17 / 17
刺繍のハンカチ王子
しおりを挟む
「どっどう?アダム、美味しい??」
「……………………………………………………………………………………………………………………………………美味しいよ」
間が長すぎて涙が出そうだわ。
「違うんだイヴリン。まさかイヴリンの手作りクッキーが食べれるなんて思わなくて…あの頃のほろ苦い気持ちを思いだしていたんだ」
どうやら焦げたクッキーだと、バレたみたいね。
ハリエットが、「激苦なので、もう甘めのチョコレートをコーティングしてはどうでしょう?」とかいうものだから、甘めのチョコレートを塗りたくって誤魔化したつもりだった。けれどだめだったようね。
私だってアダムの為なら、ちゃんと作り直しなさいよと思うけど、既に23回目の挑戦だったのよ。もう精も根も尽きてしまったの…。
試食係のハリエットも、もう一生クッキーなんて見たくないですと涙目で言っていた…。
でもほろ苦いだなんて…。本当はハリエットのように激苦と言いたいのでしょうね。
けれどアダムは優しいからオブラートに包んで、ほろ苦いなんてお洒落な言葉で評価してくれたのね。
「それにしても私って、本当に料理の才能もなければ、お菓子作りの才能もないのね」
「イヴリン、料理も作ったの?」
「いいえ、作らなくても分かるわ」
まず玉ねぎの構造がよく分からないわ。あの茶色い皮はどうなっているの?いつも白い状態の物しか見た事ないのだけど。あれは剥くの?それとも削ぐのかしら?
そのレベルのヤバさよ。
「…イヴリンはそのままでも充分魅力的だ。君以上素敵な人なんていない」
穏やかな目で優しく微笑み、私の手を両手で包む。
「アダム…」
「あっ、そう言えば君にプレゼントがあるんだ。ちょうど良かった、クッキーのお礼が出来そうだ」
「えっ?本当?」
「これ、デイジーはもう戻らないけど…」
「まあっ…!!とてもそっくり!デイジーちゃんに黒猫ちゃんまで!なんて可愛らしいの!!とても手が込んで…これは職人にオーダーしてくれたのね??」
さっきまでのささくれ立った心が、このハンカチの愛らしさとアダムの優しさで潤い満たされていく。
「あ…その、シルクのハンカチは買った物なんだけど、刺繍はオレがしたんだ」
「へ?」
「気持ち悪いかな?男が裁縫なんて…」
「いえ、全然。むしろ尊敬するわ。」
笑えてるかな?いや真顔だわ私。
「良かった。ちょっと失敗しちゃったから、渡すか迷ったんだけど…」
このタイミングは鬼だと思うけれども、私の事を思いながら刺繍を施してくれたと思うと、心は満たされた。
でもどこを失敗したかなんて、プロでないと分からないレベルだわ。
「一生大切にするわ。アダム、貴方の事も」
私はハンカチを胸に抱く。大事に大事に。
「…イブリン…」
「愛しているわ、アダム」
「初めて…言ってくれたね…」
目を見開き、顔を赤らめるアダム。目なんてウルウルさせている。
「そうだったかしら」
少し照れてしまう。
「オレ、もっと頑張ってイブリンに相応しい男になるから!」
あら?変なスイッチを押してしまったのかしら?
「……………………………………………………………………………………………………………………………………美味しいよ」
間が長すぎて涙が出そうだわ。
「違うんだイヴリン。まさかイヴリンの手作りクッキーが食べれるなんて思わなくて…あの頃のほろ苦い気持ちを思いだしていたんだ」
どうやら焦げたクッキーだと、バレたみたいね。
ハリエットが、「激苦なので、もう甘めのチョコレートをコーティングしてはどうでしょう?」とかいうものだから、甘めのチョコレートを塗りたくって誤魔化したつもりだった。けれどだめだったようね。
私だってアダムの為なら、ちゃんと作り直しなさいよと思うけど、既に23回目の挑戦だったのよ。もう精も根も尽きてしまったの…。
試食係のハリエットも、もう一生クッキーなんて見たくないですと涙目で言っていた…。
でもほろ苦いだなんて…。本当はハリエットのように激苦と言いたいのでしょうね。
けれどアダムは優しいからオブラートに包んで、ほろ苦いなんてお洒落な言葉で評価してくれたのね。
「それにしても私って、本当に料理の才能もなければ、お菓子作りの才能もないのね」
「イヴリン、料理も作ったの?」
「いいえ、作らなくても分かるわ」
まず玉ねぎの構造がよく分からないわ。あの茶色い皮はどうなっているの?いつも白い状態の物しか見た事ないのだけど。あれは剥くの?それとも削ぐのかしら?
