婚約破棄!?なんですって??その後ろでほくそ笑む女をナデてやりたい位には感謝してる!

まと

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刺繍のハンカチ王子

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「どっどう?アダム、美味しい??」

「……………………………………………………………………………………………………………………………………美味しいよ」

間が長すぎて涙が出そうだわ。

「違うんだイヴリン。まさかイヴリンの手作りクッキーが食べれるなんて思わなくて…あの頃のほろ苦い気持ちを思いだしていたんだ」

どうやら焦げたクッキーだと、バレたみたいね。

ハリエットが、「激苦なので、もう甘めのチョコレートをコーティングしてはどうでしょう?」とかいうものだから、甘めのチョコレートを塗りたくって誤魔化したつもりだった。けれどだめだったようね。

私だってアダムの為なら、ちゃんと作り直しなさいよと思うけど、既に23回目の挑戦だったのよ。もう精も根も尽きてしまったの…。
試食係のハリエットも、もう一生クッキーなんて見たくないですと涙目で言っていた…。

でもほろ苦いだなんて…。本当はハリエットのように激苦と言いたいのでしょうね。
けれどアダムは優しいからオブラートに包んで、ほろ苦いなんてお洒落な言葉で評価してくれたのね。

「それにしても私って、本当に料理の才能もなければ、お菓子作りの才能もないのね」

「イヴリン、料理も作ったの?」

「いいえ、作らなくても分かるわ」

まず玉ねぎの構造がよく分からないわ。あの茶色い皮はどうなっているの?いつも白い状態の物しか見た事ないのだけど。あれは剥くの?それとも削ぐのかしら?
そのレベルのヤバさよ。

「…イヴリンはそのままでも充分魅力的だ。君以上素敵な人なんていない」

穏やかな目で優しく微笑み、私の手を両手で包む。

「アダム…」

「あっ、そう言えば君にプレゼントがあるんだ。ちょうど良かった、クッキーのお礼が出来そうだ」

「えっ?本当?」

「これ、デイジーはもう戻らないけど…」

「まあっ…!!とてもそっくり!デイジーちゃんに黒猫ちゃんまで!なんて可愛らしいの!!とても手が込んで…これは職人にオーダーしてくれたのね??」

さっきまでのささくれ立った心が、このハンカチの愛らしさとアダムの優しさで潤い満たされていく。

「あ…その、シルクのハンカチは買った物なんだけど、刺繍はオレがしたんだ」

「へ?」

「気持ち悪いかな?男が裁縫なんて…」

「いえ、全然。むしろ尊敬するわ。」

笑えてるかな?いや真顔だわ私。

「良かった。ちょっと失敗しちゃったから、渡すか迷ったんだけど…」

このタイミングは鬼だと思うけれども、私の事を思いながら刺繍を施してくれたと思うと、心は満たされた。
でもどこを失敗したかなんて、プロでないと分からないレベルだわ。

「一生大切にするわ。アダム、貴方の事も」

私はハンカチを胸に抱く。大事に大事に。

「…イブリン…」

「愛しているわ、アダム」

「初めて…言ってくれたね…」

目を見開き、顔を赤らめるアダム。目なんてウルウルさせている。

「そうだったかしら」

少し照れてしまう。

「オレ、もっと頑張ってイブリンに相応しい男になるから!」



あら?変なスイッチを押してしまったのかしら?
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