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第1話 突然の別れ
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「ごめん。別れよ」
「え……な、なんで? 何がいけなかった? 直すから……だからっ……別れるなんて言わないでよっ……」
それは付き合いはじめて2年目の記念日のことだった。
前触れもなく大好きな彼氏から言い放たれた言葉に彼女は泣き崩れた。
「ごめん。他に好きな人ができた。お前に直すとこなんてないよ。俺にとっては最高の彼女だった。だから、俺よりももっと良い奴見つけて」
「颯太(ソウタ)っ……」
颯太と呼ばれた男は振り返ることなくその場を後にした。
日が伸びてきたが、20時を過ぎれば辺りは真っ暗だ。
彼女は後を追いかけることも出来ず、ただその場に立ち竦んでいた。
***
遡ること2時間前──
「乾杯!」
男女2人の声と共に重なるグラスの音。
颯太とその彼女、桜井愛(サクライ アイ)は付き合って2年目のお祝いをしていた。
颯太の自宅のダイニングテーブルにはお惣菜や手作りの料理が広げられていた。
「うまっ!」
「ほんとっ! よかった……」
2人で料理を平らげ、暫くすると颯太のスマホからはLimeを知らせる音が聞こえてきた。
スマホの画面を見た颯太は頬を赤らめた。
「(え、なんで赤くなったの? 浮気じゃないよね……?)」
愛の脳裏には嫌なことが過ぎる。
嫌なことはどうしてこんなにも当たってしまうのか──
颯太はスマホを操作すると、口を開いた。
「なあ、ちょっと外でないか?」
「外?」
「……あ、ああ。あ、外寒いだろうから上着と荷物もな」
「うん、わかった」
愛は言われるがままに上着と荷物を手に取り颯太と共に、家を出た。
颯太の家から数分歩いた所に公園があり、2人はそこに入って行った。
桜が満開を迎え始めた3月下旬、19時を過ぎれば辺りは暗くなり、肌寒さも感じるこの季節。
颯太と愛は公園に設置されたベンチに腰掛けていた。
誰も居ない公園からは静かに揺れるブランコと草木の揺れる音だけが聞こえていた。
「急にどうしたの?」
沈黙に耐えられなくなった愛は口を開く。
「あ……いや、あ! そうだ。これ、プレゼント」
「ありがとう……っ! あたしもプレゼントあるんだ!」
「……ごめん、それは受け取れない」
カバンの中を漁る愛の耳に届いたのは、いつもより低めの感情のこもってない颯太の声だった。
「な、なんで……?」
「ごめん。別れよ」
そして、冒頭に戻る──
「え……な、なんで? 何がいけなかった? 直すから……だからっ……別れるなんて言わないでよっ……」
それは付き合いはじめて2年目の記念日のことだった。
前触れもなく大好きな彼氏から言い放たれた言葉に彼女は泣き崩れた。
「ごめん。他に好きな人ができた。お前に直すとこなんてないよ。俺にとっては最高の彼女だった。だから、俺よりももっと良い奴見つけて」
「颯太(ソウタ)っ……」
颯太と呼ばれた男は振り返ることなくその場を後にした。
日が伸びてきたが、20時を過ぎれば辺りは真っ暗だ。
彼女は後を追いかけることも出来ず、ただその場に立ち竦んでいた。
***
遡ること2時間前──
「乾杯!」
男女2人の声と共に重なるグラスの音。
颯太とその彼女、桜井愛(サクライ アイ)は付き合って2年目のお祝いをしていた。
颯太の自宅のダイニングテーブルにはお惣菜や手作りの料理が広げられていた。
「うまっ!」
「ほんとっ! よかった……」
2人で料理を平らげ、暫くすると颯太のスマホからはLimeを知らせる音が聞こえてきた。
スマホの画面を見た颯太は頬を赤らめた。
「(え、なんで赤くなったの? 浮気じゃないよね……?)」
愛の脳裏には嫌なことが過ぎる。
嫌なことはどうしてこんなにも当たってしまうのか──
颯太はスマホを操作すると、口を開いた。
「なあ、ちょっと外でないか?」
「外?」
「……あ、ああ。あ、外寒いだろうから上着と荷物もな」
「うん、わかった」
愛は言われるがままに上着と荷物を手に取り颯太と共に、家を出た。
颯太の家から数分歩いた所に公園があり、2人はそこに入って行った。
桜が満開を迎え始めた3月下旬、19時を過ぎれば辺りは暗くなり、肌寒さも感じるこの季節。
颯太と愛は公園に設置されたベンチに腰掛けていた。
誰も居ない公園からは静かに揺れるブランコと草木の揺れる音だけが聞こえていた。
「急にどうしたの?」
沈黙に耐えられなくなった愛は口を開く。
「あ……いや、あ! そうだ。これ、プレゼント」
「ありがとう……っ! あたしもプレゼントあるんだ!」
「……ごめん、それは受け取れない」
カバンの中を漁る愛の耳に届いたのは、いつもより低めの感情のこもってない颯太の声だった。
「な、なんで……?」
「ごめん。別れよ」
そして、冒頭に戻る──
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