そのレベルのヤバさよ。
「…イヴリンはそのままでも充分魅力的だ。君以上素敵な人なんていない」
穏やかな目で優しく微笑み、私の手を両手で包む。
「アダム…」
「あっ、そう言えば君にプレゼントがあるんだ。ちょうど良かった、クッキーのお礼が出来そうだ」
「えっ?本当?」
「これ、デイジーはもう戻らないけど…」
「まあっ…!!とてもそっくり!デイジーちゃんに黒猫ちゃんまで!なんて可愛らしいの!!とても手が込んで…これは職人にオーダーしてくれたのね??」
さっきまでのささくれ立った心が、このハンカチの愛らしさとアダムの優しさで潤い満たされていく。
「あ…その、シルクのハンカチは買った物なんだけど、刺繍はオレがしたんだ」
「へ?」
「気持ち悪いかな?男が裁縫なんて…」
「いえ、全然。むしろ尊敬するわ。」
笑えてるかな?いや真顔だわ私。
「良かった。ちょっと失敗しちゃったから、渡すか迷ったんだけど…」
このタイミングは鬼だと思うけれども、私の事を思いながら刺繍を施してくれたと思うと、心は満たされた。
でもどこを失敗したかなんて、プロでないと分からないレベルだわ。
「一生大切にするわ。アダム、貴方の事も」
私はハンカチを胸に抱く。大事に大事に。
「…イブリン…」
「愛しているわ、アダム」
「初めて…言ってくれたね…」
目を見開き、顔を赤らめるアダム。目なんてウルウルさせている。
「そうだったかしら」
少し照れてしまう。
「オレ、もっと頑張ってイブリンに相応しい男になるから!」
あら?変なスイッチを押してしまったのかしら?
24
お気に入りに追加
2,710
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」完結
まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。
コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。
「アリシア・フィルタ貴様との婚約を破棄する!」
イエーガー公爵家の令息レイモンド様が言い放った。レイモンド様の腕には男爵家の令嬢ミランダ様がいた。ミランダ様はピンクのふわふわした髪に赤い大きな瞳、小柄な体躯で庇護欲をそそる美少女。
対する私は銀色の髪に紫の瞳、表情が表に出にくく能面姫と呼ばれています。
レイモンド様がミランダ様に惹かれても仕方ありませんね……ですが。
「貴様は俺が心優しく美しいミランダに好意を抱いたことに嫉妬し、ミランダの教科書を破いたり、階段から突き落とすなどの狼藉を……」
「あの、ちょっとよろしいですか?」
「なんだ!」
レイモンド様が眉間にしわを寄せ私を睨む。
「婚約破棄ですか? 婚約破棄なら昨日成立しましたが、ご存知ありませんでしたか?」
私の言葉にレイモンド様とミランダ様は顔を見合わせ絶句した。
全31話、約43,000文字、完結済み。
他サイトにもアップしています。
小説家になろう、日間ランキング異世界恋愛2位!総合2位!
pixivウィークリーランキング2位に入った作品です。
アルファポリス、恋愛2位、総合2位、HOTランキング2位に入った作品です。
2021/10/23アルファポリス完結ランキング4位に入ってました。ありがとうございます。
「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」
稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています
水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。
森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。
公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。
◇画像はGirly Drop様からお借りしました
◆エール送ってくれた方ありがとうございます!
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m



今更「結婚しよう」と言われましても…10年以上会っていない人の顔は覚えていません。
ゆずこしょう
恋愛
「5年で帰ってくるから待っていて欲しい。」
書き置きだけを残していなくなった婚約者のニコラウス・イグナ。
今までも何度かいなくなることがあり、今回もその延長だと思っていたが、
5年経っても帰ってくることはなかった。
そして、10年後…
「結婚しよう!」と帰ってきたニコラウスに…
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる