ごめん、大好きだよ。

織山青沙

文字の大きさ
上 下
1 / 20

第1話 突然の別れ

しおりを挟む
「ごめん。別れよ」
「え……な、なんで? 何がいけなかった? 直すから……だからっ……別れるなんて言わないでよっ……」


それは付き合いはじめて2年目の記念日のことだった。


前触れもなく大好きな彼氏から言い放たれた言葉に彼女は泣き崩れた。


「ごめん。他に好きな人ができた。お前に直すとこなんてないよ。俺にとっては最高の彼女だった。だから、俺よりももっと良い奴見つけて」
「颯太(ソウタ)っ……」


颯太と呼ばれた男は振り返ることなくその場を後にした。

日が伸びてきたが、20時を過ぎれば辺りは真っ暗だ。


彼女は後を追いかけることも出来ず、ただその場に立ち竦んでいた。


***


遡ること2時間前──


「乾杯!」


男女2人の声と共に重なるグラスの音。

颯太とその彼女、桜井愛(サクライ アイ)は付き合って2年目のお祝いをしていた。

颯太の自宅のダイニングテーブルにはお惣菜や手作りの料理が広げられていた。


「うまっ!」
「ほんとっ! よかった……」


2人で料理を平らげ、暫くすると颯太のスマホからはLimeを知らせる音が聞こえてきた。

スマホの画面を見た颯太は頬を赤らめた。


「(え、なんで赤くなったの? 浮気じゃないよね……?)」


愛の脳裏には嫌なことが過ぎる。

嫌なことはどうしてこんなにも当たってしまうのか──


颯太はスマホを操作すると、口を開いた。


「なあ、ちょっと外でないか?」
「外?」
「……あ、ああ。あ、外寒いだろうから上着と荷物もな」
「うん、わかった」


愛は言われるがままに上着と荷物を手に取り颯太と共に、家を出た。

颯太の家から数分歩いた所に公園があり、2人はそこに入って行った。


桜が満開を迎え始めた3月下旬、19時を過ぎれば辺りは暗くなり、肌寒さも感じるこの季節。

颯太と愛は公園に設置されたベンチに腰掛けていた。

誰も居ない公園からは静かに揺れるブランコと草木の揺れる音だけが聞こえていた。


「急にどうしたの?」


沈黙に耐えられなくなった愛は口を開く。


「あ……いや、あ! そうだ。これ、プレゼント」
「ありがとう……っ! あたしもプレゼントあるんだ!」
「……ごめん、それは受け取れない」


カバンの中を漁る愛の耳に届いたのは、いつもより低めの感情のこもってない颯太の声だった。


「な、なんで……?」
「ごめん。別れよ」


そして、冒頭に戻る──

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。

ふまさ
恋愛
 いつものように屋敷まで迎えにきてくれた、幼馴染みであり、婚約者でもある伯爵令息──ミックに、フィオナが微笑む。 「おはよう、ミック。毎朝迎えに来なくても、学園ですぐに会えるのに」 「駄目だよ。もし学園に向かう途中できみに何かあったら、ぼくは悔やんでも悔やみきれない。傍にいれば、いつでも守ってあげられるからね」  ミックがフィオナを抱き締める。それはそれは、愛おしそうに。その様子に、フィオナの両親が見守るように穏やかに笑う。  ──対して。  傍に控える使用人たちに、笑顔はなかった。

見栄を張る女

詩織
恋愛
付き合って4年の恋人がいる。このままだと結婚?とも思ってた。 そんな時にある女が割り込んでくる。

最悪なお見合いと、執念の再会

当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。 しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。 それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。 相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。 最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

一目惚れ

詩織
恋愛
恋も長くしてない私に突然現れた彼。 でも彼は全く私に興味なかった

はずれのわたしで、ごめんなさい。

ふまさ
恋愛
 姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。  婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。  こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。  そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

比べないでください

わらびもち
恋愛
「ビクトリアはこうだった」 「ビクトリアならそんなことは言わない」  前の婚約者、ビクトリア様と比べて私のことを否定する王太子殿下。  もう、うんざりです。  そんなにビクトリア様がいいなら私と婚約解消なさってください――――……  

処理中です...