上 下
43 / 75

再び朝チュンを迎えるホワイトタヌキ

しおりを挟む

チュンチュン…チュンチュン…

あで…。朝…??
まだ目を閉じたまま、鳥の鳴き声に耳を傾ける。

オレ、昨日王子と…。
はっと目をガン開きにし、布団の中を見る。

はい、やっぱりタヌキ!!ホワイトタヌキだよ!
まったくもって裸んぼうじゃないから、昨日あの後どうなったのか分からない。

いつもいつも記憶が曖昧だ。
そして王子もどうせいないのだろう、と隣を見ると、すやすやと王子が穏やかに眠っている。

(王子…)

珍しい。考えてみればあまり王子の寝顔を見たことないな。なんか少しあどけなくて可愛い。

肉球で優しく唇に触れてみる。ムニムニ。

きゃあっ!王子可愛いようっ!と布団に顔を埋めて悶える。

そして再びはっとする。
ダラダラと嫌な汗をかく。まさか、まさか、オレってば嫌がる王子に無体な事をしてないよね?

血走った目に、鼻水をずびずび言わせながら再度布団の中に潜り、王子の様子を伺う。

ドッドッドッと、激しく心臓が踊り狂っているのが分かる。

っ…!!セーフ!!?
服は着てるけどシャツはいつもよりはだけているだと?!!

く、首は??なんか変なものついてないよね?主に痛々しい噛み跡とか!!

…セーフ??何もない。シミひとつない綺麗な肌だ。
オレはほっとしてベッドにコロンと転がる。

(ふぅ…自分が恐ろしい…)

「ん…ニナ…」

と眠たそうな王子の声が聞こえた。オレは立ち上がり、王子の顔に近づく。

(王子、珍しいね。まだ眠いでしょ?寝なよ)

布団をくわえて王子にかけてやる。隣にコテンと転がる。
うっすらと菫色の目がオレを見つめる。

「ニナ、身体は…?どこかおかしくない?」

身体??

(すこぶる元気だけど?ん?なんか魔力がめちゃくちゃみなぎってる気がする)

ファイヤー!とか攻撃魔法は出そうにないけどな。

王子はオレの身体を抱きよせ、ぎゅっとする。

(?)

「…良かった」

ふぅっ息をつき、オレの頭に額をあてる。

「ニナ、何も覚えてない?」       

(えっ…あの…王子に気持ちよくして貰いました)

ゴニョゴニョと、照れるホワイトタヌキ。

「その後、記憶はある?」

そっその後?やっぱオレ何かしちゃったの?覚えてないとか最悪なヤツじゃん!

(オレ、王子に酷い事しちゃったのか?)

「…今までこんなに眠れて、こんなに身体が軽くて楽な事はなかったよ」

(…どういう事?)

ふわりふわりと背中を撫でられると、二度寝してしまいそうだ。

「あの後、ニナは俺の魔力を食べちゃったんだ」

(へ…?)

急に衝撃的な事を言われて固まるオレ。

「俺のこの身体には、人間には不釣り合いな程の莫大な魔力が溢れていて、それをコントロール出来ず時々体調を崩すんだ。
子供の頃は、それで何度も死にかけたしね」

(….そんな…オレ、知らなかった。…あ…だから森で静養してるの?)

「森は僅かだけど、魔力を放出出来る場所でもあるんだ。やはり王都にいるよりは体調が安定しているかな」

(それじゃあ城にいる時は、いつもしんどいの?)

「今は魔力をコントロール出来ているからしんどくないよ。ただコントロールする事にも疲れてしまう時があるからね」


そっか…でも、待って?オレが王子の魔力を食べたって何??



どゆこと???





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

攻略対象5の俺が攻略対象1の婚約者になってました

白兪
BL
前世で妹がプレイしていた乙女ゲーム「君とユニバース」に転生してしまったアース。 攻略対象者ってことはイケメンだし将来も安泰じゃん!と喜ぶが、アースは人気最下位キャラ。あんまりパッとするところがないアースだが、気がついたら王太子の婚約者になっていた…。 なんとか友達に戻ろうとする主人公と離そうとしない激甘王太子の攻防はいかに!? ゆっくり書き進めていこうと思います。拙い文章ですが最後まで読んでいただけると嬉しいです。

悪役令嬢の双子の兄

みるきぃ
BL
『魅惑のプリンセス』というタイトルの乙女ゲームに転生した俺。転生したのはいいけど、悪役令嬢の双子の兄だった。

もふもふ獣人転生

  *  
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。 ちっちゃなもふもふ獣人と、騎士見習の少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。

処理中です...