家庭を築きたいな)」


愛は両親の仲睦まじい姿に笑みをこぼしていた。



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