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私の名前はイヴリン・グリフィス。ただいま、全校生徒の前で吊し上げられている真っ只中の、公爵令嬢もとい悪役令嬢だ。
どうやら私は身に覚えのない虐めをしていたようだ。
卒業パーティー中にそれは突然はじまった。
「君にはがっかりだよ…失望した」
悲しみなのか怒りなのか分からない目でこちらを見てくるのは、この国の第一王子オリバー・ムーア。
「やめてください、殿下!イヴリン様は悪くない!私が…この私が全て悪いのです。ドジでマヌケでオッチョコチョイな私が、お優しかったイヴリン様のお心を鬼にしたのです!」
この急に出てきた女は、マイラ・ティティトリティス。
子爵家ティティトリティスの1人娘だ。
「マイラ、君は何て健気で愛らしく控え目で心の優しい春の日だまりのような女性なんだ」
誉め言葉が渋滞してますよ、殿下。
「私はここに宣言する!イヴリン・グリフィス!君とは婚約破棄すr 「はい、おっしゃった」
「え…ああそうだ!君とは婚約破棄して、このマイラと正式に婚約すr「はいはい、おっしゃいましたね」
私は額に手をあて下を向く。実にはしたないわ。殿下の言葉に二度もかぶせてしまった。ああ、お許しください殿下。少し興奮してしまいました。
クスクスと笑い声が聞こえる。
「さすがのイヴリン様も終わりね。誰かハンカチをお貸ししてさしあげたら?」
周囲が蔑みの視線を私に送った。
私はスッと顔を上げた。
殿下の後ろでほくそ笑むマイラ。
つられるように私もニタリと笑い返した。
マイラはえっ?というマヌケな顔をした。
「承知しました、殿下。悲しいけれど従いますわ」
と私は頭を下げた。
「えっ?あ…ああ…」
そして周りの皆にも、位など関係なく謝罪した。
「皆様、私のせいで卒業パーティーをこのようにしてしまい申し訳ありません」
ホールは静まり返る。
「私がいては空気が悪くなってしまいますわね。すぐに消えます」
皆様ごきげんようと一言添え、その場を後にしようとした時。
「イヴリン!君はマイラに謝りもしないのか!」
ざわざわと周りも騒ぎだし、そうだ謝れ!と囃し立てた。
私はマイラに振り返った。ギリッと音がする程こちらを睨んでくる。
「そうね、伝えないといけない事がありましたわ。
マイラ・ティティトリテッテッ…ティス」
やばっ。噛んじゃった。まったく…きまらないわ。
ごくりと、喉をならし私を見るマイラ。
「あのね?魅了が歪みをみせているわよ。あと1日持つかしら」
「は…?」
「契約したのなら、ちゃんと質の良い魔法をかけてもらわないと」
魅了は禁忌の魔法。同じ相手には1度しかかからない。
だから対価もエグいの。
あなたは何を払った?
「まあ私には関係ないけど」
そして今度こそ私はその場を離れた。
遠くでマイラが叫んでいる。
「あんのっ、クソ魔女があぁぁぁっ!!!」
あらあら、あの春の日だまりのような可愛らしいマイラはどこに行ってしまったのかしら。
「今度こそ、マジでごきげんよう」
私はスキップして馬車へと急いだ。
やだ、はしたない♪
どうやら私は身に覚えのない虐めをしていたようだ。
卒業パーティー中にそれは突然はじまった。
「君にはがっかりだよ…失望した」
悲しみなのか怒りなのか分からない目でこちらを見てくるのは、この国の第一王子オリバー・ムーア。
「やめてください、殿下!イヴリン様は悪くない!私が…この私が全て悪いのです。ドジでマヌケでオッチョコチョイな私が、お優しかったイヴリン様のお心を鬼にしたのです!」
この急に出てきた女は、マイラ・ティティトリティス。
子爵家ティティトリティスの1人娘だ。
「マイラ、君は何て健気で愛らしく控え目で心の優しい春の日だまりのような女性なんだ」
誉め言葉が渋滞してますよ、殿下。
「私はここに宣言する!イヴリン・グリフィス!君とは婚約破棄すr 「はい、おっしゃった」
「え…ああそうだ!君とは婚約破棄して、このマイラと正式に婚約すr「はいはい、おっしゃいましたね」
私は額に手をあて下を向く。実にはしたないわ。殿下の言葉に二度もかぶせてしまった。ああ、お許しください殿下。少し興奮してしまいました。
クスクスと笑い声が聞こえる。
「さすがのイヴリン様も終わりね。誰かハンカチをお貸ししてさしあげたら?」
周囲が蔑みの視線を私に送った。
私はスッと顔を上げた。
殿下の後ろでほくそ笑むマイラ。
つられるように私もニタリと笑い返した。
マイラはえっ?というマヌケな顔をした。
「承知しました、殿下。悲しいけれど従いますわ」
と私は頭を下げた。
「えっ?あ…ああ…」
そして周りの皆にも、位など関係なく謝罪した。
「皆様、私のせいで卒業パーティーをこのようにしてしまい申し訳ありません」
ホールは静まり返る。
「私がいては空気が悪くなってしまいますわね。すぐに消えます」
皆様ごきげんようと一言添え、その場を後にしようとした時。
「イヴリン!君はマイラに謝りもしないのか!」
ざわざわと周りも騒ぎだし、そうだ謝れ!と囃し立てた。
私はマイラに振り返った。ギリッと音がする程こちらを睨んでくる。
「そうね、伝えないといけない事がありましたわ。
マイラ・ティティトリテッテッ…ティス」
やばっ。噛んじゃった。まったく…きまらないわ。
ごくりと、喉をならし私を見るマイラ。
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「は…?」
「契約したのなら、ちゃんと質の良い魔法をかけてもらわないと」
魅了は禁忌の魔法。同じ相手には1度しかかからない。
だから対価もエグいの。
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「まあ私には関係ないけど」
そして今度こそ私はその場を離れた。
遠くでマイラが叫んでいる。
「あんのっ、クソ魔女があぁぁぁっ!!!」
あらあら、あの春の日だまりのような可愛らしいマイラはどこに行ってしまったのかしら。
「今度こそ、マジでごきげんよう」
私はスキップして馬車へと急いだ。
やだ、はしたない♪
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