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第2話 幼なじみの存在
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***
あれからどれくらい経っただろうか。
夜の公園には、すすり泣く声が聞こえていた。
「(え、誰か来る? 颯太!?)」
誰もいないはずの公園に足音が聞こえ、愛は涙を拭い顔を上げた。
「うわっ!! 誰かと思ったら愛かよ。急に顔上げるなよな」
目の前にいたのは先程別れた颯太ではなく、幼なじみの翔(ショウ)だった。
「翔……」
「こんな遅くに何やってるんだよ! ……って大丈夫か……?」
翔の怒鳴り声でなのか、知ってる人に会えた安堵からなのか、愛の瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちてきた。
さっきまでたくさん泣いて枯れたと思ってた涙。
どれだけ泣いてもぽっかりと空いた心がうまることはなかった──
大好きな彼氏、思い出すのは2年間の楽しかった思い出ばかりだ。
「……ご、ごめん。大丈夫……あ、あのね……」
「大丈夫じゃねぇだろ? 別に言いたくねぇなら言うな」
翔は愛の隣に座ると右手で背中をさすり、優しい言葉をかけた。
「あ……あのね、別れたのっ……」
ようやく落ち着きを取り戻した愛は話し始めた。
「別れた? 高2の終わりから付き合ってる奴?」
「うん……他に……す、好きな人が……できたんだって……っ」
途切れ途切れに話す愛の言葉を翔はただ何も言わずに聞いていた。
そして、全て話終わったのを確認すると口を開く。
「辛かったな。そんな奴、別れて正解だよ。ただ、愛が好きになった奴だから俺が否定するのは違うよな……」
「翔の言う通りかも……浮気されてたのかな? 誰からかLime来て……それから態度が変わったんだ……」
愛はその時のことを思い起こしていた。
「浮気してた、してないにしろ2年目の祝いやるんだったら途中で放り投げるなって話だよな」
「そう……ほんとそれっ! 自分は人にプレゼント渡すのに、あたしのは受け取ってくれなかっんだよっ!」
そして、悲しみは次第に怒りへと変わっていった──
「なあ、何あげるはずだったんだ?」
翔は愛が手に持つ紙袋に視線を移す。
「うん? えっとね……キーケース」
「へえ。それ、いらねぇなら貰ってもいい?」
「え、でも……いいの?」
「ああ。愛から貰えるもんなら何でも嬉しい」
そう言う翔の顔はどこか嬉しそうで、必死ににやけるのを抑えているようにも見えた。
「じゃあ、どうぞ」
「サンキュ。愛はあいつから何貰ったんだ?」
愛から小さめな紙袋を受け取った翔は中をチラッと覗き込むと口を開いた。
「……なんだろうね。いつか開けてみるよ……」
「そっか、そうだよな。今は開ける気になんねぇよな。もし、一人で開けるのが不安だったら俺呼んでいいからな」
落ち込む愛に翔は、優しい声色と共に頭を撫でた。
「翔……ありがとう」
「おう! ……けど、愛を振るなんて許さねぇな。……俺だったらこんな悲しい思いさせねぇのに……」
「えっ……? 翔?」
翔は最後の一言を濁した為、愛の耳には微かにしか届かなかった。
あれからどれくらい経っただろうか。
夜の公園には、すすり泣く声が聞こえていた。
「(え、誰か来る? 颯太!?)」
誰もいないはずの公園に足音が聞こえ、愛は涙を拭い顔を上げた。
「うわっ!! 誰かと思ったら愛かよ。急に顔上げるなよな」
目の前にいたのは先程別れた颯太ではなく、幼なじみの翔(ショウ)だった。
「翔……」
「こんな遅くに何やってるんだよ! ……って大丈夫か……?」
翔の怒鳴り声でなのか、知ってる人に会えた安堵からなのか、愛の瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちてきた。
さっきまでたくさん泣いて枯れたと思ってた涙。
どれだけ泣いてもぽっかりと空いた心がうまることはなかった──
大好きな彼氏、思い出すのは2年間の楽しかった思い出ばかりだ。
「……ご、ごめん。大丈夫……あ、あのね……」
「大丈夫じゃねぇだろ? 別に言いたくねぇなら言うな」
翔は愛の隣に座ると右手で背中をさすり、優しい言葉をかけた。
「あ……あのね、別れたのっ……」
ようやく落ち着きを取り戻した愛は話し始めた。
「別れた? 高2の終わりから付き合ってる奴?」
「うん……他に……す、好きな人が……できたんだって……っ」
途切れ途切れに話す愛の言葉を翔はただ何も言わずに聞いていた。
そして、全て話終わったのを確認すると口を開く。
「辛かったな。そんな奴、別れて正解だよ。ただ、愛が好きになった奴だから俺が否定するのは違うよな……」
「翔の言う通りかも……浮気されてたのかな? 誰からかLime来て……それから態度が変わったんだ……」
愛はその時のことを思い起こしていた。
「浮気してた、してないにしろ2年目の祝いやるんだったら途中で放り投げるなって話だよな」
「そう……ほんとそれっ! 自分は人にプレゼント渡すのに、あたしのは受け取ってくれなかっんだよっ!」
そして、悲しみは次第に怒りへと変わっていった──
「なあ、何あげるはずだったんだ?」
翔は愛が手に持つ紙袋に視線を移す。
「うん? えっとね……キーケース」
「へえ。それ、いらねぇなら貰ってもいい?」
「え、でも……いいの?」
「ああ。愛から貰えるもんなら何でも嬉しい」
そう言う翔の顔はどこか嬉しそうで、必死ににやけるのを抑えているようにも見えた。
「じゃあ、どうぞ」
「サンキュ。愛はあいつから何貰ったんだ?」
愛から小さめな紙袋を受け取った翔は中をチラッと覗き込むと口を開いた。
「……なんだろうね。いつか開けてみるよ……」
「そっか、そうだよな。今は開ける気になんねぇよな。もし、一人で開けるのが不安だったら俺呼んでいいからな」
落ち込む愛に翔は、優しい声色と共に頭を撫でた。
「翔……ありがとう」
「おう! ……けど、愛を振るなんて許さねぇな。……俺だったらこんな悲しい思いさせねぇのに……」
「えっ……? 翔?」
翔は最後の一言を濁した為、愛の耳には微かにしか届かなかった。
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