ごめん、大好きだよ。

織山青沙

文字の大きさ
上 下
2 / 20

第2話 幼なじみの存在

しおりを挟む
***


あれからどれくらい経っただろうか。

夜の公園には、すすり泣く声が聞こえていた。


「(え、誰か来る? 颯太!?)」


誰もいないはずの公園に足音が聞こえ、愛は涙を拭い顔を上げた。


「うわっ!! 誰かと思ったら愛かよ。急に顔上げるなよな」


目の前にいたのは先程別れた颯太ではなく、幼なじみの翔(ショウ)だった。


「翔……」
「こんな遅くに何やってるんだよ! ……って大丈夫か……?」


翔の怒鳴り声でなのか、知ってる人に会えた安堵からなのか、愛の瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちてきた。


さっきまでたくさん泣いて枯れたと思ってた涙。

どれだけ泣いてもぽっかりと空いた心がうまることはなかった──


大好きな彼氏、思い出すのは2年間の楽しかった思い出ばかりだ。


「……ご、ごめん。大丈夫……あ、あのね……」
「大丈夫じゃねぇだろ? 別に言いたくねぇなら言うな」


翔は愛の隣に座ると右手で背中をさすり、優しい言葉をかけた。


「あ……あのね、別れたのっ……」


ようやく落ち着きを取り戻した愛は話し始めた。


「別れた? 高2の終わりから付き合ってる奴?」
「うん……他に……す、好きな人が……できたんだって……っ」


途切れ途切れに話す愛の言葉を翔はただ何も言わずに聞いていた。

そして、全て話終わったのを確認すると口を開く。


「辛かったな。そんな奴、別れて正解だよ。ただ、愛が好きになった奴だから俺が否定するのは違うよな……」
「翔の言う通りかも……浮気されてたのかな? 誰からかLime来て……それから態度が変わったんだ……」


愛はその時のことを思い起こしていた。


「浮気してた、してないにしろ2年目の祝いやるんだったら途中で放り投げるなって話だよな」
「そう……ほんとそれっ! 自分は人にプレゼント渡すのに、あたしのは受け取ってくれなかっんだよっ!」


そして、悲しみは次第に怒りへと変わっていった──


「なあ、何あげるはずだったんだ?」


翔は愛が手に持つ紙袋に視線を移す。


「うん? えっとね……キーケース」
「へえ。それ、いらねぇなら貰ってもいい?」
「え、でも……いいの?」
「ああ。愛から貰えるもんなら何でも嬉しい」


そう言う翔の顔はどこか嬉しそうで、必死ににやけるのを抑えているようにも見えた。


「じゃあ、どうぞ」
「サンキュ。愛はあいつから何貰ったんだ?」


愛から小さめな紙袋を受け取った翔は中をチラッと覗き込むと口を開いた。


「……なんだろうね。いつか開けてみるよ……」
「そっか、そうだよな。今は開ける気になんねぇよな。もし、一人で開けるのが不安だったら俺呼んでいいからな」


落ち込む愛に翔は、優しい声色と共に頭を撫でた。


「翔……ありがとう」
「おう! ……けど、愛を振るなんて許さねぇな。……俺だったらこんな悲しい思いさせねぇのに……」
「えっ……? 翔?」


翔は最後の一言を濁した為、愛の耳には微かにしか届かなかった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

見栄を張る女

詩織
恋愛
付き合って4年の恋人がいる。このままだと結婚?とも思ってた。 そんな時にある女が割り込んでくる。

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

一目惚れ

詩織
恋愛
恋も長くしてない私に突然現れた彼。 でも彼は全く私に興味なかった

記憶がないなら私は……

しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。  *全4話

記憶のない貴方

詩織
恋愛
結婚して5年。まだ子供はいないけど幸せで充実してる。 そんな毎日にあるきっかけで全てがかわる

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

犠牲の恋

詩織
恋愛
私を大事にすると言ってくれた人は…、ずっと信じて待ってたのに… しかも私は悪女と噂されるように…

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

処理中です...